「無駄なグロ」なんて、ない。キャラへの感情移入を強烈にうながす“必然”のグロ描写
さて、ここまではストーリーについてお話してきましたが、「キャラクターたちにどれほど感情移入できるか」という点も、ビジュアルノベルでは非常に重要です。
そして、このキャラクターへの感情移入に対しても、グロシーンは大きな効果を発揮しています。
いまさら……という感じにはなってしまいますが、本作は、心に一切の痛みを感じない連続殺人犯の少年、“橘 才”が、物言わぬ少女、“紅緒 祀(べにお まつり)”と出会った瞬間に、人生で初めて心に突き刺すような痛みを感じ、その痛みの正体を知るために動き始める物語です。
作中では、「人の心は、痛みでできている」という言葉がキーワードとなり、心を知らない「人でなし」の主人公と、祀の心の中に住まう「ヒトデナシ」と呼ばれている人ではない存在が、ともに人の心を知ろうとする様子が描かれます。
この「心を知らない」という言葉は、ともすると、いわゆる “中ニ病”として受け取られかねないものです。
しかし、本作では、主人公の目を通して描かれる残虐非道な描写があることで、「あぁ……本当に、芯から人の心がわからないんだ、この子は」と、哀しい納得とともに気持ちを入れ込むことができましたし、その分だけストーリーの深みも増していきました。
たとえば彼は、カッターナイフで初対面のおじさんの頬に穴を開けて脅し、同じく紅緒祀に想いを寄せる恋敵の“鎌原 竜起(かんばら たつき)”を車で全速力で轢かせるという、人とは思えぬ残虐な所業を私に見せつけてくれます。さすがに心がなさすぎ……。
これらの描写がまた “痛いほどに” 丁寧なのが非常に恐ろしく、特に主人公に車で轢かれた側の身体の描写には、プレイしながら戦慄をおぼえました。文章で描写されていることでかえって想像力が刺激され、グロ系がかなり苦手な人間にとっては精神的なダメージが大きかったです。
こういった行動の数々に加えて、「心の痛みが分からない」とか「この世には偽善者しかいない」という発言を繰り返す主人公。
「こんなキャラ好きになれるわけないだろ!」と、普段の筆者なら言うでしょう。平常ならば、間違いなく苦手なキャラクター造形です。
「人の心が分からない」と語る、彼の心こそ分からない。
そんなことを考えつつ、彼らの心の交流と成長、そして恋が描かれる物語を読み進めていくうちに、筆者のなかで、主人公に対する思いにも変化が生まれていることに気付きました。
「あれ?もしかして、主人公のこと、嫌いじゃないかも……?」
我ながら、自分の手のひら返しっぷりに引きました。
彼が残虐な連続殺人犯であるという事実は変わりませんし、「こんなやつ好きになれるか!」という言葉にも一切嘘はありません。
しかし、その圧倒的なマイナスイメージでさえも吹き飛ばしてしまうような言動が、ゲームを進めていくと徐々に顔を覗かせてくるのです。
いわゆる “映画版ジャイアン” と似たような原理なのかもしれませんが、こういう気持ちにさせられてしまうのも、主人公のグロ行為からのギャップが大きいことが理由なのではないかと思います。
やたらとエグいけど、むやみやたらに入れられているわけではない。そう、序盤をプレイしながら筆者は「グロ描写が無駄に丁寧」であるように感じたなどと書きましたが、実はそれらは無駄などではなく、作品をより一層魅力的にするための必要な描写だったのです。
それが、『花束を君に贈ろう』のグロシーンなのです。
二重人格の片割れ「ヒトデナシ」と主人格「祀」のあいだで起きた過去の出来事もかなり壮絶で、文章として書き起こすことすらもためらわれるような凄惨な経験が、丁寧なグロ描写とともに語られます。
その悲惨さは、主人公の残虐行為が子どものお遊戯に見えてくるレベル。
「ふざけんな!誰がここまでやれって言ったんだよ!」と言いたくなるほどの描写で彼女たちの過去が紐解かれたとき、私の胸の中にあったのは、「頼むから、君たちは幸せに生きていってくれぇ……」という切実な願いだけでした。
こんなに精神的に大ダメージを負っていたにもかかわらず、心の中には純粋な気持ちだけが広がっているという非常に不思議な感覚は、中々味わえるものではありません。
「プレイしてから見ると泣ける」描きおろしイラストグッズもついてくる、超豪華な初回限定版
ゲーム本編の魅力はある程度お話できましたので、ここでちょっとブレイクタイム。
4月30日に発売予定のパッケージ版の初回限定版に付属する特典についても触れておきたいと思います。
この初回限定版には、ゲーム本体のほか、サウンドトラックCDやボイスドラマCDといった豪華な特典が多数用意されています。
CD以外の特典としては、本作のキャラクターデザイン担当であり、『鈴原るる』など数々のVTuberのデザインを手掛けたことでも知られる、さいね氏によって描きおろされたイラストを使用したグッズがあります。
せっかくなのでご覧いただくと……
ブランケットや、
複製サイン入り色紙、
個人的にお気に入りの扇子などが付属します。
まだ『花束を君に贈ろう』のプレイを始める前に、これらの豪華な特典たちを見たときは、「へぇ~、こういうグッズがついてくるんだ。いいじゃん。素敵じゃん。」くらいの温度感でした。
しかし、プレイをある程度進めてから、あらためて初回限定版グッズたちを手に取ってみたところ、そのイラストがプレイ前とは完全に別物に見えてきました。
一点一点のイラストの細部、その意味するところがあまりにも痛切に感じられ、「かわいい!」という気持ちとはまた違う、複雑な思いが去来したのです。
本作をプレイした方には共感していただけると思いますし、未プレイの方も本作をプレイすればきっと筆者と同じ想いを感じていただけると思います。
この感じ方の変化もまた、本作のストーリーの面白さを象徴しているのではないでしょうか。
刺激的かつ衝撃的な暴力シーンがありながらも、その奥底には青春の感動が煌めく『花束を君に贈ろう』は現在PC(Steam)向けに配信中となっており、4月30日にはNintendo Switch向けにリリースそして各種パッケージ版が発売する予定です。
ぜひ本作をプレイして、血の気が引くようなグロテスク描写と、胸がいっぱいになるような青春ストーリーを堪能してください。
なお、本作は日本のゲームレーティング機構であるCEROより「Z指定」を受けたタイトルであり、Steamにおいても全編をプレイするためには公式外部パッチを当てる必要がありますので、この点だけはご注意ください。












