──思ってたんとちがう!!!
そう叫びながら私は、先日早期アクセスが開始されたゲーム『ナイチンゲール』(Nightingale)で、目の前の大木に向かって斧を振り続けていました。
この『ナイチンゲール』という作品は、私が聞き及んでいた事前情報によれば、ヴィクトリア朝時代のイギリスをモチーフにしたオープンワールドサバイバルゲーム。華麗な服飾や蒸気機関によるガジェットなど、ヴィクトリア朝時代の文化を彷彿とさせる要素も見どころになっているとのこと。
発売前の映像では、煌びやかな服に身を包み華麗に銃を連射したり、人間業とは思えぬほどの高さまで跳躍しながら巨大な敵との戦いを繰り広げたり、魔法のような弾を手から発射したり、挙句の果てには傘を広げて空中を滑空したりとやりたい放題のご様子。
特に銃の連射と傘のシーンはインパクトが強く、私は「イギリスだ!傘だ!キングスマンだ!俺はメリー・ポピンズだ!」ってな具合に語彙力を著しく低下させつつ、高まる期待に胸を躍らせていたのです。
それなのに!それなのにです!
実際にプレイを始めてみたら銃の類は一切手に入らず、石器時代みたいなハンドメイドの斧やナイフで悪戦苦闘させられ……主人公の服装はお世辞にも華やかとは言えない探検隊のような出で立ちで……。
あんなに楽しみだった「傘」も、最初に手に入ったのは木の棒とワラをツルでぐるぐる巻きにしてつないだだけの代物。「もしかしたら、もしかしたら滑空くらいはできるのかも」と一縷の望みを託して高所から飛んでみましたが、豪快に地面とキスしただけでした。
……そんな悲しみに満ちたスタートを切った『ナイチンゲール』ですが、文句をタレながらも遊んでいると、いつしかハードな異世界サバイバルライフに夢中になっている自分がいました。というのも、お目当ての銃や傘を使えないことを忘れてしまうくらい、本作には魅力的な部分がたくさんあったからです。
そういうわけで、本稿では出だしの評価をひっくり返し、最終的には私を引き込んでしまった『ナイチンゲール』の見どころをご紹介していきたいと思います。
文/DuckHead
※なお、『ナイチンゲール』公式によると普通にプレイして20〜25時間程度、急ぎ足のプレイでは15時間程度で銃など近代的な武器を使用できるようになるとのことです。
銃を使用できるようになると、探索範囲もぐっと広がり、プレイにも大きな幅が生まれるようになります。
※この記事は『ナイチンゲール』の魅力をもっと知ってもらいたいInflexion Gamesさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
ヴィクトリア時代×魔法ファンタジーな独特の雰囲気が超お洒落……なはずだった
それではゲーム本編についてお話する前に、まずは『ナイチンゲール』の特色として第一に挙げられる、“ヴィクトリア朝時代” のイギリスをモチーフとして作り上げられた作品の世界設定について触れておきたいと思います。
ヴィクトリア朝時代とは、その名の通り、ヴィクトリア女王によって統治されていた19世紀ごろのイギリスを指す言葉。
有名な文学作品で言うと、『シャーロック・ホームズ』シリーズや『不思議の国のアリス』がこのころに成立した作品であり、『ハリー・ポッター』シリーズに登場する魔法学校ホグワーツには、この時代のゴシック建築のテイストも取り入れられているそうなので、この辺の雰囲気をイメージしていただければ分かりやすいかもしれません。上の画像みたいなファッションのイメージが、私の中では強いですね。
そんなヴィクトリア朝時代の文化に、魔法などのファンタジー要素を加える形で “ヴィクトリアン・ガスランプ・ファンタジー” と称する世界観が構築されている『ナイチンゲール』では、これらの要素が融合したことによる独特な空気感が生み出されています。
例えば、普通の森林の中に突如として巨大な建物が建設されていたり、謎の巨石が浮遊していたり。一見ミスマッチでアンバランスな光景が本作の印象的な要素として挙げられ、これらはゲームを遊んでいれば至るところで見られます。
何の変哲もないように見える森の中を何の気なしに歩いていたら、泣き崩れる天使の巨大な石像という意味深なオブジェが急に目に飛び込んでくるなんていうこともよくある話。このような場所を訪れるたびに、こちらの想像意欲が大いに掻き立てられます。
こういった少し不思議で面白い光景にたびたび遭遇する本作の中でも私が特に好きなのが、夜空です。日が沈み、周囲が真っ暗になったタイミングで視線を空に移してみると、そこには巨大な天体がふたつ。これは地球上からでは決して拝むことのできない光景です。これらの天体が纏う幻想的な雰囲気は魔力にも似た魅力があり、思わずゲームの事を忘れてしばらく見とれてしまいました。
実は、視点をもう少し変えると別の天体が見えるんですが、こういった細かな部分でも本作の異世界感が演出されているように感じます。
なぜか優雅さのかけらもない、石器時代のようなサバイバルに放り込まれてしまう
さて、少々前段が長くなってしまいましたが、ここからはゲーム本編についてお話を進めていきたいと思います。
『ナイチンゲール』でのプレイヤーの目的は、“境域” と呼ばれるエリアを旅する “境域トラベラー” として、ポータルを使って次元を越えていきながら、最終的に魔法の街「ナイチンゲール」に辿り着くこと。その核にあるのはサバイバルゲームであり、優雅さも感じられるヴィクトリア朝時代の空気感とは大きく異なります。
まず第一にご紹介したいのが、サバイバルゲームをプレイする上で忘れてはいけない、装備品やアイテムを作成できる “クラフト” というシステム。これは『ナイチンゲール』においても重要な要素であり、武器や服飾品といった装備品から住居となる建物まで、さまざまな物を作ることができます。
このクラフトを実行する上で必要な素材たちは境域内のさまざまな場所で採集することができるんですが、採集で使用する道具もまたクラフトによる自家製。最初から万全のクラフト設備が整っているというわけでもないため、まず最初は石と木の棒を植物のツルでぐるぐる巻きにしただけの簡易的なつくりの道具を使うところからスタート。
……ということで、話は冒頭に戻りまして、銃を使った華麗な戦闘によるサバイバル生活を思い描いていた私を待っていたのは、ヴィクトリア朝時代からかけ離れた石器時代の道具と華麗さからかけ離れた泥臭い地道な作業。技術を発展させて銃の使用へと至る道は、とても長く険しいものだったのです。
ちなみに、クラフトで製作可能なアイテムを増やすためには、 “エッセンストレーダー” と呼ばれる商人から設計図を購入することが絶対条件。境域の各地に存在する彼らを見つけ出すことがゲームプレイにおけるひとつの大きな行動指針となり、取引が成立すれば探索がより一層快適に進んでいくことでしょう。
また、先ほどにも少しだけ触れましたが、本作では建物を作ることも可能。吹けば飛ぶような木の家やオオカミが来ても安心な石造りの家など、多様な建築材を使って建築物を建てることができます。
筆者は恥ずかしながら芸術的センスに乏しく、とにかくとにかく高くするという発想しか出てこなかったために、画面映えするような建物を一切作ることができなかった建築初心者ですが……本作の建築は比較的簡単で取っつきやすいように思います。
特に建築ビギナーとしてありがたかったのが、素材が十分に無かったとしても、組み立ててみたい建物の外観をとりあえず作っておくことができること。
この時、必要な資材が足りないパーツは半透明な状態になっていて、この場所に資源を持っていけば、ワンボタンで建設が進んでいきます。素材を集めに行き、拠点に戻ってきたら何を作ろうとしていたのか忘れてしまうことがよくある私にとって、これは非常に嬉しい仕様でした。
残念ながら今回のプレイではその高みにまでは至れませんでしたが、恐らくもっとヴィクトリア朝時代の建築に近い、美しく優美な建物を作ることもできるのだと思います。そういった凝り始めたら止められないような楽しみ方については、大変申し訳ございませんが、クリエイティブな才能に溢れる皆様に丸投げさせていただきます。
さて、それはともかくとして、こういった形でクラフトによって建物や設備を拡張していった場所については、付近に敵を寄せ付けない効果を持っているだけでなく、休息ポイントに設定すればファストトラベルで即座にその場所へ移動することができるようになる “石塚” をそばに建てることで、拠点としての運用が可能です。
建物の数の総数にこそ制限はあるものの、この石塚は境域内にいくつも建てることができるため、チェックポイントのように使うこともできます。
マップ攻略の進行具合に合わせて休息ポイントを変えれば、効率的に探索を進められる上、その設置頻度や使用の塩梅はプレイヤー次第。このことからも、本作の自由度の高さがうかがえますね。建築物を建てる場所は完全に自由なのです。