赤いタンバリン
ここで、ひとつ問題が発生する。
『ヘブバン』、明らかに難易度が上がってきている。
いや……第四章とか第五章に到達してる人からしたら鼻で笑われるレベルの話だとは思うけど、「第二章→第三章」の要求戦力の跳ね上がり方はすごくないだろうか? これで難易度緩和入ったってマジ? なので、有償ガチャを引きました。これが大人の力だ。
正直、ゲーム開始当初は「絶対に全員の顔と名前は一致しない」と思ってました。だって、最初から50人以上いるんだよ? ポケモンはすぐ覚えられるのに、人の名前と顔は全然一致しない。だから31A以外ロクに覚えられる気がしない……と思ってたけど、流石に第三章まで遊ぶとちょっとずつ覚えてきますね。
まさに有償ガチャで引いた「大島五十鈴」とか……コイツのデバフめちゃくちゃ強いよね。正直ここで五十鈴引いてなかったら引退してる気がする。あと、第三章から出てくる30Gの「小笠原緋雨」ちゃんも結構好きですね。天才剣士なのにセラフがハンドガンとかいう設定がしょうもなさすぎて……。
もう、漫才地獄だ。
『ヘブバン』は永久に漫才をしている。
第二章でやっと縦軸エンジンが動き始めると思ったのに、また漫才地獄だ。
わかってきた、わかってきたぞこのゲームの手口。漫才漫才漫才天丼ネタ泣き漫才天丼ネタ漫才泣きを永久に繰り返しているな。第三章まで来ると、流石にもう手口が掴めてきたぞ。しかも、天丼ネタも漫才も「100発打ってどれか1発当たればいい」みたいなノリで連射してくる。
だから、正直悔しい。あれ? 話巻き戻ってね?
基本、「笑い」というものは一度スベったらゲームオーバーだと思う。笑いはコンボを決めることで加速度的に力が増していくから、「連鎖が途切れること」が死に直結する。ウケない=終わり。
しかし、『ヘブバン』は100発ジャブを打って99発が防がれたとしても最後の1発がクリーンヒットすればKOできるような笑いを仕掛けてくる。何度微妙な天丼ネタを繰り出されても最後の最後に「ンフッw」と笑みがこぼれてしまったら、こっちの負けなのだ。
なんなんだこれは。「遅効性コメディ」とでも言えばいいのか。
しかも、このシリアスとギャグの落差。あんなに蒼井の話がグッと来たのに、もうトロピカル巻きにすべてかき消されている。なんか、体温調節機能が壊れ始めてきている気がする。これは劇薬だ。一度味わうと月イチで来てしまう変な中華料理屋を見つけてしまった気分だ。悔しい、この笑いに負けたくない。
ゆけ狙いつけ いつも戦闘は面倒だ
ゆけ剣を抜け ザコ戦ばかりで嫌になるありふれたBattle Song~いつも戦闘は面倒だ~
おっと、自虐ネタかな?
しかし、第三章を遊んでいると少しずつ『ヘブバン』のフォーマットに慣れてきた気もします。シリアスとコメディの落差はもちろんありつつ、バンド活動や基地生活といったお約束をこなしていく。
やっぱり、全体のゲーム作りにすごく耐久性があると思います。
「多分このまま最終章まで走っていくんだろうな」という、妙な安心感というか。
劇物みたいなかけ合いだと思っていたものが、いつの間にか「安心感」にすり替わっている。怖っ。なんかハックされちゃいけない脳の部分を乗っ取られてるんじゃないか? 第三章ラスト付近の月歌とユッキーなんか、もう「実家のような安心感」と言えるんじゃないだろうか?
第三章、どっちかっていうとクライマックスよりここの方が刺さったんですよね。
基本的に、『ヘブバン』は「選択肢を選ぶ楽しさ」を重視したゲームだと思っていた。でも、ここは「一択」しか表示されない。月歌とユッキーの間には、計り知れないほどの絆が生まれているのか? うん、もちろん。
これ一択しかないでしょーが!!!!!
もうプレイヤーとしての選択ではなく、完全に「月歌の選択肢」になっている。ここ、鮮やかすぎますよね。特殊な演出もなく、ただ「うん、もちろん」の一択だけが表示される。そんな月歌に、オレたちついてきたワケだからさ……そんなロックスターだから、ついてきたワケだからさ……。
あ、あぁ……自分が月歌ユキ至上主義すぎるからかな……。
第三章の話をしようと思ったけど月歌とユキの話しかしてない気が……。
まぁ、これはいつか別のところで話しましょう。
そして、第三章終盤から「世界の謎」に迫っていく。
わたしたち全員、ナービィだった。
箱庭だと思っていた世界の謎が、どんどん明かされていく。
うーん、やっぱり「バカのフリしたキレ者」みたいなゲームだと思います。ずっとアホやってるようで、その実しっかりと作り上げられている。感覚的な部分を主軸に置いているようで、その実すごく理性的に「心を掴むための仕組み」が用意されている。
めちゃくちゃベタな感想だけど、「ヘブバンは心を掴むゲーム」だと思った。ベタだな~。いや、本当にベタか? 流石に一字一句違わず同じことを書いているところは存在しないんじゃないのか?
たしかにベタな感想だけど、こんなにベタなことを正面から言う恥知らずは他にいるのか? あとこの天丼ネタをいつまで繰り返すんだ!? えっ、これがオチ!?
あー……えーっと……第四章と第五章の感想は好評だったらあるんじゃないでしょうか。
White Spell
第三章クリア後から、少し時間が巻き戻る。
遊んでいる最中にいきなり「炎属性全体攻撃の茅森月歌がもらえるよ!」みたいなシステムメッセージが飛び出してきて、「えっ!?炎属性全体攻撃!?」と、まんまと釣られてしまった。それで遊び始めたのが、この「夏だ!水着だ!トロピカル祭りだ!」というイベント。
まぁ、いわゆる「水着イベント」ですよね。
実際、ストーリーの内容もしょうもな……夏の酷暑にあてられたお気楽な感じです。だから、私も高を括っていたというか……「はよ炎属性全体攻撃寄越さんかい」くらいのノリで遊んでいました。イベストもフルボイスなのは結構すごい、くらいかな。
しかし実際に遊んでいると、蒼井の幽霊が出てくる!
え、水着イベントで蒼井出すの!?
そう、私が『ヘブバン』を遊んでいて最も衝撃的……というか、最も印象に残ったのは、この「夏だ!水着だ!トロピカル祭りだ!」です。なんかこれ、ソシャゲの「水着イベント」という概念を逆手に取っていると思う。水着イベントは、大抵ファンサービスの楽しいお話。完全に、その常識を利用している。
本編で死亡してしまったはずの蒼井が、文字通りお化け屋敷の「幽霊」として出てくる。果たせなかった無念とか、やりたかった願い事とか、そういう心残りを携えて蒼井が帰ってきた。衝撃的すぎる。なんか、すさまじい「ルール違反」をぶつけられた感覚がある。
そもそも、このイベントが「ロングパス伏線回収」になっている。
蒼井が死ぬちょっと前に語っていた、「恐かったことをたくさん試してみたい」。
そして一例として挙げられた「お化け屋敷とかバンジー」。
月歌とふたりで約束した、一緒にすること。
こいつを、いきなり水着イベントで回収してくる。蒼井はお化け屋敷で、一緒に遊びたかっただけ。その願いを、いきなり水着イベントで果たしてくる。とんでもない騙し討ちを喰らった気分だ。このカード、水着イベントで切ってくるのか。いや、水着イベントだからこそ切ってきたのか!?
これは、夏の暑さが見せた蜃気楼か。
そんな感じかもしれないけど、月歌は蒼井がいると信じて一緒にバンジー。
なら、あたしが変な奴をやるよ。
隣に蒼井が居ると信じて、話し続ける。
これ、イマイチ伝わるか怪しいのですが……私、「あとからじわじわ泣けてくるタイプ」なんです。映画とかでも、最大の感動シーンより、家に帰ってから思い返した時の方がじわっと泣けてくる。「終わってからの寂しさ」に、すごく心を掴まれる。
だから蒼井の話も、第二章本編より「終わってから」の水着イベントの方がグッと来ました。そして、蒼井の話を振り返ってみて、急に寂しくなってきた。蒼井はもういない。叶えたかった夢も、一緒に遊びたかったことも、夏の夢と共に消えていった。
誰かが消えてしまったということは、いつもいつも、少し時間が経ってから悲しくなってくる。「いなくなったことを理解するまでの時間」を経てからの方が、ちゃんと気持ちを受け止められる。ちゃんと受け止められてからの方が、悲しくなる。
なんか、レッドクリムゾン戦で流れていた「White Spell」という曲も、この水着イベントを経てから好きになりました。いや、「好きになった」というか、「ちゃんと意味を理解した」というか。
いつか辿り着く時は
笑うか泣くかなどっちだ (そんな朝は)
きみの跡を追いかけた
一緒に行けたらよかった (名を呼んでも)もうそろそろ冬支度をしよう
実りの季節なんてすぐ去る (そんな朝は)
風に消され
眩しさに閉ざされ
さよならはそんな朝がいい
White Spell、良い曲すぎる。
『ヘブバン』はWhite Spellがバトル中に流れるところまで遊んでください。
だから、「泣けるゲーム」だなと思いました。
ベタだな~。いや、最後はベタで終わらせない。
一口に「泣く」と言っても、いろいろ種類がある。
そもそも「泣く」という現象自体は、一種の生理反応でしかない。涙の役割は、大きく分けて3種類。目の機能を保護するための涙。外部からの刺激による反射の涙。感情が高ぶることによる、情動の涙。
だから別に、全部が全部悲しいから泣いてるわけじゃない。
人は、「喜び」によって涙を流せる生き物でもある。
果たせなかった蒼井の願いが叶ったことに、泣くことができる。ふたりの約束が果たされたバンジージャンプに、泣くことができる。人の思いが果たされた瞬間を喜んで、祝福して、自分のことのように涙を流すことができる。それが、人の良いところ。「心を掴まれる」ことができる、人の特権。
この世界に残されたセラフ部隊という一縷の希望と同じように、一片の「前向きな切なさ」も味わえる。これが『ヘブンバーンズレッド』の良いところだと思います。この「誰かを思って泣きたくなる」という気持ちは、すごく綺麗で、尊いもの……なはず。この気持ちを、ずっと掴まれ続けていたい。
ちなみに、第三章が終わった直後のメインストーリーガチャでSSRの蒼井を引き当てました。自分、無駄な運命力はある方なので……。
は? 何? 最後の最後にガチャ自慢?
いや、これは結構ミラクルでしょう!?
これは自慢してもいいでしょう!?!?!?