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『Marvel’s Spider-Man 2』は“黒いスパイダーマン”のバイオレンスなアクションが超気持ちいい! 従来通りの爽快感と新しさを両立したバトルはさすがの出来栄え

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 映画に出てくるスーパーヒーローになりたい──。それは子どものような、しかし確かに多くの人の胸の中にある願望だ。

 2018年にスタートした『Marvel’s Spider-Man』は、そんな夢をゲームの形で巧みに叶えた一作と言えるだろう。コントローラーを握れば誰でもスパイダーマンになれる。大都市ニューヨークをウェブ・スイングで駆け巡り、名だたるヴィランたちと戦いを繰り広げるゲームプレイは、まさに“スパイダーマンらしさ”に満ち溢れていた。

 だが、一度叶ってしまった夢にもはや夢はない。その一点でのみ、筆者は『Marvel’s Spider-Man 2』にかすかな不安を抱えていた。

 シリーズ作品として展開するためには何かしら新しい要素を取り入れることが求められるが、本作はあくまで「スパイダーマン」のゲーム。極端に言えば、いきなりマシンガンで敵を撃ちまくるゲームに路線変更するわけにはいかないという話だ。いや、マシンガンで敵を撃ちまくるスパイダーマンもいるかもしれないけど……。

 つまり『Marvel’s Spider-Man 2』は“スパイダーマンらしい”魅力を失うことなく、同時に新規性も獲得しなければならない作品なのである。皮肉なことに、これまでのシリーズ作品の完成度が高いからこそ、この課題の難易度もより高いものとなってしまう。

 しかし本作ではふたりのスパイダーマンを同時に登場させ、さらに片方にインパクト抜群な「シンビオート」の力を持たせることにより、このハードルを超えようとしている。本稿では10月20日(金)の発売に先駆け、アメリカ・ロサンゼルスにて行われた先行プレイイベントでのプレイフィールをお届けしていきたい。

文・取材/久田晴

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※記事内で紹介しているゲームプレイはイベント用に調整されたもののため、実際の製品版とは異なる場合があります。


「シンビオート」の力が気持ち良すぎて溺れそう

 目立つ新要素として気になるのは、やはりピーター・パーカーの新たな姿である“黒い”スパイダーマンのアクションだろう。結論から言うと、これがめちゃめちゃ気持ちいい。

 本作では4種類のアビリティをセットしておき、「L1ボタン+〇×△□」で発動する仕様を採用している。シンビオートの主なパワーはこのアビリティを通して活用するのだが、この演出がいちいちド派手で見映えが抜群。
 また、戦闘中のピーターのセリフがいちいち刺々しくなっており、従来の軽口を叩きながら戦うスパイダーマンとはまったく異なるダークヒーロー的な魅力を持っている。

 今回の体験会では、序盤からヴィラン「クレイヴン・ザ・ハンター」の配下である敵を相手に集団戦を繰り広げたが、囲まれた状況から全方位に衝撃波を放ったり、複数人を同時に持ち上げて地面に叩きつけたりといった強力なアビリティを使えるバトルは爽快感が抜群。もちろん従来に近い、ウェブやガジェットを使った軽快なアクションも健在だ。

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 また戦闘の基本システムとして「パリィ」が導入されている点も大きい。特定の攻撃はタイミングを合わせても回避ではダメージを受けてしまうため、スパイダー・センスのエフェクトやモーションを見極めてパリィを行う必要がある。
 この回避不可な攻撃はボスのみならず、一部のザコ敵も持っているため、シンビオートの強力なアビリティを持っていても緊張感は決して失われていない。

 そして体験バージョンの後半では、本格的なボス「リザード」との戦闘もお披露目。こちらが「パリィしなければいけない攻撃」と「回避しなければいけない攻撃」の両方を持ち合わせた難敵で、今回の先行プレイの中ではもっとも苦戦させられた。

 これはシリーズでも共通のシステムだが、回復リソースが敵を攻撃して溜める「フォーカスゲージ」に依存するため、防御がままならず攻撃のチャンスが掴めないとあっさり負けてしまうのだ。ただし“強すぎる!”と心折れるほどではなく、戦闘を有利に進められるギミックがフィールドに用意されていたりもする。

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 正面切ってのバトルと並行して、本シリーズの重要な要素となるのがステルスアクション。軽快に高所を確保して無音で無力化したり、ウェブをオブジェクトに当てて陽動したりといった基礎部分は受け継ぎながら、新たに組み込まれたのが「ウェブ・ライン」のシステムだ。

 こちらは足場から糸を伸ばし、移動できる範囲を拡張していく機能で、ステルス戦略をさらに柔軟に考えられるようになっている。伸ばしたウェブ・ラインからも新たにウェブ・ラインを作り出せるので、足場づくりの自由度は非常に高い。もちろん、それだけ高所から一方的にステルス状態を維持して敵を無力化できるということである。

 従来のシステムでは「乱闘するしかねえ!」と思わされるシチュエーションでも、発想によって切り抜けられる場面が生まれてくるだろう。

オープンワールドの探索はより“発見”の喜びを意識したデザインに

 シリーズの“スパイダーマンらしさ”を担保する重要ポイントのひとつが、オープンワールドで表現された街並みを縦横無尽に駆け巡る移動アクションだ。本作では単純にマップの規模が2倍ほどにまで拡張され、ニューヨークのクイーンズ区、ブルックリン区が追加。『スパイダーマン』シリーズファンには興味深いロケーションも用意されているらしい。

 ミッション中を除けばふたりのスパイダーマンは自由に切り替えられる。今回の先行プレイの中では操作感はふたりとも変わらず、スイング、ジャンプをはじめ、空中で華麗なポーズを決めるなど従来通りの爽快な三次元軌道が堪能できた。後述するインタビューによると、“操作していない方のスパイダーマン”にマップ中で出会うこともあるという。

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 移動面におけるひとつ大きな追加要素が、ウイング・スーツのような飛行アクション。一見すると滑空のように見えるが、見た目よりも上昇・下降の自由が利き、飛行をキャンセルしてすぐにスイングなどに切り替えることもできる。

 マップ中の各所には気流が用意され、高速移動や急上昇に活用可能。高層ビルのない海上等も非常にスムーズに移動できるようになっている。ミッション中でも活躍の機会が用意されており、今回の先行プレイではドローンの後を追い回すシチュエーションを体験した。

 また本作ではマップ中をドローンが飛んでいたり、謎のシグナルが表示されていたりと、より没入感の高い表現でアクティビティが配置されている。こちらも後述するインタビューで触れられている点だが、これはプレイヤーがマップ中で“発見”の喜びを味わえることを意識した設計のようだ。

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 戦闘・移動のどちらのアクションにしても、本作では従来の『Marvel’s Spider-Man』で育まれてきた爽快感を失うことなく、同時に新たな楽しみを模索している作品のように感じた。今回の先行プレイでは時間が限られていることもあって、特に探索面は軽めの手触り程度に収まってしまったが、確かな進化を感じさせられたのは間違いない。

 また現時点で深くを語ることは叶わないが、ピーターとマイルズ、ふたりの主人公によって織り成されていく物語も興味深いポイント。もちろん「ヴェノム」をはじめとする名だたるヴィランたちの登場も楽しみなところだ。次項に記すインタビューでは、軽くながらストーリー面についてもお聞きすることができたため、ぜひ目を通していただきたい。

Insomniac Games シニアクリエイティブディレクター・Bryan Intihar氏:インタビュー

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Bryan Intihar氏

──本日はよろしくお願いいたします。

Bryan Intihar氏(以下、Bryan氏):
 はい、よろしくお願いいたします。

──まずはゲームの基本的なところからですが、今作で特に目立つ要素として“黒い”スパイダーマンの登場があるかと思います。彼のアクションと演出について、力を入れたポイントをお聞かせください。

Bryan氏:
 はい、このスパイダーマンの素になっている「シンビオート」は、マーベル作品の中でも人気のキャラクターで、私たちはそのユニークな要素をゲームの中に盛り込みたいと感じていました。原作ではアクロバティックに動き回る、突飛な要素を持ち合わせた存在として描かれていますが、本作に採り入れるにあたっては「変幻自在」というテーマをひとつ軸としています。

 ゲーム内ではプレイヤーの皆さんに、彼の持つ力強さを存分に感じていただけると思います。また先行プレイの中でも感じていただけたかもしれませんが、ピーター本人の性格への影響も現れていますので、そちらにも注目していただきたいですね。

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──ふたりのスパイダーマンを切り替えながらゲームを進めていくというのもひとつ大きな変化と思いますが、オープンワールドを探索する中で「操作していない方のスパイダーマン」に出会うようなことはあり得るのでしょうか?

Bryan氏:
 もちろんそこも力を入れたポイントですし、できれば実際にプレイして味わっていただきたいところでもありますね(笑)。ゲーム内にはピーター専用のミッションもあれば、マイルズ専用のミッションもあり、一方で彼らのどちらでも攻略できるコンテンツも用意されています。

 また「操作していない方のスパイダーマン」に出会う場面もありますよ。例えばピーターを操作しているとき、通報を受けて街中の事件を解決しに向かったら、もうそこにはマイルズがいた……なんてこともあり得ます。

──今作は新世代機であるPS5のみでの展開になるわけですが、技術面の発達によって新しくできるようになった表現やアクションはありますか?

Bryan氏:
 そうですね、移動速度やふたりのスパイダーマンを瞬時に切り替えられるというのはPS5プラットフォームでの進化を特に感じていただけるポイントだと思います。その他にも、分かりやすい部分ですと先行プレイにも現れたボス「リザード」とのバトルなどが挙げられるのではないでしょうか。

 「リザード」とのバトルは最初に地下で戦い、途中で地上へ逃げ出したリザードを追い回し、さらにその後は……という形でいくつかのパートに分かれて構成されています。地上マップと地下マップをスムーズに切り替え進行する演出をはじめ、ライティング、レンダリングなどもふくめて、PS5というプラットフォームでなければ作れなかった作品だと思います。

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──PS5ならではというと「DualSense」コントローラーのアダプティブトリガーやハプティックフィードバック、また3Dオーディオ機能なども思いつきますが、これらについてはどのようなギミックが用意されているのでしょうか。

Bryan氏:
 おっしゃる通り、それらの機能も本作では活用しています。シンビオートの力を使った時の感触を振動で表現したり、といった形ですね。

 3Dオーディオにせよ、コントローラの機能にせよ、私たちがもっとも重視しているのはプレイヤーにとって没入感のある体験を作り上げることです。皆さんが「スパイダーマン」としてさまざまな体験を味わえるよう、さまざまな要素を用意しておりますので、ぜひご期待ください。

──ありがとうございます。外から見ていても『Marvel’s Spider-Man』シリーズは高い人気を獲得しているようにうかがえますが、これまでのシリーズ作品を通じてプレイヤーからの反応はどのようなものだったのでしょうか。また、その声を聞いて本作に導入した機能や要素があれば教えていただきたいです。

Bryan氏:
 我々はファンの皆さんの反応をとても細かくチェックさせていただいています。これまでのシリーズでは移動や戦闘、スケールの大きさなどを中心に良い反応をいただいていましたので、それらの期待に応えることは欠かせませんでした。一方でPS5の能力をフルに活用したいという想いもあり、さまざまな新要素を採り入れています。

 本作の開発にあたっての大きなテーマとしては「自分で探索でき、マップを冒険することで面白い気づきが生まれるような作品」になることを意識しています。敷かれたレールの上を走っていくような体験になることは避けたかったんですね。街中にシンボルが映し出されていたり、ドローンが飛んでいたりと、よりプレイヤーの皆さんが能動的に探索を楽しめるよう表現方法も工夫しました。

 またボス戦のスケールも大きくレベルアップさせようとしていまして、先ほども言及した「リザード」戦では地下で激しいバトルを繰り広げた後、オープンワールドを舞台に彼を追いかけまわすように、まったく違うゲームプレイがひとつのボス戦に組み込まれています。

 本作では従来のゲームプレイもしっかりと受け継いでいますが、それだけでは攻略できないようなバランスとなっています。プレイヤーの皆さんにはぜひ、新たな要素をフルに活用して強力になった敵たちに立ち向かっていただきたいですね。

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──なるほど。これはまだお話できる点が少ないかとは思いますが、本作ではストーリー面もかなり注目すべきポイントだと思います。本作における、ストーリー上での大きなテーマのようなものがあれば教えてください。

Bryan氏:
 キーワードは「バランス」ですね。このバランスというのは、ふたりのスパイダーマンそれぞれが「マスクをつけたヒーローとしての自分」「マスクをしていない素の自分」の人生のバランスをどう取っていくか、というのが大きなテーマになっています。

 まずピーターは、メイおばさんが亡くなったことにより、いきなり自分が大人にならなくてはいけなくなってしまいました。家のローンの返済をどうするか、というような現実的な問題にも彼は直面することになります。一方のマイルズは父親の仇であるマーティン・リーが戻ってきたことによって、父を亡くしたときのことを否応なしに思い出してしまいます。

 本作ではふたりの主人公が過去に引きずられながらも、自分の中でどう区切りをつけて未来を向くか、というところが物語の軸となっています。バランス、という単語を使って表現するのならば「過去と未来のバランス」といったところでしょうか。

──ありがとうございます。最後の質問になりますが、日本ではいわゆる「東映版スパイダーマン」がかねてから人気を得ています。中でも象徴的なのが巨大ロボット「レオパルドン」の存在なのですが、開発チームの中でレオパルドンをゲームに登場させたい、というような声はあるのでしょうか?

Bryan氏:
 えー……はい、私もレオパルドンの存在は聞いたことがあります。残念ながら、現状の今作にレオパルドンは登場しません。ただし「今後も絶対出てこない」とは言い切れませんね(笑)。

──少しだけ、未来に期待しておきます(笑)。本日は貴重なご機会をいただき、ありがとうございました。

Bryan氏:
 ありがとうございました。(了)

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ライター
1998年生まれ。静岡大学情報学部にてプログラマーの道を志すも、FPSゲーム「Overwatch」に熱中するあまり中途退学。少年期に「アーマード・コア」「ドラッグ オン ドラグーン」などから受けた刺激を忘れられず、プログラミング言語から日本語にシフト。自分の言葉で真実の愛を語るべく奮闘中。「おもしろき こともなき世を おもしろく」するコンピューターゲームの力を信じている。道端のスズメに恋をする乙女。

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