私は、この10月が来るのを待っていた。
ダンジョンと、魔物と、宝と、冒険の匂いがする、この時を待っていた。
なんの話かって? 3DダンジョンRPG『ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ』(以下、『ウィズダフネ』)の話に決まっている。
ひさびさの日本産の、新作『ウィザードリィ』。それがついに10月15日に世に解き放たれたのだ。
かつて2023年に行われたクローズドβテスト。
そこで私は、あの唯一無二の世界に魅了されてから、およそ一年間、この長い時を、地の底の精霊と化しながら待っていた。岩のごとき意志と、山のごとき忍耐力で。
「それでさ…クローズドβテストが去年10月にあったわけだけど、これが良かったんだよ。一体いつごろリリースされるのかな?まあ色々と調整もあるだろうから…リリースは今年の3月か、4月くらいかなあ? ん…んん…? 延期する? エッ! ナンデ!? クオリティアップのため!? いつまで!? 未定!!?? ア、ア、アアーッ!!! は…はやく、早くしてくれェーーーッ!!!!」
長い一年だった。
そんなことがあったりもしつつ、ついに時は満ちた。いよいよ本当の冒険者になるときがやってきたのだ。
※この記事は『ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ』の魅力をもっと知ってもらいたいドリコムさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
記事内で使用している『ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ』の画像は開発中のビルドで撮影したものであり、実際の製品とは異なります。
そもそも『ウィザードリィ』とは。『ドラクエ』堀井雄二氏にも影響を与えた「現代のRPGのお爺ちゃん」的存在
そもそも『ウィザードリィ』とは何かといえば、1981年にAppleⅡという古のパソコンに向けて発売された3DダンジョンRPGだ(初代の話)。発売当時には、かの堀井雄二氏がこれにハマり『ドラクエ』を作るきっかけになったりしたらしく、言ってみれば現代のRPGのお爺ちゃん的存在である。
ダンジョンの探索はすべて主観視点で進み、プレイヤーは「人間・戦士」や「エルフ・魔法使い」や「ホビット・盗賊」といった自分だけのキャラを作成してパーティを組んで迷宮へ潜っていく。
魔物と死闘を繰り広げ、街へ戻れば持ち帰った宝の鑑定結果に一喜一憂し、さらに装備を整えて、ダンジョンの深部へ冒険を進めていく…というのが『ウィザードリィ』の基本的なゲームシステムだ。
なお、キャラはいわゆる「勇者」でも何でもない一介の冒険者なので、たとえどんな中二病全開の設定を考えていたとしても、ダンジョン内で出会うパッと見では人畜無害そうなウサギや、突如エントリーしてくるニンジャに首を撥ね飛ばされたりして死ぬし、なんなら蘇生に失敗すると、最悪この世から完全に消滅する。
貴様ら冒険者に慈悲はない。そんなハードコアな世界が『ウィザードリィ』である。
自キャラを作らず、キャラが用意されている異形の『ウィザードリィ』。だがその恩恵は大きい
そんな『ウィザードリィ』の新作として登場する『ウィズダフネ』こと『ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ』は、上に書いたような基礎をなぞりつつも、さまざまな現代的アプローチを加えた、まさに異形(ヴァリアンツ)の『ウィザードリィ』となっている。
本作のもっとも特徴的な部分はどこかと言えば、それは自分自身が『ウィザードリィ』の世界に入り込んでいると錯覚するほどの「主観的演出」だろう。
過去作にはなかった、3Dモデルとして表現された仲間キャラたちとともに挑む戦闘、キャンプでの雑談、酒場での乾杯といったやり取り。そのすべてが「主観視点」で進んでいくその様は、かつて妄想してきた脳内の映像化ともいえるものであり、そこには「ああ、俺はいま冒険者になっているんだ」と体感させるパワーがある。
この主観的演出を実現するため、本作では他の『ウィズ』シリーズでは見られなかった、さまざまなシステムを取り入れている。たとえば、こういうものだ。
これね、冒険者の遺骨。
本作はスマートフォン向け基本無料ゲーなので、いわゆるガチャ要素があるのだが、そのひとつがこれである。
「あァ? おいおいおいおい『ウィザードリィ』ってのはさァ、キャラを自分で作って冒険することが醍醐味なワケよ…大体なに? ガチャってさ、SS級伝説の冒険者とか引くわけ? うちはさァ、普通の冒険者、普通の戦士とか魔法使いを育てて冒険したいわけよ。あるんだよなァ、こういう余計な…」
あー! わかったわかった! 頑固ジイさんみたいな小言はいいから! まずは見ろ! そして聞け!
うん! やっぱりガチャといったら遺体の蘇生だよな! さあ、遺骨10連ガチャを回そう!
ここに主人公(本作ではプレイヤー=主人公)のパワーをこうして…こう!
生き返った。
このように本作では、従来のオリジナルキャラ作成システムを廃止しており、誰とも知らない冒険者の骨を蘇生して仲間にする。
従来の作品とは違い、自分ではどんな職業で、どんな性格かも決められない(名前やステータスの振り分けはできる)。だがその代わりにキャラにはそれぞれ個性的なビジュアルや声が与えられ、バックボーンや性格が作り込まれることで、一人ひとりが生きたキャラとして浮き上がってくるように作られている。
たとえば戦闘中なら声かけをしながら一緒に戦ってくれるし、ダンジョン内では床に罠があれば「そこ、罠がある!」と止めてくれたり、キャンプでは焚火を囲みながら出自に関する話をしてくれたりもする。これらすべてを主観視点で体験することになるので、仲間と共に冒険をしている感がハンパない。
そして冒険から帰ったら、一緒に酒飲もうぜ!と誘ってくれたりもする。
信頼が高まるにつれ、最初のうちは刺々しさを感じる仲間のセリフも徐々に丸くなっていく。
本作はこのように仲間のビジュアルが可視化されたことで、「『ウィザードリィ』の世界に入っている感」がかつてないほどに高められ、自らが本当に冒険者として過ごしているような没入感を得られる。
これまでの『ウィズ』シリーズだと、アトラスの作った『BUSIN Wizardry Alternative』シリーズなどが本作に近い3D表現に挑戦してはいたものの、それらの作品にはパーティメンバーに3Dのビジュアルはなかったので、本作のような没入感には至っていなかった。本作はそういった作品が紡いできた歴史を受け継ぎ、さらに現代的にブラッシュアップしている印象だ。
正直、私自身もガチャで決まったキャラを引くと言われたときにはけっこう戸惑ったのだが、実際にさわってみると、これは本作の魅力を語る上でうまく働いている要素だと感じた。遺骸の蘇生という形で世界観ともうまく馴染ませているし、ガチャゆえに回数も有限で、そこからくる「縁」を感じるような出会いができるというのも、悪くない落としどころだと思う。
ちなみに、いわゆるSSR的な最上級レアリティの冒険者はというと…こんな感じだ。
幼い頃からアリスは鋭い感覚を持っていた。
言葉もおぼつかない頃から、雪崩を予知し、遭難した人の場所を言い当てた。
誰もがアリスに何かの知覚を感じたし、両親は彼女の将来を楽しみにした。
しかし、アリスの両親が大人になったアリスを見ることはなかった。
アリスがようやく言葉を覚えた頃。アリスは手ずから両親を毒で殺害したからだ。
……。
えっと、これ冒険者の設定ですよね? 一緒に大異形とか奈落の王とか、なんか悪いヤツを倒しに行こうっていう冒険の仲間ですよね?
しかもこのヒト、自分を邪神の巫女だって言ってるんですけど? なんかその、ちょくちょく邪神的な声が響いて「モット殺戮ヲ楽シメ…」とか聞こえたり、どう見ても肉体に邪神が憑依してる時とかもあるんですけど?
…いや、どう考えてもラスボス側の設定だし、思いついても「こいつ冒険者にしよう!」って思わないだろ普通。
とまあ、一介の冒険者とは違って、最上級レアリティのキャラとなるとこんな個性的な連中も用意されている。多分ほとんどの人が仲間として思いつかない設定だし、こんなやべー奴と一緒に道中を共にして仲良くなっていく冒険なんてまずここぐらいでしか見れないだろう。これはこれで楽しい旅になりそうだ。
さてはお前、『ウィザードリィ』の顔したスマホゲーの顔した『ウィザードリィ』だな?
そんな本作、「まあスマホゲーなんでそれなりの難度なんでしょ」と思うかもしれないが、全然そんなことはない。少なくとも戦闘に関しては、これまでの『ウィザードリィ』をかなり踏襲した難易度で、生半可な支度で挑めばダンジョンの辺り一面にパーティの死体を転がすことになる。
たとえば図体のでかいゴブリンであるホブゴブリン一体の薙ぎ払いで前衛は半壊するし、シリーズおなじみのボーパルバニーの先制攻撃を受けていきなり首を撥ねられるとか、頑丈なスケルトンとの連戦でじわじわリソースを削られて無情な結末を迎えるといったことはよくある話だ。
また本作はシンボルエンカウント制でマップ移動中に敵が追いかけてくるため、気を抜くと背後から奇襲され、一気に体勢が崩れることもしばしば。たとえ雑魚戦でも3~4戦もすれば逃げ帰らなければいけないことは日常茶飯事となっている。
一応、主人公の持つ「逆転の右手」という能力により、死んでも一定回数は戦闘前に戻れたり、最悪でも死を受け入れて特定の段階まで状況を遡れるので、従来のように第一パーティの全滅後に第二パーティで死体の回収に行くといった手間は省かれているものの、それでも冒険はつねに死と隣り合わせである。
ただこのように、全体としてハードモードな世界であるぶん、無事に街に戻れた時には解放感もひとしおだ。
街で過ごす時間は、仲間と酒場に集まって祝杯を交わし、戦利品を分かち合う、冒険者にとってのわずかな休息の時だ。宿屋では昔ながらの無料の馬小屋に寝泊まりしてもいいし、あるいは冒険で付いた身体の汚れを落としたければ、代価を払って簡易寝台以上の部屋を選んでもいい。
なお冒険中に命を落としたキャラについては、街の教会に運び込めば蘇生することができるが、従来通り蘇生に失敗したキャラは灰になり、さらに灰からの蘇生に失敗すれば完全なる消失(ロスト)となるリスクもしっかり残っている。
一応は「貴石」という、いわゆる有償石/無償石で確実に蘇生できるサービスもあるのだが、これも上限回数が定められているため、たとえ課金キャラだろうと最悪の場合にはいなくなってしまう可能性がある。どんな大仰な肩書を持つ冒険者もただの人に過ぎないのは、この世界でも変わりない。
「オイオイオイこれじゃ完全に、『ウィザードリィ』の顔をしたスマホゲーの顔をした『ウィザードリィ』じゃないか……」
この世界を見ていて、ふと出てきたのはそんな感想だ。しばらく冒険を続けてみても、その考えは変わっていない。細かいところでスマートフォン向けゲームらしいチューンはされているものの、本作から感じる全体としての手ごたえはやっぱり『ウィザードリィ』のそれなのだ。
とくに第一ダンジョン「はじまりの奈落」は、普通に攻略するだけでも20~30時間はかかるボリュームがあり、ストーリーの出来の良さも含めてプレイ中の感覚は完全に買いきりの新作『ウィザードリィ』のシナリオを遊んでいる感覚だった。これ、ここだけで後から3000~4000円くらい請求されるんじゃないの? 違うの?
そんな感じで『ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ』は、従来の『ウィザードリィ』にはなかった見どころもしっかりと作り込みつつ、スマートフォン向けという、コンシューマー慣れしたゲームファンからすると少々不安に感じる要素も拭うほど、がっつり『ウィザードリィ』を味わえる作品として作り込まれている。
もし本作が気になったなら、まずは冒険者としてこの世界に一歩踏み入り、最初のダンジョンを覗きに行ってみてほしい。
『ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ』は10月15日より、iOS、Android向けに基本プレイ無料でリリースされている。
奈落は口を開けて、君を待っている。