ゲームのサービス開始から3周年を目前に控え、ますます波に乗る『ウマ娘 プリティーダービー』(略称:『ウマ娘』)。音楽特番『2023 FNS歌謡祭』にウマ娘たちが出演して番組司会の相葉雅紀さんと「キミのアイバが!」と熱唱したり、武豊騎手とC.ルメール騎手がトレセン音頭に合わせてファイヤーナイフダンスを踊るCMが放送されたりと、その名前を聞かない日はないぐらいお茶の間に定着している。
そんな『ウマ娘』にとって初となるアリーナツアー「ウマ娘 プリティーダービー 5th EVENT ARENA TOUR GO BEYOND!」が2023年から2024年にかけて開催中。同ツアーは公演ごとに異なるテーマを掲げ、セットリストも大幅に組み替えることで、それぞれのウマ娘の魅力を昇華するという制作チーム&キャストのこだわりが詰まった構成も話題となっている。
2月3日(土)、2月4日(日)に東京・有明アリーナで開催された第3公演『YELL』のテーマは、ズバリ“ファンやトレーナー、ウマ娘どうしがお互いに励まし合い輝く姿”を描くライブ。2月4日に開催されたDAY2では、テーマを体現するような温かく感動的なステージが形作られた。
文/原 常樹
2023年7月より始まった5thイベントもいよいよ第3公演。憧れや希望に向かって走り出す理由と初期衝動をウマ娘たちが見事に表現した横浜公演「WISH」、そして、挫折や敗北すらも力にして諦めないで歩んだメンバーを軸にした名古屋公演「GAZE」からバトンタッチを渡される形で、東京公演「YELL」の幕が開く。
出走直前ウマ娘レポート、トレーナー役声優陣の登場。出走前からボルテージは最高潮、そして24人のウマ娘が揃い踏み
まずは実況役の明坂聡美さんによる出走直前ウマ娘レポートだ。この日、明坂さんの直撃取材の対象となったのは、髙橋ミナミ(エルコンドルパサー役)さんと徳井青空(テイエムオペラオー役)さん。普段、プロレスの興行場所としても知られる有明アリーナでの開催ということで、まるで漫才のようなノリで怒涛のプロレスネタを詰め込んでくる。これには呆気に取られるトレーナーもいたことだろう……。しかし、ライブ前のトレーナーの緊張をほぐす、仕事ぶりとしてはこれ以上ない匠の業。明坂さんの「みなさんはプロレスもウマ娘も愛してください」というコメントも見事にオチをつけていた。
3人が温めた空気を引き継いだのは、シークレットゲストの二人。そう、トレーナー役の沖野晃司さんと、アニメ『ウマ娘プリティーダービー ROAD TO THE TOP』(以下、『ROAD TO THE TOP』)で沖田トレーナー役を演じた土田大さんだ。
アニメにおいて、献身的にウマ娘に寄り添い、彼女たちの夢を支えていた両トレーナーに「ウマ娘たちへのせいいっぱいのエールをお願いします!」と言われてしまっては応えないわけにはいかない。覚悟をはらんだ空気がアリーナを満たすなか、いよいよ出走のときがやってくる。
1曲目:「Comeback Story V」
アニメ第1期の放送から5年という節目のタイミングで発表されたこの曲は、スタイリッシュでクールなEDM。ステージには24人のウマ娘たちがズラリと並び、自己紹介も挟みつつ、その歌声を響かせていく。
楽曲の合間にはウマ娘たちからひと言ずつコメントも。「お前らの心の立体パズル、全面揃えてやるから覚悟しろよ!」という上田瞳(ゴールドシップ役)さんのコメントに、アニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 3』(以下、アニメ第3期)の第3話の名場面を思い出し、たぎったトレーナーも多かったはず。
そして、目を引いたのがウマ娘たちの着用している新衣装「Notes of Grandeur」。鮮やかで高貴な赤色を基調としており、MCで「踊るとビューンとなびくんですよ!」と今泉りおな(ヤマニンゼファー役)さんがコメントするように白いティアードスカート状の背部も美しい。なお、この今泉さんの横で藤本侑里(ジャングルポケット役)さんがせっせと手で風を送っていた姿にキュンと来た方もいたはず……。
そんな藤本さんはこの日のライブが、『ウマ娘』大型イベントでの初出走。舞台が始まる前は緊張して泣いていたそうだが、水を持ってきてくれた中村カンナ(ナリタトップロード役)さんを始め、ほかの出走者たちに温かく支えてもらったそうだ。ゴールドシップ役の上田さんに至ってはハグまでしてくれたそうで、このことを暴露された上田さんが「好感度上がるからやめろって!」とゴールドシップさながらの照れ方をしていたのも微笑ましい。
衣装にはそれぞれのウマ娘にちなんだ細やかな意匠も施されており、髙橋ミナミ(エルコンドルパサー役)さんはマスクを被っていたり、Machico(トウカイテイオー役)さんは不死鳥を連想させる髪飾りをつけていたりと眺めているだけでまったく飽きない。とりわけ、「YELL」という公演タイトルにふさわしい出で立ちだったのが佐伯伊織(キングヘイロー役)さん。ゲームでもおなじみの応援団バージョンとして、髪から白いハチマキをなびかせながらパフォーマンスを披露していた。見ているだけで勇気をもらえるような、その風格は一流と呼ぶにふさわしいだろう。
2曲目:「Ms. VICTORIA」
続けて披露されたのが「Ms.VICTORIA」。ゲームにおいてはチャンピオンズミーティングの栄冠を讃える楽曲で、その突き抜けるような疾走感は聴く人の心をがっしりと掴んで離さない。
この日のステージでは疾走感はそのままに、山根綺(ダイタクヘリオス役)さんや、キングヘイロー役の佐伯さんがどっしりとした安定感で楽曲の基礎を形作る。ラスサビでは早くも金色の紙吹雪が舞うなど、のっけからクライマックスかと見紛うほどの熱量だった。
3曲目:「世界は僕らの言いなりさ」
続いて、2017年4月にリリースされた「STARTING GATE 5」より「世界は僕らの言いなりさ」。1stライブ以来、5年ぶりに披露となる楽曲だ。センターを務めたのは、徳井青空(テイエムオペラオー役)さんで、エルコンドルパサー役の高橋さんと、ゴールドシップ役の上田さんが両サイドをがっちりと固める。原曲はメジロマックイーン役の大西沙織さんが歌っていたが、その代役を縁の深いウマ娘を演じる上田さんが務めるというチョイスも心憎い。
背景の大型スクリーンに、実写のグッズ(テイエムオペラオーのフィギュアなど)を主体にした映像が映し出されるなど、ビジュアル面の演出も独自性全開。我が道を突き進むテイエムオペラオーのセンター曲にふさわしい景色といえるだろう。
4曲目:「winning the soul」
秋奈(ドゥラメンテ役)さんのナレーションから始まり、大型スクリーンにアニメ第3期での激闘の歴史が映し出される。ここで披露されたのは、クラシック三冠を象徴するような歌詞が散りばめられたハードロック「winning the soul」。歌うのはもちろん、秋奈さん、矢野妃菜喜(キタサンブラック役)さん、鈴代紗弓(サトノクラウン役)さんと、アニメで三冠を競った顔ぶれだ。
フレイムボールが次々と立ち昇る演出に加え、ズシリと響くような3人のボーカル。拳を突きだしたり、ハイキックをくり出したりと、3人のパワフルな一挙手一投足に視覚と聴覚を釘づけにされてしまう。なんというカッコよさだろう……。
5曲目:「本能スピード」
序盤からセットリストにとてつもない熱量の楽曲が並ぶDAY2のステージだが、休ませてはくれない。「本能スピード」は曲名そのままにスピード感を前面に押し出したトランス曲だ。
長谷川育美(ミホノブルボン役)さんらのスタイリッシュな歌唱によって楽曲の持ち味を出しつつも、この日のステージには石見舞菜香(ライスシャワー役)さん、井上ほの花(アストンマーチャン役)さんといったかわいらしい声質のウマ娘たちも参加。キュートとクールが融合したそのパフォーマンスには、彼女たちの限界を超えた先にある可能性がにじんでいたようにも感じる。
6曲目:「L’arc de Gloire」
ゲームの育成ストーリー『Reach for the stars プロジェクトL’Arc』でもおなじみの「L’arc de Gloire」。前人未到の勝利を掴もうと、たとえそこが走り慣れない異国の血であろうとも果敢に挑むウマ娘たちの強い意志と足跡を感じる凱歌だ。
この曲でステージの中心に立ったのは、秋奈さんと髙橋さん。そのほかの顔ぶれを見てもわかるように、凱旋門賞とは縁の深いウマ娘たちばかり。そのステージは一大叙事詩のように感じられるほど壮大。神聖なコーラスは息を呑むことさえ忘れさせる。
Remixバージョンの楽曲と歌声でウマ娘たちの魅力を多面的に引き出すスペシャルコーナー「ぱか☆アゲ↑ミックス」
SPコンテンツ:ぱか☆アゲ↑ミックス コーナー
まるで大逃げではないかと思えるほどに、前半からハイペースで畳みかけてきたDAY2のステージだが、ここでようやくライブは一段落。チルタイムとばかりに、ダイタクヘリオス役の山根さんによるミックスコーナーが始まる。
今回の相方は、舞台『「ウマ娘 プリティーダービー」~Sprinters’ Story~』(以下、舞台『ウマ娘』)を共に走り抜けた“ゼファっち”ことヤマニンゼファー役の今泉さん。パリピとは対極的な印象のゼファっちだからこそ、「YEAH~!」と叫ぶ姿が新鮮かつ愛くるしい。
なお、このコーナーはスマホなどで自由に撮影可能という、まさかのレギュレーション。来場者にとってこんなにうれしいサプライズはないが、スマホでの撮影とペンライトを振る作業を同時にこなすのはやはり大変そう……。それでも多くのトレーナーが果敢にチャレンジしているところに愛を感じてしまう。
楽曲はキャラクターソングを中心にまとめつつ、ラストは「メジロ讃歌 remix」。「永い歴史の先で 今を駆けろ」と荘厳な歌詞が響くなか、今泉さんはどこからともなく取り出した長いブレードを指揮棒のように振り回してテンションを上げていく。普段は春風のように穏やかな彼女が放つ、パリピ瞬間風速に圧倒されたトレーナーも多かったのでは!?
7曲目A:ミッドナイト・エピローグ (Remix Ver.)
撮影タイムが終了してもミックスコーナーは終わらない。ここからはライブ形式でRemix Ver.の楽曲が続く。まずは「ミッドナイト・エピローグ (Remix Ver.)」だ。
田辺留依(ロイスアンドロイス役)さんの艶やかな歌声と、脳がとろけそうになるぐらいほんわかとした井上さんの歌声とのコンビネーションは絶妙。夏吉ゆうこ(シュヴァルグラン役)さんと、奥野香耶(ヴィルシーナ役)さんも息ぴったりのパフォーマンスで、そこに芯の強い魅力的な真野美月(サクラローレル役)さんのボーカルが加わることで、深みのあるステージに仕上がっていた。
7曲目B:LIKE THE WIND (Remix Ver.)
CD『ウマ娘 プリティーダービー WINNING LIVE 08』よりヤマニンゼファーのキャラクターソングも披露。ダンサー娘たちのバレエ調の振りつけも幻想的だ。
やさしくて癒される今泉さんの歌唱をそっと支える山根さんの歌声が見事。山根さんの歌唱中にそっと見守る今泉さんの笑顔にもまた、心が洗われるような気持ちになる。木々の合間を吹き抜ける一陣のそよ風のようなさわやかな音がアリーナを満たしたひとときだった。
7曲目C:アウト・オブ・トライアングル (Remix Ver.)
スタイリッシュなEDMに乗せながらも湿潤に乙女心を歌うナイスネイチャのキャラクターソング。前田佳織里(ナイスネイチャ役)さんの歌声はこの日も力強く、Remixが加わったことで楽曲のクールな側面がより印象づけられたように感じられた。
そして、曲のクライマックスにはチーム<カノープス>の仲間たちが乱入。最後の最後に強烈な個性で楽曲に深みを与えたMAKIKO(サウンズオブアース役)さんの“末脚”には会場も大いに沸いていた。
7曲目D:帝笑歌劇〜讃えよ永久に〜 (Remix Ver.)
Remix ver.の楽曲を締めくくるのはテイエムオペラオーのキャラクターソングだ。徳井さんに加え、『ROAD TO THE TOP』で共演した咲々木瞳(アドマイヤベガ役)さんや中村さん、藤本さんもトロッコから参加。
徳井さんはトレーナーたちの近くで煽りながらも、抜群の歌唱力を見せつける。まさに王の乗るトロッコが世界の中心になったひと幕だった。
『ウマ娘』を初期から支えるふたりからみんなへ受け継がれていくバトン。トレーナーもウマ娘もみな想いがあふれる
8曲目:Precious Star Dreamer
ミックスコーナーも無事に完走し、ライブは次のブロックへ。「いつだって応援してくれた感謝をお伝えできればと思います」という夏吉さんのコメントを合図に、ウマ娘たちひとりひとりの想いを込めたメッセージがバトンを繋ぐように次々と紡がれていく。多くのウマ娘たちが目を潤ませながら感謝の気持ちを伝え、「だから今、私から君への想いを届けたい」という言葉とともにステージには新たにふたりのウマ娘の姿が。
それは、初期の初期から『ウマ娘』というコンテンツを支えてきた和氣あず未(スペシャルウィーク役)さんと高野麻里佳(サイレンススズカ役)さんだった。次の瞬間、会場には緑一色の美しい景色が広がる。
無理もない。2022年に開催された『ウマ娘 プリティーダービー 4th EVENT SPECIAL DREAMERS!! EXTRA STAGE』のステージに高野さんは立つ予定だった。しかし、適応障害の療養のため、出演を見合わせることに……。チーム<シリウス>メンバーたちによる「笑顔の宝物 -Beyond The Future!-」の歌唱では、高野さんが立つはずだったポジションをスポットライトが切なく照らしていたことを筆者も鮮明に覚えている。
──あれから1年4か月。物語は大欅の先まで紡がれ、ついにこの日がやってきた。会場がターフの緑色に染まったのは、トレーナーたちの「おかえり」というメッセージに他ならない。
顔を突き合わせて、丁寧に想いを込めるように歌うふたり。その歌声は涙で震えながらも、アリーナに美しくこだまする。無事に歌い終えたふたりに対する歓声は、会場が暗転してもなお止むことはなかった。
9曲目:Go This Way
和氣さんと高野さんからバトンを引き継いだのは、同じく黄金世代のウマ娘に命を吹き込むMachicoさん、髙橋さん、前田さん、佐伯さん。4人の目は隠しきれないほどに涙がにじんでいたが、それでも前へ前へと気丈に歌い続ける。
楽曲が2番に差し掛かったところで、アニメ第3期で活躍した立花日菜(サトノダイヤモンド役)さん、矢野さん、鈴代さん、秋奈さんへとバトンタッチ。クライマックスでは8人での歌唱となり、受け継がれていく想いを見事に表現した。
10曲目:Special Record!
アニメ第1期のラストを飾った「Special Record!」。今回は第1期には登場していないウマ娘たちによる歌唱で、そこに劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』の主人公であるジャングルポケット役の藤本さんが含まれているという点も、受け継がれていく魂を感じさせられるようでグッと来てしまう。徳井さんと藤本さんという、強烈な個性を有する低音のふたりが中心軸に位置するのも新鮮でおもしろい。
11曲目:We are DREAMERS!!
どこにいても存在を感じ取れるような個性的な歌声のMAKIKOさん、アゲアゲのハイテンションなパフォーマンスで楽曲を盛り上げる山根さん、そして鈴を転がすようなかわいらしさにあふれたボーカルの石見さんによるハーモニーは「Special Record!」に引き続き、楽曲に新たな解釈を与えてくれた。
2番に突入すると、田辺さん、今泉さん、長谷川さんもステージに登場。ミホノブルボンとライスシャワー、ダイタクヘリオスとヤマニンゼファー、サウンズオブアースとロイスアンドロイスと“縁の深いコンビ”になるような構成になっており、それぞれが向かい合って歌うというエモーショナルな演出が組み込まれていた。もし、この場にオタクウマ娘のアグネスデジタルがいたら、その尊さに卒倒したことだろう。
楽曲終了後のMCコーナーでは、沖野さん、和氣さん、高野さん、Machicoさんが登場。「歌う前からトレーナーさんの声がすごく聞こえてきて感動しちゃいました」と深々と頭を下げる高野さんに、会場からは大声援が。沖野さんによると舞台裏にも感動の伝播が止まらなかったようで、「~~さんが泣いてる! 早く!」とメイクさんがあちこち奔走しなければならない状況だったそう。
高野さんは「あじゅじゅ(和氣さん)が見つめ合ったときに女神のような表情をしていて、泣くでしょ、それは!」と振り返ると、和氣さんは「私はずっとまりんか(高野さん)に引っ張ってもらっていたから今回は引っ張っていこうと思っていて」とコメント。『ウマ娘』を通じて深く結ばれた絆の一端がMCにも表出していた。
そのあとは、ほかのウマ娘たちも登場し、バズーカを使った“花火大会”へと突入。しかし、花火を打ち上げたところで「ただのお祭りにしたくないんです!」と言い出す矢野さん。
ここで舞台のセンターに呼び出されたのが、山根さんと鈴代さん。実はふたりはこの2月4日が誕生日ということで、サプライズでバースデーを祝うという特別な企画が仕込まれていた。ペンライトをろうそくの炎のような赤色に変え、バースデーソングを歌い終わると吹き消すふたり。
「今、この夜で生きている人の中で一番幸せな気がします」と感動を噛みしめる山根さんと、感動で語彙力を喪失しながら「2024年はもうちょい語彙が達者になれるようにがんばりたいと思います。ウマ娘サイコー!」と喜びを爆発させる鈴代さんの姿はなんともほほえましく、アリーナにも幸せな空気が充満する。
作品の軌跡を振り返りながら突き進む中盤戦、そしてクライマックス
12曲目:Make debut! (Beyond The Dreams Ver.)
会場がほっこりしたところで、いよいよライブも中盤戦へ。ここからは各コンテンツのテーマ曲やオープニング曲が続くパートだ。
「Make debut! (Beyond The Dreams Ver.)」を歌唱したのは、和氣さん、髙橋さん、佐伯さん。ほかの黄金世代のウマ娘たちの想いも背負いつつ、原点回帰を味わえるような素晴らしいパフォーマンスを披露する。
13曲目:ユメヲカケル!
どんな逆境のなかでも夢と希望を胸に全力で走り続けるウマ娘たちを描いたアニメ第2期からは「ユメヲカケル!」。トロッコでトレーナーさんたちの近くを巡りつつ、4人のウマ娘たちが満開の笑顔で歌いあげる姿を見ていると、涙が込み上げてきてしまう。
14曲目:GIRLS’ LEGEND U
すべてのウマ娘たちの想いを体現するような楽曲だ。この日は、ゲームやアニメ第3期から登場したウマ娘たちが歌唱を担当。とくに低音が厚めで、強烈な個性が真っ向勝負しながら昇華されていくというのはこのメンバーならではといえそうだ。
15曲目:Overrunner!
舞台『ウマ娘』で活躍した山根さんと今泉さんに加え、髙橋さんと井上さんが参加。とくに井上さんが演じるアストンマーチャンは、物語の中心軸にいるケイエスミラクルとバックボーンに近しい部分があり、想像をかき立てられたトレーナーも多かったのでは。ダンサー娘たちを交えつつ、舞台『ウマ娘』をベースにした振りつけとなっていた点も観劇したファンにはたまらない。
16曲目:Glorious Moment!
「次はお前さんたちの番だ!歌声を響かせろ!」という土田さんの檄を受けて始まったのが、アニメ『ROAD TO THE TOP』より「Glorious Moment!」。魂の叫びをぶつけ合うかのような3人の歌声は美しく、ソロパートでは対話するかのような心地いいハーモニーを奏でたかと思いきや、レースをそのまま見ているかのように激しく衝突。クラシック戦線の激走へとトレーナーたちを誘っていく。筆者もモニターの前で感動のあまり、崩れ落ちてしまった。
17曲目:ソシテミンナノ
アニメ第3期の名場面を振り返るような映像とともに始まった「ソシテミンナノ」。上田さんとMAKIKOさんが低音を支えているということもあってか、大地を踏みしめるような力強さのあるパフォーマンスに。なお、楽曲のクライマックスにある「負けない」は、1番は夏吉さんが担当し、ジャパンカップのエピソードを彷彿とさせる。2番は“キタサト”コンビを演じる矢野さんと立花さんが担当。こちらも激闘の記憶を呼び起こした。
18曲目:DRAMATIC JOURNEY
ライブのラストを締めくくるのはゲームの2周年を記念した楽曲「DRAMATIC JOURNEY」。これからも紡がれていく旅路への想いを、ポジティブなメロディに託したナンバーだ。多くのウマ娘たちが満面の笑顔を浮かべて歌唱していたのも印象的だった。
ライブはここで終幕となったが、間髪入れずに盛大なアンコールが巻き起こる。そして、その声に応えて再びステージへと舞い戻るウマ娘たち。ここからの流れは圧巻だった。
まだまだ終わらない。エンディングテーマにフォーカスしたアンコール、新ウマ娘とストーリー第二部の発表など盛りだくさんで駆け抜ける
19曲目:イチバン星が駆ける空
各コンテンツのテーマ曲やオープニング楽曲を集めたパートがあれば、その対になるパートがあってもいい……とは思うものの、それをひとつのライブにおいて大ボリュームでやってのけるのが『ウマ娘』のすごいところ。
アンコールの先陣を切ったのは、『ROAD TO THE TOP』より「イチバン星が駆ける空」だ。アニメのクライマックスで流れる楽曲で、3人が同じ方向を向きながら調和の歌声を響かせるキラキラした印象の同曲。アドマイヤベガという役を背負ったことで、ライブ中もクールな表情をのぞかせることが多い咲々木さんがほかのふたりににっこりと微笑みかけたり、全員で指を突き出して息もピッタリに星をなぞったり、そのパフォーマンスを眺めているだけで魂が浄化されるかのよう。曲のクライマックスで、輝く一番星に向かって一斉に手を伸ばすシーンはあまりにもまぶしい。ライバルでもあり、かけがえのない仲間でもある3人のウマ娘たちの関係性がこれでもかというぐらいに詰め込まれていた。
20曲目:グロウアップ・シャイン!
トロッコに乗り込んだウマ娘たちが歌ったのがアニメ第1期のエンディングテーマ「グロウアップ・シャイン!」。聴きなじみのあるであろう楽曲なだけに、至近距離で聴けたことでよりテンションが上がったというトレーナーも多かったはず。和氣さんと上田さん以外の歌唱メンバーが原曲には参加していないということもあり、フレッシュな空気感が満ちていたように感じる。
21曲目:木漏れ日のエール
アニメ第2期からは「木漏れ日のエール」。どんな逆境にもくじけることなく、互いを目標に奇跡を起こそうと歩み続けたウマ娘たちの想いを綴った名バラードだ。今回の歌唱には、原曲を歌っているMachicoさんのほかに、長谷川さん、石見さん、前田さんが参加。マックイーンの想いも背負いながらMachicoさんの歌声は心を打つものがある。
今回のライブのタイトルは『YELL』。ここまでテーマと合致する『ウマ娘』の楽曲はほかにはないのではないだろうか。この日のライブで高野さんに「おかえり」とみんなで声をかけられたことと、曲の内包するメッセージとが結びつき、筆者は涙が込み上げてきてしまった。
22曲目:アコガレ Challenge Dash!!
アニメ第3期のエンディングテーマである「アコガレ Challenge Dash!!」はポジティブなナンバー。キタサンブラック役の矢野さんとサトノダイヤモンド役の立花さんに加えて、チーム<スピカ>のウマ娘たちを演じるメンバーが参加した。楽曲の途中でMachicoさんと矢野さんが熱い抱擁を交わすなど、関係性がにじむようなひと幕もあり、何度も決壊している涙腺をさらにゆるめられたような気分だ。
楽曲終了後のMCで各コンテンツの主人公ウマ娘たちがステージにそろう姿も壮観。ずっと『ウマ娘』を追い続けてきたトレーナーであれば、想いもひとしおだろう。
23曲目:トレセン音頭
あまりにドラマティックな流れに終幕の気配を感じるが、やはりそこは『ウマ娘』。そこはまだまだフォルスストレートだとばかりに、まだまだ盛り上がる要素を用意していた。そのひとつがメインストーリー第2部の発表と、登場する新ウマ娘3人の紹介だ。
情報の洪水を浴びて歓喜するトレーナーに「まだまだ盛り上がれますよね?」と沖野さん。ここまでですでに4時間に迫る長丁場となっていたが、山場はまだ残っている。──そう、ここからがウイニングライブ。
この日の出走者たちは次々とステージへ。すべてのウマ娘を代表して和氣さんが「たくさんのエール、本当にありがとうございました」と頭を下げる。「これからもいっしょに夢を見ましょう!」という力強い言葉はトレーナーにとってこのうえないエールとなったことだろう。
そして、始まった「トレセン音頭」。『ウマ娘』の楽曲のなかでカオスな側面が強く、カロリーの消費量もトップクラスの楽曲だ。「音が出な~い!」と慌てるナイスネイチャに、歌い過ぎて息が苦しくなるキングヘイロー、誰も歌っていないことに気づいて取り乱すキタサンブラック、そして「どーすんの?」とぼそっとつぶやくドゥラメンテ。どこを切り取っても、各ウマ娘と彼女たちを演じる出走者たちの魅力にあふれている。
走り回りながらも熱唱を続けるウマ娘たちに負けじと、アリーナ中のトレーナーが声を振り絞ることでお祭りは完成。このライブ感こそ醍醐味なのかもしれない。
24曲目:うまぴょい伝説
トリを飾ったのはもちろん『うまぴょい伝説』。実況席にいた明坂さんや沖野さん、土田さんらも参加して、最後の最後までその熱量が衰えることはなかった。
こうして、『ウマ娘』5thイベント第3公演“YELL”は華々しくその幕を下ろした。“ファンやトレーナー、ウマ娘どうしがお互いに励まし合い輝く姿”を描くという公演のテーマは100%、いや564%ぐらい達成できていたのではないだろうか。
『ウマ娘』5thイベントは、大阪城ホールで3月に開催される最終公演「NEW GATE」を残すのみ。課題や困難、夢すら越えて新たなステージへと向かう彼女たちをイメージしているとのことで、ゲームのメインストーリー第2部で活躍するウマ娘たちの出走も発表されている。はたして、どのようなライブになるのか注目しつつ、エールを送り続けたい。
<DAY2>出走者
和氣あず未(スペシャルウィーク役)、Machico(トウカイテイオー役)、上田瞳(ゴールドシップ役)、髙橋ミナミ(エルコンドルパサー役)、徳井青空(テイエムオペラオー役)、長谷川育美(ミホノブルボン役)、石見舞菜香(ライスシャワー役)、咲々木瞳(アドマイヤベガ役)、前田佳織里(ナイスネイチャ役)、佐伯伊織(キングヘイロー役)、山根綺(ダイタクヘリオス役)、立花日菜(サトノダイヤモンド役)、矢野妃菜喜(キタサンブラック役)、真野美月(サクラローレル役)、中村カンナ(ナリタトップロード役)、今泉りおな(ヤマニンゼファー役)、井上ほの花(アストンマーチャン役)、鈴代紗弓(サトノクラウン役)、夏吉ゆうこ(シュヴァルグラン役)、奥野香耶(ヴィルシーナ役)、藤本侑里(ジャングルポケット役)、MAKIKO(サウンズオブアース役)、田辺留依(ロイスアンドロイス役)、秋奈(ドゥラメンテ役)
【ゲスト出走】 高野麻里佳(サイレンススズカ役)
【実況】 明坂聡美(実況役)
【ナビゲーター】※シークレットゲスト 沖野晃司(TV アニメシリーズ トレーナー役)、土田大(アニメ『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』沖田トレーナー役)
【ダンサー】 ウマ娘ダンサー
セットリスト
OVERTURE
M-01. Comeback Story V
ウマ娘
M-02. Ms. VICTORIA
佐伯伊織(キングヘイロー役)、山根綺(ダイタクヘリオス役)、真野美月(サクラローレル役)、鈴代紗弓(サトノクラウン役)、夏吉ゆうこ(シュヴァルグラン役)、奥野香耶(ヴィルシーナ役)、藤本侑里(ジャングルポケット役)、MAKIKO(サウンズオブアース役)、田辺留依(ロイスアンドロイス役)
M-03. 世界は僕らの言いなりさ
上田瞳(ゴールドシップ役)、髙橋ミナミ(エルコンドルパサー役)、徳井青空(テイエムオペラオー役)
M-04. winning the soul
矢野妃菜喜(キタサンブラック役)、鈴代紗弓(サトノクラウン役)、秋奈(ドゥラメンテ役)
M-05. 本能スピード
長谷川育美(ミホノブルボン役)、石見舞菜香(ライスシャワー役)、前田佳織里(ナイスネイチャ役)、佐伯伊織(キングヘイロー役)、今泉りおな(ヤマニンゼファー役)、井上ほの花(アストンマーチャン役)
M-06. L’arc de Gloire
上田瞳(ゴールドシップ役)、髙橋ミナミ(エルコンドルパサー役)、立花日菜(サトノダイヤモンド役)、矢野妃菜喜(キタサンブラック役)、真野美月(サクラローレル役)、秋奈(ドゥラメンテ役)
SP コンテンツ[ぱか☆アゲ↑ミックス コーナー]
山根綺(ダイタクヘリオス役)、今泉りおな(ヤマニンゼファー役)
SP コンテンツ[ぱか☆アゲ↑ミックス DJ SET]
TRAC1. 笑っちゃお!remix
TRAC2. A・NO・NE remix
TRAC3. マーベラスサンデータイム remix
TRAC4. ラキハピファンタスティック remix
TRAC5. ひたむきマイノート remix
TRAC6. メジロ讃歌 remix
山根綺(ダイタクヘリオス役)、今泉りおな(ヤマニンゼファー役)
M-07.A ミッドナイト・エピローグ (Remix Ver.)
山根綺(ダイタクヘリオス役)、真野美月(サクラローレル役)、今泉りおな(ヤマニンゼファー役)、井上ほの花(アストンマーチャン役)、夏吉ゆうこ(シュヴァルグラン役)、奥野香耶(ヴィルシーナ役)、田辺留依 (ロイスアンドロイス役)
M-07.B LIKE THE WIND (Remix Ver.)
山根綺(ダイタクヘリオス役)、今泉りおな(ヤマニンゼファー役)
M-07.C アウト・オブ・トライアングル (Remix Ver.)
前田佳織里(ナイスネイチャ役)、山根綺(ダイタクヘリオス役)、今泉りおな(ヤマニンゼファー役)、 MAKIKO(サウンズオブアース役)、田辺留依(ロイスアンドロイス役)
M-07.D 帝笑歌劇〜讃えよ永久に〜 (Remix Ver.)
徳井青空(テイエムオペラオー役)、咲々木瞳(アドマイヤベガ役)、山根綺(ダイタクヘリオス役)、中村カンナ(ナリタトップロード役)、今泉りおな(ヤマニンゼファー役)、藤本侑里(ジャングルポケット役)
公演テーマ SP[YELL DAY2]
M-08. Precious Star Dreamer
和氣あず未(スペシャルウィーク役)、高野麻里佳(サイレンススズカ役)
M-09. Go This Way
Machico(トウカイテイオー役)、髙橋ミナミ(エルコンドルパサー役)、前田佳織里(ナイスネイチャ役)、佐伯伊織(キングヘイロー役)、立花日菜(サトノダイヤモンド役)、矢野妃菜喜(キタサンブラック役)、鈴代紗弓(サトノクラウン役)、秋奈(ドゥラメンテ役)
M-10. Special Record!
徳井青空(テイエムオペラオー役)、咲々木瞳(アドマイヤベガ役)、中村カンナ(ナリタトップロード役)、夏吉ゆうこ(シュヴァルグラン役)、奥野香耶(ヴィルシーナ役)、藤本侑里(ジャングルポケット役)
M-11. We are DREAMERS!!
長谷川育美(ミホノブルボン役)、石見舞菜香(ライスシャワー役)、山根綺(ダイタクヘリオス役)、今泉りおな(ヤマニンゼファー役)、MAKIKO(サウンズオブアース役)、田辺留依(ロイスアンドロイス役)
M-12. Make debut!
(Beyond The Dreams Ver.) 和氣あず未(スペシャルウィーク役)、髙橋ミナミ(エルコンドルパサー役)、佐伯伊織(キングヘイロー役)
M-13. ユメヲカケル!
Machico(トウカイテイオー役)、長谷川育美(ミホノブルボン役)、石見舞菜香(ライスシャワー役)、前田 佳織里(ナイスネイチャ役)
M-14. GIRLS’ LEGEND U
真野美月(サクラローレル役)、奥野香耶(ヴィルシーナ役)、藤本侑里(ジャングルポケット役)、MAKIKO(サウンズオブアース役)、田辺留依(ロイスアンドロイス役)、秋奈(ドゥラメンテ役)
M-15. Overrunner!
髙橋ミナミ(エルコンドルパサー役)、山根綺(ダイタクヘリオス役)、今泉りおな(ヤマニンゼファー役)、井上ほの花(アストンマーチャン役)
M-16. Glorious Moment!
徳井青空(テイエムオペラオー役)、咲々木瞳(アドマイヤベガ役)、中村カンナ(ナリタトップロード役)
M-17. ソシテミンナノ
上田瞳(ゴールドシップ役)、立花日菜(サトノダイヤモンド役)、矢野妃菜喜(キタサンブラック役)、鈴代 紗弓(サトノクラウン役)、夏吉ゆうこ(シュヴァルグラン役)、MAKIKO(サウンズオブアース役)、秋奈(ドゥラメンテ役)
M-18. DRAMATIC JOURNEY
ウマ娘
<ENCORE>
M-19. イチバン星が駆ける空
徳井青空(テイエムオペラオー役)、咲々木瞳(アドマイヤベガ役)、中村カンナ(ナリタトップロード役)
M-20. グロウアップ・シャイン!
和氣あず未(スペシャルウィーク役)、上田瞳(ゴールドシップ役)、真野美月(サクラローレル役)、井上ほの花(アストンマーチャン役)、藤本侑里(ジャングルポケット役)
M-21. 木漏れ日のエール
Machico(トウカイテイオー役)、長谷川育美(ミホノブルボン役)、石見舞菜香(ライスシャワー役)、前田 佳織里(ナイスネイチャ役)
M-22. アコガレ
Challenge Dash!! 和氣あず未(スペシャルウィーク役)、高野麻里佳(サイレンススズカ役)、Machico(トウカイテイオー役)、上田瞳(ゴールドシップ役)、立花日菜(サトノダイヤモンド役)、矢野妃菜喜(キタサンブラック役)
W ENCORE
Overture
M-23. トレセン音頭
ウマ娘
M-24. うまぴょい伝説
ウマ娘、明坂聡美(実況役)、沖野晃司(TVアニメシリーズ トレーナー役)、土田大(アニメ『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』沖田トレーナー役)