『聖剣伝説』シリーズが本日で35周年を迎える。
そんな今こそ言いたい。こんなスゲぇシリーズを知らないなんてもったいなさすぎる……! と。
記念すべき日だし、少し思い出話を紹介させてほしい。
『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』は長い間、筆者にとって憧れのゲームだった。
友達の家で本作のプレイを垣間見て、ボス戦のBGMと、必殺技の演出に度肝を抜かれ子供心に「なんだこのゲーム、かっこよすぎる」と思ったのを覚えている。
しかし、当時は本体を持っていなかった。世間が『ファイナルファンタジーX』で盛り上がっている頃に、本作をプレイするためだけに、旧世代機となっていた初代プレイステーションをなけなしの小遣いで買ったことは未だに覚えている。


しかし、ファンの方々には信じられないだろうが、実は『聖剣伝説』がシリーズであり、そのほかにもいろいろな作品があるということを当時は知らなかった。『LEGEND OF MANA』に関しては、「英語のサブタイトルがついたカッコよくておもしれーゲーム」くらいにしか認識していなかったのである。
もったいねえ。今振り返ると本当にもったいない。
冒頭でもお伝えしたが、『聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜』の発売を起点とすると、2026年6月28日で本シリーズは35周年を迎える。これに合わせて、6月17日から7月1日までシリーズ作品のセールも実施中とのことだ。
この機会に、筆者は思い出の『聖剣伝説 Legend of Mana』(リマスター版、以下、『LoM』)と完全初見となる『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』(以下、『ToM』)をそれぞれスマホ版でプレイしてみた。
すると、これがまた驚くほど面白かった。
もちろん『LoM』と『ToM』はまったく同じゲームではない。むしろプレイフィールはかなり違う。ほぼ別ゲーと言ってもいいくらいだ。
しかし、遊んでいるうちに「これ、どっちも『聖剣伝説』なんだな」と納得させられる部分をいくつか見つけられた。
自由度が高い。やりこみ要素が多い。アクションが気持ちいい。音楽がいい。そして、物語は重いが、肩ひじを張っていない。悲しみも、笑いもそこにある。
履修せずに通り過ぎるにはもったいなさすぎる、すごいシリーズだったのだと気づかされた。
しかも今は、ゲーム機を買わなくてもスマホ版やPC版でかなりのシリーズ作品に触れられる。あの頃の自分が聞いたら、ちょっと信じられないかもしれない。
もし筆者のように「1作品しか触れていない」人、あるいは「名前は知っているけどんだことがない」人がいるなら是非とも遊んでほしい。
以下、本稿では「『聖剣』らしさとは何か」を考えつつ両作品のインプレッションをお届けする。
※この記事は『聖剣伝説』の魅力をもっと知ってもらいたいスクウェア・エニックスさんと電ファミ編集部のタイアップ企画です。
『LoM』は懐かしくて深い。BGMとドット絵がエモすぎる
『聖剣伝説 Legend of Mana』をひと言で“神ゲー”と評してしまっても、たぶん怒る人はいないはずだ。隣人にも訊いてみてほしい。きっと「いいゲームだよ」と言うだろう。
でも、何が「いい」と言うかは人によるに違いない。なにせ要素が多すぎるのだ。
まず、今回久しぶりにプレイしてみて、やっぱりストレートに沁みるのは本作のビジュアルとBGMだった。当時は音色の豊かなBGMと、美麗なドットのビジュアルに「新しさ」を感じていた。
もちろん今遊ぶと懐かしい。しかし、それでもまだ「新しい」と思えてしまうのだから恐ろしい。
「プレステ」後期のタイトルといえば、緻密な3D表現もどんどん磨かれていた時代だ。そんな中で、本作のビジュアルはあえて2D・ドットで描かれている。そこにこだわりがないはずがない。キャラクターアニメーションが、なめらかに動きすぎなのだ。

本作にはにわかには信じがたい独自要素がある。フリーシナリオ制、そしてランドメイクだ。ゲーム開始時、本作のワールドマップは文字通り空白になっている。

本当に、何もない。ここに道中で手に入るアイテムを配置することで、そこに町や森、洞窟が生まれて訪れることができるようになる。
結果として、どういうワールドになるかまでが自分次第なのだ。オープンワールドもびっくり。あまりにもフリーすぎる。

そして、本作がフリーシナリオたるゆえんとしては、短いイベントがオムニバス形式で多数収録されている点にある。世界の根幹にかかわるイベントから、ゆるいイベント、悲しい話、シュールな話まで様々だ。それらのどれをどう辿ってもいい。
ゲームクリアのためには重要なストーリーを進める必要があるのだが、それも3つの異なる物語が存在していて、そのどれかをクリアするだけでラスボスと戦うことができるようになる。
筆者としては、3つのストーリーの中だと話の筋がシンプルな「ドラゴンキラー編」が好きでついつい選びがちだ。

それでも単純な王道ストーリーではない。どこを見ても誰かが正しくて、誰かが悪いというわかりやすさだけでは片づけられない複雑な話ばかりなのは『LoM』の特徴にして魅力のひとつだろう。

そしてなんやかんややっていると、なんか世界の重大な謎に巻き込まれ、自宅に知らない人たちがたくさん押し寄せて世界の行く末について侃々諤々の議論が巻き起こっていたりする。

もちろん、ストーリーの進行の仕方次第では彼らに出会ったり深く関わったりできるし、ちゃんと世界と関わっていれば多くのものが見えてくる。ただ、急に重大な局面が訪れて説明もなく最後の戦いに巻き込まれるのは、今思うとリアルさがある。
正直に言えば、初めてプレイした当時はちんぷんかんぷんだったし、今でも捉えどころがないと感じるシナリオがたくさんある。

でも、人生ってそういうものだ。
そもそも最初に会話するNPCからして独特だ。「世界は見る人のイメージで変わる」というような、いきなり哲学めいた話が始まる。

最初の町で流れるBGM「ホームタウン ドミナ」はまさに郷愁を感じさせてくれるようななつかしく、穏やかな曲だ。町BGMの名曲としても有名なので、どこかで名前は聞いたことがあるという方も多いだろう。しかし、そこで最初に目にするのは、NPC同士のディスコミュニケーションだ。

今思うと、これがめちゃくちゃエモい。
個人的には本作のオープニングの始まり方が好きなのだが、このドミナでの一幕まで含めて『LoM』らしさのような気がしている。
主人公は「勇者」ではなく、あくまでプレイヤーの分身なのである。冒険はわかりやすく始まらないし、あったりなかったりするが、日常から少しズレたところに地続きで存在している。
そういう冒険の始まりが気持ちを落ち着かせてくれるBGMと不穏なシナリオのズレから感じられる。これは、今でもあまり見ないストーリーテリングのやり方で新鮮な気がしている。
やり込み要素で時間が溶ける。実はスマホにピッタリのゲームかも?
一方で、ゲームプレイ自体は夏の晴れ空のようにスカッとわかりやすい。あくまで表面的にはだが。
実のところ、本作をクリアするだけならただただ敵の攻撃をかわして、敵に攻撃を当てるだけでいい。戦闘後には体力が全回復するし、全滅してもその場でコンテニューできる。めちゃくちゃアクションに集中できる設計だ。
筆者もこのタイプなのだが、「なんで敵の強力な攻撃を、ただ待って受け止めなきゃいけないんだ」という疑問を抱く人には、かなり合うと思う。
避けられる、殴れる、勝てる→気持ちいい。これが大事だ。
ただ、システムを掘るとめちゃくちゃ奥深いのもまた『LoM』である。
攻撃ひとつとっても“弱攻撃”と“強攻撃”のほかに、格ゲーのようにコマンド入力で出すことのできる特殊攻撃まで存在している。そして、タイミングよく入力すればコンボも可能だ。実のところコンボは使わなくても全然なんとかなる。
でも、使いたくなりませんか?

武器種も豊富で、わかりやすくファンタジーなものから果てはヌンチャクなんて東洋の風を感じられるものも存在している。筆者は大剣と槍がお気に入りなのだが、杖を使っても弓を使っても全然面白い。

なにせ武器ごとに使える必殺技が無数にあるのだ。プレイフィールも見た目の味も全く変わってくる。
そして必殺技はやっぱり今みてもかっこいい。

ただ、習得は一筋縄ではいかない。本作の“技”全般はかなり特徴があって、個人的にはここが楽しい。
技に関してはいつでも繰り出せる“アビリティ”と、ゲージを溜めて放つ“必殺技”の2種類があり、どちらも有機的に連動したものとなっている。
まず、アビリティは他のアビリティや攻撃と組み合わせて応用技を放つことができる。たとえば“ガード”と“ダッシュ”は同時に発動すると、ガードしながらダッシュするという文字通りの“ガードダッシュ”に派生して大いに移動を助けてくれる。

そして、アビリティはセットして戦闘を重ねることで熟練度が溜まり、異なるものを覚えたり上位の技や、応用技をそのまま覚えたりすることができる。もうお察しの通り、ガードとダッシュを鍛えると、そのままガードダッシュをひとつのアビリティとして覚えることができるという具合だ。
応用技を覚えてしまえば単純にスロットが圧縮できるので、どんどん強いアクションができるようになる。
そして、武器も同じように熟練度を獲得できるのだが、この武器とアビリティの熟練度の如何によって必殺技も解禁されていくのだ。


このあたりのシステムを理解していると最短経路で最強を目指せるので、周回プレイがメチャクチャはかどる。一方で知らなくても気づけばいろいろな技を身につけている。
ただ、いろいろ試して試行錯誤しないと全然習得できない技もあったりする。そこはやりこみの腕の見せ所という感じだ。
正直、今回プレイするのは『ToM』がメインのつもりで、実は『LoM』は確認程度にとどめておくつもりだった。だが、レイジングペインを習得しようと思っていたら物語がどんどん進むし、レイジングペインを撃っていたらゲームをクリアしてしまっていた。
レイジングペインですよ、レイジングペイン。やはり撃ちたくなる。
でも戦闘関係の天井にたどり着くことは難しくはない。
もちろん、全ての技を習得したいなら話は変わってくる。技図鑑はNo. 217まで存在しているので、これを埋めていくというやりこみも可能だ。いたれりつくせり過ぎないか?

一方で、戦闘以外の本作のやりこみ要素が猛烈なことはもはや語り草となっているので、ご存じの人も多いだろう。
今回も、ラスボス戦の直前になって思い出して慌てて武器の制作に着手することになった。やった方が楽になる局面もあるし、やりこむとめちゃくちゃ強い。でも、やらなくてもなんとかなるのが本当にありがたい。
ただ、ちゃんとやろうとすると普通に歯ごたえがすごい。隙間時間を見つけてはいろいろな素材を武器に練り込んでみたが、ちっとも性能が上がらない。
様々な素材を選んで武器に組み込んでいくことでその組み合わせや順番などによって無限に等しい派生パターンがあり最強武器を作ることができるのだが、これがちゃんとシステムを理解していないと難しいのだ。攻略をみないのなら、ゲーム本編よりも明らかに時間をとられる。

そして筆者は実のところ仕様に関しては未だに理解していない。正直に言うと攻略は読んだ。それでもわからない。最後の最後に作った武器、むしろなぜか攻撃力が下がるし。

それでも、そこまで使っていた拾っただけの武器より1.5倍くらい強いものになった。本作では、ダメージが5変わるだけでも快適さが全然違う。連続で殴りまくるわけなので、攻撃力の伸びを体感しやすい。これは本作のアクションRPGとしての醍醐味だろう。
おかげさまでラスボスはあっけなく倒せてしまった。
このあたりのやり込み要素は一切やらなくても全く問題なくクリアはできるし、やりたくなったら、好きなだけこだわれる。なにも武器作成だけではない。ペット育成に魔法にと、作って最強を目指せるものはたくさんある。
このあたりの距離感が絶妙だ。

どちらかというと筆者はそこまでゲームをやりこむ方ではない。美味しいところだけ気が向いたときに手軽に楽しみたいタイプ。そんなワガママな自分にとって『LoM』はとてもいいゲームだ。
そしてこのゲーム性は現代にスマホで遊ぶゲームとしても、実はかなり相性がいいのではないかと思った。物語もフリーシナリオ制なので、1つひとつのイベントに区切りがつけやすい。スキマ時間で寄り道したり、素材集めをしたり、少しだけ進めたりできる。時間は溶けるけど。
HDリマスターではエンカウント回避のオプションも追加されているので、探索もかなり楽になっている。本作、本来はエンカウントが完全固定で回避はできないし戦闘からの逃走もないというなかなか硬派なところも持っているのだ。
いろいろな調整はありつつも、あくまでリマスターなので、イベントやクエストも含めて昔の味がそのまま残っている。
今回、プレイ済みではあったのだが、久しぶりだと全然迷った。いろんなところで。ヒントはあるのだが、イマドキのゲームとして見るとさりげなく、真摯にゲームと向き合わないと気づくのは難しいものも多い。

やりこみ要素の沼も含めると、復刻されたあの分厚い攻略本“アルティマニア”がほしくなってくる。ちなみに、電子書籍版も登場して今では入手しやすくなっているが、「需要がある」ということだろう。

文学であり、哲学であり、アクションゲームでもあり、RPGでもあり、そのどれでもない。今遊んでも新しい。ただの思い出補正だけではない面白さがある。
こんな作品をプレイしていないなんて本当にもったいない!
少しでもそう思っていただけたなら、ぜひ『LoM』を試してみてほしい。





