Gun Mediaは『Layers of Fear 2』を正式に発表し、初のトレイラーと開発スタッフの発言をまじえた二編の映像を公開した。以前には「プロジェクト・メリエス」と題されたティザー映像が公開されていたが、その正体が『Layers of Fear 2』だったことが明かされ形だ。対応プラットフォーム、発売日、価格は不明。
2016年に発売された『Layers of Fear』は、ポーランドの開発スタジオBloober Teamによる一人称ホラーゲーム。強迫観念に襲われた画家の狂気を描いている。恐怖体験は、あくまで画家の思い込みによるものなのだが、DLCの『Layers of Fear:Inheritance』では、その画家の娘を主人公にしたことによって本作の真相を描いている。
本作が注目された背景には、いち早く小島秀夫監督の『P.T.』のフォロワーゲームとして名乗りをあげたことがある。さまざまなインディースタジオが、『P.T.』に影響を受けて一人称のホラーゲームを制作し始めたが、資金難などにより多くが頓挫。そのなかでもBloober Teamだけは、しっかりと作品を完成させて発売するまでに到った。
今回、トレイラーと同時に発表された動画「Layers of Fear 2 – Inspiration」では、本作が「映画史」から着想を得ていることが語られており、そのタイムスケールは1902年の『月世界旅行』で知られるジョルジュ・メリエスから現代の映画までいたるという。舞台は大西洋横断クルーズをしている豪華客船だ。船舶では映画の撮影や上映が行われており、主人公はハリウッド黄金時代のあるスター。現在はある偏屈な映画監督の先進的な映画に出演している。
開発チームは「主人公を俳優にしたことは、物語の決定的な転機となった。その人の本当のアイデンティティを探求するテーマに行き着いたんだ。自分の人生を他の人々の描写に費やしてしまうと、その過程で自分自身を見失う危険性がある」とコメントしている。
公開されている映像からは、物語のヒントとなるような要素や、ジョルジュ・メリエスを思わせる要素はほとんどない。しかしネズミの群れから、棺おけが写るのは『吸血鬼ノスフェラトゥ』や『魔人ドラキュラ』などの初期の吸血鬼映画を思わせるかもしれない。
※以前から公開されていたティザー映像。
またゲームの舞台となる年代も気になるところだ。ハリウッド黄金時代と一口でいってもサイレント映画時代の1910~1920年代、トーキーになってからだと1930年代から1940年代に及ぶ。サイレント時代の偏屈な映画監督といえば、エリッヒ・フォン・シュトロハイム、トーキー時代だとオーソン・ウェルズが代表的な人物だろう。
エリッヒ・フォン・シュトロハイムが自己パロディ的に俳優として出演した『サンセット大通り』という映画がある。往年の大女優が現役の栄光を忘れられず、映画界に復帰しようと妄執に囚われて狂気に侵されていくのを描いた名作だ。『Layers of Fear 2』に通底しているテーマであり、本作が『サンセット大通り』から影響を受けているのか気になるところだ。
なお、トレイラーの声をあてているのは、ホラー俳優のトニー・トッド。日本では知名度がいまいちかもしれないが、ゾンビ映画の元祖をリメイクした『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記』で大抜擢され、その後の『キャンディマン』で地位を固めた。『ファイナル・ディスティネーション』ではゲスト的に出演している90年代を代表するホラー俳優だ。トニー・トッドがゲームに出演するかはまだ明らかではないが、確定とみてよさそうだろう。ホラーゲームのみならず、ホラー映画ファンも本作の続報に注目したい。
ライター/福山幸司