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「ポケモンと寝る」ために、ガチで新潟でキャンプしてきた。前代未聞の「睡眠計測ゲーム」こと『Pokémon Sleep(ポケモンスリープ)』を最速体験

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 『Pokémon Sleep(ポケモンスリープ)』というタイトルを、知っているだろうか?

 ものすごく単刀直入に言えば、「ポケモンと一緒に寝て、睡眠を計測する」というゲームらしい。単刀直入に言っても、なんとも不思議なゲームである。「睡眠を計測するゲーム」……言われてみれば、あったような。なかったような。

 つまり、ポケモンはついに我々の人間の三大欲求のひとつ、「睡眠欲」すら楽しい遊びに変えてしまうというのだ。おそろしい。

前代未聞の「睡眠計測ゲーム」こと『Pokémon Sleep(ポケモンスリープ)』を最速体験_001

 そして私は、そんな『Pokémon Sleep』を最速で体験してきた。
 ここでひとつ、読者のみなさまに聞いてみたい!

 ……「睡眠計測ゲームの体験」って、どうやると思う?

 自宅での体験、外での体験……普通のゲームなら、どこでも体験できる。ただ、『Pokémon Sleep』に限っては、体験するために「寝なければ」ならない。

 だから株式会社ポケモンから『Pokémon Sleep』体験会のお誘いがあった時、まず私は「ええっ、まさか株式会社ポケモンで一泊するんですか!?」と思った。

 ところが、実際のメールの文面には……「新潟のキャンプ場でやります。来てね❤︎(※筆者の意訳が含まれています)」みたいなことが書かれていた。

 そうか、新潟か。新潟のキャンプ場か。

 新潟………。

 新潟!?!?!?!?

文/ジスマロック
編集/実存


ドキメキ上越新幹線に、私は乗っている

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 ということで、東京駅から新幹線に乗って新潟の燕三条駅まで来た。すごい。「ゲームで遊ぶために東京駅で集合!」ってなんなんだ。わしゃ修学旅行生か?

 しかも集合時間、朝の9時!
 わしゃ修学旅行生か??

 一応説明しておくと、「『Pokémon Sleep』がポケモンとのキャンプをモチーフにしているので、体験会もリアルキャンプ場でやることにした」という意図があるそうです。株式会社ポケモン、夢のある会社だね……。

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 見てこれ。ちゃんとニャオハ連れてきたんです。一緒ならできるよね、ニャオハ……。よし、もう私がリコだ。もう私こそがミスタードキメキダイアリーだ。ドキメキ上越新幹線に、私は乗っている……。

 そこからキャンプ場「Snow Peak HEADQUARTERS Campfield」に着きました。旅の道中なんて全カットです。流行りの「ファストトラベル」ってヤツです。だってみんな……早く『Pokémon Sleep』のこと知りたいでしょう?
 
 私がカッコつけてお昼にサラダパスタを買って「(全然足りねえじゃん……)」と思っていた旅の道中なんて、みなさんどうでもいいでしょう?

 あ、でも何気に新潟初めて来ました。私だってまさかこんな形で新潟に初上陸するとは思ってなかった。私はこれから新潟県民の人に会うたびに「あ、私ポケモンの新作遊ぶために新潟行ったことありますよ!」「?????」という会話をしなければならないのだろうか。

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「Snow Peak HEADQUARTERS Campfield」はこんな感じ。リアル「サファリパーク」って感じですかね。
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 ……と、ここでそろそろ『Pokémon Sleep』についてちゃんと説明しておきましょう。現地でも株ポケの人たちがプレゼンしてくれましたよ。

 端的に言えば、これは「朝起きるのが楽しみになる睡眠ゲームアプリ」

 カビゴンたちと一緒に寝ることで、私たちの毎日の睡眠リズムを知ることができるのです。そして睡眠リズムを計測しつつ、かわいいポケモンたちの寝顔を集められちゃいます。わぉ、素敵なゲーム!

 『Pokémon GO』では生活に必要な「移動」を遊びに変えたので、こっちは「睡眠」を遊びに変えたというわけです。ポケモンによる生活支配の一環ということでしょうか。私の生活、ポケモンに支配されてるーっ!?

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 『Pokémon Sleep』の冒険の舞台となるのは、大きなカビゴンのいる小さな島。やだ、私ここで暮らしたい。その島々にはいたるところにカビゴンが生息しており、「ねむけパワー」という謎の力でポケモンたちを引き寄せているそう。

 「ねむけパワー」、いいですね。実に「ポケモンの言葉」という感じがします。「眠りの力」とか「スリープパワー」とかでもなく、「ねむけパワー」。ねむけの、パワー。ポケモンでしか聞かない言葉だと思います。

 そしてポケモンの睡眠生態を研究している「ネロリ博士」【※】と一緒に、ポケモンの寝顔を調べるんですって。そのネロリ博士の開発した「睡眠シンクロ装置」によって、プレイヤーとカビゴンの睡眠がシンクロする……ということだそうです。結構ロジックがしっかりしてる。

 こう書いてみると、「ポケモンを探す冒険」というシリーズの基礎的なところはしっかり抑えているのです。「寝る」のが遊びなのだけど、ちゃんと「ポケモン」なのです。

※1「ネロリ博士の由来」
ネロリ博士の名前はリラックス効果の高い橙の花から抽出される精油「ネロリ」から命名されているとのこと。ちょっとTIPS的に入れてみました。

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 そして具体的なゲームサイクルとしては、「朝・昼・夜」のリアル時間のサイクルでポケモンたちの寝顔を集めていくそうです。

 夜に睡眠計測を行う。朝起きたら、集まってきたポケモンたちの寝顔をリサーチする。そしてお昼はカビゴンを育てる。カビゴンが大きくなればなるほど、新たなポケモンたちに出会えるようになる。

 そしてこの1日のサイクルを繰り返すことで、最終的に「ポケモン寝顔図鑑」の完成を目指す! それが『Pokémon Sleep』!! もっと簡単に言えば、「日々の生活の中でポケモンの寝顔を集めて楽しんじゃおう」ってことです!!!

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 この「夜→朝→昼」のサイクルを、もう少し詳細に話しましょう。

 まず夜。寝ます。このゲーム、寝なければ何も始まりません。大概のゲームは寝るとプレイできませんが、このゲームは寝なければ始まりません。

 計測自体は枕元にお手持ちのスマートフォンか「Pokémon GO Plus +」【※2】を置くだけ。かんたんです。この際、スマホは充電しながら裏返して置くのがポイント。充電切れたら元も子もないですから。

 そして朝。目覚めると睡眠時間やカビゴンの育ち具合に応じた「ねむけパワー」が出ています。よい眠りであればあるほど、より高いねむけパワーになります。このねむけパワーが高いほど、たくさんのポケモンたちが集まってきたり、珍しい寝顔を発見できたりするらしいです。

 つまり、より高いねむけパワーを出すためには「より良い眠りをする」ということです。冷静に考えたら結構高度なテクニックを求められている気がする。

※「Pokémon GO Plus +」
『Pokémon GO』『Pokémon Sleep』と連携する新たなデバイス。『Pokémon GO』ではポケストップの自動操作やモンスターボールを投げる機能が使用でき、『Pokémon Sleep』ではスマートフォンの代わりに睡眠を計測する機能が搭載されている(睡眠計測はスマホのみでも可能)。

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 そしてねむけパワーが測定されたあと、ゲーム内のカビゴンの周りにはすやすや眠るポケモンたちが集まっています。ポケモンたちのこの寝顔を「睡眠リサーチ」すると、ポケモン寝顔図鑑に登録されていきます。

 寝顔をリサーチしたあとは、集まっているポケモンたちに「ポケサブレ」をあげて、仲良くなりましょう。いい感じに仲良くなったポケモンは「おてつだいポケモン」として仲間になります。なんて平和な世界なんだ。

 そして仲間になってくれた「おてつだいポケモン」たちは、カビゴンにあげるきのみや食材を拾ってきてくれます。日中ゲームをプレイしていなくても、おてつだいポケモンたちは自動でいろいろ集めてくれるそう。このきのみや料理をあげることで、カビゴンがどんどん大きくなっていきます。カビゴン、うらやましい。

 以上が『Pokémon Sleep』の遊び方!

 夜に寝る。朝起きてポケモンの寝顔を集める。そこから仲間のポケモンを集めて、お昼はカビゴンを大きくしていく。そして大きくなったカビゴンと共に、より高いねむけパワーを目指して睡眠! 永久機関が完成しちまったなァァァ〜〜〜!!

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 先ほどから何度か話題に出ている通り、今作は「ポケモンの寝顔」にすごくこだわっています。普段はあまり見ることのできないポケモンたちのかわいい寝顔を、私たちは朝一番で見ることになります。なんて素敵な朝でしょう。

 要は、あまりポケモンを遊ばない方も気軽に触れるし、ガチ勢の方も「ポケモンのレアな寝顔・寝姿」を見れちゃうのです。

 丸まって寝るピカチュウ、腕を組んで寝るリザードン、特に変身せずそのまま寝るメタモンなどなど、「これまでに見られなかったポケモンの新たな一面」を発見できるかも?

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YouTubeより

これって夢ですか?

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 そしてキャンプなので、本当にテントで泊まりました。テントで泊まったの人生初かも。株式会社ポケモン、何がお前をそこまで突き動かす。テントの近くには巨大なカビゴンのぬいぐるみと、その周りで眠るポケモンたちが設置されていました。幸せそうに寝ています。

 なにこれ? 夢?
 死ぬほど暑くて熱中症で見てる夢なのかな?

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近くに置かれていた展示物。チコリータ先輩、無防備すぎます。

 そして、「キャンプ」なので一部の設営を体験しました。テントの中をいろいろ準備したり、テントの中に敷くマットレスとかを作るそうです。このクソ暑い中で? 正気か? みんなほのおタイプだと思うとる?

 ……と思いつつも、完成させました。

 ここも行程は全スキップです。みなさん、興味ないでしょう!? 私が結局不器用すぎて株ポケの人に設営いろいろ手伝ってもらった惨めエピソードとか、誰も興味ないでしょう!?

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 とはいえ、『Pokémon Sleep』は夜にならなければ遊べない。なぜなら寝ないことにはなにも始まらないゲームだから。訪れる完全な自由時間。

 新潟県。三条市。午後3時。テントの中で、ひとり。世界の時間が止まっている気がした。暇だったので、持ってきた『かがみの孤城』を読んだり、dアニメストアにダウンロードしてきた『鬼物語』を見たりした。斧乃木余接がかわいかった。僕はキメ顔でそう言った。

 ……これが、仕事でいいのだろうか?

想像以上に気合の入った「ポケモン寝顔図鑑」

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 夜ご飯も準備してくれていた。近くにあった良い感じのスパにも入った。怖っ。怖いよ。人間はあまりに良い待遇でもてなされると逆に怖くなることがよく分かりました。

 夜ご飯は4人くらいで机を囲んでのバーベキューだった。私の目の前には『Pokémon Sleep』のプロデューサーの人が座り、私の横には新潟日報の美人なお姉さまが座っていた。

 どんなパーティー構成だよ。

 もう一生同席する機会のない人たちだよ。私だってプロデューサーさんと新潟日報の美人なお姉さまが焼いた肉食うことになると思わなかったよ。奇妙すぎる。この一日、奇妙すぎる。あらゆる意味で忘れられない。

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 そして、夜!!!

 お待たせしました、『Pokémon Sleep』体験開始ッ! ゲーム開始までここまで引っ張ることがあるのか!? だけど寝なきゃ始まらないんだから仕方ないじゃん!!

 ここで、突然の暴露をしよう。

 実は私、軽い不眠症である。

 夜になると、突然仕事のことや将来のことを考え始めてしまう。全然眠れない。普段、0時くらいにベットに入ることを心がけているのだけど、大体2時とか3時まで眠れなかったりする。

 ……恐ろしい人選ミスじゃないか?

 どうしよう。寝られなかったらどうしよう。編集部の人たちに「ごめーん、新潟まで行ったけど結局寝られなくて遊べなかった❤︎」なんて言ったら、いよいよ永遠の眠りを味わうハメになるのではないだろうか。

 ヤバい、結局眠れない。22時にベッドに入ったはずなのに、いま時計の針が頂点<テッペン>を回っているじゃないか。まずい、このままではシャレにならん。大丈夫。私はできる子。仕事で失敗したこと、あんまりない。そうだ、斧乃木余接だ。斧乃木余接のことを考えよう。

 『例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)』、就寝版!

 気づいたら、朝! よっしゃ眠れたァ!!

 無事に永遠の眠りを回避することができました。斧乃木ちゃん、ありがとな!

 そして、「何時に就寝し、何時に起きたのか」も正確に計測してくれています。ちなみに私は23時29分から6時28分の6時間59分寝ていたそうです。そんなに眠れてない気がする。そしてここで重要になってくるのが、「睡眠タイプ」についてです。

 『Pokémon Sleep』には「うとうと」「すやすや」「ぐっすり」という3種類の睡眠タイプが存在しており、そのタイプによって翌朝やってきてくれるポケモンの種類が変わってきます。
 
 ちなみに私は「ぐっすり」タイプでした。このタイプに関しても、睡眠グラフで「具体的にどの時間帯が、どの睡眠タイプだったのか」を計測してくれます。結構ハイテクノロジーな気がします。あぁ、「かがくのちからってすげー」ってヤツですかね。

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 そしてここからはお楽しみの睡眠リサーチタイム!

 私のぐっすりタイプの睡眠に引き寄せられて、ぐっすりタイプのポケモンたちが集まっています。最初に見つけたのは上の画像にもいるゼニガメ。殻にこもったまま、寝ています。どうやらこれは「からにこもる寝」という種類の眠りなんだとか。ぼうぎょ上がってそうです。

 そしてポケモン寝顔図鑑には「甲羅に手足と頭を引っ込めて眠るよ。周りを警戒して自分の身を守りながら眠るときの行動と言われているんだ。」と書かれています。

 この一文だけでなんとなくわかると思うのですが、ポケモン寝顔図鑑には「そのポケモンの睡眠に関する生態」が書かれています。従来のポケモン図鑑はおおまかな生態も含めた説明が書かれていましたが、今作に限っては「睡眠」のみ。ここ、かなり面白いと思います。一本取られた感。

 そしてピチューは「おだやか寝」
 かわいい。なんて無防備な姿。
 こんなのじめんタイプの攻撃が飛んで来たら避けられないのではないか。

 カラカラは「しくしく寝」
 えっ、カラカラ泣いてる……。
 寝顔図鑑の説明を確認してみたところ、「泣きながら眠っている姿が発見されているよ。死に別れた母親を夢に見て、しくしく泣いているのかもしれないね」と書かれていました。朝からこれか?

 ただ、このカラカラのしくしく寝を見た時に、私は結構「このゲーム……面白いんじゃないか?」と思いました。やはり「ポケモン」はただかわいいだけでなく、純粋な「生き物」としての描写が面白かったりします。そこをちゃんと描いているのが、個人的にすごく好印象でした。ちゃんと「ポケモン」のゲームだと思います。

 先ほども触れた部分ではありますが、こうしてやってきてくれたポケモンに「ポケサブレ」をあげることで、「おてつだいポケモン」になってくれます。おてつだいポケモンになってもらうためには、ポケモンの「フレンドポイント」を貯める必要があります。まぁ、仲良くなるってことですね。

 そしてポケサブレにはモンスターボールよろしく「ポケサブレ」「スーパーサブレ」「マスターサブレ」といった種類が存在しており、このサブレによってフレンドポイントの溜まり方が変わります。ポケサブレでこつこつ仲良くなるのもよし。マスターサブレで一気に仲良くなってしまうのもよし。

 で、仲間になってくれたおてつだいポケモンたちは「食材」を集めてきてくれます。この食材はカビゴンに食べてもらうための料理に使います。たとえば上の画像のように「とくせんリンゴカレー」を作れば、そのエナジーの分だけカビゴンが大きくなります。もちろん寝ることも大切ですが、食べることも大切です。このゲームで一番得をしているのはカビゴンな気がする。

 ほら、カビゴン……カレーをお食べ……。

 ほぼワンパンされてしまいました。

 すごい食べっぷり。あの量をこの速さか。さすがカビゴン。
 まぁ……幸せそうだからいいか……。

 まぁ、こんな感じでカビゴンを大きくしつつ、さまざまなポケモンの寝顔を集めていくのが『Pokémon Sleep』というワケです。実演チックにやってみましたが、なんとなくお分かりいただけましたかね?

 やはり個人的には「ポケモン寝顔図鑑」の気合の入りっぷりに驚かされました。
 特にあのカラカラの「しくしく寝」。あれはやはり『ポケモン』にしか出せない面白さだと思います。しかもこれが100種類近く用意されているのだから驚き。毎朝起きるのが、楽しみになっちゃいますね。……あれ、なんか段々通信販売みたいになってきてる?

『Pokémon Sleep』って、結局なにをしてくれるの?

 そしてここからは、より大きな『Pokémon Sleep』のゲームサイクルを紹介しましょう。基本的には1日の中での「朝・昼・夜」のサイクルを繰り返すゲームなのですが、さらに大局的には「1週間」のゲームサイクルを楽しむこともできちゃいます。

 まず、毎週月曜日に新たなフィールド(島)が登場します。上の画像の「ワカクサ本島」は、そのうちのひとつ。このフィールドに生息するカビゴンを、1週間かけて育てていきます。

 つまり、フィールドが変わる度に出会うカビゴンは別個体ということです。

 つまりつまり、「カビゴンの好みも違う」ということなのです! あっちの島のカビゴンはオレンのみが好きかもしれないし、こっちのカビゴンはヒメリのみが好きかもしれない! そしてフィールドごとに出会うポケモンも異なる! 毎週切り替わるフィールドで、どうカビゴンを育てていくかも重要なのです!

 ちなみに、「週末はより多く、より珍しいポケモンが眠りにくる」チャンスが用意されているそうです。土日が寝るチャンスってことですね。とはいえ、土日は出かけたい人もいるはず。ジレンマですね。カビゴンとアタシ……どっちが大切なの!?

 ……と、ここまでの紹介の中で、もしかしたら「で、このゲームって結局なにかの役に立つの?」ということが気になっている方もいるかもしれません。そんな方のために、より深い「今作における睡眠の評価機能」について説明しましょう。

 端的に言えば、『Pokémon Sleep』は1日単位で「睡眠の長さ」、1週間単位で「睡眠の規則性」を評価してくれます。このふたつの評価軸をもって、プレイヤーの「睡眠」そのものを評価してくれる機能があります。具体的にこれが睡眠の改善に繋がるかはプレイヤー次第ですが、「自分の睡眠がどんな状態なのか」を楽しく評価してくれるゲーム……というわけですね。

 そして1日の睡眠時間の長さを、「睡眠スコア」として評価してくれます。これは「8時間30分以上の睡眠」を100点としています。睡眠時間が短くなりがちな日本人の傾向に合わせた基準なのだとか。ちなみに7時間半だった私が82点を取れていたので、結構優しく採点してくれている気がします。

 その睡眠スコアを1週間分計測することで、睡眠の規則正しさ……いわゆる「睡眠習慣」を評価してくれます。たとえば下記の画像のように、1週間分のデータから、睡眠リズムや十分な睡眠時間がとれているかどうかをジャッジしてくれます。とにかく、『ポケモンスリープ』自体に睡眠を改善する機能は用意されていないのですが、「睡眠を評価する機能」はたくさんついています。

 この情報をもとに、よい睡眠リズムを目指しましょう。
 やっぱり通信販売のノリになってないですか?

 「ゲーム」としての『Pokémon Sleep』は、カビゴンを大きくしながらポケモンたちの寝顔を図鑑に登録していく。そして「睡眠計測ツール」としての『Pokémon Sleep』は、さまざまな情報をもとに自分の睡眠を記録・分析することができる。

 つまり、『Pokémon Sleep』は「ゲーム」と「睡眠計測ツール」のふたつの側面がうまいこと合体した「睡眠計測ゲーム」ということなのです! ……なんか上手いことオチがついた気がします!!

ゲームフリークと協力した、こだわりの寝顔。『Pokémon Sleep』開発インタビュー

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キャンプ地の充電スポットに置かれていたピカチュウさんのぬいぐるみ

 そしてここからは、『Pokémon Sleep』のプロデューサーを務める株式会社ポケモンの小杉要氏へのインタビューを掲載しています! さっきお肉焼いてくれた人です。「どういう日程でキャンプしてるんだよ」って感じですね。実に濃いキャンプでした。

 そもそもの「ポケモンと睡眠」をかけ合わせようと思った理由、実に5年の期間をかけて完成した今作の舞台裏、ゲームフリークと協力して作り上げたこだわりの寝顔等々……小杉さんに今作の魅力をいろいろとお聞きしています。ぜひ、最後まで読んでいただければと思います。


──まず、そもそもの『Pokémon Sleep』の開発を始めたきっかけはどういったところにあったのでしょうか?

小杉氏:
 5年ほど前に、「睡眠計測」に関する技術を知る機会がありました。その際、「この睡眠のデータが毎日蓄積されていく技術を、ゲームにかけ合わせたら面白いものができるのではないか?」と思い立ったところが、『Pokémon Sleep』を開発するきっかけになりました。

──具体的に、「睡眠」をメインテーマにしようと考えた理由などはあるのでしょうか? 「ポケモンと睡眠」をかけ合わせるのは、かなり面白いアイデアだと思います。

小杉氏:
 まず、『Pokémon GO』を通じて、日々の生活の中にある「歩くこと」に楽しみを提供できたと考えております。その次に日々の生活の中にあるものとして着目したのが、「寝ること」でした。

 「全く寝ない人」って、まずいないですよね(笑)。

 そこで、毎日の中で行う「睡眠」をより楽しいものにできないかと考え、『Pokémon Sleep』のコンセプトを作り上げていきました。今作を作り上げていく中で実施した睡眠に関する調査の中で、「日々の睡眠と理想の睡眠にギャップがある」と考えている人が何人かいらっしゃいました。そういった方々に向けた「理想の睡眠に近づくためのお手伝い」ができれば……とも考えています。

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──『Pokémon Sleep』の開発の中で、なにか苦労した点はありましたか?

小杉氏:
 やはり「睡眠」がゲームのメインに組み込まれてるので、通常のゲームとは全く違うゲームデザインを作り上げていく必要がありました。そこが大変でしたね。そして「睡眠を計測するアプリ」自体は多く出ていると思うのですが、「睡眠のデータを使ったゲーム」というものはほとんど前例がありません。

 だからこそ、ほぼ前例がない中でいろいろなものをイチから作り上げていかなければなりませんでした。そして実際のゲームサイクルなども通常の日中に遊ぶゲームとは異なるものにする必要がありましたし、そういった点は苦労しましたね。

──逆に、開発の視点から見た「こだわりポイント」などはありますでしょうか。

小杉氏:
 やはり、「日中に他のゲームやアプリを遊んでいても、こっちは寝る前に遊べる」ところがイチオシポイントですね。朝に睡眠リサーチを行い、夜に睡眠計測を行えば進行するようなゲームデザインとして作り上げていったので、他のアプリと並行しながらでも問題なく遊ぶことができます。

 そして、ポケモンたちの寝顔もすごく時間をかけて丁寧に作り上げていきました。かわいらしさを追求した寝顔もあれば、ユニークなところを意識した寝顔もあります。

──特にこだわった「ポケモンの寝顔」がありましたら、ぜひ教えてください。

小杉氏:
 もちろん全てこだわって作っているんですが、特に「ワニノコの寝顔」にはこだわりました。ワニノコは片目を閉じて、開いて……それを交互させるような寝顔を見せてくれます。これは実際の生き物に見られる「半球睡眠」【※3】という生態を参考にしています。

 そのワニノコの寝顔のように、実際の生き物の生態を参考にしつつ「このポケモンだったらどう寝るのだろう?」というアイデアを膨らませていきました。生き物に詳しい人が見ると、「これは半球睡眠だ」と気づけるのが面白いポイントだと思います。

※3「半球睡眠」
常に周囲の安全を確認する必要のある動物や、長距離を移動する動物に見られる生態。脳の半分が眠り、残りの半分が覚醒している状態で、「寝ている脳の反対側の目が閉じる」といった現象が見られる。

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──ライチュウの寝顔では「しっぽアース寝」というポケモンの特性を活かした特殊なものがありました。これは中々「ポケットモンスター」シリーズ本編でも見られないレアな姿だと思うのですが、こういった部分はゲームフリークさんと協力して作り上げていったのでしょうか?

小杉氏:
 はい。今作に登場するポケモンの寝顔は、株式会社ポケモン側の提案をゲームフリーク様に監修していただく形で進めていきました。ポケモン寝顔図鑑にもテキストが掲載されているのですが、そちらもゲームフリーク様に監修していただいています。

──アニメやゲームなどで「ポケモンが寝ている姿」は何度か描かれていたと思うのですが、そういった過去の寝ている姿は参考にされましたか?

小杉氏:
 そうですね。既存の「ポケットモンスター」シリーズでのポケモンが寝ている描写は、いくつか参考にしながら作り上げていきました。とはいえ、やはり『Pokémon Sleep』ならではの寝顔を作る必要もあると考えました。

 そのため、一匹のポケモンにも「寝顔の種類」をいくつか作りました。たとえば、カビゴンのねむけパワーが強ければ強いほど、ポケモンたちは眠気が強くて「より脱力した寝顔」になったりします。その脱力した寝顔が「珍しい寝顔」となっていたりするので、ぜひ見ていただけると嬉しいです。

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──今作には「うとうと」「すやすや」「ぐっすり」の3つにわかれた睡眠タイプがありますが、こちらはどういった基準で決められているのでしょうか?

小杉氏:
 人間の睡眠サイクルの中には、主に「覚醒状態」「浅い眠り」「深い眠り」といった3段階の睡眠のステージがあると言われています。『Pokémon Sleep』においてその3つのステージにあたるのが、「うとうと」「すやすや」「ぐっすり」の3つの睡眠タイプです。

 この「うとうと」「すやすや」「ぐっすり」というネーミングに関しては、「深い眠りだけが重要なのではなく、それぞれのステージの睡眠に役割がある」という意味があったりします。ここは今作を監修していただいた柳沢先生からのアドバイスを参考にいたしました。「それぞれの睡眠が重要」だと感じてもらうための、ネーミングですね。

──「睡眠」に関して、今作は「8時間半」の睡眠がスコア上では100点となっていましたが、それ以上寝るとどういった表示がされるのでしょうか?

小杉氏:
 「8時間半以上の睡眠」が100点の基準となっていますので、9時間寝た場合にも「100点」と表示されます。逆に、徹夜をすると「0点」が表示されてしまいます。やはり最終的には「1週間の睡眠の規則性」を計測することになるため、徹夜などをすると1週間の睡眠の総合評価は低くなってしまいます。

──日中の「お昼寝」の時間に、睡眠を計測することはできるのでしょうか?

小杉氏:
 『Pokémon Sleep』は1日に2回まで睡眠を計測することができますので、もちろんお昼寝中に計測することも可能です。さまざまな生活リズムを考慮した上で、1日2回の計測が可能となっています。

 とはいえ、「90分以上の睡眠」が計測可能なラインとなっておりますので、「90分以上のお昼寝」であれば2回目の計測が可能ですね。

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睡眠学の世界的権威である柳沢正史教授が、今作の睡眠情報の監修を行っているそうです。公式サイトでは柳沢先生と学ぶ「睡眠の最新科学」も見れちゃいます。『Pokémon Sleep』公式サイトより

──『Pokémon Sleep』のリリース時に登場するポケモンは、何匹くらいになるのでしょうか? また、今後のアップデートでポケモンが追加される予定はありますか?

小杉氏:
 リリース時に登場するポケモンの数は、100種類以上います。そして、それぞれのポケモンに複数の寝顔が用意されていますので、総合的な「寝顔の数」はそれ以上になります。

 そして、アップデートに関しては運営を続けていく中で、どんどん新しいポケモンを追加していければと考えております。リリース時点では『ポケットモンスター 赤・緑』『ポケットモンスター 金・銀』に登場したポケモンが中心となっているのですが、今後はさまざまなタイトルや地方から登場させることができればと思います。

──今後のアップデートも楽しみです。本日はありがとうございました!(了)


 さてさて、『Pokémon Sleep』の体験レポートとインタビュー、お楽しみいただけましたか?

 個人的には「ポケモンの寝顔」にここまでこだわっているゲームであることが、やはり最大の驚きでした。こんなにガチガチにポケモンの寝顔にこだわっているとは思わなかった。普通に「ポケモンの寝顔をいろいろ見れる」だけで、十分すぎるくらい楽しみです。

 そんな『Pokémon Sleep』は、7月下旬にスマートフォンで配信開始予定!

 良い睡眠リズムを、捕まえよう!!

ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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