ユニークな機兵たちを召喚し、勝手に進んでランダムに成長する空中戦艦をあったかい目で見守り、ときどきちょっと手助けする……。ジャンルで言えば「リアルタイムストラテジー(RTS)」や「戦略シミュレーション」に近いものの、それにしては異質な柔らかさを持つのが『機兵とドラゴン』だ。
……これだけでは意味不明に思う方も多いだろうから、くわしくはこれからお話していこう。
本作『機兵とドラゴン』は、かつて『ちびロボ!』シリーズに携わった森山尋氏が製作総指揮・ゲームデザインとして参加している新作タイトルだ。森山氏は『城とドラゴン』、『ドラゴンポーカー』、『ドラゴンリーグ』といったタイトルを手がけたことでも知られ、本作はその『ドラゴン』シリーズの第4弾として、2023年9月15日に正式発表された。
しかし、当時発表されたのは上記のイメージビジュアルのみ。実際のゲームの模様を紹介したスクリーンショット、システム周りはほとんど明かされず、謎に包まれていたのだ。
唯一、明らかになっていたのは「リアルタイム運命共同体バトル」というジャンル名。その言葉からはどことなく、対戦をメインに据えたゲームが想像された。
そして年が明けた2024年の某日、電ファミニコゲーマー編集部はそんな『機兵とドラゴン』のゲーム本編を先行体験できる機会に恵まれた。
その内容は冒頭の通り。そう、戦略シミュレーションやRTSという“固そう”で“ガチっぽい”ジャンルを思わせる作品でありながらランダム性に富み、バトルの結末は常に予測不能。時と場合によっては超カオスな大乱戦にもなってしまう……。そんな『機兵とドラゴン』の個性的すぎるゲームプレイについて、本稿ではご紹介していこう。
文/シェループ
4隻の「ウキシマ艦」が生き残りをかけて戦う!だが、その行く末は毎回思い通りにならず!?
まずゲームの内容と、システム周りおよび遊び方の紹介を。「リアルタイム運命共同体バトル」と称された本作だが、実際の作りとしてはこれまで紹介してきたようにチーム対戦型のRTSといった趣のゲームになっている。
プレイヤーに課せられる目的はシンプル。「ウキシマ艦」と称された空を飛ぶ戦艦を守り抜くことだ。そのためにウキシマ艦を守る「機兵」、サポートなどを担当する「ドラゴン」を召喚したり、ウキシマ艦自体の強化に取り組んでいく。
具体的な戦闘開始から終了までの流れを解説すると、まず事前準備として「リーダー」の機兵を手持ちのメンバーの中から選んで決定する。なお機兵やドラゴン、そしてウキシマ艦の強化に必要な「パーツ」はガチャを引いて集める形になっている。
また、戦闘にはリーダー以外にも機兵4体、ドラゴン1体がメンバーとして参加(合計6体)。だが、リーダー以外の機兵、ドラゴンは任意に選べない。リーダー以外の残りメンバーはすべてランダムで選出されるのである。
一応、選出されたメンバーに納得がいかなければ、シャッフルしてやり直せる。ただし、シャッフルは5回まで。最後の1回を実施してしまえば、その時に選出されたメンバーでの戦闘を余儀なくされる。
このような複数のキャラクターが参加するタイプの対戦ゲームは、自分なりのメンバーを編成して、それぞれに適した戦略を立てるのが一種の醍醐味だ。だが、本作はリーダー以外のメンバー選出にプレイヤーは一切介入できない。このため、本作の戦闘では毎回、異なる編成ごとに戦略を立てる必要が生じてくるようになっている。
メンバーの準備が完了すると、いよいよ本番だ。
戦闘にはプレイヤーを含んだ4チームが参加し、制限時間5分の中で戦うことになる。
最初にプレイヤーが取り組むことは機兵の召喚。開始時点ではウキシマ艦を守ってくれる者が居ないので、画面右下の手札から好きな機兵を選んで召喚する。操作は召喚したい機兵のアイコンをタップし、そのままスワイプしてウキシマ艦の近くで離すだけでいい。
これは機兵に限らず、ドラゴンを召喚する際も同じだ。操作は非常にシンプルで、RTSなどのジャンルになじみのないプレイヤーもすぐに馴染めるだろう。
召喚したら、あとはその様子を見守ればいい。
「移動は?」となるところだが、本作ではウキシマ艦も機兵もすべて自動操縦。プレイヤーが直接動かす必要はないのである。やれることは機兵やドラゴンの召喚、ウキシマ艦を強化するためのパーツを選ぶこと、そして戦闘中の行動指針を決める「緊急投票」の3つだけ。介入可能な部分が大きく限定されているのだ。
とはいえ戦闘中が“ヒマ”というわけではなく、次にどの機兵を召喚するか、ウキシマ艦をどう強化するか……という思考は常に練り続けなくてはならない。いつ敵に遭遇するかも分からないため、緊張感ある時間が続く。
唯一、行動に影響を与えられるのは「緊急投票」で、4つある選択肢を選ぶことでウキシマ艦、機兵たちがそれに基づいた行動を取ってくれる。「攻撃」なら敵に急接近したリ、「逃げる」なら戦闘から離脱するといった感じだ。しかし、それらが上手くいくかは機兵たちとウキシマ艦の奮闘次第。望み通りになるかは分からないのだ。
同じことはウキシマ艦の強化、ライバルとの戦闘にも言える。
まずは強化について紹介しよう。ウキシマ艦の強化はライバルチームのウキシマ艦とは別に出現する「デカドラ」なる敵モンスター、その小個体「チビドラ」たちの「巣」を破壊した際に得られる3つのパーツを選んで実施するのだが、選べるのはその中のひとつ。
さらになんのパーツが手に入るかもランダムなため、ウキシマ艦がどんな具合に強化されるかは毎回異なるのだ。なので、どんな風に強化されていくのかがまったく読めない。
戦闘についても開始間もなく遭遇して激突してしまうこともあれば、ほとんど遭遇せずに時間が過ぎ去っていき、最後の数分間で初めて激突みたいなことにもなったりする。また、戦闘のフィールドは時間経過と共に徐々に狭くなっていく仕掛けがあり、残り1分半(90秒)を切るタイミングで最小規模になる。
こうなるとウキシマ艦同士の遭遇率も大幅に増加。さらに「ファイナルタイム」と呼ばれるダメージ上昇、機兵のスキル発動率が上昇するボーナスも発生する。このため、攻撃による応酬も一層激しくなる。もし、ウキシマ艦が4隻その時間内まで撃沈されずに残っていれば、まさに文字通りの大乱戦となって絵的にもカオスなことに。
これらの流れを経て時間切れになると戦闘終了になり、それぞれのウキシマ艦が獲得した総合スコアによって順位が決まる。
以上が本作の戦闘開始から終了までの基本的な流れとなる。
一部、システムも交えての紹介になったが、一風変わった作りになっていることが察せるかと思われる。とりわけ機兵、ドラゴン、ウキシマ艦の行動にプレイヤーが介入できず、見守るしかないというのは象徴的だ。
遊びとしては、「騎馬戦」がイメージしやすい。ウキシマ艦の周囲を舞う機兵が率先して戦いを繰り広げていくという様子が、その雰囲気を醸し出している。ウキシマ艦と一体になった状態で戦うところも、まさに「運命共同体」と言ったところである。
そして、戦闘がどんな形に終わるかは最後の最後まで分からないのも、ある意味では運命を共にするような感じだ。このように本作はある意味、「麻雀」にも近いランダム性と何が起きるかわからないスリルを秘めたゲームになっている。
実際、先行体験会にて同席した森山氏も、本作は麻雀を思わせる「思い通りにならない面白さ」というものを目指しているようだ。ランダムに引くパーツ(牌)の中で、少しでもベターな選択肢を選び、ウキシマ艦(役)を作り上げていくようなイメージと言えるだろう。
まさに「思い通りにならない面白さ」が連続する戦闘。ひっそり”友情破壊”な要素も……?
実際にゲームを遊んでみても、まさに「思い通りにならない」という状況を何度も感じさせられた。本当に毎回の戦闘で何が起き、誰が勝利するかが分からず、違った展開が生まれる。
例えば今回の体験会での初戦では、あまりライバルのウキシマ艦と遭遇することもなく時間が過ぎ去っていき、最後の数十秒間に戦闘が発生するというものだった。最終的にその戦闘下で筆者のウキシマ艦は残り数秒というところで撃沈され、2位に入賞する結果を迎えている。
その次の戦闘では、4隻のウキシマ艦が残った状態でファイナルタイムに突入。最終的に生き残るも総合スコアが低いことから3位という結果になった。
そして次なる3、4戦は……多くのウキシマ艦が十分すぎる強化を行る時間を費やしたこともあって、終盤にカオスとしか表しようがない大乱戦に。
なお、3戦目ではファイナルタイムを生き残ったが最下位、4戦目はファイナルタイムの最中に撃沈して最下位という結果に終わった。ちなみに4戦目は途中から観戦という形でその様子を見守った。(※観戦以外にもその場から離脱する選択も可能)
ちなみに紹介が前後したが、戦闘には3つのモードとして「ソロ」、「タッグ」、「トリオ」が用意されている。「ソロ」は4人それぞれに与えられたウキシマ艦と機兵たちで戦うモード、「タッグ」は2人1組のチーム同士が戦うモード、そして「トリオ」は3人1組のチームが戦うモードだ。
前述した3回の戦闘は最初にソロ、次にタッグ、その次にトリオという形だった。チーム戦の2つのモードは、本作の開発を担当している株式会社DONUTSの開発スタッフ数名と森山氏、そして本作のプロデューサーで、スクウェア・エニックス在籍時代に『拡散性ミリオンアーサー』を手がけたことで知られる安藤武博氏が参加する形で実施された。
ただ、どのモードにおいても「思い通りにならない」からこその、盛り上がりというものはよく感じられた。最も強く感じられたのは「トリオ」で、3人1組での戦いになるだけあって、カオスな状況になった際の盛り上がりが凄い。そして、どんでん返しな事態に陥った時にはつい、大声を挙げる衝動にも駆られやすく、実際にそのようになりかける一幕もあった。
また「トリオ」や「タッグ」のチーム戦モードでは、ウキシマ艦と機兵の行動指針に影響を与える「緊急投票」がガチの投票になる。例えばプレイヤー本人は「攻撃」を選びたくても、他の2人が「逃げる」に投票していればそちらに決定してしまうなど、チーム内でのズレが生まれてしまうのだ。
「タッグ」では多数決にならない反面、票が割れるとランダムで行動が決定される仕組みになっている。よって、本来立てていた戦略が台無しになったり、時には思いもしない好機に繋がるといった予測不能な展開を作り出すのだ。
「ソロ」の場合だと、本当に自分なりの戦略を立てて結果を見守る感じだが、それ以外は一緒に遊んでいる人間の価値観などが介入してくることもあって、まさに思い通りにならない事態が生まれやすい。
とりわけ「トリオ」はそうなりやすく、仲間は同じ艦に乗り合わせた、いわば一蓮托生の存在。それぞれが必死に自分の考えるベストな選択肢を主張するからこそ、意見が割れたときの互いの“本気度”もすさまじい。
これらの見所もあり、本作はチーム戦が大変盛り上がりやすい。また、思い通りにならない特徴があるがゆえにプレイヤーの実力もそこまで結果に大きな影響を与える感じはなく、熟練のプレイヤーと始めてから日の浅いプレイヤー同士でも公平に楽しめる印象だ。事実、今回の「ソロ」での第1戦の結果が物語る通り、まったくの初心者でも十分な勝機が保証される。
ただし、機兵ごとに設定された属性の相性、召喚させる場所の判断はある程度、戦闘結果に影響を及ぼす側面があるので注意が必要だ。実際、その辺りを意識せず、直感的に召喚を繰り返してしまうと、機兵があっという間にやられてしまうことが何度かあった。とりわけ属性に関しては、相性が悪いと受けるダメージが1.5倍に上昇するので要注意である。
逆に言えば、そのことさえ覚えていれば十分。複雑な操作はまったく要求されなければ、移動における高度なテクニックも必要とされないので、非常に取っつきやすい。
メンバーの編成を始め、細かく設定する必要のある要素も簡略化されているので、RTSのプレイ経験がない人はもちろん、単純にキャラクターや世界観に惹かれた人でも安心して触れるゲームになっていることは間違いない感じだ。
正式リリースは4月を予定!ゲームとしての新規性に加えて、グラフィックと快適性へのこだわりにも注目の力作。
ゲームプレイ全般を重点的に取り上げてきたが、グラフィックに世界観、そしてゲームプレイの快適さといった面でもこだわりを感じさせられる仕上がりになっている。グラフィックに関しては特に機兵たちの3Dモデルが精巧に作られていて、戦闘中にも多彩かつ躍動的な動きを披露してくれる。
また、ウキシマ艦が強化されると、ちゃんとパーツに沿った変化を遂げていく(容姿が変わっていく)のも必見。パーツによっては、もはや怪物と称してもおかしくないウキシマ艦になってしまうこともあるのだ。おかげでつい、その瞬間をスクリーンショットで撮影したくなる。そもそも、同じウキシマ艦が次の戦闘でも誕生するとは限らない。
手に入るパーツは毎回ランダムのため、毎回の戦闘で異なるウキシマ艦が生まれるのである。そんな一期一会なグラフィックを楽しめるのも大きな見所にして、開発チームのこだわりが現れた部分といってもいいだろう。
精巧な3Dモデルのキャラクターが画面内で多数動いては暴れながら、処理落ちらしい処理落ちがまったく発生しないのも特筆に値する。実際、大乱戦になってもゲームスピードが落ちることはなく、元々の操作感やテンポが維持される。
安藤氏が語ったところによれば、当初は処理の激しさからタコ焼きができてしまうほど(!?)スマートフォン本体が熱くなったようだが、その後、背景を2Dで表現するなどの細かな工夫を凝らすことにより、現在の快適性を実現できたとのことだ。
実際にプレイ中、スマートフォンが鉄板並みに熱くなるようなことはなかった。ただ、熱自体はわずかながら生じるので、例えば膝の上にスマートフォンを乗っけた状態で長時間遊ぶようなことは控えた方がいいかもしれない。
そして、世界観とストーリーは今回の体験範囲内では最小限の紹介に留められたが、機兵や各地に広がる浮島にまつわるエピソードが語られていくと思しきイベントが開始早々に見られた。ちなみに本作は機兵を誰が演じているかといった情報にはフォーカスせず、「リアルタイム運命共同体バトル」というゲームとしての新規性と面白さを最優先で推していく方針のようだ。
さらにターゲットとしては老若男女と幅広くアプローチしつつ、特に中高校生のプレイヤーに訴求していきたいとのこと。特にマルチプレイに関しては、戦闘の所要時間が5分と短めであるのに加え、メンバー編成などの要素が最小限に留められていることから、事前準備の手間も少なく、初めて遊ぶ人もすぐに参加できるプレイハードルの低さは大きな強みになりそうな感じだ。
おかげで周りの人も誘いやすく、たとえば放課後などの時間帯に2~3戦ほど遊ぶといった感じの楽しみ方も簡単にできそうである。
麻雀に近い「思い通りにならない面白さ」と簡単操作で誰でも楽しめる
今回の先行体験の中でも、特に印象的だったのは「トリオ」での戦闘で、プレイヤーの総数が多ければ多いほど、将来的に大会みたいなイベントも組めるのではと思える可能性を感じられた。
ゲーム自体も覚える要素は少なく、操作も最小限、しかしながら戦闘の行く末は毎回、まったく違った展開になることから読めないという、稀有なプレイ感が演出されている。プレイヤーの介入部分が少ないなりの思い通り、あるいは想定以上の展開になった時の快感も凄く、それを再び味わいたいために繰り返し遊びたくなるリプレイ性も秘めている。
とりわけ麻雀に近い「思い通りにならない面白さ」を持つこと、簡単に操作できて遊べるのに毎回油断ならないという特徴に何か惹かれるものを感じたのなら要チェックの新作だ。森山尋氏が携わっていることもあり、『ちびロボ!』シリーズに象徴されるスキップ作品の世界観や雰囲気が好きな方も必見である。先読み困難、時々カオスが極まる壮絶な戦いに挑んでみよう。
『機兵とドラゴン』はスマートフォン(iOS、Android)向けに4月の正式リリースを予定しているとのこと。事前登録も2月後半にはスタートする予定となっている。