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ロボット兵器に支配された未来で戦うPvPvEシューター『ARC Raiders』は『タルコフ』ライクの進化を目指す。南イタリア風ポストアポカリプス(?)で「SFアドベンチャー」もガッツリ描くねらいを聞いてきた

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昨今では『Escape from Tarkov』のように「敗北すればすべての装備品を失ってしまう」というリスクを抱えてマップに出撃し、ミッションを達成していくPvPvE形式のゲームが流行しつつある。

そういった『タルコフ』ライクの形式を更にアップデートすべく、ロボット兵器に支配された世界を描く新作ゲームが『ARC Raiders』だ。

こういった作品は対戦や戦闘の緊張感にフォーカスした作品が多い印象だが、なんと本作は「アドベンチャーゲーム」のように世界観を堪能することにも力を入れた作品になっているという。

つまり、戦闘のヒリヒリした感覚と共に、未来のポストアポカリプス世界を濃厚に味わえる「要素てんこ盛り」な新作ゲームであるようだ。

このたび、韓国最大のゲームイベント「G-STAR 2024」にて、本作を手掛けるEmbark Studiosのコミュニケーションディレクターを務めるスヴェン・グルンドベリ氏、『ARC Raiders』プロデューサーであるダニ・ヴィテリ氏に合同インタビューをする機会を得た。

本記事ではゲームの情報を補足しつつ、インタビューの様子をお届けする。

ロボットに支配されたポストアポカリプスを生き抜く体験を楽しみたい方、『タルコフ』ライクな作品に興味があるが、少しハードルを感じている方にも、本記事を通じて興味を持っていただければ幸いだ。

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(画像は ARC Raiders | Gameplay Reveal – YouTubeより)

ちなみに、テックテストはクローズドで実施されており、テストで体験したゲームプレイのディテールについてはレギュレーションにより言及できないため、ご容赦いただきたい。

詳細が気になる方は、上記の公式から公開されているゲームプレイ映像を視聴しよう。

『タルコフ』ライクな形式で「ロボットに支配されたポストアポカリプスな世界」を生き抜くゲーム

まず、本作の概要を紹介しておこう。

『ARC Raiders』は、謎のロボット兵器「ARC」に支配された世界で戦う3人称視点でPvPvE形式のシューティングゲームだ。

プレイヤーは「レイダー」と呼ばれる戦士として、ロボットや他のプレイヤーが蔓延るマップに出撃。物資を集めたり、依頼主から与えられたミッションを達成しながら生還を目指していく。

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(画像はSteam:ARC Raidersより)

ここで重要になるのが、出撃後に倒されてしまうと、持参した装備を全て失う、いわゆる“全ロスト”をしてしまう点だ。

『Escape from Tarkov』といった類似作をプレイした方はお分かりかと思うが、せっかく集めたギラッギラの最強装備も、ちょっとした油断で全て消失する。

強力な装備を失えば、とてつもなく切なく、苦しい思いをすることになる。

ただし、このシステムがあるからこそ、ゲームプレイのひとつひとつに緊張感があるし、生還する度に全身から力が抜けておしっこをじんわりと漏らしそうになるような安心感も味わえる。

また、とてつもなくギラッギラの最強装備を持つプレイヤーを倒した時には他人を落とし入れ、引きずり下ろす凄まじい快楽を摂取することが可能だ。まさに「勝負の世界」を体現したような体験を、ロボットに支配されたポストアポカリプスで味わえるだろう。

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(画像は ARC Raiders | Gameplay Reveal – YouTubeより)

いっぽう、本作は本家の『Escape from Tarkov』のようなハードコアなシステムを採用しているものの、かなり従来の作品とは異なる点も多いようだ。

たとえば、すでに公開されているゲームプレイ映像ではドローンのような、おそらく“歩兵”のような立ち位置の「ARC」だけでなく、巨大な多脚戦車のようなものや、超小型の蜘蛛のようなタイプまでそんざいしている。

敵対する「ARC」の形式が多いということは、戦っている最中の感覚も恐らく異なる。人型ではない敵が充実していることで、従来の作品ともプレイフィールが差別化されていることにも期待できるだろう。

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(画像は ARC Raiders | Gameplay Reveal – YouTubeより)
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(画像は ARC Raiders | Gameplay Reveal – YouTubeより)

プレイヤーだけでなくNPCのロボット兵器との戦闘が楽しめることにくわえて、落ち着いて遊び易い3人称視点の形式であること、はたまた「SFアドベンチャーゲーム」のように探索要素や世界観を作り込んでいることなどからも、従来の作品にはない取り組みが窺えるだろう。

こういった要素によって開発陣が目指すのは、ずばり『Escape from Tarkov』をはじめとするエクストラクション【※】ジャンルを進化させることだという。

ここからは、『ARC Raiders』のねらい、バックグラウンドについて伺った開発者インタビューをお届けしよう。

※エクストラクション(Extraction)
PvEvP(Player vs. Enemy vs. Player)、つまり対人要素に加えモンスターなど共通の敵が存在し、フィールドやダンジョンを探索しながらリソースを収集、生存して戦利品を持ち帰り、装備やキャラを強化してまた次の冒険に繰り出す……というサイクルを楽しむゲームジャンル。日本語では「脱出」と訳されることが多い。この手のジャンルの代表的な作品である『Escape from Tarkov』は”Extraction Shooter”(脱出シューター)とも呼ばれる。

「アドベンチャー要素」で『タルコフ』ライクを進化させたい。『ARC Raiders』開発者インタビュー

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▲左が『ARC Raiders』プロデューサーであるダニ・ヴィテリ氏、右がEmbark Studiosのコミュニケーションディレクターを務めるスヴェン・グルンドベリ氏

──本日はよろしくお願いいたします。

『ARC Raiders』はPvPvE形式の作品として、他プレイヤーと敵対をすることも、協力をすることもできる点が魅力的です。

本作はそもそも、どういったコンセプトで立ち上がった企画なのでしょうか。

スヴェン・グルンドベリ氏:
開発の初期では「協力」のみの要素があるシューティングゲームだったのですが、途中で「PvPの要素もあったほうが良い」と感じて、エクストラクションジャンルの形式になりました。

いずれも戦闘が核になるものの、本作ではそれ自体が究極のゲームの目的ではありません。

本作のゲームの最終的な目的は「作中の世界の謎を解き明かす」ということです。なので、ゲームをプレイする際には必ずしも全ての敵と戦うのではなく「あえて戦闘しない」という選択肢もあります。

──なるほど。

スヴェン・グルンドベリ氏:
また、本作はソロだけでなく2〜3人でプレイすることもできますし、友達や知らない人とプレイすることもできます。複数の要素が複雑に重なることで面白くなると考え、今のかたちになりました。

──本作を開発する中で、ジャンルの変更や販売形態を基本無料から「有料の買い切り型」に変更するなど、さまざまな変化があったと思います。そういった変化を導入するうえでのきっかけはありましたか。

スヴェン・グルンドベリ氏:
どの変化も、明確な原因があって変更したわけではないですね。議論を重ねて試行錯誤をしていく中で決定した形になります。

限られたリソースの中でいかに最高の作品を作るかを考えた時に、議論の中で徐々に現在の形を見出していきましたね。

※動画は再初期に公開されたトレーラー。現在のゲームプレイとは少し異なり、『スターシップ・トゥルーパーズ』的な集団戦のイメージが描かれている。

──Embark Studiosは『THE FINALS』も手掛けていますよね。同作を踏まえて『ARC Raiders』はどのような狙いがあるのでしょうか。

スヴェン・グルンドベリ氏:
たとえば『THE FINALS』はチームベースでアクションの比重が重く、とにかくペースも早いですよね。

いっぽう、『ARC Raiders』はエクストラクション形式でアドベンチャー要素も用意されており、ゲームもスローペースで進行していきます。

なので、どちらも同じシューティングゲームですが、それぞれ異なるプレイヤーを惹きつけるものになっていると思います。

『ARC Raiders』ではスローペースであるからこそ、出撃前に行う綿密な戦略の組み立てなどが重要になると思うので「次はどんな装備を持参するのか」「アップグレードパスを何に使うのか」といった要素も醍醐味として楽しんで頂ければと思います。

──本作は、よく耳を澄ませてプレイするゲームだと伺いました。音にこだわった理由や、具体的に音が重要になるゲームの局面について教えていただきたいです。

スヴェン・グルンドベリ氏:
本作では、音が周囲の状況を知らせて、立ち回りや戦略を定める際のヒントになっています。なので、プレイ中は環境音に神経を張り巡らせる必要があるんです。音のヒントに気づかなければ、不利な状況に陥ってしまうこともあるかと思います。

私たちのスタジオには幸いにも世界でトップクラスのオーディオデザイナー、オーディオエンジニアがいるので、ゲームにおいて重要な音響はあらゆる観点で美しいものになっていると思います。

ダニ・ヴィテリ氏:
具体的にはレトロなイメージに乗っ取りつつ、同時に少し恐ろしい印象を意識しました。音の恐ろしさによって緊張感が生まれ、それによってゲームに集中できると思うんです。

なので「本作の音響は限られた時間で没入してゲームをプレイする」ことを促すことにおいても、効果的だと感じています。

──作中でプレイヤーが戦うこととなる「ARC」は、非常にミステリアスな存在として描かれていると思います。アークのデザインにおいて、こだわったポイントを教えてください。

ダニ・ヴィテリ氏:
仰っていただいたとおり、ミステリアスであることを凄く重視してデザインしています。機械であることと、ミステリアスでどこか惹きつけられるものが共存しているものを目指しました。

そういったミステリアスさをゲームプレイを通じて紐解いていくことで、より魅力的な存在として描けると思っています。

スヴェン・グルンドベリ氏:
我々の共通認識として、今の時代にはロボットを含めてAIなどに対して脅威を抱いている人が多いと思うんです。そのいっぽう、AIやロボットは未来を作っていくという希望的なイメージも獲得している。

そういったイメージを作品に取り入れたいという思いがありました。

また、サウンドだけでなく作品全体でレトロフューチャーな美意識を取り入れていますので、デザインやストーリーにおいてはノスタルジックなニュアンスも取り入れました。

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ゲームプレイトレーラーには、超巨大なARCの残骸も登場。アートワークによる抜群の雰囲気も見どころになりそうだ。(画像は ARC Raiders | Gameplay Reveal – YouTubeより)

──本作はエクストラクションジャンルの作品でありながら、世界観の表現にも長けている点がユニークだと感じます。実際にプレイしても、マップの広さや作り込み、メインミッションにおける物語のような表現が印象的でした。

スヴェン・グルンドベリ氏:
本作におけるアドベンチャー要素は、我々が本作をネクソンに提案する段階から「絶対に入れたい」と伝えていました。

もちろん『ARC Raiders』はエクストラクション形式のサバイバルゲームにインスパイアされているのですが、我々のスタジオが持っている力を活用すれば、ジャンルそのものをさらに進化させることができると思ったんです。

なので、マップの魅力を高めるだけでなく、クエストに物語上の目的を与えて、個別のクエストごとの個性を高めるような試みも行っています。

ダニ・ヴィテリ氏:
舞台はポストアポカリプス風の荒廃した世界ですが、それでも「もっと探索してみたい」「もっと作品の世界に居たい」といったワクワクする気持ちを感じていただけるかと思います。

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(画像は ARC Raiders | Gameplay Reveal – YouTubeより)
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(画像は ARC Raiders | Gameplay Reveal – YouTubeより)

──魅力的なマップや世界観の構築に注力されているとのことですが、作品の世界はどこをモデルにしているのでしょうか。

ダニ・ヴィテリ氏:
私はイタリア人なのですが、実は本作の舞台は南イタリアをモチーフにしています。

具体的な場所を参考にしているわけではないものの、レッジョディカラブリア、ナポリやヴェスヴィオ火山といった場所からインスパイアされています。

作品の舞台はポストアポカリプスなので、文明が崩壊したあとの南イタリアはどうなっているのかを想像して表現しています。

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(画像は ARC Raiders | Gameplay Reveal – YouTubeより)
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(画像は ARC Raiders | Gameplay Reveal – YouTubeより)

──本作では各プレイヤーは出撃後に必ず脱出ポイントに向かう必要があります。PvPの要素が加わることで、絶対に脱出ポイントの近くで他のプレイヤーを待ち構えているプレイヤーも出てくると思うんです。

そういったプレイヤーに対して、どのように対処すれば良いですか。

ダニ・ヴィテリ氏:
もちろん、待ち構えているプレイヤーと正面から戦うこともできますが「正面から戦わなくても良い」ためのアイテムやガジェットを複数用意しています。

近しい状況として、エクストラクションジャンルの作品では自分がソロプレイヤーなのに相手がマルチプレイをしているようなケースもあると思うんです。

このような不利な状況を切り抜ける選択肢も本作では用意しているので、自分のプレイスタイルにあった方法で厳しい状況を脱することができると思います。

本作らしい選択肢でいえば、敵プレイヤーに「ARC」をけしかけて切り抜けることもできますよ。

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ゲームプレイトレーラーでは、広範囲に広がるスモークグレネードの存在も確認できる。(画像は ARC Raiders | Gameplay Reveal – YouTubeより)

──かなり細かい質問で恐縮なのですが、ゲーム内に「その場で開けられないけど、持ち運ぶことができる箱」がありました。この箱を友人と共になんとか運搬したものの、緊急脱出用のゲートから持ち出すことが出来ませんでした。この箱の正体はなんなのでしょうか?

ダニ・ヴィテリ氏:
その箱は、デリバリーステーション(通常の脱出場所)に持っていくことで、道具屋武器といったリワードを貰えるものなんです。

実際に困ったというお話を聞けて、改善しなきゃいけないポイントであると気づくことができました。フラストレーションを与えてしまったら恐縮ですが、ありがとうございます(笑)

やはり、実際にテックテストを実施することで「何が分かりづらいのか」というポイントを発見することができますね。こうしたフィードバックを元に、ゲームの改善を進めていきたいと思います。

このヒントを元に、次にお友達と遊ぶときには「箱」を無事に持ち帰ることができると思います!

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▲本質問にちなんで、ダニ・ヴィテリ氏が「例の箱」を抱えるポーズをしてくれた。超最高。

──ありがとうございます(笑)

最後に、日本のユーザーに向けたメッセージをお願いいたします。

スヴェン・グルンドベリ氏:
まず、これまでにテックテストに参加していただいたみなさんに心からの感謝を伝えさせていただきます。

リリースまでに沢山のテストを実施していきますので、ぜひ皆さんに参加して頂ければと思います。

現在はPCでテストを実施していますが、今後はさまざまなプラットフォームに展開していきたいと考えています。参加していただけた際には、ぜひ率直なフィードバックをいただきたいです。

引き続き、注目していただければ幸いです。

ダニ・ヴィテリ氏:
彼に大事なことは言われてしまったので、少し違う角度から伝えさせていただきます。

もし「イタリアに行きたいけど、少し費用が高くて行けないな」と感じていたら、ぜひこのゲームをプレイしていただきたいです。気軽に南イタリア的な世界を堪能できますので、ぜひそういった側面も楽しんで頂ければと思います。


現在、すでにPC向けに実施されていたテックテストは終了しているが、本作の公式XアカウントによるとPCとコンソールの両方で追加のテストが実施される予定だ。

本記事などを通じて『ARC Raiders』に興味を持った方は、公式Xアカウントなどをチェックして次のプレイテストや続報の情報をチェックしよう。

『ARC Raiders』は2025年にPC、PS5、Xbox Series X|S向けに発売される予定だ。

編集者
ゲームアートやインディーゲームの関心を経て、ニュースを中心にライターをしています。こっそり音楽も作っています。

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