潜入任務の緊迫感を盛り上げる、史実とフィクションが入り混じるストーリー
そして、ネイキッド・スネークが挑む潜入任務に対する没入感をより強くしてくれているのが、ゲームのストーリーです。
『MGS2』や『MGS4』などのような、今の時代情勢になってから改めてプレイすると感じ方が変わってきているタイトルもあるため、「『メタルギア』シリーズでナンバーワンのストーリーは、『MGS3』だ!」と断言することは難しいですが、少なくとも、初プレイの時に私の中でいちばん心に響いた物語が『MGS3』であることは間違いありません。
さきほども軽く触れましたが、本作におけるスネークの任務は、冷戦の緊張状態の中アメリカからソ連へ亡命した、スネークにとっての師匠であり最愛の人である “ザ・ボス” の抹殺。
ぜひともゲーム本編をプレイして体感していただきたいので、多くは語りませんが、ザ・ボスとの決戦・決着・ラストシーンの感動は、今でもハッキリと思い出せます。
本作の物語の舞台が冷戦であるように、史実上で実際に起きた出来事の中にメタルギア世界のフィクションが混じってくるというストーリーの作り方が『メタルギア』シリーズ全体の特徴であり、個人的に大好きなポイントです。
シナリオの一部が史実になっていることで、話の流れが理解しやすくなるだけでなく、物語そのものにも奥行きや立体感が生まれているように感じます。
また、『MGS3』は、一連の『メタルギア』シリーズ(“メタルギアサーガ”)を時系列順に並べた時のいちばん最初の話であるため、別タイトルにも登場する重要人物や要素が散りばめられています。
これもまた、『MGS3』の魅力のひとつ。この作品をプレイしておくと、他のタイトルを遊んだ時の衝撃度や理解度には大きな違いが生まれます。
物語のベースとなるシナリオが素晴らしい『MGS3』ですが、それだけでなく、ゲーム中に挿入されるムービーがカッコいいのも印象的です。
特に私が衝撃を受けたのは、最初のムービーでネイキッド・スネークが葉巻を投げるシーン。
これを見た瞬間、完全にネイキッドと『MGS3』に心を奪われてしまい、ゲームが始まってからまだ一度もボタンを押していないにも関わらず、このゲームが神ゲーであることを確信しました。
その後、この確信が裏切られることは一切なく、映画を見ているかのようなムービーの演出は常に最高をキープしたまま、ラストシーンまで駆け抜けていきました。
そのうえ、「鳥になってこい!幸運を祈る!」「タチアナに貰ったこの靴を誉めてくれた礼だよ」「さっきの夢を正夢にしないでくれ。頼んだぜ」など、セリフ回しもとんでもないカッコよさ。
前後を見なければ何の事だか分からないセリフたちかもしれませんが、当時多感だった私にとっては、どれもこれもが心に突き刺さりすぎてしまったキラーフレーズです。
初プレイ当時は、「ありとあらゆる方向からカッコいいをぶち込んでくるな」と思いながらゲームを進めていました。
この「ありとあらゆる方向」には、Cynthia Harrellさんが歌うゲームの主題歌『Snake Eater』も含まれています。
ゲームを進める中で、オープニングと共にこの曲のイントロが流れた瞬間、その神がかり的なカッコよさに鳥肌が立ち、テンションは爆上がり。オープニングが終わる頃には、既に『MGS3』のサントラを手に入れることを心に決めていて、これが人生で初めて買ったゲームのサントラになりました。
今でも仲のいい友人と行くカラオケでは必ずこの曲を歌っているくらい大好きなのですが、何年か前に開催された「メタルギア in コンサート」で、Cynthia Harrellさんの『Snake Eater』を生で聞くことができたのは嬉しかったですね。
ちなみに、『MGSΔ』の『Snake Eater』はCynthia Harrellさんの新録ということで、非常に新鮮でした。このバージョンも控えめに言って最高ですね。
ちなみに、『Snake Eater』には、和田アキ子さんが歌唱を担当した日本語版もあったりします。今回の『MGSΔ』の「Premium Pack」に同梱されているアナログレコードにもこの歌唱が収録されていて、その情報を聞いた瞬間に「Premium Pack」の購入を心に決めました。今から届くのが楽しみです。
さて、話の流れ全体はシリアスで、何度か暗い気持ちにもなる『MGS3』ですが、シリアス一辺倒というわけではなく、ゲーム内に多く存在する大小さまざまなネタが息抜きをさせてくれるというのもまた魅力です。
時にはシリアスから離れすぎてしまうようなネタもあるのですが、それらは話が本筋に戻った途端に脳内から消え去ってしまって、シリアス展開を一切邪魔しないのですから不思議です。
ネタが豊富な『MGS3』では、「そんなところまで用意しているのか!」と思ってしまうくらい、プレイヤーの行動に対してゲーム側が様々なリアクションをしてくれます。
こうなってくると、潜入任務の本筋を無視して色々なことを試してみたくなってしまうのがプレイヤー心理。……その結果、ほんの小さな出来心がゲームオーバーを招いたこともありました。
言うまでもなく本筋は面白いし、寄り道して遊んでみても楽しい。
この本気のところと遊びのところのバランスが絶妙なのも、『MGS3』の魅力です。
臨場感がより高まる『MGSΔ』の新プレイスタイル「NEW STYLE(ニュースタイル)」
さて、ここまではオリジナルの『MGS3』の魅力をお話してきました。
とりあえずさわりの部分だけという感じなので、まだまだ言い足りないことはありますが、今回のメインであるリメイク作『MGSΔ』に話を移したいと思います。
ムービーや無線会話など、オリジナルの雰囲気を一切壊すことなく丁寧にリメイクされているという印象の『MGSΔ』で追加された新要素の1つが、「NEW STYLE(ニュースタイル)」というプレイスタイルです。
このスタイルでは、操作方法が近年のアクションゲームに近いものに変更されているほか、カメラの画角が大きく変わっています。個人的には、スネークの背中と構えた武器がいちばんカッコよく見える、肩越し視点で銃を構えて狙う時の画角が好きですね。こういったカメラワークのこだわりによって、潜入の臨場感が増しているように感じます。
しかも、これらのカメラワークのおかげで、敵兵の発見もしやすくなった……ような気がします。


ちなみに、昔ながらの操作方法とゲーム画面に近い「LEGACY STYLE(レガシースタイル)」も本作では用意されています。これらのスタイルはゲーム中にも切り替えられるので、両者を比較しつつ、より好きな方を選んで遊べるのが嬉しいですね。
ただ、ニューにはニューの、レガシーにはレガシーの良さがあるのでどちらかを選ぶのは難しいところですね。これで、少なくとも2周はプレイすることが確定した気がします。
そして、『MGSΔ』を遊んでいる中で変わったと感じたのが、ゲーム内の小ネタであるケロタン。
これは、オリジナルの『MGS3』にあった収集要素であり、各エリアに配置されたケロタンを全て攻撃すると、ご褒美アイテムのステルス迷彩を貰うことができました。
簡単に見つかるケロタンもあれば、攻略情報を見なければ分からないような、かなり見つけにくい場所にあるケロタンもあるため、ケロタンの収集はかなりのやりごたえ。
全部のケロタンを撃ってクリアしたと思っていたのに、実はいくつか撃ち漏らしていたことが判明し、急いでその日のうちにもう一周して、1日で2度『MGS3』をクリアしたことは、今となってはいい思い出です。
それはともかく、『MGSΔ』ではケロタンだけでなく、新たにガーコも配置されています。ありのままの姿のケロタンと違ってガーコは迷彩服を着ているため、ケロタンよりもちょっと見つけにくいかもしれません。
ちなみに、オリジナル版でのガーコは迷彩服の柄のひとつで、撃っていないケロタンがエリア内にいるときは鳴き声で教えてくれるという能力でした。
しかし、今作ではポーズ画面でそのエリアのケロタンとガーコを撃っているかどうかが確認できるようになったため、先ほどお話したような撃ち損じの悲劇が避けられるようになっています。ややマニアックな視点ではありますが、こういう痒い所に手が届くような配慮が嬉しいんですよねー。
そして、『MGSΔ』の目玉のひとつと言っても過言ではない!……と私が思っているのが、スペシャルゲームの『猿蛇合戦』(PlayStation®5版/Steam®版に搭載)。
これは人気ゲームシリーズ『サルゲッチュ』とコラボしたスペシャルゲームであり、エリア内にいるピポサルを全部ゲッチュするまでのタイムを競うモード。コラボ相手の『サルゲッチュ3』の方には、『メサルギアソリッド』というミニゲームが収録されていたので、そっちもめっちゃやり込みました。
『猿蛇合戦』は、諸々の事情によってオリジナル版の作品ではほとんど収録されていなかったので、ここにきての収録は感慨深いものがありましたね。シンプルにピポサルを見たのが久々だったということもあって、物凄くテンションが上がりました。
ちなみに、このスペシャルゲームの主人公は『スマブラ』に出ている方のスネーク、ソリッド・スネークなので、設定上は『MGS3』のネイキッド・スネークとは別人だったりします。
さて、『猿蛇合戦』のようなスペシャルゲームで遊んでいると、どうしても頭をよぎってしまうのが『ガイサベージ』。
これは、ファンの間で語り草となっている『MGS3』の悪夢ゲームであり、とある場所でセーブをしてから、一度タイトル画面に戻ってロードをし直すと、何の脈絡もなく唐突に始まります。
しばらくこのゲームで遊んでいると画面がもとの『MGS3』へ切り替わり、これがスネークの見ていた悪夢だったということが明かされるのですが、最初に何の情報もなくこのゲームが始まった時は、本当に驚きました。どこからどう見てもメタルギアの画面じゃないし、文字通り夢みたいな画質だし……。
『ガイサベージ』も『猿蛇合戦』と同様、オリジナル版以外ではほとんど収録されていないため、知る人ぞ知るミニゲームといった立ち位置なのですが、『MGSΔ』で『猿蛇合戦』が久々に収録されたわけですから、期待せずにはいられません。
果たして、今回『ガイサベージ』はあるのか……?
おおおおおおお!!あるじゃん!!!!
このタイミングで唐突に始まるミニゲーム、これは『ガイサベージ』に違いありません。
……ん?
いや、ちょっと待てよ……。
これ、私の知ってる『ガイサベージ』とも全然違うな!!!!
『MGS3』でないことは確かだけど、あの時の『ガイサベージ』でもない。
じゃあお前は一体誰なんだ?
二代目『ガイサベージ』なのか?
二代目『ガイサベージ』って呼んでもいい?
二代目『ガイサベージ』って呼ぶね!
最後まで疑問は尽きず、スネークが悪夢から目覚めてもその答えが明かされることはありませんでしたが、二代目『ガイサベージ(GUY SAVAGE Δ)』は、かなり面白いアクションゲームでした。
ミニゲームにしては気合が入り過ぎ!最高!!
このように、ファンにとって嬉しい要素が盛りだくさんの『MGSΔ』ですが、その根幹にあるのは名作ゲーム『MGS3』。長きにわたる”メタルギアサーガ”における最初の物語ということもあり、予備知識もそこまで必要ではないため、シリーズへの入門作として最適だと思います。
オリジナルへの熱いリスペクトをこれでもかというほど感じる『MGSΔ』は、そのクオリティと遊びやすさから、『メタルギア』シリーズで遊んだことがないという方にもオススメできる1本です。
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