9年ぶりのシリーズ最新作『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!』は、“ルイージが非常にルイージしている” 作品でした。
いきなりなにを言っているかわからないと思いますので順を追って説明させてください。
本シリーズはマリオとルイージが互いに協力しながらゲームを進めていくアクションRPG。「親しみやすい世界」「個性豊かなキャラクター」「クオリティの高いBGM」など、どこをとっても評価が高く、20年以上にもわたり人気を博するシリーズです。
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特にルイージの描かれ方に定評があり、本シリーズで彼の魅力に堕ちたプレイヤーは少なくないでしょう。なぜなら兄であるマリオがピンチに陥ったときはすぐさま駆けつけ、(たまに)単独行動で物語を進めるという勇敢な一面を見せてくれたからです。
ルイージといえば「少し臆病」「調子に乗りがち」といったやや頼りない印象を受けがちですが、“やる時は、やルイージ”。本シリーズではルイージの活躍もしっかり描かれています。
そのため最新作となる『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!』でもルイージが活躍するであろうことはなんとなく予想がついていました。
しかしながらいざプレイしてみると、ルイージは想像をはるかに上回るとんでもない活躍を繰り広げます。本当にルイージが “なんでも” やってくれました。
本稿では、本シリーズをすべてリアルタイムでプレイしてきた筆者が、本作におけるルイージの存在とその魅力、そしてゲーム内容の素晴らしさについて紹介させていただきます。
ワンボタンで発動できる「ルイージセンス」があまりにも有能
『マリオ&ルイージRPG』シリーズの主人公は、タイトルのとおりマリオとルイージなのですが、本作ではひと味違います。マリオはいつも通りプレイヤーの分身として動くいっぽうで、ルイージは非常にルイージしていました。
どういうことかというと、まず「ルイージセンス」という機能を発動すると、ルイージがマリオから分離して自動行動をしてくれるのです。その働きがあまりにも有能で驚かされました。
たとえば、近くの木箱を壊したり、野菜を引っこ抜いたり。プレイヤーがやるべき作業をワンボタンでルイージが自動で行ってくれるのです。プレイヤーはルイージの作業を手伝うこともできるし、放置して全部ルイージに任せても問題ありません。
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やろうと思えば「プレイヤーであるマリオが住人と話しているあいだにルイージがうしろで作業している」なんて絵面も作ることができます。こんなにおもしろい構図はこれまでの作品では見ることができませんでした。
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またルイージは基本的にマリオの後方を歩くのですが、段差などをジャンプする際にはマリオを操作するだけでOK。 ルイージは自動でジャンプをしてくれます。
これまでの作品では段差をジャンプする際にルイージを操作する必要があったため、その必要がなくなり移動がとても快適になりました。
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これだけではありません。ルイージにはさらにすごいヒミツが隠されていました。それが「ルイージセンス」による “ひらめき” です!
なんとプレイヤーがゲーム進行に行き詰まったときに、ルイージが「なにかをひらめいて新たな突破口を切り開いてくれる」のです。新しいルートを開拓してくれることもあれば、新しいブラザーアクションを考案してくれることもありました。
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このルイージのひらめきは、バトルでも発動しました。たとえば強敵とのバトルが繰り広げられている最中にルイージは周囲の変化に気づき、そして思いつくのです。ボスの弱点を晒す方法を!
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もちろんルイージに頼らずともバトルは進行可能ですが、せっかく彼がくれたチャンス。筆者は信頼して乗ってみることにしました。
するとルイージが岩を持ってボスにダイブ! そうなったらここからはプレイヤーの頑張りどころ。アクションが成功すれば、ボスの態勢を大きく崩せます。
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このようにルイージの働きがフィールドでもバトルでもとにかく有能で、かつマルチタスクのおもしろさも味わえるという、非常にユニークなゲーム体験をもたらしてくれています。ルイージが完全に「頼りになる相棒」となっていて、とにかく心強い。
マリオゲームであることを忘れるぐらいドラマチックなシナリオ
“ブラザーシップ” とタイトルにもあるとおり、本作では兄弟のキズナが深く描かれています。2023年に公開された映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』でも兄弟の熱い関係性が描かれていたのですが、本作もその流れを受け継いでいる印象でした。
やはりマリオにはルイージが、ルイージにはマリオが必要なのですね。
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筆者は本作の素晴らしいストーリーにも強く胸を打たれました。「マリオゲームなのにストーリーがいいの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、本作はRPGが好きな方にも胸を張ってオススメできる内容です。
そこでここからは本作のストーリーについて、ネタバレにならない範囲で魅力を説明させてください。
まず公式サイトを眺めているだけでも、さまざまな要素で「つながり」をテーマにしていることがわかります。舞台の「コネクタルランド」はゲーム開始時にはバラバラになっているためマリオたちはそれらをつないで世界の再生を目指すのですが、そう簡単にはいきません。
種族間の仲が悪かったり、全く相反する世界も存在していたり。しかし、それでも「島」をつなぐことで、ストーリーは進んでいきます。
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それは「人」も同じで、キズナをつないでいくことで新たななにかが生まれていきます。筆者は本作で「なにかとなにかがつながることの尊さ」を、随所で感じました。いつものマリオゲームよりもメッセージが強い作品となっている気がします。
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そしてそのテーマはキャラクターデザインでも表現されているように感じました。
たとえばヒロインである「コネッタ」は電線同士を接続するコネクター、案内役の「タップー」はコンセントを繋ぐ電源タップに似ています。加えて本作の敵「ゾケット」は、それらを断ち切るペンチのような見た目です。
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このように本作のテーマはとことん一貫しているように感じました。それでいて決して押し付けがましいものではなく、“自然に入ってくるもの” だったのです。そのさじ加減がじつに秀逸で、筆者は本作の世界にどっぷりハマってしまいました。
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シリーズファンにはお馴染みの必殺技「ブラザーアタック」も健在
RPGといえばバトルも重要ではないでしょうか。結論から言うと、本作はバッチリ楽しいバトルシステムでした。
タイミングよくボタンを押すことで攻撃力が上がる、かっこいいアクションができる、といった手触り感はもちろんのこと先ほど触れた「つながり」というテーマがバトルにも関係しています。
まず本作の通常攻撃はマリオとルイージが協力する「コンビネーションアタック」。なんと「ジャンプ」や「ハンマー」で普通に攻撃するだけでも、お互いに協力するのです! これはシリーズ初の試みで、通常攻撃でも常にふたりのキズナを体感できました。
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そして本作で初登場した要素「バトルプラグ」を使えば、マリオたちにさまざまな効果がもたらされます。
たとえば「どっかんアタック」のプラグをつなげば、通常攻撃が範囲攻撃に変化。うまく狙えば敵陣をまとめて攻撃することができるのです。
これまでのシリーズでは通常攻撃を行うメリットがやや薄かったのですが、本作ではバトルプラグをつなぐことでガンガン活用することができ、とても爽快でした。
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もちろんシリーズファンにはお馴染みの必殺技「ブラザーアタック」も健在。
これはBPというポイントを消費して発動する爽快感が抜群の大技で、どれも簡単操作で非常に派手なアクションを繰り出せます。これが本当に気持ちいい!
性能も多岐にわたり、単体攻撃や全体攻撃など、状況によって使い分けられる点がおもしろいです。また、中にはちょっと懐かしいアタックもリメイクされて登場しています。こちらはシリーズファンにはたまらないものがありました。
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メインエピソードとは別にサブエピソードも! やり込み要素が超豊富
最後に、やり込み要素についても説明させてください。これまでの『マリオ&ルイージRPG』シリーズでは寄り道要素はあったものの、サブクエスト的なものは用意されていませんでした。
しかし本作はメインエピソードとは別に、サブエピソードが用意されていたのです。もちろん必ずやる必要はありませんが、この世界をより深く体験したい人にはぜひオススメしたい要素です。シリーズファンならニヤリとしてしまう場面もあるかも……?
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そして今回はメインエピソードにも分岐が存在しているようです。筆者もまだすべての分岐を確認しているわけではないものの、別のルートを選んでみたところかなり細かいところまで世界に変化が起きていました。
「こんなところまで変わるの!?」と、想像以上に変化が見られたので、これはもう一周して別ルート版を楽しんでみたいと思います。
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また、育成面についてのやり込み要素ですが、本作ではレベルアップ時に発生する「ランクアップボーナス」で、マリオやルイージを自由に強化することが可能です。
しかしここはプレイヤーの個性が出るところ。筆者は火力でゴリ押す鬼神マリオ、ラッキーヒットばかり出る豪運のルイージを徹底して作り上げていきました。
装備品で特殊な効果を付与することもできますので、さまざまな型を作って楽しむことができるのは嬉しいところです。シリーズファンにはお馴染みの「マメ」を使えば、細かいパラメータ調整も可能でした。
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9年ぶりの完全新作に期待と不安が入り混じる
まさか『マリオ&ルイージRPG』が復活するとは……。
本作が発表された瞬間、おそらく全世界のファンたちが騒めいたことでしょう。筆者は涙しました。というのも本シリーズはさまざまな要因により続編が出るとは思っていなかったからです。「マリルイはもう出ない」と筆者は受け入れ始めていました。
そんななか発表されたのが、この『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!』。9年ぶりの完全新作に、ファンとしては期待せずにはいられませんでした。
自然とハードルが高くなる日々
どうか名作であってほしい
復活作として派手に盛り上がりたい
発表後は期待と不安が入り混じりながら悶々とした日々を過ごしていました。そんなとき、ひと足お先にプレイできる機会をいただいたのです。
そして実際にプレイしてみると……「ここまでやってくれるのか」と。「ここまで作り込んでくれるのか」と。人によってシリーズに求めているものは違うと思いますが、少なくともマリルイの大ファンである筆者には深く刺さりました。
筆者の求めていたものが、そこにあったのです。
もちろんシリーズに触れたことのない方にもオススメしたいです。新しい世界で新しいストーリーが用意されているため、ここから始めてもまったく問題ありません。なによりもこんなにもガッツリと「RPG」を楽しめるマリオ作品があることを知っていただきたいです。
『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!』はつながった人たちを幸せにするRPGでした。ぜひマリオたちと一緒に、コネクタルランドの世界をつないでみてください。筆者ももう一度出航します!