シリーズ作品がしきい値を超える難しさ
ここまでは「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」に僕がハマってしまった理由などを書いた。ここからは、本作を取り巻いている状況の難しさについて考えてみたい。
「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」は毎話放送の度にX(旧ツイッター)でトレンド入りしている。
既に盛り上がっているとも言えるのだが、友人に「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」がメチャクチャ面白いと伝えても反応がイマイチだったりする。
「へぇーそうなんだ?」と共感の相槌はあれど、一歩踏み込んで話を聞いてくる人は1人も居なかった。
その理由の一つに「シリーズ作品の壁」があると言っても過言ではない。
2015年にプロジェクトがスタートした「BanG Dream!」。
メディアミックス作品としては、既に10年近くの歴史がある。
アニメやゲーム、リアルバンド(担当声優によるライブ活動)。幅広い展開を行なってきたプロジェクトだけに、これから知る方にとって多少のハードルの高さがあることは否めない。
端的に言うと、新規ファンにリーチすることに限って言えば、「BanG Dream!」のブランドで損をしているとも言える。
テレビアニメは3期まで放送済み。映画やスピンオフまで合わせると、とにかくコンテンツ量が多い。
そんな歴史あるシリーズの最新作だけに、「これまでの作品を見ていない」だけで、興味の対象から外れがちだったりする。全部視聴するにはハードルが高いと思われてしまうためだ。
近年、人気になったアニメ作品を見てみると、新規IPが主流(リコリス・リコイル、ぼっち・ざ・ろっく!、推しの子など)だったりする。
一方で、シリーズ作品やナンバリングタイトルで大きく人気を博したタイトルに「機動戦士ガンダム 水星の魔女」がある。
水星の魔女はタイトルロゴ(機動戦士ガンダムよりも「水星の魔女」が明らかに視認性が高い)や女性主人公など、とにかく新規層に届けることを主眼に置いた制作、宣伝を行ったことで、新しい層を開拓した印象がある。
「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」は既存のバンドリファンに向けて、リーチするためにロゴの色こそは変更したものの(赤→青)、やはり「バンドリ!」のシリーズ作品というのが色濃く見える。
実際、「BanG Dream!」シリーズのファンは決して少なくない。そのファンに楽しんでもらうことが前提にはあるとは思う。
ただ、シリーズの未視聴者にとってシリーズの長い歴史は足枷になる。
これまでの作品にアンテナが立ってない状態で新作にだけ興味を示すのは中々のレアケースだろう。
それでも僕は声を大にして、表に出て伝えたい。
「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」はマジで面白い。
過去作を見ていないから見ないというのは、あまりにも勿体なさ過ぎる。僕自身過去のシリーズはほぼ見ていないが、本作にはガッツリとハマってしまった。
シリーズ作品だけに、過去作のキャラは時折出るが、物語のメインストリームには全く絡んでこない。
知らなきゃ知らないで、全く問題ない。実際、僕もこれまでのアニメはちゃんと見てないが、どっぷり迷子沼に肩まで浸かってしまっている。
「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」にハマった結果、遡って過去の作品を見た時に「このキャラクターってこの子だったんだ」と分かるくらいで丁度いいのだ。
人は選ぶ作品だが、とにかくハマる人には堪らない
最後に。
「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」は、苦悩と痛みを描いた作品だと僕は思っている。
各主人公に散りばめられたメタファーを紐解き、自分のことのように苦しくなる。
一方で、こうも思う。
そうした「苦悩と痛み」を持ったメンバーたちがどこに向かって進んでいくのか。
答えがない時代に生まれた作品が、どこに着地していくのか。
今はそれが楽しみで仕方ないのである。
2023年夏に生まれた超ド級の鬱作品、「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」。
「BanG Dream! It’s MyGO!!!!!」には、ド派手なアクションもなければ、ド派手な演出もない。
全くキラキラしていない。主人公たちのバンドによる練習シーンはあれど、ライブシーンすら9話時点で1回のみ。作品の本質を突いた魅力を言語化すること自体が難しい。
それでも面白い、とにかく面白い。
現代人が抱える苦労や苦難を、これでもかと盛り込みまくったキャラのリアリティがヤバいのだ。
そうした登場人物の日常をリアルに描き続けている様が、本当に心を掴んで離さない。
改めて、人は選ぶ作品だとは思うが、少しでも興味が出た方はチェックしてみて欲しい(頼む、3話、3話まで見てくれ…)
ドロドロ、ギスギスした本編と異なり、非常に爽やかなオープニングを紹介して、筆をおきたいと思う。