「仕様が決まらず工数を出せない」極限状況でのタスクマネジメント
そして話題は変わり、タスクマネジメントに関する事例の紹介は再び話者を高田氏に戻して展開された。エンディング施策の開発当時における運営チーム内では、季節・周年等の通常イベントと並行して施策の開発が進んだ結果、人員の異動や新たな人員の状況把握が難しい状況などの要因から、当初の予定よりもエンジニアの人数が足りない状況に陥っていたという。
そこで、大規模開発におけるタスク管理の経験が初めてに近かった高田氏は、ほかの人から教えてもらった「タスクマネジメントの基本」に従いつつ、全体像の把握と工数の算出、対応の優先順、および工数の圧縮の検討を進めていった。
しかし、タスクマネジメントを進めていった結果、実装の総量に対してプランナーやデザイナーなどのスタッフ人数も不足しており、仕様が決まらず工数を出せない状況に突入していたことが判明。高田氏は不測の事態に対応するべく、エンジニアやプランナーとの話し合いを積極的に行い、地道に未確定の仕様を潰していく手段を取った。
仕様の策定においては、リリース日が確定しているものについて「一番のコアを実装チーム単位で明確化する」ことや、発生した追加仕様に対して「それは本当に叶えたいものなのか」とのイメージをすり合わせていったという。
高田氏によると、エンディング施策は結果的にすべて遅延なしで実装された。一番の要因については「2週間単位でのマイルストーン設定」と、チーム全体で実機環境を試す「プレイ会」の存在を挙げている。
実際の過程ではマイルストーン通りにいかなかったものもあったようだが、「プレイ会でチーム全体に見せる」ことが適度なプレッシャーとなったことで、事前の情報共有やフォローアップのコミュニケーションが綿密化。実際に動いている物を確認することで、スタッフそれぞれのモチベーションを高めることにもつながったと分析している。
サービス運営型のゲームではかなり珍しい事例となった『シノアリス』のエンディング施策だが、高田氏は「工数的にも人員的にも厳しかったがやってよかった。スタッフ全員で“サービス終了を全力で楽しむ”ことを全面に押し出していけたこともよかった」とコメントした。
上記のほか、確保できる人員数を超えるタスクが発生した場合はタスクマネジメントの基本にのっとり、マイルストーンの設定やアウトプット、メンバー間での実機プレイを通してスケジュール通りの実装と少ないバグ件数につながったと講演を結んでいる。