Annapurna Interactiveはアメリカの一軒家を舞台にした一人称視点アドベンチャーゲーム『Gone Home』をiOSへ移植すると発表した。発売日は12月11日。価格は4.99ドル。対応機種はiOS 8.0以上のiPhone 5s、あるいはiPad Air以降となっている。詳しくはiTunesのページにて確認してほしい。
Macを含めた他のプラットフォームでは日本語にも対応しているが、いまのところiOS版の対応言語は英語のみとなっている。
『Gone Home』はFullbrightが開発した一人称視点のアドベンチャーゲーム。俗にウォーキングシミュレーターと呼ばれる、パズルや戦闘といった要素のない探索と物語のゲームだ。
1年ぶりに実家に戻った主人公だが、家には誰も居ない。妹や両親がどこに行ったのかわからないまま、主人公は家族を探して家の中を回る。家の中には主人公の思い出の品や家族の持ち物、思いを綴った手紙や日記などが散りばめられている。プレイヤーはこの家を自由に探索しながら、一家に何があったのかを解き明かすことがこのゲームの目的となる。
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1995年のアメリカに住む普通の一般家庭に一体何があったのか、雨音と雷鳴が轟く中、ゲームは終止不穏な雰囲気を保ったまま進行していく。この家に住む家族の思いや悩みは家の中の物品や回想を介し、プレイヤーの探索と考察によって徐々に明らかにされていく。
『Gone Home』は2時間もあればクリアできるコンパクトなゲームだ。ビデオゲームやブラウン管テレビ、カセットテープ、あるいはRiot Grrrlムーブメントといった90年代の思い出を巡る、現実的で中身の濃いストーリーで高い評価を受けた。
2013年にPCで発売されて以降、Play Station 4やXbox Oneにも移植されている。2018年9月にはNintendo Switchへも移植された。
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『Gone Home』を開発したFullbrightは2012年にオレゴン州のポートランドで設立された。2K Marinにて環境ストーリーテリングに力点をおいた『Bioshock 2』のDLC「Minerva’s Den」を制作した小さなチームのメンバーがFullbrightの主なメンバーとなっている。このときの経験や人脈は『Gone Home』制作にも生かされており、ゲームに収録されたデベロッパーズコメンタリーは非常に興味深いものとなっている。
2017年には未来を舞台に、地球からはるか彼方の宇宙ステーションでクルーを襲った危機を描くアドベンチャーゲーム『Tacoma』を発売した。未来の世界の新たなホームに住む人々の姿を描いており、本作も高い評価を得ている。
すでに5年前のゲームとなった『Gone Home』だが、精巧に作られた家屋のグラフィックだけでなく、家族に起きた事件を描くストーリーは色あせない。武藤陽生氏と伊東龍氏の行った上質な日本語ローカライズがiOS版にはいまのところ含まれていないことは残念だが、iOS版リリースで本作がより多くの人に届いてくれることを願ってやまない。
文/古嶋誉幸