集英社ゲームズのボードゲームブランド「マンガボドゲ」から、2024年5月23日(木)に発売される『呪術廻戦 呪霊逃走 -渋谷事変-』。本作は、シリーズ累計9000万部を突破した芥見下々氏による漫画『呪術廻戦』の中でも屈指の密度を誇るエピソードである「渋谷事変」に焦点を当てた作品だ。
「マンガボドゲ」としては5作目のタイトルとなる『呪術廻戦 呪霊逃走 -渋谷事変-』が誕生することになったきっかけは、純粋に「チームメンバーが作品のファンだったから」というのが理由とのこと。ちょうど最新刊の26巻では五条悟がフィーチャーされており、原作ともバッチリとタイミングが合った今こそ遊びたい作品だ。
本作は5月23日(木)より、アニメイトほか全国小売店やECサイトで一般販売を開始。4月13日(土)には事前抽選に当選した人が参加できる最速体験会が実施されるほか、4月27日(土)と4月28日(日)に行われる「ゲームマーケット2024春」にて先行販売も行われる。集英社ゲームズとして「ゲームマーケット」に参加するのは今回が初となるそうだ。
また、ジャンプキャラクターズストアとジャンプショップ各店舗でも一般先行販売が行われる予定となっている。なお、時期は未定となっているので続報を待とう。
さらにアニメイト早期購入特典として「五条悟アクリルコマ 虚式『茈』ver.」も付属するとのこと、ファンは見逃せない特典となっている。
というわけで、本稿ではメディア向け体験会で実際にゲームを遊ぶことができたので、こちらの記事ではそこからわかった特徴や魅力についてご紹介していく。
取材・文/高島おしゃむ
パッケージにはファン心をくすぐる仕掛けがいっぱい。単行本と同じサイズかつ、背表紙も単行本風のデザインで本棚にいっしょに並べられる
ゲーム自体の内容を紹介していく前に、どうしても触れておきたいのがパッケージを含めた細部のこだわりの部分だ。この『呪術廻戦 呪霊逃走 -渋谷事変-』のパッケージには、五条悟が大きく描かれており、漫画ようなサイズ感で迫力満点。
それもそのはずで、実はパッケージのサイズは約176.5mm×116.5mm×40mmと、単行本に合わせたものとなっている。単行本と一緒に本棚などに入れて置いても違和感がなく、むしろ単行本の特別版のように見えてしまうほどだ。
今回はすでに開封済みのものを使って体験会が行われていたため再現することはできないのだが、初めてパッケージを開けたときのカードの並びも注目してほしいポイントだ。
こちらは、五条悟が「呪霊鏖殺」を繰り出している場面と、他の呪霊たちが五条に祓われ撃破されてしまったシーンを再現するかのようになっているのである。五条悟が圧倒的な力を持っているがゆえに、呪霊たちがすでに負けてしまっているという場面からゲームがスタートするという、本作ならではのユニークな設定がここでも垣間見える。
ゲームの舞台となるボードは、カードの下に折りたたまれた状態で同梱されている。こちらも、折りたたまれた状態が「帳(とばり)」になっており、ゲームの準備をするべくパッケージの中身を取り出していく過程でまさにこれから「渋谷事変」に突入するという気分を味わえるようになっている。
こうした人気IPをゲーム化する場合の多くはアニメがベースになっているが、「マンガボドゲ」ではその名の通り、漫画の素材がふんだんに活かされているところも特徴となっている。
たとえば、各カードに描かれているイラストやコマなど、細かい部分も含めて原作のイラストが採用されている。ひとつひとつのこだわりが詰まっているからこそ、持っているだけでも楽しめるような作りに仕上げられているのだ。
ゲームのルールは「鬼ごっこ」。漏瑚、花御、真人のコマを動かして、五条悟から逃げ回る
ゲームは4人または3人で遊ぶことができる。それぞれ微妙に異なるポイントもあるものの、大まかなルールは同じだ。『呪術廻戦 呪霊逃走 -渋谷事変-』というタイトルにもあるように、ゲームの舞台は渋谷で、商業ビルのように上の階と下の階に分かれているのが特徴だ。
ゲームのイメージとして一番近いのは「鬼ごっこ」だろう。
五条悟はいわゆる鬼役として、チート級の強さを駆使して呪霊を祓っていく。一方、ほかプレイヤーたちは祓われる側の呪霊として逃げ回ることになるのだ。ゲームはラウンド制で、ぜんぶで7ラウンドをプレイすることとなる。
五条はラウンドがすべて終了するまでに2体の呪霊を祓うことができると勝利。一方、呪霊側はラウンドがすべて終了するまでに逃げ切ることで勝利となる。
ゲームプレイの内容も、逃げ回って時間稼ぎをする呪霊たちをモチーフにしているとのこと。ラウンドが進むごとに夏油傑(と名乗る人物)のコマがラウンド数を示すコマを進んでいく。このコマが7ラウンド目を示すとき、すべてのプレイヤーが行動を終えたときに呪霊側が逃げ切っていることで、五条悟を「獄門疆」に封印したことになるというわけだ。
ゲーム開始時は、それぞれのプレイヤーが五条悟または、特級呪霊(漏瑚、花御、真人)のいずれかを選んで始める。最初に手持ちのカードから1枚を選び、他のプレイヤーに見えないように出したら準備完了だ。ここで五条悟が「まずはオマエから祓う」という、作中の名台詞を宣言してゲームがスタートするという流れだ。
各ラウンドは時計回りに1周していき、最後が五条悟のラウンドとなる。なお、五条は特例として、誰よりも早く動ける術式順転「蒼」のカードを出すことができる。これは呪霊が居る場所に瞬間移動できるというものだが、ラウンドの終わりに五条と同じ場所に呪霊がいると祓われてしまうため、彼の強さを再現したまさにチート級のカードとなっている。
そのため、各ラウンドの頭に五条に対して「蒼ですか?」と聞き、術式順転「蒼」のカードではなかったときに最初のプレイヤーからカードをめくって行動していくことになるのだ。
呪霊側は、五条悟と同じエリアにいると祓われてしまう。そこで、手持ちのカードのうち、すべてのプレイヤーに共通した「基本アクション」と呼ばれる「いどう」、「かいだん」、「とどまる」を繰り出して移動するほか、カードの効果で対抗するなどの戦略が必要となる。
「いどう」はひとつエリアを移動することができ、「かいだん」は、階段を使った移動をしたいときに使うカード。「とどまる」はその場に止まりたいときに使うカードで、呪霊でプレイしているときは「とどまる」ことで「呪力」と呼ばれるチップをひとつもらうことができる。
ちなみに、使ったカードは次のラウンドでは使用することができないが、ふたつ前のカードは手札に戻してふたたび場に出すことができる。特に五条悟が術式順転「蒼」を使えるかどうかは勝敗に大きく影響するため、常に確認しながら手札を選んでいくことになる。
チートすぎる五条悟から逃げるため、「術式アクション」を駆使。呪霊は人間のチップを「食べる」ことで呪力をゲットできる
「基本アクション」とは別に、キャラクターごとの能力として用意されているのが「術式アクション」と呼ばれるカードだ。なお、五条悟が同じエリアに居ても祓われないようにするための「領域展延」カードはどの呪霊も共通して使うことができる。
「漏瑚」は、移動に関する能力を得意としており、「高速移動」では、階段を含むふたつのエリアを移動することができる。このほかにも「火礫虫」を使えば五条を地上または地下の広場に移動させることが可能だ。「花御」はどちらかというとサポートタイプと言えるだろう。「花畑」は、五条が「いどう」または「かいだん」を選んだときに無効にしたり、「木の根」を使えば五条が術式反転 「赫」でエリアを繋げた場所を、元に戻すことができる。
呪霊をひとつのチームとして考えた場合、最も重要な役割を果たすのが「真人」だ。4人でプレイするときのみ使用できる「無為転変」は、祓われてしまった他の呪霊を復活させることができるという強力な能力だ。もうひとつの「人間落下」は、ボード上の好きなエリアに呪力と交換できる「人間」のチップをひとつ置くことができるというものである。
五条悟の「術式アクション」は、呪霊のいる場所に移動できる術式順転「蒼」と任意のエリアを繋げることができる術式反転 「赫」に加えて、もうひとつ虚式 「茈」がある。こちらは、その場から移動することなく、同じエリア内、かつ人間がいない地点にいる呪霊を祓うことができるというものだ。
呪霊の場合は「術式アクション」のカードを使うときに、「呪力」をひとつ消費する。さらに、呪霊は移動先のエリアに人間のチップがあると、「食べる」か「食べない」の二択を選ぶことができる。「食べる」を選択することで、呪力のチップをひとつもらうことができるのだ。
なお、五条が移動したエリアの人間は「救出された」として盤面から取り除かれる。ラウンドが進んでいくと必然と人間のチップの数は減っていくのだが、ここにも戦況が大きく変化する要素が盛り込まれているのである。五条は人間がいない地点にいる呪霊を虚式「茈」で祓うことができるが、それとは別にすべての人間のチップが居なくなると「無量空処」が発動し五条の勝利となる。
このように呪霊側にとって「呪力」は必要なものでありながらも、不必要に人間のチップの数を減らしてしまうと自ら不利な状況に追い込んでいくことになるのだ。
3人プレイのときは「メカ丸」が参加、ランダムに盤面の「人間」を救出できる
本作を3人で遊ぶときには4人プレイとは別のルールが設けられており、真人の「無為転変」取り除くほか、「メカ丸」とサイコロを使って遊ぶことになる。ちなみに、4人で遊ぶときは祓われてしまった呪霊のプレイヤーは観戦するしかないのだが、3人のときは残った呪霊のコマを好きな場所に置いて再開することができる。
メカ丸は3ラウンド目から使用可能な五条のお助けキャラのような立ち位置で、五条サイドのプレイヤーがサイコロを振り、その目の場所にいる人間を救出することができる。
今回の体験会では、最初に4人プレイで漏瑚を、次に3人プレイで五条を選んで遊んだのだが、残念ながらどちらも勝利することはできなかった。何度か遊んでカードの出しどころを理解し、相手の動きなども読めるようになるとより戦略的な立ち回りができそうだ。
特にゲームとして驚かされたのが、ラウンドが進んでいくうちにゲームが大きく変化していくところである。呪霊でプレイしているときは基本的に逃げることしかできず、五条を倒すといった手段がないことに悩まされる。
一方、五条でプレイしてみると、かなりのチートキャラということもあり序盤は余裕綽々なのだが、ラウンドが終盤に近づくと焦りが出てきて「このままでは負けてしまうのでは?」という考えが頭をよぎる。
呪霊と五条、どちらを選んでプレイしても、ヒリヒリとした感覚が味わえるのは本作の大きな魅力だ。また、ゲームとしてコンパクトなのもうれしいポイント。最長の7ラウンドまでプレイしても、1ゲームあたり20分ほどで遊べる。
そしてなによりも、『呪術廻戦』の世界観にどっぷりと入り込むことができる本作。原作ファンでボードゲームに馴染みのない方も、ぜひとも遊んでほしい作品である。
©芥見下々/集英社