※この記事は月村手毬の親愛度コミュ1話~13話までのネタバレを含みます。
「いまの私はもう……問題なんて、起こしませんから」
月村手毬はそう言った。自信に満ち溢れた表情で。
月村……本当か? 信じていいのか?
わかってる。わかってる。わかってるよ! 確かに月村手毬は成長した。
出会ったころの彼女は不調に陥っていた。中等部のころから5キロほど体重が増えたことでダンスのキレは失われ、無理なダイエットを始めたことでスタミナ不足は加速していく。身だしなみも乱れ、心もボロボロだった。
しかし、プロデューサーが食事を管理することでダイエットに成功。さらに、日ごろの彼女の行動を詳細に分析し、レッスンの様子をビデオカメラで撮影するなど、プロデューサーの献身的(ちょっぴり変態チック)なサポートにより、徐々に本来の実力を取り戻していった。
そして、初星学園アイドル科の成績優秀者が集う「定期公演」の最終試験で1位を獲得するまでになったのだ。
以前までのような「泣き虫で、甘えん坊で、理不尽で、怒りっぽい」だけの月村手毬ではない。きっと。多分。
そんな彼女とプロデューサーの次の目標は、次世代を担うアイドルの頂点を決める戦い「NEXT IDOL AUDITION」、通称「N.I.A(ニア)」の制覇だ。「定期公演」では初星学園のアイドルたちとの競い合いだったが、「N.I.A」では初星学園の外のアイドルたちともしのぎを削っていくことになる。
「全員まとめて薙ぎ払ってやります!」と月村もやる気満々だ。
今回のプロデューサーの計画は、月村手毬を「孤高で神秘的なアイドル」としてプロデュースすること。
確かに彼女のビジュアルはクールで、かっこいい。「ブレーキとハンドルが壊れたレーシングカー」のような、月村手毬の普段の姿を隠して、神秘のベール100枚くらいで包めば、そのカリスマ性に惹かれるファンは多いだろう。
完璧なプロデュース計画だ。問題ない。これで「N.I.A」制覇は約束されたも同然だ。
なん……だと……。しまった。月村さんがSNSを始めてしまったようだ。しかも、しっかり炎上している。
……危なかった。事前に彼女には内緒で「月村手毬の公式SNS」を作っていなければ大惨事になっていた。悪質な偽物として通報して対処してもらっていたので、炎上も収まるだろう。
問題なのがその偽物が本物だったことだが、これも「孤高で神秘的なアイドル」として売り出すため。本人はアカウントが削除されて凹んでいるようだが、仕方がないことだ。
このまま無事になんとか……。そう願うプロデューサーだが、その想いは星に届かない。
今度はライバル校(極月学園)のアイドルたちとトラブルを起こす。そして、その姿(煽りまくっている)がネットに流出してしまった。さよなら、「孤高で神秘的なアイドル」。
なんにも……変わってねえ!!
新シナリオでも月村手毬は月村手毬だった。
でも、逆に安心した。そうでなくちゃと。思い出してみると、信頼を獲得すればするほど、絆を深めれば深めるほど月村手毬の暴走は激しいものになっていった。
最初こそ捨て犬のように警戒心むき出しだった。しかし、お弁当による餌付け……じゃなくて食生活のサポートを通して、心を開くようになってからは、プロデューサーに懐きまくり。かまってほしさが溢れる、アルティメット面倒くさいアイドルになっていたじゃないか。
プロデューサーは月村手毬に「もっと頑張っていい」と思わせてしまった。月村手毬というレーシングカーにアクセルをつけて、ジェットエンジンを搭載して、ガソリンを注ぎ込んでしまった。ゆえに月村手毬の暴走は止まらない。
そんなわけで、今回は『学園アイドルマスター』(『学マス』)で2024年12月26日に実装される新プロデュースモード&新シナリオ「N.I.A編」の月村手毬を先行体験してきた。
いくぞ! これが正真正銘の月村手毬だ!!
我々はついていけるのだろうか、月村手毬がそばにいる世界のスピードに。
文/竹中プレジデント
※スクリーンショットはすべて開発中のものです。
月村手毬は燃えている
新プロデュースモード&新シナリオ「N.I.A編」での月村手毬とプロデューサーの目標は「N.I.A」の制覇。そのための計画が、月村手毬を「孤高で神秘的なアイドル」としてプロデュースすることだ。
不安な気持ちはわかる。ただ、思い出してほしい。『学マス』リリース前、我々が月村手毬に抱いていたイメージを。
中等部ナンバーワンアイドルと呼ばれていた元エリート。クールでストイックな皮肉屋と思いきや、甘えん坊で怠け者なトラブルメーカーでもある。二面性のある少女。嫌いな自分と決別し、自分自身を好きでいるために、トップアイドルを目指している。
この公式サイトの学園名簿で記載されていた紹介文と、公式YouTubeチャンネルで公開された紹介PVを見て、筆者はこう思っていた。
「口調がきつくて勘違いされやすいクール系アイドルなんだろうな」と。
もちろん人によって異なるのは大前提だ。ただ、恐らくここまで「口が悪くて素行に問題があってトラブルメーカー」だと気づいていたプロデューサーは少なかったんじゃないだろうか。
そう、プロデューサーとして間近で接しなければ、月村手毬はクールでかっこいいアイドルに見える。そこに神秘という名のベールを被せれば、孤高のカリスマ性を持つアイドルの完成だ。他のアイドルたちのファンを奪って「N.I.A」制覇だって夢じゃない。
そして、月村手毬の「N.I.A編」シナリオで中心で描かれるのが、「SyngUp!」の元メンバーとの激突である。元仲間がライバルとして戦う。めちゃくちゃ熱い展開だ。
「SyngUp!」とは月村手毬、秦谷美鈴、賀陽燐羽の3人で結成されていた、中等部ナンバーワンユニットと呼ばれたほどの人気アイドルユニット。今はメンバー同士の喧嘩により解散している。
メンバーのひとり、秦谷美鈴はリリース当初から「ライバルアイドル」として発表されており、月村手毬のアイドルコミュでも登場。サポートカードのコミュでも顔を見せているので、プロデューサーなら知らない人はほぼいないだろう。
絶縁状態ながらも、レッスンで無理をしすぎているまりちゃん(手毬)を心配したり、他のアイドルと仲良くしているまりちゃんを見て嫉妬したり。かつては月村手毬のお世話をしていた描写もあり、「重い想い」を感じずにはいられない。
「定期公演」の最終試験での直接対決を経て仲直りを果たし、今では相部屋でいっしょに暮らしている。120%妄想だが百合の波動を感じる……!
もうひとりのメンバーである賀陽燐羽は、もともと名前こそ出ていたものの、ビジュアルやボイスは「N.I.A編」シナリオから登場……のはず(違ったら申し訳ない)。
1年3組に所属する特待生だったが退学して、極月学園のアイドルとして「N.I.A」に参加する。ふたり(手毬と燐羽)が出会ったときすでに「定期公演で1位をとった月村手毬と同じ実力」を持っていた。「SyngUp!」解散後に炎上事件を起こした。
などなど、判明している情報は少ない。今回追加されたコミュを読み進めていくと、どんどん情報が出てくるので、実際にプレイするのを楽しみにしてほしい。
話を聞くに、ふたりとも格上らしいが、今の月村手毬だって負けていない。一時は不調に陥っていた彼女だが、プロデューサーとの出会いをきっかけに復調し、「定期公演」の最終試験で1位を獲得するまでに成長したのだ。
プロデューサーに食事管理されたことで、中等部から増えてしまった体重は元に戻っている。見てほしい。この引き締まった腹筋を。
これが本来の実力を取り戻した……正真正銘の月村手毬だ!!
月村手毬は月村手毬だった
本来の実力を取り戻したことは喜ばしいことである。しかし、大きな問題がひとつある。それは月村手毬は月村手毬だということだ。
というのも、出会ったときの月村手毬は心身ともにボロボロであった。つまり、本来の月村手毬ではなかったわけだ。
「SyngUp!」活動中に練習やライブで無茶をしがちだった彼女は、そのたびに元メンバーたちに止められていた。視点を変えれば、支えてくれていたわけなのだが、当の本人は気づくわけもなく、邪魔されていたとすら思っていた。
これは完全に筆者の妄想なのだが、彼女の心の中に「頑張ってはいけない」という呪縛があったのではないだろうか。
そう考えるようになった後に月村手毬のアイドルコミュを見てみると、4話までの彼女にはいまいちキレ味が足りていない気がしてくる。
担当アイドルの写真を壁一面に張ったり、ビデオカメラでレッスン模様を撮影したり、印象に残っているのはプロデューサーの変態チックな言動ばかり。彼女の暴走はなりを潜めている。
変化が見えたのはコミュ5話だろうか。徐々にプロデューサーを信頼するようになったのか、それまで警戒心丸出しだったのが距離感がグッと近くなったように見える。
同時にそのアルティメット面倒くさい片鱗を見せ始めるのもこの時期から。そして、その暴走がプロデューサーを襲っていくようになるのだ。
いくつか事例を紹介しよう。コミュ5話では、半ば強引にプロデューサーの写真を撮影する。しかも授業中に眺めていたところを先生に見つかってしまう。スマホには大量のプロデューサーの写真が……プロデューサーはあさり先生に呼び出しをくらうこととなる。
必死の弁明でなんとか切り抜けることができたものの、一歩間違えば大惨事になっていた。
コミュ6話では、初ライブで張り切りすぎた結果、リハーサルで全力を出しきってしまう。リハーサル前に何度も「体力は本番まで温存」と伝えたにも関わらずだ。もちろん、ファーストライブは散々な結果に終わった。
さすがのプロデューサーも「信頼を得たはずなのに、余計に言うことを聞いてくれなくなったぞ?」と困惑を隠し切れない。奏でられるは胃痛のプレリュード(前奏曲)。彼女についていけるのだろうか……。不安は募るばかりだ。
コミュ7話になると、オフの日にまでプロデューサーに鬼電をかける、面倒くさい彼女みたいなムーブをするように。しかも電話に出ないと、学園中を走り回って探し出そうとする。月村手毬、仕上がってきた。
制御できない暴走超特急。このあたりでプロデューサーの困惑は核心に変わったと思う。月村手毬(本来の姿)……何をしでかすかわからなくて危なすぎる。
月村手毬がネットで炎上するわけがない
ドヤ顔をしたらその直後に大惨事を引き起こす。まさに漫才のフリとオチ。この即落ち2コマのスピード感が月村手毬のスタンダードだ。
「物語の中に銃が出てきたらそれは発砲されなければならない」のと同じように「月村手毬がドヤ顔をしたらその後やらかさないといけない」わけだ。まさに『学マス』式「チェーホフの銃」【※】である。
※演劇や小説のテクニック。ストーリーに登場するものには必然性がなければいけないというルール、法則。
改めてになるが、「N.I.A」制覇のために立てたプロデューサーの計画は、月村手毬を「孤高で神秘的なアイドル」として売り出すことだ。そのためには、最新の注意を払い、計画的に月村手毬をプロデュースしていかねばならない。
この計画を成功させるための唯一にして最大の不安要素は、プロデュースする対象が月村手毬なこと。「不自由」の枷から解き放たれた彼女を止められるものは、この世に存在しない。
しかし、月村手毬は自信満々に答える。「今の私はもう……問題なんて、起こしませんから」と。そう、これがフリである。そして「フリかな?」と思う暇もなく、数秒後にオチがやってくる。
「SNSを始めたこと」「ちょっぴり話題になっている」ことが彼女の口から告げられる。ちょっぴりじゃない、しっかり炎上している。
しかしそこは歴戦のプロデューサー、対応も慣れたものだ。じつは事前に月村手毬公式アカウントを作っており、悪質な偽物を通報することで対処したのだ。
無事、炎上していたアカウントは削除された。問題なのは、そのアカウントが本物であることだが、これも「N.I.A」制覇のためだ。すまん月村、君の世界はまだファンには激しすぎると思うんだ。
なんとかまだ「孤高で神秘的なアイドル」というイメージは保てている。でも、もしかしたらちょっと過保護かもしれない。ある日、あさり先生からも「担当アイドルを信じて、送り出す」ことが大切と指導されてしまった。
月村手毬を……送り出す……???
うっ、胃が……。月村手毬を担当することになってから胃痛薬を服用するようになったプロデューサーと同じ痛みをこの身に感じる。
孤高で神秘的なアイドルのイメージを崩さないため、これまで番組出演は避けてきた。もし月村手毬が自由に口を開いたら、「神秘さ」も「孤高さ」もいともたやすく壊れてしまうことが、プロデューサーにはわかっていたからだろう。
しかして、試練の日が訪れる。学園主導によるもののため、どうしても断れなかった「他学園のアイドルたちとの共演番組」の仕事の日がやってきた。
事前に「くれぐれも……無難にこなしてくださいね」と、藁にもすがる思いでお願いしてはいたのだが、もちろん月村手毬はここでもトラブルを起こす。ライバル校(極月学園)のアイドルたちを煽り散らかしているやりとりがネットに流出してしまったのだ。
極月学園に馬鹿にされていた初星学園の仲間(倉本千奈と篠澤広)を守るための行動ではあったのだが、いかんせん言葉が強すぎた。あまりの強烈さに、倉本千奈は真っ青に、ドMの篠澤広は光悦の表情を見せていた。
とにもかくにも、プロデューサーが計画していた「孤高で神秘的なアイドル」で売り出す作戦は、これにて爆発四散と相成った。もう木っ端微塵。跡形も残っていない。
頭を抱えるプロデューサーを横目に、この瞬間、筆者は月村手毬のアイドルコミュ10話を思い出していた。
「私の翼は造り物で、本物じゃない」
月村手毬は超人でも天才でもないのかもしれない。その翼は造り物かもしれない。ただ、その翼には多分ジェット噴射器が取り付けられていると思うんだ。そして、ブレーキとハンドルが壊れている。ゆえに制御不能。
月村手毬がそばにいる世界はあまりに激しくて、振り落とされてしまいそうだ。そんな彼女についていくプロデューサーの胃痛はマッハ。頑張れプロデューサー! 我々もついていくぞ!!
プロデューサーの「月村手毬、神秘なアイドル計画」が崩壊したところまでが、月村手毬のアイドルコミュ11話~13話で描かれたストーリーである。たった3話なのに濃密すぎる。
なお、今回実装された「N.I.A編」シナリオは20話まで。月村手毬は最初から最後までトップスピードで駆け抜けている。燃える展開あり、笑える展開あり、読み応えたっぷり。
シナリオの解放条件は「定期公演:初」と同様だ。プロデュースモードをプレイし、特定の条件を達成することで親愛度がアップ。親愛度に対応したシナリオが解放されていく仕組みである。
ちなみに今回の先行プレイで20話まで解放するのにかかった時間は約6時間だった。ただ、プレイ開始時にメモリーが揃っていない環境だったため、すでにある程度メモリーを所持しているプロデューサーなら3、4時間程度で解放できるはずだ。
いや~、月村手毬の「N.I.A編」シナリオ、マジで最高だった!
月村手毬のかっこいいところも、かわいいところも、ポンコツなところも、ぜんぶ……ぜーーーんぶ堪能できてお腹いっぱいだ。月村手毬だけじゃない。秦谷美鈴も、賀陽燐羽も、すごく輝いていた。彼女たちもプロデュースしたい……そう強く思わされた。
秦谷美鈴に関しては、5月にプロデュースアイドルとして登場することが発表されている。わりと「やべー奴」の片鱗を見せているので、どんな爆弾を落としてくれるのか、いまから楽しみだ。
賀陽燐羽がプロデュースアイドルとして登場するかどうかは未知数すぎる。ただ、『学マス』が続いていく限り、可能性は0ではないはず。恐らく。
……なんだったら「SyngUp!」のプロデュースをさせてくれないだろうか。
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