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『ヘブバン』はWhite Spellがバトル中に流れるところまで遊んでください。Keyのゲームを全く触ったことがないのに、いきなり『ヘブンバーンズレッド』で高濃度麻枝 准を浴びまくった初見感想

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なんとなく、普段から「心を掴まれる」という現象について、よく考えている。

周囲であまり評価の高くない映画に、訳も分からず感動してしまったことがある。最初は全然おいしいと感じなかったカップラーメンに、妙にハマってしまったことがある。

その現象を、まるっと「心を掴まれる」に包括できると思っている。喜び、悲しみ、苦しみ、痛み、嬉しさ、楽しさ、没入感、共感性……これ全部、「心を掴む」ことの一部なのではないだろうか。

要するに「心を掴む」ということは、完成度や普遍性に寄るものではない……とか言い出すと、なんかカッコつけている感じがする。でも、そのくらいこの世のあらゆる娯楽は、みんなで寄ってたかって「心を掴む」という未だ未知の現象を分析し合っているのではないか、と思ったりする。

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で、どうしていきなりこんなしゃらくさい話をしているのかというと、今回遊んでいるゲームが『ヘブンバーンズレッド』だからです。キャッチコピー、「最上の、切なさを。」ですからね。別に知らないわけじゃなかったけど、よくよく考えるとずいぶんぶっ飛ばしたキャッチコピーな気がする。

しかも、自分は「Keyのゲーム」をやったことがないという……なんなら、アニメですらそんなに触れたことがないという……だから、「一体何から何までがKeyの味わいなのか」とか、「どの辺が麻枝 准の特徴なのか」とか、よくわからないまま遊んでいます。

そのため、すごくピュアな感想が出てくる気がします。
汚い言い方をすると、ここで童貞を捨ててしまうわけです。

全体的に『ヘブバン』の初見感想+「心を掴む」という現象について、割と真面目に考えてみた……って感じの記事だと思います。どうぞよろしくお願いします。

※この記事には『ヘブンバーンズレッド』メインストーリーの第一章から第三章までのネタバレが含まれています。お気をつけください。

文/ジスマロック
編集/実存

※この記事は『ヘブンバーンズレッド』の魅力をもっと知ってもらいたいライトフライヤースタジオさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。


夢見る少女じゃいられない

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なんか冒頭で「心を掴むとは何か」みたいな大真面目なテーマを挙げてみたけど、もっと砕いて言うなら「どれだけノれるか」ということなのだと思う。ほら、「完成度は高いし周りでもめちゃくちゃ人気だけど、自分は全然ハマれなかった(ノレなかった)作品」って、あるじゃん……?

そして、その作品にノれるかどうかって、結構「導入」が大事だと思う。
漫才と同じで、ネタの掴みがかなり重要。

そういう意味で、『ヘブバン』の導入はすごいと思う。
導入がいきなり風速40メートル毎秒みたいな破壊力だと思う。

気がつくと、知らない学園の入隊式に参加していた。奇行を繰り返す主人公。一瞬で、世界観と作品のトーンが飛び込んでくる。「ヘブバンはこれ」を始めて3分ぐらいで焼きつけてくる。ノれる人は徹底してノれるだろうし、ノれない人は徹底してノれないと思う。

「ギャイアグレイーイボドドドゥドオー」ってなによ。こんなうるさい導入見たことないよ。クセが強すぎていきなり胃もたれしそうになってくる。ある意味、冒頭こそが最も「ふるいにかけられる」瞬間かもしれない。でも、この導入はすごいと思う。

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なんというか、始まって率直に感じたのは「完成度の高さ」だった。

「ゲームに遊び慣れる」というのは、なんだかすごく嫌なことで……触って少しした段階で、「ゲームの全体像」が見えてしまうことがある。「あ、〇〇みたいな感じね」とか、「なるほど、こういうゲームサイクルね」みたいに、勝手にゲームの構造をメタ読みしてしまうことがある。

そんなメタ読みが『ヘブバン』でも作動してしまったのだけど……その瞬間、「完成度が高い」と思った。まず、「基地の中で日々を繰り返す」という土台の部分。この箱庭的な世界観が、よくできてる。

だって、ほとんどの話が「基地の中で完結する」のである。舞台が固定されているからシチュエーションがスッと入ってくる。一度滅亡した世界を救う話でありながらも、学校のような基地だからなんとなく「身近」な感じがする。大勢のキャラも、ひとつの箱の中に入れると「なんかあの辺で見たことあるな」と思える。

超絶メタな言い方をしてしまうと、「コンセプト」がすごくハッキリと決まっている……気がする。多分この『ヘブバン』というゲームがリソースを割いたのは、大勢のキャラのフルボイスのかけ合いと、感動的なストーリー。そうなってくると、超広いフィールドマップなんかは適さない。

だからひとつの箱の中で話を進めて、とにかくプレイヤーには「ヘブバンという箱」に馴染んでもらう。この「ヘブバンという箱に馴染ませるまでの道」が、徹底して舗装されている気がする。結構ぶっ飛んだ導入な気がするけど、実のところ相当考えて構造が練られているゲームなのではないか……って、話が固すぎるかな?

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要するに、「作品に入ってもらう」「テキストを読ませる」「ボイスを聞いてもらう」の3つの要件にすごく特化したゲームだと思う。その要件のため、節約するところは節約しながら、アドベンチャーパートはカットインやフルボイスでリッチに見せる。

外野の私はふんわりと「うおお、ヘブバン結構人気ですげえな……」くらいのノリで見ていたけど、これは結構クレバーに「勝ち」に来たゲームなのではないか。おい、もうリリースされて2年経ってんぞ。

めちゃくちゃベタな褒め言葉だけど、「すごく上手くコンセプトを固めた買い切りアドベンチャー」みたいな遊び心地がある。ベタだな~。もう自分で書いてて「ベタだな~。」って思っちゃったよ。これどこのサイトに行っても書いてあるんじゃないの? ファミ通にも同じこと書いてあるだろ?

とにかく、実際そう思いました。これはSteam出陣も納得。
なんか、「バカのフリしてるキレ者」みたいなゲームだと思います。

OMOIDE IN MY HEAD

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声優さんや音響さんには申し訳ないけど、私はゲームにおいて「セリフを飛ばす」派だったりする。フルボイスはもちろん嬉しいけど、それはそれとして「もうこのメッセージは読んだな」と思って、その先にボイスが用意されていることが分かっていても、割とスキップしてしまう。

そんな最悪のクセを時たま破壊してくるのが、「ボイスを聞きたくなるセリフ」である。
つまり、テキストがバーッと画面上に出た時に「(これはどうやってしゃべるのか聞きたいな……)」と思えるセリフ。どんなにせっかちでも、ちょっと読み上げられるのを待ちたくなる感じのセリフ。

『ヘブバン』は、この「ボイスを聞きたくなるセリフ」作りが中々に冴え渡っていると思う。

極端な例だけど、「ありがとう。よろしくな。」というセリフと、「チ〇ポジならある。」というセリフだったら、明らかに後者の方が「どうやって読み上げられるのか聞きたい度」が高くないだろうか。本当に極端な例だよ。

他にも、「いい音楽だな。」と、「それほとんど、ギャイアグレイーイボドドドゥドオー!!じゃねーか。」だったら、明らかに後者の方が聞きたくならないだろうか。本当に極端な例だね!! なんかオレ段々ユッキー憑依してきてない? 徐々に蝕まれてない?

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「ボイスを聞きたくなるセリフ」の例

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最初、ユッキーのことそんなに好きじゃなかったんです。
だってツッコミがうるさいから!!

『ヘブバン』は、とにかく「フルボイス」が絶対的な強みだと思う。このテキスト量に対し、このボイス量。すさまじい。ただ同時に、「明らかにうるさすぎる」ところもある。だから最初はユッキーが苦手だったんですけど……ここですよね。

「なら、この戦いが終わったら結婚するか。」

どういうこと? これは麻枝 准48の殺人技のひとつなの?
はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~???????????????????????????????????????

ここで、「ユッキーの印象」が180度変わった。フルボイスがゆえに最初いまいち好きになれなかったキャラが、フルボイスがゆえに結構好きになってきた。なんでコイツからいきなり「なら、この戦いが終わったら結婚するか。」が出てくるのか。ほんと、よくフルボイスにしたと思う。

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そして、いつも通りボケ選択肢を選んでいるとバッドエンドになった。

この唐突な「えっ、BAD ENDとかあるんだ……」感。
あとBAD ENDにしてもこの絵面は流石にシュールだと思う。

『ヘブバン』を遊んでいて驚かされるのは、この「選択肢にしっかり意味を持たせている」ということ。どの選択肢も完全に言っていることが違うし、全く違う展開を見せる。しかもそれら全てにフルボイスが用意されている。いちいちメタ視点だけど、各セクションの工数を考えると頭がおかしくなりそうだ。

特にそれぞれの言葉を組み合わせる選択肢表示は、なんだかやたらと回収したくなる。『ヘブバン』は、この「パターンを回収したくなる感」を煽るのがやたらと上手い気がする。ほとんどがしょうもない話なので、選択肢の回収は極論意味がない。でも、なぜだかボイスとパターンを回収したくなる。

なんなら、「ここで月歌ならどう言うのか」をロールしたくなってくる。もはや「自分がどう思うか」より、「月歌ならどう思うのか」という解釈を当てに行くようなゲームを遊んでいる気がする。結構、正しい意味で「ロールプレイング」させてくれる。

めちゃくちゃベタな褒め言葉だけど、「とにかくアドベンチャーとして作り込まれている」と思った。ベタだな~。もう自分で書いてて「ベタだな~。」って思っちゃったよ。これどこのサイトに行っても書いてあるんじゃないの? 電撃にも同じこと書いてあるだろ?

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このバンド要素、多分麻枝 准48の殺人技のひとつですよね?
クソッ、マジでどっからどこまでが麻枝 准マジックなのかわかんねえ!!

こんなことなら事前に『Angel Beats!』くらいは見ておくんだった。俺の『Angel Beats!』知識マジで地獄の騎士サンテレビしかないんだわ。
けいおん!? エンジェルビ~~~~~ツ!!

でも、「Burn My Soul」は本当に良い曲だと思う。

そして実のところ、「心を掴む」ための効果的な手段として、「音楽」はすごく重要だと思う。何の根拠もないけど、聴覚から伝わってくる情報は他の情報より心に響く……気がする。触覚や視覚より、明らかに効果を与えている気がする。

多分、映画の感動的なセリフも、台本だけで見たりすると何も響かなかったりすると思う。そこに俳優の演技や声色が聴覚を通して伝達されることで、人の心は揺さぶられている。なんなら、ゲームやアニメの感動的なシーンだって、そのシーンそのものより「流れている感動的な音楽」に泣かされていることがあったりしないだろうか?

だから、「セリフ(キャラのボイス)」と「音楽」に重きを置いている『へブバン』は、すごくしっかり手順を踏んで、心を掴みに来ているのだと思います。とにかく、「聴覚」に訴え続ける。耳から、鼓膜から、人の心を掴む。貴方、ロックスターみたい。

宝石になった日

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で、なんかシンプルにShe is Legendの曲にハマり始めてるっていう。
こいつら、良い曲作ってるよな……俺は「Dance! Dance! Dance!」が好き……。

そして、第二章あたりからじわじわと『ヘブバン』の会話シーンが面白くなってきた。裏を返すと第一章でそんなハマれてなかったってことなんだけど。なんだか、徐々に「内輪ノリ」に巻き込まれていっている感じがする。最初は全くピンと来ていなかったのに、ずっと聞かされているとじわじわ面白くなってくる。

大して面白さを感じていなかったものに、徐々に「笑いの感覚」を侵食されている気がする。これは……結構「ラジオ」の感覚に近い気がする。全く知らない人には申し訳ないけど、「三四郎のオールナイトニッポン」とか、かなりノリが近い気がする。

要するに、「共犯関係の笑い」なのだ。
最初は全然ツボの理解できなかったネタも、何度も何度も繰り返されると、少しずつ「俺たちにしか理解できないネタ」になる。こうなると、なんか理由もなく面白い。それがいわゆる「内輪ネタ」と言われるんだろうけど……『ヘブバン』はこの「訳もわからず笑ってしまう」状態を生み出していると思う。

正直、悔しい。
私は結構、人の心を掴むために大切なのは「笑い」だと思っている。笑いのないものは、基本ツラい。いついかなる時も、「笑い」がほしい。「笑いほど良いものはない」と思っているレベルの「笑い厨」なのだけど……『ヘブバン』で笑ってしまうのはなんか悔しい。クソッ、ボケ方が卑怯なんだよ!!

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卑怯なボケ方の例

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蒼井絶対死ぬよね?

さっきから何度も繰り返しているメタ読み、ここでも発動してしまった。

いや、絶対に死ぬ。なんか、明らかに「死亡フラグ」が積み重なっている。
というか、露骨すぎて「逆に死なないんじゃないか?」と思えるレベル。

バンドに7人目として加入するし、31Bのみんなにお守りとか渡し始めるし、シュシュとかもらってるし、「盾役」だし……もうこんなの全身死亡フラグだ。しかも気がついてしまった、蒼井えりかの「交流ストーリー」のみ、「第二章以降」が存在していない! これは……これは確実ではないか!?

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メタ読みって本当に嫌だね。

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「こんなんじゃダメですよね。笑え蒼井!」
「にへらっ。」

うわ~~~~~~~~~かわいい。
これが業界を席巻し続けてきた麻枝 准48の殺人技か。

なんか、「これは死ぬんじゃないのか?」ということが察せているから蒼井に感情移入してしまっている気がする。「覚悟したものは幸福である」って、あながち間違った理論じゃなかったのでは?

自分、スマホゲームで「キャラの個別ストーリー」をちゃんと読むことがそんなにないんです。だってメインストーリーじゃないし……。いや見る時は見るんだけど、正直優先順位は高くないです。

でも、『ヘブバン』は交流ストーリーが読みたくなるようなゲームになっていると思う。そもそもかけ合いが面白いからライトに読めるし、交流ストーリーもフルボイス。

しかも、絆レベルの概念があるから、「交流ストーリーを読むこと」と「戦力の強化」がイコールになっている。ソシャゲとしては当たり前のことかもしれないけど、かなり戦力強化の導線が強靭だと思う。

まず50人以上用意されている大勢のキャラを知る手段が交流ストーリーだから、「意外と好きなキャラ」が生まれたりする。そこから石をもらえる。交流ストーリーを読めば読むほどアドがあるし、キャラへの理解も深まる。「そのキャラを知ること」への導線を、ゲーム的に上手いこと敷いていると思う。

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「やあああーっ!」
「蒼井ー!!」

あ、ここCMで見た!

ここか! ここだったのか!! TokyoMXの深夜アニメ枠で『ヘブバン』のCMが流れるとちょいちょい聞こえてくる「やあああーっ!」「蒼井ー!!」のシーン……ここだったのか!!

いや、すごい良いシーンだからね。私の脳内に「無料ガチャ開催中!」のナレーションがよぎってるだけで、ちゃんと良いシーンだからね。なぁ、これはライトフライヤースタジオの責任もあるんとちゃうか?

でも、このレッドクリムゾン戦は「ゲーム的な要素の使い方」が上手いと思います。
良いゲームって、決まって「ここまでやってくれるんだ」と、こちらの想像という名のハードルを上回ってくる瞬間があるのですが……自分はレッドクリムゾン戦がそれでした。てか、みんなそうだよね?

まず、基本3人が前線に立って戦うシステムに対して、「4人目」として蒼井が参戦してくる。そしてレッドクリムゾンの攻撃で、徐々に蒼井のデフレクタが削られていく。この緊迫感と焦燥感。あくまでゲーム的なシステムでしかないと思っていた「デフレクタ」が、ここでストーリーに組み込まれた。

そしてデフレクタが削りきられ、蒼井が……という流れ、多分1回きりしか使えない演出なのも含めて、すごい。これは間違いなく「ゲーム」でしか味わえない。

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そして、ゲーム開始時点から用意されていた「葬儀場」と「ナービィ」がここで回収される。

この、「ちょうど忘れていたくらいの頃に、いい感じに回収される」のが一番気持ちがいい。こういうのって、露骨だとなんか萎えるから……。最初からあった要素の回収としても、第二章のクライマックスはかなりすごい。てか、第二章で「ヘブバンがどういう話なのか」を提示してきた気がする。

めちゃくちゃベタな感想だけど、「ヘブバンは第二章から始まる」と思った。ベタだな~。もう自分で書いてて「ベタだな~。」って思っちゃったよ。これどこのサイトに行っても書いてあるんじゃないの? 4Gamerにも同じこと書いてあるだろ?

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一緒に過ごせて、楽しかったな。
一緒に戦って、色々気づかされたな。
でも、もっと仲良くなりたかったな……。

「人の心を掴む」ための最もシンプルかつ効果的な方法は、「共感」だと思う。
そのお話が、その作品が、「他人事」ではなく、「自分のこと」のように感じる。その瞬間、人の心は掴まれると思う。その一瞬を切り取って、誰かが「感動」という名をつけたのではないだろうか。

自分にとっては、「もっと仲良くなりたかったな」が、その瞬間だった。過ぎ去っていく時間の中で、「もっと仲良くなっておけばよかった」と後悔した友人。いなくなってから、「もっと一緒に過ごせばよかった」と後悔した家族。多分、誰にでもひとりくらいはいる。

きっと、人の痛みが分からない人に、人の心は掴めない。
反対に、人の喜びが分からない人に、人の心は掴めない。

誰かの心を掴むためには、そういう機微と繊細さがずっと求められるのだと思う。だからここで、「もっと仲良くなりたかったな」という簡潔な言葉が出てきたのが、すごいと思ってます。

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すいません、今からめちゃくちゃ自分語りのターンに入ります。
要らなかったら読み飛ばしてください。

私、「これは自分が見てきた中で、史上最高傑作だ」と思ったゲームの感想があって……それが、ある人がネットにアップしていた『アイドリッシュセブン』というゲームの感想です。ヘブバン全然関係ねえじゃん!? そうだよ!

その感想は、学生時代を『アイドリッシュセブン』と共に過ごした方の、あらゆるエピソードと思いが綴られている内容でした。私は、たまたまタイトルが目に入ってそれを読み始めました。

そこには、その人の生活がどれだけ『アイナナ』に支えられたのか、どれだけ『アイナナ』に救われたのかが、ひたすらに書き殴られていました。

私は、『アイドリッシュセブン』というゲームを全く知りませんでした。
どういうゲームなのかもわからないし、どんなキャラがいるのかも知らない。その感想がどういう意味なのか、半分も理解できない。でも、それを読んでいると、不思議と涙が出てくる。その人の思いが、気持ちが、まるで自分のことのような気がしてくる。

端的には、「『アイドリッシュセブン』を全く知らないけど、ずっと『アイドリッシュセブン』に救われてきたような気持ちになった」ということです。これが、さっきから何度も言い続けている「心を掴まれる」ことの核の部分じゃないかと、ずっと思っています。

だから私、個人の方が書いたブログを読むのが大好きで……物心ついた頃から、ずっと趣味です。誰かの人生を通して、誰かの記憶を通して、心を掴まれる。この気持ちを、永遠に追いかけ続けているんじゃないかとすら思えてくる。

だから、「蒼井という友人を失ったことはないけど、蒼井という友人を失ったような気持ちを味わえる」ことが、すごいと思いました。実際には何も失っていないのに、何か大切なものを失ったような気がする。この瞬間、月歌の記憶が、自分の記憶と溶け合った感覚がした。

この行き場のない虚脱感と寂しさは、間違いなく月歌が感じたもの。他人の痛みを自分の痛みとして感じ取れたのだとしたら、それは多分、すごくいい気持ちなんじゃないかと思います。

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ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
Twitter:@ex1stent1a

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