不思議と落ち着いていた。
心が無風。まさに凪。逆に焦る気持ちがない。
この日、電車の中で目を覚ました私は、普段から使っているバッグがないことに気づいた。
その現実を受け入れることができないためか、心は落ち着き払っていた。その数分間だけは。
数分後。濁流の如き危機感が全身を駆け巡る。
「やっちまった…」
バッグが無いということは、昨晩の所有物が全て無いということ。
つまり、財布がない。財布がないということは、お金がない。身分証明書もキャッシュカードもクレジットカードもない。さらに家の鍵もない。お気に入りのイヤホンもない。Ankerの充電器もない。大切なものもない。何もない!
そして、気付く。血の気が引く。
スマホもない。
ヤバい。いや、ヤバいという言葉ではもう済まされない。寒い。もう何かとにかく寒い。最近ちょっと暑いのに寒い。
今日は、あれからしばらく経った今だからこそ書ける「備え」の話を書く。
プライベートの失敗を全世界に発信してでも、皆さんに伝えたいことがある。そう、追跡できるグッズを買ってほしい。私のようにならないために…!
文/川野優希
自業自得である
結論から書く。
結局、バッグは見つかっていない。バッグに入っていたものは全て失ったままだ。
今日、ここで伝えるのは、【自分の持ち物を追跡できる】ことの重要性のみ。それだけだ。
「そこまでしなくても大丈夫♪そもそも失くすわけ無いし♪」そう思うでしょ?私もそう思ってましたよ…。あの日まではね。
ここからは、荷物を紛失した1日の流れについてまとめていく。
もしも、カバンや財布に追跡できるグッズを入れていたら、私の人生は結構違ったかもしれない。
少なくとも色々な人に迷惑はかけなかったはずである。
朝6時頃。
電車内で起きた私はバッグがないことに気付いた。
この時、頭に最初に浮かんだ言葉は「バッグがないねぇ」だった気がする(やっぱり最初は余裕あるな)。
追い打ちのように、スマホも持っていないことに気付くと、いよいよ背筋が凍りつく…!
とりあえず、最寄りの駅で降りて、ベンチに座る。そして、頭を抱える。
だが、バッグをどこで失ったのか?ここの記憶がない。盗まれたのか。落としたのか。全く記憶がない
※記憶がない理由は聞かないで欲しい。飲みすぎた。自業自得だ
その後、駅員さんに事情を説明すると、あっさり出してくれた。お礼を伝えて、自宅へと向かう。
この時、頭に浮かんでいるのは、「家に入れないんだよなぁ」ということ。
とてもじゃないが、上を向いて歩けないため、とぼとぼと歩いて自宅のマンションへ。
ここで救いの神こと管理人さんに出会う。
引っ越したばかりだったが、数回ご挨拶していいたため「どうしました?」と優しくお声がけいただいた。平常心を装いつつ、事情を説明。
管理人さんの携帯電話をお借りして、不動産管理会社へ連絡。スペアキーをお借りする段取りとなった。
管理人さんは交通費に使って下さいと2000円を貸してくださった。涙が出そうだった。
鍵を借りに管理会社へ行くぞ!と思ったのもつかの間。続いての関門が現れた。
スマホがないと乗り換えすら怪しいし、グーグルマップも使えないから目的地に到着するのも一苦労。
スマホが便利すぎるのか。スマホがないと生きられない体になったのか。
そんな心の反復横跳びを繰り返しつつ、スペアキーを受け取り、自宅のマンションへ。
ソロモンよ!私は帰ってきた!
家に入るなり、iMacを起動。
【iPhoneを探す】を使用し、スマホの場所を特定した。
大事なことなのでもう一度書く。
【iPhoneを探す】を使用し、スマホの場所を特定した。
いや、もう一度だけ…!
【iPhoneを探す】を使用し、スマホの場所を特定した。
そう、iPhone“は”探せたのだ。
私のiPhoneはとあるタクシー会社さんにあることが分かった。自宅に置いていた社用のスマホで電話をかけて事情を説明し、回収へと向かう。
この時、お昼すぎだった気がする。少し暑い日だった。社用携帯で何事もなかったかのように、メール対応をしている時、現実を少し忘れられた。
ただ、スマホから現実に目を向けると、「ヤバいなぁ」という言葉しか出てこなかった。
タクシー会社に到着。スマホはあったが、バッグはなかった。とはいえ、一歩前進である。
スマホを回収すると、景色が変わる。
ICカードを含めた決済システムが使用可能になった(社用のスマホはメールとチャットツールと電話以外の機能を設定していなかった)。これがまずデカい。
その足で、最寄り駅の交番へと駆け込む。この瞬間まで本当に余裕がなかったからね…。
かくかくしかじか…と話して、探していただくもその時点(今も)では発見されず。
この時、色々と質問されている間、私の頭の中に浮かんでいた言葉は「詰んでるよな俺…」だった。
その後、各鉄道会社にも電話を入れたが、全て該当なし。
電話をしながら「あぁ、iPhoneと同じように、バッグや財布も追跡できればなぁ..。」そんなことをずっと考えていた。
備えあれば憂いなし
過去のことは振り返ってもしょうがない。未来を変えていこうよ!
この正論が痛い。刺さる。自業自得だと分かっていても、凹んでしまう。
だって…
財布だけで見ても、40歳の節目に買った財布も出てこないし、財布にしまっていた大切なもの(ライブの半券)も出てこない。
本当に最悪って言葉が一番しっくり来る。
この日、仕事で打ち合わせが入っていなかったり、社用のスマホは自宅に置いていたり、PCを持っていなかったりと不幸中の幸いはいくつかあった。
ただ、バッグや財布を無くして、良いことなんてあるわけない。最悪だよ、本当に最悪。
敢えて一つあるとすれば、この失敗談を世界に向けて発信し、追跡グッズの導入を布教を体験談から伝えられる。この一点だけである。
先ほど、【iPhoneを探す】を使用し、スマホの場所を特定した(4回目)。と書いた。
この機能は、イヤホン(AirPods)でも使える。つまり、イヤホンを『AirPods』にしていたら、追跡ができたということである。
ムキーーーーー!!!!
以前、イヤホンを買い替えた時、「前は『AirPods』だったから、今回は違うイヤホン買うかー」なんて、夕飯の献立を考えるノリで買い物をした日が懐かしい。
過去を攻めてもしょうがないが、やっぱり追跡できる仕組みを導入する意味でも『AirPods』にしていた方がよかったなぁとは思う。
…よかったなぁとは思う。
じゃねぇよ!!!
今この瞬間、過去に戻れるなら前日に絶対導入するわ。
バッグや財布もメチャクチャ痛いけど、普段から肌身離さず持っていた大切なものが無くなってしまったことが辛い。これが本当に辛い。
・金の雨が財布に降るように入れていたオカダ・カズチカ選手の“レインメーカードル”
・あなたに会いたくてここまで頑張ってきた!という方の名刺
・そして、一生の思い出になっている声優ユニットの解散ライブのチケット
その全てが無くなってしまったのだ。ショックを通り越して、修羅だわ。もう阿修羅すら凌駕する存在になったわ。
大切なものを持ち歩いていたのも自業自得。そもそもバッグを無くしたのも自業自得。全てが自分のミス。ぜーんぶ自分が悪い。後悔しかない。
ただ、そんな失敗をしたからこそ、皆さんに伝えたいことがある。マジで追跡できるグッズを買ってほしい。
私は『AirTag』を買った。4個買った。マジで。財布とキーケース。カバン2つに取り付けた。
二度とあんな思いはしたくない。
んで、誰にもこんな思いはしてほしく無いんだよ。辛すぎるから。本当にキツいよ。
なので、強く、表に出て、真っ直ぐに言わせてもらう。
『AirTag』(あるいは追跡できるグッズ)を買ってくれ。付けてくれ。頼むから。
この記事読んだ後、買わずに紛失したら絶対に「やっちまった!!!!!!」と思うはずだから。
後悔する前に頼む。あんな思いをするのは私だけで十分だ。
最後に。
こんな失敗をした息子に、母は「命があってよかったねぇ」と言った。器がデカい。母は偉大である。