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『MOTHER2』に影響を受けたRPG『サマーロード』は自動戦闘なのになぜか“遊びごたえ”がある作品だった。RPGの旨味を圧縮したゲームプレイが楽しい

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「遊びやすさ」や「手軽さ」は“忙しいおとな”にとっては間違いなく有難いが、結果として単調になってしまう作品は決して少なくないと思う。

ところが、リビルドゲームスが手掛けるRPG『サマーロード』は、「クリックだけで遊べる」「オート戦闘」「1セット10分」で遊べる“手軽さ”“遊びごたえ”が見事に共存した作品になっていた。

そして、いささか可愛すぎた。

このたび、3月2日に吉祥寺で開催されたイベント・東京インディーゲームサミットで本作を試遊させて頂いたため、本作の爆発的にキュートでカジュアル。なのに遊びごたえのある魅力を紹介しよう。

見どころとしてはオートだが「プレイヤーが介入する要素が多い」バトル、ローグライク要素ハクスラ形式でゲットした武器を強化していく合成システム、そして何よりワチャワチャと楽しくテンポの良いアニメーション&演出だ。

筆者がプレイしたのは本作の一端に過ぎないが、本稿により発売を控える『サマーロード』のユニークな楽しさが伝われば幸いだ。

取材・文/りつこ


可愛すぎる。『MOTHER2』を彷彿とさせる少女3人と「モグモ」の不思議な冒険

『サマーロード』は好奇心旺盛な3人の少女たちの冒険を描くRPGだ。物語の舞台はアメリカの郊外のようなロケーションで、ANN、BELLA、CANDYの3人が雲のような正体不明の生物「モグモ」と共に「謎の光」を目指し冒険していく。

主人公たちが冒険する世界は“ちょっと不思議な出来事”に満ちた現代の世界で、Game*Sparkの取材によると、『MOTHER2』やスティーブン・キングの『スタンド・バイ・ミー』などにインスパイアされているという。

『サマーロード』試遊レポート。『MOTHER2』インスパイアのRPG_001

まず第一に、なにより、本作は視覚的に可愛すぎる。

前述のとおり本作は『MOTHER2』を彷彿とさせる3DCGのアートスタイルだが、平行投影法のカメラを用いることで「ミニチュア」のような表現になり「小さくぽつんと存在している」可愛らしさが演出されている。

さらに、本作は分岐以外は自動でマップを移動し、戦闘においてもAIにより勝手にせわしなくステージを駆け回る。さらには駆け回りながら吹き出しでテンポ良く楽しそうに会話をするため、メインキャラクターたちの息遣いが生き生きと感じられる。

『サマーロード』試遊レポート。『MOTHER2』インスパイアのRPG_002
(画像はサマーロード(Summer Road) PV 2024 02 – YouTubeより)

つまり、作中では小さくぽつんと存在している可愛らしいキャラクターたちが、これまた可愛らしく走り周り、可愛らしく会話をするのだ。

未だかつて人類は“可愛すぎて死ぬ”ことを達成していなかったが、『サマーロード』をプレイした筆者はその第一人者となった。

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▲基本的に走りながら会話している。会話の内容も愉快だ

とにかく可愛らしく、同時に目まぐるしく変化する表情豊かなビジュアルは間違いなく見てるだけでも楽しい。なので、視覚的な要素はプレイヤーの操作が限られている本作を「楽しく飽きない」作品にするひとつの要素であると感じた。

「オート」だけど、「やること」はしっかり用意されている。濃縮されたお手軽バトル

といいつつも、本作が「カジュアルなのに遊びごたえがある」のは、決してビジュアルのみで実現しているのではない。というのも、戦闘に関する要素は「全てが自動化」されているのではなく、しっかりと「プレイヤーの判断」により勝敗を決する仕様になっているからだ。

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(画像はサマーロード(Summer Road) PV 2024 02 – YouTubeより)

本作の戦闘は俯瞰視点の2Dアクション風の形式となっており、移動と攻撃はAIの判断により自動で実行され、ターン制ではなくリアルタイムに進行していく。

いっぽう、戦闘中に特定の敵キャラクターを攻撃すると2人が集中攻撃を行うようになっているほか、回復アイテムはプレイヤーがドラッグ&ドロップで使用する必要がある。

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くわえて、ハックアンドスラッシュ要素も存在し、道中では武器、下半身と上半身の防具をリアルタイムに付け替えることができる。装備には5つのタイプが用意されており、同じタイプの装備を2つ以上身に付けると特別なコンボスキルが発動する。

たとえば「バット」と下半身防具の「ダッシュブーツ」を組み合わせれば「ダッシュバット振り」に攻撃が変化するように、装備ごとの組み合わせによりキャラクターの性質や攻撃パターンも大きく変化する。モグモに3つのアイテムや装備を食べさせて武器を強化する「合成」要素も用意されている。

そのため、装備のマネジメント、集中砲火する敵の選択、回復を随所で行う必要があるため、お手軽だが「ずっと眺めているだけ」ではなく、RPGらしくパーティーのビルドや回復のタイミングなどを見計らう必要があった。

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また、道中ではローグライク要素として「分かれ道」が随所に登場し、「強敵」と「普通の敵」、「回復イベント」か「ランダムイベント」といったように進行経路を2択で選択していく。

このように、本作は戦闘こそ自動だが、明確にプレイヤーの選択により勝敗が決する要素が複数存在する。結果として面倒な反復作業を抑えつつ、厳選された要素でRPGらしいビルドや判断の楽しさを味わえた。

メチャクチャにテンポが良い。速度で獲得する爽快感と遊びやすさ

また、前述のとおり本作は「1セット10分」でプレイでき、それを繰り返すことで従来のRPGのような体験を生み出す作品となっている。記事冒頭ではキャラクターがテンポよくいきいきと振舞う魅力を紹介したが、こういった「テンポの良さ」はゲーム全体に通底する要素だと感じた。

具体的に述べれば、本作は「プレイヤーが考えている時間」以外で“無駄に待っている”と感じるような間の抜けた時間がほどんど存在しないのだ。

もちろん、各所での演出などはあるが、イベントシーンと戦闘、キャラクターが走る場面、それぞれが素早く切り替わっていくことで、「濃いめの10分」を楽しめる。

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▲イベントシーンのような場面の最中も主人公たちは走り続けている。

かなり当たり前のことではあるが、そもそも「テンポよく色々起きる」ことは気持ちが良いし、体験の密度を上げる。さらには1セットをスパっと体験できる「遊びやすさ」も向上させているため、本作の素早いスピード感は機能的な美しさと、体験の質を高めるふたつの役割を果たしていると感じる。

つまるところ本作は「キュートなRPG」を速度による快楽と共に遊べる作品となっていると言えるだろう。

『サマーロード』試遊レポート。『MOTHER2』インスパイアのRPG_010

体験版の時点では物語の全貌は掴めなかったが、少女たちの不思議なひと夏の冒険の行く末や、モグモの正体なども気になるところ。正品版では蓄積型の育成要素が追加され、クリアを迎えたチーム同士で戦う「対戦型モード」も実装されるという。

興味がある方は本作をウィッシュリストに登録し、2024年内を予定している発売を待とう。

編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。

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