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ザコ敵なんてヌルい茶番はねぇ! クソ強ボスしかいない『ナノアポスル』で珠玉のボス戦をしゃぶりつくせ。「勝てない…でも勝てそう…!」のループが生む地獄の中毒症状へようこそ

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お前の屍を越えてゆけ。負けても貰えるスキルポイントで、重視する戦術に合わせた性能を拡張する

射撃にしろパリィによる反撃にしろ、とにかくいかに相手の攻撃をうまく“ハックする”かがこのゲームのコツだということは、なんとなくお分かりいただけただろうか。ただ何度でも言うが本作はとにかくボスが強いため、クリアするまでどの相手でもひたすら死体の山を築くことになるだろう。

『ナノアポスル』レビュー・評価・感想:勝てないのに面白すぎてやめられない地獄の中毒ゲーム_019
▲本作は基本的に「死に覚えゲーム」。何度負けてもへこたれずに立ち上がれるものだけが、つまり立ち上がることができるんですね

とは言えその強さも、相手ボスへの理解が深まっていくことで「次こそはいけそう!」と感じられるようになるのが面白いところで、「こんなもん勝てねえよ」と思っていた戦いを段々と五分以上の戦いにひっくり返していく瞬間に、脳がシビれるような中毒性がある。

何度でも負けながら相手の行動を憶えていくのがこのゲームの基本だが、特に後半以降の戦いでは、スキル構築によって様々な戦術を試していくという側面も強くなってくる。それが「拡張モジュール」(Expansion Module)のシステムだ。

『ナノアポスル』レビュー・評価・感想:勝てないのに面白すぎてやめられない地獄の中毒ゲーム_020

これは本作のスキルシステムであり、各バトルに設定されているミッションを達成することなどで得られるスキルポイントを消費することで、さまざまな能力を獲得できるようになっている。

序盤は選べるものが少ないが、ボスに勝利するごとにスキルの設定枠と新たな習得可能スキルが増えていき、最終的には24のスキルから、7枠を選んで設定することができるようになる。

もちろん様々な種類のスキルがあり、通常攻撃やチャージ強化するタイプのものから、「感染」や「グラッピングフック」を強化したり、特定の状況下で追加の選択肢が取れるようにしてくれるものなど多種多様だ。組み合わせ次第で、戦術も大きく変えていくことができるだろう。

例えば「回復量を下げる代わりに回復回数を3倍にするスキル」と、「回復時にバフをかけるスキル」を組み合わせれば、バフ代わりに回復を使用しながら戦う構成になる。「チャージ攻撃で感染が発動するスキル」を使えば大量の「感染」を付与できるようになるので、これを軸に他のスキルを組み合わせてみるのも面白かった。

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▲下のHPバーの上にある青い四角が「感染」マーク。編成次第ではこんなふうに「感染」を大量にばらまける

あくまで一例なので、ほかにも様々なものがあるが、一部のボスに対して無類の効果を発揮するといった類のスキルもあり、特に後半のボス相手には、どのようなスキルを組み合わせた戦い方が有効なのかを考えることも重要になってくる。

通常攻撃でのダメージを重視するのか、チャージ攻撃を主体に戦うのか、それとも「感染」や「吸収」などのダメージソースを優先するのか。必ずしも「何が正解」といった答えが用意されているわけでもないので、自分に合ったものや面白そうなものをいろいろ試してみれば良いだろう。

またスキルポイントは、各バトルに設定されているミッションなどを達成することで得られると先ほど述べたが、実はこれ、バトルに負けた場合でも実績が解放されていく。負けの中からでも少しずつ何かを掴み取り、いつか死体の山から新しい風景が見えるまで立ち上がり続けるのだ。

生体兵器として“造られた”少女と彼女のナノマシンの、残酷な物語の結末を見届けよ

紹介が遅くなってしまったが、最後に物語と世界観について少し触れておこう。

本作『ナノアポスル』は、とある兵器研究所の奥深くで目覚めた少女アニータが、「使徒」(アポスル)というナノマシン兵器を身体に埋め込まれ、性能評価試験のために他の生体兵器と戦わされていく、という物語だ。

『ナノアポスル』レビュー・評価・感想:勝てないのに面白すぎてやめられない地獄の中毒ゲーム_022
▲開始5分で「私たちは生体兵器なのよ」と告げられる展開、ツラすぎんか?

いや重すぎん? 絵柄はめっちゃ可愛いのに、ギャップがありすぎでしょ。そりゃあね、まともなオトナは年端もいかない少女をヤバい兵器と戦わせたりはしないので、可愛い女の子がめちゃ強い敵と戦うゲームを作ろうとしたら、設定上ヤバいオトナたちが必要なのかもしれませんけど!

冒頭でも紹介した通り「ダークSFボスラッシュ」を称するだけあって、世界観や物語はかなり暗いもの。アニータは施設で出会ったウェニーという少女と仲良くなり、彼女から自分たちは「パイオニア社」によって生みだされた生体兵器なのだと教えられる。ウェニーもアニータと同じ、「ナノアポスル・プロジェクト」と呼ばれる実験の被験者なのだ。

戦いを進めていけば、ボスを倒した後に敵を処刑する(Execution)シーンを見ることになるが、ドットによる表現の見事さと共に、驚くような残酷さを目の当たりにすることになるだろう。こうしたバトルの中の表現にも、物語上の暗さが影を落としている。

『ナノアポスル』レビュー・評価・感想:勝てないのに面白すぎてやめられない地獄の中毒ゲーム_023
▲バトルの勝利を味わう余韻もなく、急に出てくる「処刑」コマンドを推したらエグいイベントが始まってビビった

命じられるままに戦いを続けながら、やがてアニータは自分を閉じ込めている牢獄からの脱出を目指していく、というのが本作の大まかなあらすじだ。

ゲームの主要部分であるバトルに比べると、物語はあくまでフレーバー程度で、それほど長い時間が割かれているわけではない。とは言え、主要なシーンにはしっかり一枚絵が挟まれるし、各ボスとのバトルの合間に挟まれる断章的な謎の記憶の断片や、「情報ログ」に少しずつ開示されるデータはかなり意味深だ。

注意深く情報を拾っていけば、「ナノアポスル・プロジェクト」や、「パランラック包囲戦」(Planlak)という戦争に関してのレポートについて知ることができ、ちょっと引くレベルで邪悪な「パイオニア社」の所業や、“本作の主人公に起こった物語”についての全貌が分かるようになっている。

ゲームを進めていくことで、本作のバトルにおける基幹システムの一つである「破壊ポイント」にも、物語上しっかりと意味があることも分かっていくだろう。

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▲戦闘の合間に、ホレスという人物のものらしき記憶が再生される。彼には妹がいたというが、どうなったのだろうか……

冒頭でもお伝えした通り、本作『ナノアポスル』は、このたびSteam版も公式の日本語訳に対応。バトルなどのゲーム部分だけではなく、物語についてもより深く知ることができるようになった。

特にラストバトル後の展開はなかなかアツいものになっているので、なかなか大変だとは思うが、なんとかボスラッシュを潜り抜けてエンディングまでたどり着いて欲しい。

総じて本作『ナノアポスル』は、アクションゲームらしい操作性の爽快さと、ちょうどイタくて気持ちイイくらいの絶妙な難易度が全編にわたって続くこと、アートワークと世界観が高いレベルで融合した、かなり満足度の高い作品だったというのが、筆者の感想である。

メインコンテンツが6体のボスのみと、ボリューム面でややコンパクトである嫌いはあるものの、個人的には(筆者が苦戦して時間をかけすぎたというのもあるが)十分に楽しめる範疇であると思われる。

参考までに、Steam版では94%のレビューが好評の「非常に好評」(24/10/11時点)と、「圧倒的好評」に僅かに届かないものの高い評価を得ている。Switch版発売を機に、あと一歩評価されて欲しいところだ。

ちなみに「5時間くらい」と最初に言われてた本作、筆者はエンディングまでに12時間ほどかかりました。全然難しいじゃねえか! めっちゃ面白かったから超楽しんだけどね!

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ライター
ル・グィンの小説とホラー映画を愛する半人前ライター。「ジルオール」に性癖を破壊され、「CivilizationⅥ」に生活を破壊されて育つ。熱いパッションの創作物を吸って生きながらえています。正気です。
編集者
オーバーウォッチを遊んでいたら大学を中退しており、気づけばライターになっていました。今では格ゲーもFPSもMOBAも楽しんでいます。ブラウザはOpera

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