アクションゲームの種別(タイプ)のひとつに「ラン&ガン」というものがある。直訳すれば「走って撃つ」だろうか。銃火器に象徴される遠距離型の武器を撃ちながら敵を倒しつつ、ステージを駆け抜けていくアクションゲームである。
シューティング性の高さもあってか、アクションシューティングとも称せる。
ラン&ガンの代表的な作品と言えば、先日の新作発表が記憶に新しいKONAMIの『魂斗羅(コントラ)』シリーズ、”メタスラ”の愛称で知られるSNKの『メタルスラッグ』シリーズが挙げられる。
近年はインディーゲームでもラン&ガンの新作が多数誕生している。その中でも、1930年代のカートゥーンを忠実に再現した手描きグラフィックを売りとする『Cuphead(カップヘッド)』は、インディーゲームのラン&ガンにおける代名詞と言ってもいいだろう。
それ以外にも前述の『魂斗羅』に強い影響を受けているのが分かる『Blazing Chrome』、武装したガチョウが戦うという衝撃の設定が異彩を放つ『マイティ・グース』といった個性的な作品が誕生している。
そんなインディーゲームのラン&ガンにまたひとつ、戦術的なゲームシステムを売りとする新作が発表され、東京ゲームショウ2023年にプレイアブル出展された。
その新作の名は『METAL SUITS(メタルスーツ)』。「メタル」を名乗る時点で、どこか“漢気”を感じさせるところがある。また、出展前にもプレイ模様を紹介するスクリーンショットがSteamなどで公開されている。
そこにはラン&ガンに欠かせないものと言ってもいい大爆発も描かれており、これは非常に“熱い”ものになっている予感がする……ということで、現地にて体験した。
そして実際に遊んでみたところ、なかなかテクニカルな作りになっていた。その内容をレポートする。
取材・文/シェループ
さまざまなスーツを身にまとい、凶暴なエイリアンたちを一掃しろ!
改めて『METAL SUITS(メタルスーツ)』とは、2Dピクセルアート(ドット絵)で全編描かれた横スクロールのアクションシューティングゲーム……ラン&ガンである。プレイヤーはサイボーグ戦闘マシン「ケビン」を操作し、惑星「ニューアース」を侵略したエイリアン「ゴリダ族」を一掃すべく、さまざまなステージを舞台に彼らとの熾烈な戦いを繰り広げていく。
基本はステージクリア型で、ゴリダ族を倒しつつ、時に罠をかい潜りながら出口(ゴール)を目指す形となる。ステージは複数のエリアから成り立っており、最後のエリアは出口への到達ではなく、ボスを倒すことがクリア条件になっている。
なお、プレイヤーが操作するケビンは敵の攻撃、罠(トゲなど)を1回でも受ければ一瞬でやられてしまう。ダメージ制は採用されていないのだ。やられてしまうと、画面左上に記された残機が1つ減る。それと共にその場へと復活し、続きから再開できる……のだが、それは残機が残っていればの話である。
もし、ゼロの時にやられてしまえば……お察しください。この辺りはラン&ガンの代表的作品として前述に挙げた『魂斗羅』シリーズ、『メタルスラッグ』シリーズをオマージュしている感じだ。
ただ、そこにひと捻り加える要素がタイトルにも冠された「メタルスーツ」。これを入手すると画面左上に耐久ゲージが現れ、ケビンは敵の攻撃を耐えしのげるようになる。
同時にスーツに備わった武器……ガトリングによる機銃掃射、火炎放射などが可能に。このスーツごとの武器と攻撃に耐えられる特徴をフル活用し、ゴリダ族をガンガン一掃していくというのが本作の醍醐味となっている。
しかし、ひたすら力で押していくと痛い目に遭う。というのも、各スーツに備わった武器には使用制限があって、撃つたびに左上に表示されたゲージが減少していく。しかも、このゲージはなんとケビンの耐久力も兼ねている。つまり、武器で攻撃すればケビンが敵の攻撃に耐えられる限界値が下がる。逆にケビンが攻撃を受ければ、武器の使用回数も減る!
そうした仕組みから、戦術的に立ち回ることが試されてくる。スーツがあれば豪快な攻撃もでき、一瞬でやられてしまうことも防げる。けれど、頼りすぎるとケビンが危うくなる。そして、使い所を限定しすぎても、ダメージを受けたりすれば使用回数が減る。それらのデメリットを考慮しつつの攻略がもどかしくありながらも面白く、高い戦術性を感じさせるゲームバランスになっている。
ステージの地形を破壊するとイイことが……?
また、本作はステージの一部地形も武器で破壊可能。それによって隠しアイテムが見つかったりもする。しかも、隠されたアイテムの中にはケビンの残機を増やす「ハート」もあるため、積極的に破壊すればその分、生存率も上がる。
もちろん、あえて寄り道せず前進するのも選択肢のひとつで、それによって難易度が上下する調整が図られているのも面白いところだ。
肝心の難易度も攻撃を受ければ一瞬でやられるシビアさこそあるが、敵のゴリダ族は攻撃前に予備動作を挟んでくるため、急に攻撃され、なすすべがないまま敗北……みたいな初見殺しは起きにくい。無限に湧き続けたり、急に背後から現れる不意打ちもなく、ほとんどが定位置に待機して攻撃してくるため、それらを覚え、攻撃のクセを頭に叩き込めばノーミス(ノーダメージ)での全滅も夢ではない。この辺りのパターンを組めば盤石な勝ち筋が見える調整も、アクションゲーム好きならばグッとくる手応えを得られるはずだ。
そして、ラン&ガンといえば爆発である。大爆発である。花火大会さながらの過剰な爆発あってこそのラン&ガンである。なぜならば、前述の象徴的な作品として挙げた名作たちもこぞって大爆発に次ぐ大爆発だからだ!
かく言う本作はどうかと言えば、申し分ないぐらいに大爆発を見せてくれる。自重なしにドカンドカンだ。ゴリダ族もスーツの武器ごとに違ったやられ様が用意されているほか、攻撃を当てた時には「バシッ」と気持ちのいい音が鳴り響くので手触りも申し分ない。
細かいところでも、スーツはパンチで戦う近接タイプもあったりと、遠距離型だけではないのも面白い。その遠距離型にもなぜかギターがあって、意外な使い勝手と攻撃力の高さで笑わせてくれる。
会場では製品版発売に向けたフィードバックも随時募集中!
今回の試遊バージョンでは体験できなかったが、本編とは別にオリジナルのステージを作成できる「マップエディタ」も用意。プレイヤーが独自に作成したマップで、自分だけのスッキリ爽快、時に戦術的なゲームプレイが楽しめるとのことだ。
ラン&ガンと聞いて、銃火器をぶっ放しつつ、ステージを駆け抜けるという爽快なゲームプレイを想像する視点から見ると、本作の戦術的かつパターン化された構成にはやや違和感を覚えるかもしれない。
しかし、個性に富んだスーツを使いこなしながら敵を一網打尽にする快感、堅実に立ち回ればノーミス攻略も可能な練り込みの深さを感じさせるゲームバランスは、アクションゲーム好きには見逃せない魅力がある。
操作性もよく、思うがままにキャラクターを動かせる作りも素敵な本作。「戦術的なラン&ガン」という特色に惹かれるなら、ぜひお試しいただきたい新作だ。派手な爆発を見たいと渇望する爆裂魂を内に秘めた人も要チェック。
なお、本作は2024年6月にPCのほか、コンソール(Nintendo Switch、PlayStation 5|4、Xbox Series X|S)での発売が予定されている。
開発のEggtartによれば、製品版発売に向け、試遊バージョンを遊んだプレイヤーからのフィードバックを絶賛募集中とのこと。現地のブースでは開発メンバーも常駐しているので、実際に遊んでみて気になった箇所はドシドシお伝えしていってみてはいかがだろうか。