原作ファンからするともうちょっと“黒さ”が欲しかった……が致し方なし
ただ一方で、筆者のように『サウスパーク』の“黒さ”に魅力を感じるファンからすると、物足りなさを感じるのも事実です。
というのも、『サウスパーク』らしいブラックジョークや口の悪すぎる会話、下ネタなどの過激な表現は原作に比べるとかなり抑え気味になっているからです。
原作ファンであるほど「『サウスパーク』のゲームなら、ギリギリを攻めてくれよ!」とも思ったのですが……ここで、冒頭で紹介したカートマンの悪行を改めて見てみましょう。
<カートマンが作中で行った悪行の一部>
・とある男に復讐するため、両親を殺して食べさせる
・パラリンピックの賞金を目当てに障がい者を装って出場
・エイズに感染したことをカイルに馬鹿にされたから無理やり感染させる
・第2のアドルフ・ヒトラーになろうとする
・クトゥルフと仲良くなって世界中を破壊しまくる
どう考えてもまずいです。本当にありがとうございました。
このような表現をゲーム内でやろうとしたなら、間違いなくCERO Z(18禁)は不可避。場合によっては発売できなかったかもしれません。仕方がなかったんや……。
なお、本作のCEROレーティングはC(15禁)となっているので、未成年の方も安心して遊べます。
筆者イチ押しの「ケニー・マコーミック」を紹介させてくれ。いやマジで頼む
ここまで読んでいただけたのであれば、概ね『サウスパーク』がどんなものか把握いただけたのではないかと思います。
ということで見出しの通り、ここからは原作アニメ『サウスパーク』の魅力を“黒さ”を含めて紹介していきたいと思います。
筆者の一番のお気に入りは「ケニー・マコーミック」(以下、ケニー)なんですが、これが本当に良いキャラをしてまして……。コイツのおかげで『サウスパーク』にハマったといっても過言ではありません。
上でも少しお話したように、このキャラはかなりのド変態で、サウスパーク随一の貧乏家庭に住み、そして“やたら死ぬ”子どもです。最初に貼った動画「Oh My God! They Killed Kenny! – SOUTH PARK」を見れば分かるんですが、ケニーはマジでたくさん死にます。エピソードが300話以上もある中で確実に100回は死んでいます。
ちなみに公式のFAQ曰く、「貧乏だから死んでる」らしいです。ひでえ話だ……。
少しだけネタバレなんですが、実はケニーは死ぬと自分の記憶を保持して生まれ直し、周りの人は彼が死んだことに関する記憶が無くなる、というガチの特殊能力持ちです。基本的に1話完結型のストーリーなので、原作でこの設定が活かされる機会は皆無に等しいんですが。
ということで、そんな筆者イチ押しなケニーの魅力を堪能できるエピソードを2つほど紹介させてください。
※以下、「シーズン○○エピソード○○」を「S○○E○○」の形で略して表記します。
まず、S09E04「Best Friends Forever(邦題:ケニーは救世主!?)」とS15E14「The Poor Kid(邦題:貧乏ナンバーワン)」。このエピソードは特にオススメしたい2本です。
「Best Friends Forever」はケニーが脳死状態になり、「彼の遺品であるPSPを貰うため」に延命治療の機械を止めるよう動くカートマンと、友達だからと機械によって生かし続けるべきと考えるスタン&カイルが対立する、というような話です。
ちなみにこちらは『サウスパーク』が初めてエミー賞という、テレビ番組における世界最高峰の賞を受賞することになったエピソードでもあります。
カートマンの動機はマジで終わってますが、それはそれ。
次に「The Poor Kid」ですが……このエピソードの前に絶対に観ていただきたい話があり、それが先ほども紹介した子どもたちがスーパーヒーローごっこをする「Coon and Friends」回(S13E05・S14E11〜13)。ネタバレ配慮のため詳細は伏せますが、これらのエピソードでは「ミステリオン」というキャラクターが登場しまして、あらかじめ履修しておくと「The Poor Kid」をいっそう楽しめるようになります。本当に。
さて、話を戻すと「The Poor Kid」ではケニーの父親と母親が捕まってしまい、残されたマコーミックの子どもたちが別の施設に住むことになったところから始まります。
親を無くした子どもたちが集まる施設の内情がかなりヒドい中、「ケニーが身を挺して妹を守る」姿が描かれるんですが、これがもうケニーの優しさとカッコよさが爆発したエピソードなんですよ。本当に良いんです、この話は。語彙力を失ってしまいましたが、とにかく良いんです。
日本で放映されなかったエピソード(当然)も
そしてもちろん、ケニーが主役ではない回もめちゃくちゃ面白いです。
例えば、S03E11「Chinpokomon(副題:チ◯ポコモン)」。タイトルからしてヤバい雰囲気がプンプン香りますね。
内容としては、某黄色いネズミを彷彿とさせる「チュウチュウネズミ」が出たり、子どもたちが日本語で「チ◯ポコが大好きよー」と叫んだり、ケニーが光過敏症発作で倒れたり、子どもたちが真珠湾を爆撃しようと画策してたり。ほかにもいろいろマズいところだらけだったので、流石に日本では放送されませんでした。
もうひとつ日本関連のエピソードをば。
S08E01「Good Times with Weapons(邦題:キケンなニンジャごっこ)」は『サウスパーク』の中では割と普通めなエピソードなんですが、作中に登場する歌「Let’s fighting love」こと「素晴らしいチ◯チンもの」の歌詞がとにかく酷いんです。
【歌詞】
素晴らしいチ◯チンもの
金玉の髪ある
それの音 さるぼぼ
いいえ!忍者がいますHey Hey Let’s Go 喧嘩する
大切なものを protect my balls
僕が悪い so let’s fighting
Let’s fighting love…
Let’s fighting love…この歌ちょっと馬鹿
訳が分からない
英語がめちゃくちゃ
大丈夫 we do it all the timeHey Hey Let’s Go 喧嘩する
大切なものを protect my balls
僕が悪い so let’s fighting
Let’s fighting love…
コレですよコレ。
英語圏ネイティブの人が日本のアニソンやJ-POPでよくある英語の文法がめちゃくちゃに感じることを皮肉った歌になっているんですが、かなり完成度の高さとカオスすぎる歌詞から『サウスパーク』の中でもかなり人気な部類の歌として知名度を持ってます。
25周年オーケストラで歌われた動画も公開されてるので良かったら聴いてみてください。
25周年コンサートで演奏される「Let’s fighting love」
(いい意味でも悪い意味でも)心が揺さぶられるエピソードが多い
さて、ここからは筆者が見た中でも特に感情が(いい意味でも悪い意味でも)揺さぶられたエピソードを紹介していきます。
S05E04「Scott Tenorman Must Die(邦題:カートマン・レクターの鬼畜晩餐会)」は、あの残虐非道なカートマンが復讐相手の両親を殺してハンニバル・レクター博士のように料理を作り、騙して食べさせる話です。
終盤ではカートマンは復讐の計画を明かし、目的の為なら殺人もいとわず、入念に考えられた計画をこなしていく様子が描かれます。しまいには泣いている男の涙を舐めて「甘くて美味しい」なんてことも言う。えげつねぇ。
そんなグロテスクな話もある一方、爽快に笑えて面白いエピソードも。
S09E05「The Losing Edge(邦題:頑張れ!?リトル・リーグ)」では、言動から立ち振る舞い、何もかもが無茶苦茶過ぎるスタンの父親「ランディ・マーシュ」が活躍します。
この話では、早く負けて家に帰りたい子どもたちと少年野球に熱中する勝手な親たちの対比、そして各地でヤジを飛ばして乱闘をしたいだけのランディがめちゃくちゃに面白いんですよ。こればかりは、百聞は一見に如かず。ぜひ実際に見て確かめてみてほしいです。
ほかにもS07E11やS21E2など、非常に良いエピソードはいくらでもあるんですが、キリがないのでそろそろ止めておきます。『サウスパーク』を知る上では外せないエピソードをピックアップした……つもりなので気になったらぜひご覧ください。
『サウスパーク』の入門編としてオススメ。日本語字幕もあるので、布教にも良い
『サウスパーク:スノーデイ!』はかなり表現が落ち着いているとはいえ、各キャラクターの個性や軽快なトークなどの『サウスパーク』らしい点はそこかしこから味わえますし、前述したようにゲームとしてはかなり遊びやすい作品となっています。
そのため「ブラックジョークや過激な表現は苦手だけど『サウスパーク』を知りたい」という方への『サウスパーク』入門編としたり、全く知らない方に布教するための初手としてもオススメできる作品だと思います。
というのも原作アニメ『サウスパーク』シリーズは300話以上存在するうえ、日本向けの展開も少ないので真正面からオススメするのはハードルが高い……という事情があるからです。『サウスパーク』のゲーム化作品はこれまでにもいくつか展開されてきたのですが、日本向けには販売されなかったり、日本語には対応していなかったり。
ところが、本作は日本で遊べるどころか「日本語の字幕」まで完備しています。そういった背景もあり、日本人の『サウスパーク』ファンとしてはただただ嬉しいばかりです。
本作で初めて『サウスパーク』を知り、少しでも興味を持っていただけた方はぜひアニメ本編も見て“沼”(こちらがわ)に来てください。『サウスパーク』の沼は暖かいですよ。
『サウスパーク:スノーデイ!』はPC(Steam)版が3960円、PlayStation 5版とNintendo Switch版が4389円、Xbox Series X|S版が4450円で販売中です。
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『サウスパーク:スノーデイ!』公式ポップアップストア
https://www.instagram.com/p/C6MZkkjssFk/
期間:2024年5月3日(金)~2024年5月5日(日)
時間:11:00~20:00
場所:渋谷 ミヤシタパーク サウス3F
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※本稿は「THQ Nordic」の提供でお届けします。