編集部注釈:
この記事は、『1943』や『超魔界村』などレトロゲームにぞっこんという謎の高校一年生ライターが執筆を担当。2016年、10歳のころに小学生でプレイし感銘を受けたという『ファイナルファンタジーIII』について、当時を振り返りつつレビューをしてもらっています。※実際にプレイしていたのは『ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ』版です。記事内の画像や動画はピクセルリマスター版を使用しています。
僕が『ファイナルファンタジーIII』(以下、『FF3』)に出会ったのは小学生のころ。ちょうど『妖怪ウォッチ2』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』、『スプラトゥーン』などが流行りに流行っていて、ほとんどのゲーム好きな子どもが遊んでいたであろう時期です。
でも、当時の僕はひねくれにひねくれていました。『妖怪ウォッチ2』や『スマブラ』を誕生日プレゼントで買ってもらっていたのに、「流行りに乗るのはダサい」と言いながら、『FF3』をプレイしていたのです。
『ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ』が発売され、気になった親が買ってくれたのがきっかけでした。
ゲームのプレイ時間が制限されていたので家で自由に遊ぶことは出来ませんでしたが、テレビを自由に使ってもいいと言ってくれたおばあちゃんの家に毎週のように通い詰めて、『FF3』以外にも『エキサイトバイク』、『アトランチスの謎』などを遊びまくっていました。
あのころに握っていたコントローラはいま遊んでいるゲーム機のものと比べるととても小さくて、よくあそこまで遊んでいたなと思います。
それぐらい、当時の僕は手のひらサイズの『ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピューター』に収録されているゲームたちに、両手を広げても抱えきれない面白さを感じていたのだと思います。その中でも、やはりぞっこんになったタイトルのひとつが『FF3』でした。
※ピクセルリマスター版『ファイナルファンタジーIII』の公式トレイラー。
『FF3』が発売されたのは1990年4月27日。2007年生まれの僕がそうであるように、いま学校に通っている読者の方にとっては自分が生まれるよりも前の作品だと思います。
僕からすると17歳も年上のビデオゲーム。でも僕は小学生のときに、ものすごい衝撃を受けたのです。
インターネットで調べると、ファミリーコンピュータのゲームはいまの写真一枚ほどの容量しかない作品もあると聞いて、「本当にそんな容量にゲームを詰め込めるのだろうか?」と疑問に思いながらこのゲームをやっていました。
でもそこに広がっていたのは、限られた色の数で戦闘時の背景の色まで利用して描き切った美しいドット絵や、何度聞いても聞き飽きないBGM。現代のゲームと比べると見劣りしない、いやそれどころか僕が現在でもいいゲームと思える要素を全て持っている作品だったのです。
文/くろすけ君
『ファイナルファンタジーIII』のドット絵の魅力にドはまりする!
『FF3』のドット絵は本当に凄い。僕は当時『FF5』もプレイしていて、『FF6』までのさまざまなドット絵を集めた画集のような書籍である『FF DOT.』という書籍を購入するくらいに、ドはまりしていました。
『FF3』のドット絵で僕が一番好きなのは、ハインの城のボス「まどうしハイン」です。
「まどうしハイン」は骸骨の魔導士で、ローブのような衣装を着ています。プレイ当時はあまり難しいことは考えず、ただただ「こいつカッコいいなあ!」くらいの気持ちでプレイしていました。
『FF DOT.』に収録されていた渋谷員子さんのインタビューによると、骸骨の目やローブのしわの部分は、背景の黒色を使って表現しているそうです。引き締まるようなカッコいい骸骨のドット絵に、そんな工夫がされていると知ったときには、物凄く感動して「ブレクガ」を掛けられたかのように固まってしまいました。
ほかにもたくさん魅力的なドット絵があります。白魔導士のデザインを踏襲しつつも猫耳がついてさらに可愛くなっている「導師」。死んだときに帽子だけになってしまって哀愁が漂ってくる「魔人」。ドット絵自体が豆のように小さくなっているにも関わらず可愛げを残してしっかりと描写している「小人状態の主人公たち」。
どのドット絵もプレイするときに、わくわくする気持ちを増幅してくれるんですよね。
また、オーディンに「ざんてつけん」を使われたときの、中央から綺麗にドットがずれていく敵モンスターの演出など、語りだしたキリがありません。
すべてのドット絵について話したくなるくらいに、『FF3』のドット絵は魅力的だったんです。
本格的なジョブチェンジシステム。不便も乗り越え試行錯誤の日々
わざわざ説明する必要はないと思うのですが、『FF3』には「ジョブチェンジ」を前提として進んでいく場面がたくさん存在しています。
「ジョブチェンジ」というのはその名のとおり、キャラの職業を自由に変える事が出来るシステムです。たとえば「戦士」から「黒魔導士」にしてみたり、「モンク」から「白魔導士」にしてみたり、職業の変更によって使えるアビリティが変わってきます。このゲームになくてはならないシステムです。
たとえば攻撃力と防御力がともに「1」になってしまう小人状態で進むせいで、全員魔法系のジョブを使わざるを得なくなってしまう「ネプト神殿」。バリアチェンジを活用してくるため学者の「みやぶる」を活用して進めていく「まどうしハイン」戦。強力な全体攻撃を連発してくるため竜騎士の「ジャンプ」で相手の攻撃を躱しながら攻略していく「ガルーダ」というボス。
さまざまなジョブに輝く場面が存在しており、当時の僕は「こんなにも昔のゲームなのにここまで計算されて作られてるのかあ」と、ただただ感心していました。
そういった、ストーリーでほぼ必須と言われるジョブのアビリティ以外にも、個性的なものが多く、使って試していくだけでも楽しいのです。
今作最強の火力を出すことができる忍者の「なげる」。溜めすぎると何故かじばくしてしまう空手家の「ためる」。最初は弱くとも鍛えあげるといきなり強くなってくる「玉ねぎ剣士」などなど、個性的で面白いジョブがたくさんあります。
その場その場でいろいろ試行錯誤して、ジョブやそのアビリティについて考えるのはとても楽しかったですね。
なおオリジナルのファミコン版はジョブチェンジする時に「CP」(キャパシティ)と呼ばれるポイントを消費しないとジョブチェンジ出来ない仕様で、ほかにも戦士系のジョブからジョブチェンジするときにMPが全て0になってしまいます。いま思うと、ものすごく不便なポイントがたくさん存在していました。
でも当時の僕は、そういった不便に思えるシステムすらも楽しもうとしていました。「CPが足りない?ちょっと稼いでくるかあ」とか「MP0になるし宿屋の近くでジョブチェンジしよう」とか、少し大変でもジョブをいろいろ試してみたいという好奇心が勝っていました。
『FF3』をプレイしたことで、その後も自分はレトロゲームを遊び続けることになるのですが、そういった不便を乗り越えて面白い部分を遊ぼうとする姿勢は、このときに学んだのかもしれません。
ときに泣いてときに応援された。まったく聞き飽きないBGM
このゲームにはさまざまな魅力がありますが、「BGM」もそのひとつではないでしょうか。
「悠久の風」は僕がもっとも気に入っている曲のひとつです。
「悠久の風」はフィールド上で流れるBGMで、ゲームの最初の村である「ウルの村」から出たプレイヤーが初めて聞くことになります。
ワールドマップに初めて出たときの、ワクワクしながらもドキドキするような、何とも言葉に表しづらい気持ち。聞くたびに、その気持ちを思い出します。神秘的ながらもじっくりと気持ちを高揚させてくれる曲なのです。
けっして激しい曲調ではないので、『FF5』の「ビッグブリッヂの死闘」など、聞くとすぐ気分がハイテンションになったりはしないのですが、じっくり聞いていくとじわじわと気分をあげてくれるのが本当に最高なんですよね。
「エンタープライズ空を飛ぶ」を聞き逃がせません。
このBGMは一部を除いた飛空艇に乗ったときに流れるBGMです。前述の「悠久の風」とは違い、疾走感のあふれる曲になっていて、「飛空艇に乗ってさあ行くぞ!」と思わせてくれるような曲調になっているのが特徴です。
いままで徒歩で浮遊大陸を練り歩いていたのに、いきなり空を物凄いスピードで駆け抜けていく飛空艇と相まって、少年心に突き刺さるようなカッコよさがあるのです。
同じく飛空艇のBGMとしては「巨大戦艦インビンシブル」が存在しています。こちらの楽曲も同じく飛空艇との組合わせで物凄くカッコよくなっているのですが、聞けるタイミングが物語終盤のため、序盤から聞くことができノーチラスでも聞ける「エンタープライズ空を飛ぶ」の方が耳に残っている人も多いと思います。
ほかにもチョコボに乗ったときの疾走感とともにチョコボの可愛さを存分に表現してくれているような「チョコボのテーマ」。どちらも戦闘のピリついた空気を表現してくれているかのような曲である「バトル1」と「バトル2」などなど、素晴らしい楽曲はたくさん存在しています。
このまま話しているとすべてのBGMに感想を書いていった怪文書が完成しそうなのでここで留めて置くのですが、ほかのBGMもずっと聞いていられるような曲ばかりでした。
「不便」すらも楽しんでプレイできた!レトロゲームって「懐かしい」んじゃなくて「今でも面白い」
ところで、『FF3』について話しているのに、なぜストーリーのことに触れていないのかと思った読者もいるかもしれません。じつは僕はRPGでは戦闘が好きで、戦闘ばかりしていたいというのもあって、申し訳ないのですがストーリー部分はけっこう読み飛ばしがちだったりします。
この記事は小学生のころのプレイ当時を振り返ってレビューしているので、いまからプレイして感想を追加で書くのを辞めました。
ただ、『FF3』が僕のレトロゲームに対する熱を作り出したといってもいい作品なのは間違いない。いうなれば「ボムのかけら」のように燃え上がるようなゲームでした。
いまのゲームと比べると不便なところがたくさんあるのではないかと思います。先述したCPの仕様や、戦士系から魔法系ジョブにチェンジするとMPが0になる点。絶対に持っておかないといけないアイテムがたくさんあるのに、アイテム枠はカツカツ。いま同じシステムで別の名前のゲームを出したら、ネットで古臭いとか酷評されているのではないかと思います。
でも、小学生の遊びに対する探究心というのは、物凄いものだと思います。なぜなら、そういう不便な仕様も僕は遊びつくそうとしていたんですよね。
「遊び」というものを制限されがちな小学生だからこそ、少しの時間で最大限遊び尽くそうとしていたのかもしれません。『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』のバグに遭遇したとき、「バッカスの酒」を飲んだかのように真っ赤に怒っていたいまの僕に見習って欲しいところです。
当時の僕が『FF3』をしていたのは周りが『スプラトゥーン』や『スマブラ』などをしていたことに対する逆張りなどもあったのかもしれないのかもしれません。
いまも当時もなんだか、ただただ流行りに乗るのは嫌だという気持ちが、正直に言えばあったのです。
でも、この『FF3』をしたお陰でレトロゲームに対して関心を持ち、それが高じてこの記事を書いているのかと思うと、ひねくれて逆張りをしていて良かったのかもしれません。
そう思わせてくれた『FF3』と、ここまで読んでくれた読者の方達への感謝で、記事を締めさせてもらおうと思います。