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見た目は硬派、中身はシューティング愛、その名は『デビルブレイドリブート』。初心者には救済システム多数、上級者にはミスしたら即死モードを与えるホスピタリティと愛あふれる作品

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縦スクロールシューティングゲームというジャンルは、昭和から平成に至るゲームセンター文化の中でも、格闘ゲームと並んで特に繁栄を極めたジャンルであると言えるだろう。数々の名作が非常に短いスパンで次々と発売され、それほどゲームに慣れ親しんでいない人々でさえもゲームセンターで100円硬貨を投入してシューティングゲームをプレイしていた。

そんな全盛期を越え、システムの難解化と難易度のインフレ、そして他ジャンル(格闘ゲーム等)の台頭によって、シューティングゲームは以前の勢いを失ったと考えられる。ゲームセンターという文化が昔ほど一般的ではないものになりつつあることは寂しく感じるが、仕方のないところだろう。

本作『DEVIL BLADE REBOOT』は、シューティングゲームで育った(もし違ったらすみません、しかしそれだけの愛を感じる)作者・シガタケ氏による、疑いなくシューティングゲームが好きだという「愛」による作り込みが結実した傑作である。

それでいながら、シューティングの楽しさを誰でも味わえる作りによって「ふだんシューティングを遊ばない人こそ遊ぶべき作品」としてもおすすめできる。コアなファンと初心者、両極端ともいえるふたつのプレイヤー群をシューティングへの愛が包むのである。

『デビルブレイドリブート』レビュー:初心者も上級者も包み込む「シューティング愛」にあふれるタイトル_001
▲『DEVIL BLADE REBOOT』

文/hardwired


敵の攻撃を引きつけ、大きく避ける快感。爽快に動く自機で敵の至近距離まで近づくスリル満点のプレイが叶う

『DEVIL BLADE REBOOT』は、グラフィックデザイナーであるシガタケ氏が現代のゲームエンジン『Shooting Game Builder』にて制作した作品だ。作品名に「REBOOT」とある通り、本作はPlayStation用シューティングゲーム作成ソフト『デザエモン+』にて制作した『デビルブレイド』を、同氏が完全リメイクしたものとなっている。

いわゆる制作ツールの『Shooting Game Builder』製ではあるものの、「制作ツール」感というべきか、テンプレート感や素材の使いまわしを感じる部分は皆無である。細部まで描き込まれた秀逸なグラフィック、上質で高揚感を煽るBGM、ゲームを構成する要素のどれをとっても一級品だと感じた。

プレイを開始してまず第一印象として強烈なのは、自機の移動速度の速さだろう。「うっかり敵機や攻撃に突っ込んでしまうのではないか」と少し不安になるほど速いのだ。しかし、プレイするほどその速度の必然性に気づく。

例えば、いわゆるCaveシューティング【※】に代表される、こちらに迫り来る密な弾幕。これを丁寧に避ける場合には自機はかなり遅い必要がある。しかし本作は弾幕よりもレーザー等の特殊攻撃が多く、大きめに迂回してかわすとなると自機のスピードが必要だ。

※株式会社ケイブが手がける『怒首領蜂』や『虫姫さま』などの、高密度な攻撃を避けながら戦うシューティングゲーム。

本作の自機のスピード感は、初心者への配慮とも言える。弾幕の中央を精密にかわしながら突入するのは経験者の動きであり、初心者であるなら大きく迂回して安全にかわそうとするはずだ。その挙動が無理なく行えるよう、この速度の採用になったと思われる。

また、驚くべきことに「硬すぎる」または「柔らかすぎる」と思う敵が全くと言っていいほどいない。雑魚敵は見た目通りに蹴散らせるし、中型機は攻撃パターンを見ないといけない程度には硬い。これは当たり前のようも思えるが、実際にはすごく難しいことだ。作者のシューティング愛とその豊富な経験による、職人芸的作り込みといえるだろう。

ゲーム内コインでコンティニュー数を増やせるから、シューティングゲーム初心者でもクリアできる。コンティニュー上等でカッコいい演出とBGMと凄いボスを見に行くべき

本作はプレイするたびにそのスコアに応じてゲーム内コインを稼ぐことができ、それを使用することで各種要素をアンロックできる。BGMや各種イラスト、ゲームモード解禁、設定資料なども用意されているが、なにより大きいのは「コンティニュー数が増やせる」ことだろう。

これは「初心者でも自らのプレイでステージを進んでいける」ということであり、これは攻略上、そしてプレイのモチベーション上とても重要な要素である。ステージを研究して上達を志すのは一旦後回しでいい。コンティニュー上等でカッコいい演出とBGMと凄いボスを見に行くべきだ。

もちろん、プレイに慣れた後にワンコインクリアを目指したくなったら設定でコンテニューをオフにする事も可能。よりヒリヒリするプレイも楽しめる。

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▲旧作を再現できる「レトロモード」などの追加要素もうれしい

また、基本的にはゲーム中に獲得できるアイテムはボムストックが1個追加される「ボム」と自機がシールド装備状態となる「シールド」の2種のみだ。

なお、シールド装備中は被弾してもシールドが割れるだけでミスにならないうえ、装備中にはシールドの代わりにボーナスアイテムが出現、獲得することでスコアを獲得できる。つまり、シールド装備から次の補給までにミスをしなかった場合の、ボーナススコア的なシステムである。

これらは1ステージに複数回補給される。昨今のシューティングゲームでは考えられないほどの高頻度だろう。そのうえ、ステージクリア時にボム数が2以下の場合は、3まで回復する。

そしてこの手厚い補給が、プレイヤーの積極的な行動を促すデザインとなっているといえるだろう。被弾してもミスにならないシールドがあるなら、多少危険な弾幕にも臆することなく立ち向かえる。

ノーマル難度ではボムを打ったときに自機がシールド装備になるうえ、ボム自体も先述のとおり十分に補充される。気兼ねなくドンドン打っていくプレイスタイルも十分成立するだろう。

イージー難度では被弾した際に自動的にボムを打ってくれることでミスをなかったことにする、いわゆる「オートボム機能」が装備されている。また、微々たる違いではあるが、オートボムより手動ボムの方がスコアペナルティが低く設定されている。先述のノーマル難度と比べて特筆すべき点として、オートボム発動時はシールド装備に「ならない」。これは手動ボムを入力する動機となり、上達につながる要素といえるだろう。

なお、ハードはボムを打ってもシールド装備がつかず、緊急回避としての運用となる。まさにハードといったシューティングファン向けの難易度だ。

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▲カプセル状のものが各アイテム。思っている倍は補給される

また、ボスやボス級の中型機はそれぞれ特徴的な攻撃パターンを持っているのだが、その中でも理不尽な攻撃といえるものはほとんどない。その理由の一端として、ゲームシステム上の攻撃予告がしっかりある点が挙げられるだろう。経験で上達していく要素としてしっかりデザインされている。

また、アップデートによって「ボスオンリーモード」が追加された。このモードでは1〜5面のボス単体と戦うことができるため、苦手なボスがいればこのモードで練習することも可能だ。

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▲この予告線のおかげで理不尽なミスはかなり少ない

さらに本作にはいわゆるパワーアップアイテムが存在せず、自機の攻撃力は最初から最大である。これはミスした際にパワーアップを取り戻していく、いわゆる「復活パターン」をしなくてもいいという配慮によるものと考えられる。ミスした際にこのパターンを遂行しなければならないというのは、初心者にとってかなり負荷の高い要素であるだろう。

敵機に接近する危険と引き換えに、すごい勢いでスコアが増える危険行為推奨システム「バーサクシステム」

本作では、敵機を接近して撃破することで得点に倍率がかかる「バーサクシステム」というルールが採用されている。接近して撃破するごとにゲージが増え、時間経過で減少していく。ゲージがなくなるまでは敵の攻撃パターンがより強力かつ危険になると同時に、得点に倍率がかかり続けるというシステムだ。つまりこのゲージを積極的に維持することで、すごい勢いでスコアが増えていくことになる。

自機の武装は歴代のシューティングゲームを鑑みてもかなり強力な部類である。なので、ワイドショットをメインとした安全重視のプレイも十分に可能だ。いったんはこのプレイスタイルで経験を積み、だんだんと自分にできる範囲でこの危険なプレイに足を踏み入れてスコアをジャンジャン稼いでいくのがいいだろう。

こうして稼いだスコアはゲーム中での残機追加(エクステンド)、要素アンロック用のコインを稼ぐことにもつながる。これは「うまくなりたいというストイックな動機」以外でアグレッシブなプレイに挑む動機づくりに成功していると言っていいだろう。生き残りやアンロック用コイン稼ぎでも危険行為をする価値は十分にあるし、そうしたくなるよう設計されている。

さらにスコアを稼ぎたいプレイヤー向けに、ボムボタン長押しによる「ブースト」システムもある。バーサクゲージによる倍率にさらにブーストをかけるシステムで、適切に使用できればスコア稼ぎは加速度的に伸びていくことになる。ブースト中に被弾した場合はダメージなどのペナルティを受けることはなくブーストが強制終了するのみ(但しイージー・ノーマル限定)。積極的に活用していこう。

そして難易度「インフェルノ」はバーサクを一定期間発動させないと強制的にミス扱いになるという超危険行為強制システムとなっている。他難易度と比べてもかなり別ゲーの様相となるので、腕に覚えのあるプレイヤーはぜひ挑んでみてほしい。

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▲自機周囲の同心円状の表示が倍率がかかる距離を示している

誰もがたぎる演出と、古参シューティングゲームファンもニヤリとするオマージュ。「カッコいい」がプレイ中の高揚感をさらに加速させる

ここまで本作の「ゲームプレイ」部分にフォーカスしてきたが、最後に言わせてほしい。

ボスの演出がカッコよすぎる

重厚感のある効果音とともに変形や合体する場面は、シューティングゲームファンならずともたぎる演出ばかりだ。下記は個人的に「最高!」と思った場面をピックアップしたものだ。

また、古くからのシューティングゲームファンへの目配せもここに書き記したい。2面の艦隊からのロックオンレーザーは明らかに『レイストーム』のオマージュで、『R-TYPE』を思わせる対空レーザーを打ってくるボスもいる。『斑鳩』的な回転障害物ボスもいるし、『グラディウス』を思い出す高速スクロール面すらある。

本作はゲームプレイとあわせて、見ただけでわかるグラフィックの部分でも素晴らしい。大量の攻撃をすり抜ける高揚や、敵を倒す爽快感はプレイした人でないと実感することはできない。しかし、「演出がかっこいい」や「往年のファンならおっ!となるオマージュ」というのは、プレイせずとも誰もが直感することができる大きな「ヒキ」だろう。


レビューという記事の都合上、欠点らしきものを挙げようとしてみたものの、強いて言えば「画面が演出過多で見づらくなり、理不尽なミスをすることが稀にある」程度だろうか。本当に隙のない作り込みで脱帽するしかない。

本作は初心者にこそプレイしてほしい、それでいてシューティングファンをバッチリ喜ばせてくれる傑作だ。初心者ならばきめ細やかな本作で勘所を掴んだのちに他のシューティングゲームにも手を出していける、「登竜門的シューティング」と言ってもいいだろう。

また、Intel Celeron N3450での動作を確認済みとのことで、PCのスペックを必要とせず動作することも大きな魅力。ゲームの腕前だけでなく持っているPCのスペックも問わずに「シューティング」の喜びを体感できる。広く門戸が開かれた本作だからこそ、プレイしてまずは上達の達成感、そしてその先にあるアグレッシブで脳汁が噴き出るスコアアタックの両方を実感してほしい。

『DEVIL BLADE REBOOT』はPC(Steam)にて、税込1800円にて発売中。さらに、7月12日までの期間限定で15%オフの税込1530円にて購入できるセールも開催中となっているので、こちらも見逃さないようにしよう。

ライター
目に入ったゲームはとりあえず食べてみる雑食系。近年の好物は推理ものアドベンチャーや格闘ゲーム。ボードゲームにも目が無く、アナログデジタル問わず多数摂取。 近年はため込んだ各種TCGカードの置き場所に困る日々。

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