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文句なしに“神ゲー”な『アクトレイザー・ルネサンス』を布教したい。文字通り“神”となって人々を繁栄へと導き、ときには神の雷で家を焼いて“区画整理”に励むゲームです。人口を増やすためには再開発あるのみだ!

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“神ゲー”……それは人生の中でも特にお気に入りのゲームを指すとき、しばしば使われる表現だ。そしてぼくにとっての“神ゲー”は、『アクトレイザー』だった。

1990年に発売されたスーパーファミコン用ゲーム『アクトレイザー』は、「プレイヤーが文字通りの“神”である」という思い切った設定が特徴の作品だ。プレイヤー(神)を信仰する人々を繁栄に導きながら、時にはやたらと難しいアクションパートに挑む……という、なかなか挑戦的なゲーム性を持っている。

これだけだと「神ゲーって、単に主人公が神だからって話かよ」と思われてしまうかもしれないが、それだけではない。

“神”だからこそ、直接的に人々を指示できるわけではない絶妙なバランス、異常に難しい代わりに達成感がすさまじいアクション部分。

そして人の手で反映していく都市の様子を“神視点”で見守る楽しさ……少なくともぼくにとって『アクトレイザー』は本当に面白い作品だったし、同時に深い深い思い入れのある、本当の“神ゲー”なのだ。

そんな『アクトレイザー』だが、なんと2021年にはリマスター版にあたる『アクトレイザー・ルネサンス』が発売されている。
Nintendo Switch、PS4、PC(Steam)、スマートフォンという現行のハードでプレイできるのはもちろん、さまざまな新要素も追加。リマスター化の発表時にはあまりの嬉しさに、思わず声を上げてしまったほどだった。

この『アクトレイザー・ルネサンス』、原作のプレイヤーの中にはゲーム進行のテンポや難度に違和感を感じた人もいるかもしれない。ただ、現代風に遊びやすくなっているのは間違いなく、これから『アクトレイザー』を初めて遊ぶ人、そしてシンプルに遊びごたえのある作品を求める人には文句なしにオススメできる。

というわけで、この機会にひとりでも多くの方に『アクトレイザー』の良さを知ってもらえたら、そんなに嬉しいことはないので、ぜひお付き合いいただけると幸いです。

文/ヨシムネ
編集/久田晴


時には雷で人々の家を焼き、さらなる発展を促す“神様視点”のまちづくり

原作の『アクトレイザー』は、2D横スクロールの「アクションパート」と、都市を発展させていく「クリエイションパート」を交互に進めていく珍しいシステムのゲームだ。そして、このクリエイションパートの出来が素晴らしく、当時遊んだ時にはぶん殴られたかのような衝撃を受けたことをよく覚えている。

神様の視点で雷を落とし森を焼いて土地を確保したり、日照りを起こして氾濫した土地を人々が住めるようにしたり。『シムシティ』のような都市の運営というよりも、どちらかというと都市ができるまでの「開拓」部分に焦点が当てられているので、都市を「軌道に乗せていく」楽しさが存分に味わえる。

そして、あくまでプレイヤーは人々を見守る“神”の立場であり、都市計画のすべてを思い通りに引けるわけではない点もポイント。

例えば、土地が余っていると人々は勝手に住居を建てていくので、位置取りが悪くなったり変な場所に住居が建ったりすることもある。そうなると人口が増えづらくなったりもするので、プレイヤー目線だと思うようにいかなくてイラッとしてしまう。

そんなときは雷を落として住居を潰すのだ。……はいそこ取り壊すから!食らえ天の雷を! ちょっとかわいそうだが、荒ぶる神になった気分を味わえるのがまた楽しい。

『アクトレイザー・ルネサンス』プレビュー・感想。ときには神の雷で家を焼いて“区画整理”に励む“神”ゲー_001
(画像はアクトレイザー | SQUARE ENIXより)

では、もう一方のアクションパートはというと……実は原作のアクションはやたらと難しい。大量の即死トラップに殺意を感じる敵の配置、ステージの最後に待つ強力なボスといった死にポイント満載の構成にくわえ、空中制御できないジャンプなど操作性にもクセあり。そして慎重な行動を許さない時間制限まで存在していたのだ。

ぼくが原作をプレイしたのは小学生のころだったので、当然のことながら難しすぎて、「少し進めては投げ出す」を繰り返し、長い長い時間をかけて遊んでいたと思う。そんな亀の歩みみたいな進め方でも最終的にはクリアでき、そのときの達成感は今でも覚えているくらい大きなものだった。

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(画像はアクトレイザー | SQUARE ENIXより)

ざっくりと紹介したが、やはりクリエイション&都市開拓の要素が『アクトレイザー』の大きな魅力だったと言えるだろう。いまの30代前後のゲーマーには『シムシティ』や『シヴィライゼーション』よりも、「本作からシミュレーションゲームにハマった」という方も少なからずいるのではないだろうか。

そんな思い出深い『アクトレイザー』が2021年、原作の発売から約30年の時を経て蘇ったのだ。

大きな変更点としては、アクション面に無敵時間の発生が強力な「バックステップ」「ダッシュ斬り」が追加され、高すぎた難易度が抑えられた。また神と人が一体となって都市を防衛するタワーディフェンス風の「魔群の侵攻」、そして人々の希望となる「星玉(せいぎょく)の英雄」とストーリーの存在も欠かせない。

というわけで、次項から本格的に、令和に復活したリマスター版『アクトレイザー・ルネサンス』の魅力を紹介していこう。

「魔群の侵攻」で生まれた、神の“区画整理”が人々にとっても必要な理由

先にも紹介したように、クリエイションパートはプレイヤーが“神の視点”で遊ぶ『アクトレイザー』の象徴的な存在だ。プレイヤーは神の使者である天使を遣わして人々に道や住居・田畑などの構造物を作らせるとともに、落雷や降雨などの自然現象を引き起こす「奇跡」で人が住めるよう土地を整備し、最終的に魔物たちの発生源を封じることを目指す

上記の基本的な流れは今作『アクトレイザー・ルネサンス』でも変わっていない。

しかし、今作では「魔群の侵攻」と呼ばれるタワーディフェンスの要素が追加された。魔物たちはクリエイションパートにおける時間の経過やクエストに応じて地上に直接現れ、住居や田畑、そして人々の信仰を集める「神殿」を破壊しようと迫ってくる。

人々は自分たちの故郷を守るため、魔物の通り道をふさぐ「防護柵」と建築資材の生産施設「工房」を建造。天使の導きに従って「門砦」や「弓塔」などの防衛施設を造り、後述する「英雄」や奇跡と組み合わせながら魔物を迎え撃つ。

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ただし、魔物には空中を飛行するものや門砦・工場などの施設を優先して狙うものもいるため、ときには住居を壊して防衛施設のスペースを確保したり、事前に生産施設を壊して移築を促したりしなければならない。なぜなら神は人々に行動の指示を直接出せないからだ。

オリジナル版でもわざと奇跡で住居を壊して人口を増やす“区画整理”のテクニックは存在した。が、プレイヤー視点ではちゃんと目的のある行動とはいえ、「ゲーム内で生きる人々にとってのメリット」は大きくなく、人口が頭打ちとなった際の八つ当たり的な意味合いも強かった。

しか『アクトレイザー・ルネサンス』では魔軍の侵攻の追加により、「故郷を守るための備え」を促す“凶兆”としての理由付けが加わったとも解釈できるだろう。

人間くさくもありがたい存在「星玉の英雄」が物語に深みを持たせる

オリジナル版『アクトレイザー』では、ピクセルアートで天使や人々が表現されていた。人々の衣装に地域差はなく、プレイヤーはテキストから想像力を膨らませることで物語を補完していた。

一方、『アクトレイザー・ルネサンス』では地域ごとに異なる人々の衣装や天使のイラストが実装されたほか、6人の「英雄」に焦点を当てた物語も展開されていく。

天使の“託宣”を受け取れる英雄たちはみな人々への被害を未然に防ぐため、導きに従って魔群の侵攻で活躍する。ただし、彼らもまた面倒くさい一面を持つ人間であり、それぞれの葛藤を抱えているのだ。

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▲最初の地で出会う英雄・フィロトス。自らが力を貸すことで人々が思考停止に陥ることを強く危惧している。

彼らは英雄であるにもかかわらず、「英雄視されたくない」「神に頼らず自分だけでやっていきたい」「英雄になるつもりはさらさらない」など、人間らしい悩みや葛藤を抱えているのである。神の視点からそうした彼らの姿を見ていると、なんだか愛おしくなってくる。

しかし、はじめは人々と距離を取っていた英雄たちも、物語を進めていくと己の信念や使命感が芽生え、人々の心もまた英雄の思いに応えるかたちで変化していく。

最終的に人々は神の手を必要としなくなる。が、必要とされなくなる寂しさだけでなく、同時に彼らが強く成長したことへの喜びや誇らしさも感じられるのだ。これは親心ならぬ“神心”……とでも言うのだろうか。

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▲フィロトスの願いに応え、共に戦うことを決意する人々。
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▲やがて人々の信仰が集まり、かつて失われた神の力も呼び覚まされていく。

「純粋な難しさ」から来る面白さよりも、「操作を使いこなす」面白さを追求したアクションパートの変化

上でもお話ししたように、オリジナル版『アクトレイザー』のアクションパートはたいへん難しかった。

一方、『アクトレイザー・ルネサンス』ではジャンプの軌道を調整できるようになったほか、時間制限も無くなり、即死だったトラップ・落とし穴は大ダメージへと変更。リトライ時は道中やボス直前に設置された石像からやり直せるようになり、かなり遊びやすいものとなっている。

加えて、新たな攻撃アクションもいくつか追加されており、オリジナル版から強力であった魔法の一部には「攻撃の属性を一時的に変える」便利な効果も含まれている。

※最初に取り戻す「炎の魔法」は火球を放つだけでなく、一定時間のあいだ攻撃に炎属性を付与できる

なかでも、最も大きな要素は新たに追加された「バックステップ」である。今作では一部の攻撃や魔法に一時的な無敵の効果を含んでいるのだが、なかでもバックステップはほかのアクションと比べても無敵時間が長く発生する。

バックステップが終わったあとの動きはじめにも無敵の効果はわずかに残るため、ボスモンスターの繰り出す攻撃やトラップを無傷で回避できるのだ。

また、バックステップで後退する方向はキャラクターの向きにあわせてコントロールできる。敵に背中を向けてバックステップを発動すると接触ダメージを無効化しつつ相手の背後へ回り込めるため、大きな攻撃のチャンスを作り出せる。

上記のように、バックステップはうまく使いこなせれば非常に強力だ。ストーリーの間に習得することで、ゲームクリア後に解禁される「スペシャルモード」の高難度なチャレンジでも役立つことだろう。

見ているだけでなく、活動限界が来る前に特殊な状況下でコアの破壊を目指す遊びへ変わった「魔物の巣」の封印

もうひとつ、『アクトレイザー・ルネサンス』での大きな変更点が、ゲーム中のおもな目的である「魔物の巣」の封印の方法だ。

オリジナル版『アクトレイザー』では天使に導かれた人々が魔物の巣を直接封印していたが、今作『アクトレイザー・ルネサンス』のクリエイションパートでは人々が「悪魔の巣」を封印する際に、追加のアクションパートとして神みずから巣のコアを壊す表現も加えられている。

ゲーム序盤における封印のアクションパートは通常のモンスターが妨害するだけのシンプルなものだが、ゲームを進めていくとボスをあしらいつつコアの破壊を目指すものや、コア自体の位置があちこちへ移動するものも登場する。

また、アクションパートで廃止された時間制限の要素は巣の封印に移される形で活用されており、中盤以降の封印シーンでは「敵をうまくあしらいつつ、制限時間内にコアへダメージを与える」行動の効率化を図る戦略性も生まれてくる。

特にコア自体が移動する巣の封印では、魔法による属性の変更やコアの攻撃中に再出現した通常モンスターや中ボスの排除も重要となるだろう。

本作『アクトレイザー・ルネサンス』が発表された2021年9月当時、「ニンテンドーダイレクト」を見ながら仕事をしていたところ、思わず「あ゛っ!」と驚きの声をあげたことを覚えている。一緒に作業をしていた編集者からは「世代じゃなくないですか?」と怪訝な顔をされた。

『アクトレイザー』は1990年発売のゲームソフトで、ぼく自身は1995年生まれ。実際そのとおりだ。

しかし、ぼくにとっての『アクトレイザー』は、10歳年上の兄が進学で早々に実家を離れた際に残されたモノのひとつ。両親の間でも複雑な家庭事情があった少年期に、貴重な娯楽を与えてくれた思い出のソフトであったのだ。

実際に遊んでみた『アクトレイザー・ルネサンス』は「魔群の侵攻」や「魔物の巣の封印」などの追加要素によってオリジナル版とは異なるゲームテンポになっていたが、2022年5月に配信されたアップデート後、2週目以降のプレイではクリア済みの「魔群の侵攻」をスキップ出来るようになり、原作を知っている人も違和感を軽減しつつ楽しめるようになった。

また、クリエイションパートのゲームテンポも改良されており、アイテムの出現頻度や一部イベントの発生に必要な人口の条件も引き下げられている。

上記のほか、原作の骨太な遊びごたえが好きな人向けのオプションとして、バックステップを含む追加アクションを封じて原作に近い手触りで戦いを楽しめる「アクションスイッチ」や、「スペシャルモード」だけで遊べる最高難度“HEAVEN”も用意されている。

『アクトレイザー・ルネサンス』で『アクトレイザー』にデビューする方も、ゲームに慣れてきたらぜひ一度スペシャルモードに挑戦してみてほしい。旧作が持っていたハードコアな空気感を味わえるほか、音楽家の古代祐三氏が手がけたBGMの新旧聴き比べもおすすめだ。

© 1990, 2021 QUINTET/SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
© YUZO KOSHIRO

ライター
2019年11月に電ファミへ加入。小学生の時に『ラグナロクオンライン』に出会ったことがきっかけでオンラインゲームにのめり込む。コミュニケーション手段としてのゲームを追い続けている。好きなゲームは『アクトレイザー』『新・世界樹の迷宮2』『GTFO』など。
Twitter:@fuyunoyozakura

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