Frontier Developmentsの開発するMMOスペースコンバットシム『Elite Dangerous』では、今日も天の川銀河を舞台にたくさんのコマンダー(プレイヤー)が生活している。同作では数々のコミュニティ主導イベントが企画されているが、その中でも多数のコマンダーが天の川銀河の最果てを目指す「Distant Worlds II」はもっとも挑戦的なイベントだといえる。
Distant Worlds IIのスタート地点は太陽系から177光年離れた「Pallaeni」星系。1万3000人以上ものコマンダーが約20週間(約5ヶ月)を掛け、太陽系からおよそ6万5000光年先の「Beagle Point」星系へと向かう。Beagle Pointはコマンダーが調査した星系の中でも、天の川銀河のもっとも外周に位置するもののひとつだ。
参加の目的は個々人よってさまざまだが、大きな目標は「新たな興味深い場所、空間的な異常、地質学的な特徴を発見し、命名すること」となっている。『Elite Dangerous』の世界は1/1スケールの天の川銀河で再現されており、2月26日の公式発表の時点で、コマンダーの手で探索されたエリアはわずか0.036%なのだ。Distant Worlds IIでは、人類の宇宙船団がふたたび、人が知る宇宙の世界をわずかでも広げようとしているわけである。
Distant Worlds IIは2016年に行われた「Distant Worlds」に続く大規模探索イベントとなる。現在までアップデートで追加されたゲームのさまざまな特徴を利用して、さまざまな連なるイベントを実施しながら、天の川銀河の最果てを目指していく。
定期的にウェイポイントとなる星系も発表され、期限はあるものの、コマンダーは思い思いのペースでその場所を目指す。現在、参加者たちは7つ目のウェイポイント、アームストロングランディングとも呼ばれる「Stuemeae KM-W c1-342」星系を通過した。銀河の中心にある巨大ブラックホール「いて座A*」にほど近い場所だ。
次回のウェイポイントは3月17日に発表される予定だが、それを前に新たなコミュニティイベントが主催者より発表されている。ブラックホールであるいて座A*からわずか数光年の場所に位置するStuemeae FG-Y D7561星系に、新しいスターポートを建設するというものだ。2月にすでにベースとなるドッキングハブなどが到着し、「Explorer’s Anchorage」と名付けられ営業を開始している。しかし、まだすべての機能が実装されておらず、ボーキサイト、水、液体酸素が不足しているという。有志の手でこれらの資源を集め、メガシップを含む残りの設備を建設する。
また、資源を集めるコマンダーを護衛するため、警備を行う戦闘要員の募集も行われている。コミュニティが運営する『Elite Dangerous』のスターマップサービスでは、記事執筆時点より24時間以内に、Stuemeae FG-Y D7561星系で16隻の宇宙船が破壊されていることが示されている。海外メディアPolygonの調べによれば、このイベントが始まったばかりの先週は77隻が破壊されていたという。警備を行う有志が集まったことで、損害が大きく減ったと考えられる。
完成した宇宙港はDistant Worlds II参加者だけでなく、今後同じ道筋をたどる冒険家やいて座A*の調査を行うコマンダーにとっても大きな利益になるだろう。これらのイベントは3月14日まで続く予定だ。
この大規模なイベントは2017年に発表され、2019年1月に始動された。アメリカ、ヨーロッパ、オセアニアの3つの地域における、PS4、Xbox One、PC版の多くのコマンダーが参加したこの一大イベントのスタートは、広範囲に渡りサーバーの不調を招く原因にもなったという。
そんな1万3000人が目指す銀河の果てのBeagle Pointまでは、残り4万光年ほどとなっている。さまざまな事故、事件が起きている。その多くはプレイヤー間の戦闘や操作ミスによる事故が多いが、キャノピーがひび割れ酸素が切れそうなプレイヤーを間一髪で救う救出劇も起きている。まだまだ道半ばではあるが、長い旅路の中で多くのドラマが生まれていることは間違いないだろう。
ライター/古嶋誉幸