『バイオハザード RE:2』(以下、RE:2)の開発者・座談会ムービーのPart3が公開された。映像ではエグゼクティブ・プロデューサーの竹内潤氏、ディレクターの門井一憲氏、安保康弘氏に加えて、スペシャルゲストとしてプラチナゲームズ所属、オリジナル版の『バイオハザード2』(以下、バイオ2)でディレクターを務めた神谷英樹氏がスペシャルゲストとして登場。思い出話に花を咲かせている。
https://twitter.com/PG_kamiya/status/1105681432339341312
実はこの座談会に参加した4人は、原点である第一作『バイオハザード』(以下、バイオ1)にもスタッフとして携わっている共通のメンバー。竹内氏は『バイオ1』でキャラクターモデルとモーションデザイン、『バイオ2』でモーションデザインを担当。安保氏は『バイオ1』と『バイオ2』でプログラムに参加。門井氏は『バイオ1』で企画。神谷氏が『バイオ1』で企画、『バイオ2』でディレクションを務めている。このようなことから当時の事情に誰よりも詳しいメンバーが集まっており、初めて明かされた制作秘話や、オリジナルと『RE:2』の違いなどにも触れられている。
たとえば、原作と『RE:2』で違う植物クリーチャーのイビー。原作ではゲーム終盤のアンブレラの研究施設に登場し、通常の弾丸では耐久力が高く、火炎放射器を使わないとなかなか倒せない強敵だ。しかし今回、植物がそのまま歩行して歩くとコメディっぽくなってしまうので採用に到らず。『RE:2』では人間が種子を受け付けられた新生イビーとして登場している。
また原作の公式ガイドブックには、神谷氏が『バイオ2』の裏設定を明かすコーナーがあった。そこでレオンがゲーム当初に制服を着ていたのは、恋人と別れたショックで酒を飲んで遅刻しており、その途中のモーテルで着替えたとあったが、実はこれは当時の神谷氏の境遇がシンクロしていたのではないかとイジられている。なお、『RE:2』のレオンは、制服ではなく私服から始まり、原作を知っているプレイヤーからすると意表をつく展開となっている。
ほかにも安保氏が『バイオ1』でナイフのタメ攻撃を提案していたことや、ナイフクリアを目指してプレイしたエピソードが明かされている。『バイオハザード』シリーズでナイフクリアというのは一種のプレイヤー側から生まれたチャレンジだと思われていたが、開発者側ですでに想定していたが伺える貴重な証言だろう。
また『バイオ2』の前身にあたる『バイオハザード1.5』(以下、バイオ1.5)でゾンビの死体を残るアイディアがあったが、ゾンビの表示処理によって断念。ゾンビを倒したとしても、部屋を移動するとゾンビの死体は消えるようになった。しかし今回の『RE:2』では、その死体がしっかりと残る構想が実現。死体が残ることによってゾンビなのか死体なのか一見して判断できず、恐怖感が倍増しており、神谷氏はこのゲームデザインを賞賛している。
また神谷氏はシナリオライターである故・杉村升氏についても言及。杉村氏は『バイオ2』、『バイオハザード CODE:Veronica』などカプコンの多くの作品に携わっている。杉村氏は、テレビドラマ・特撮をメインに活躍していた人物だ。『バイオ2』が『バイオ1.5』として頓挫したときに、外部ライターとして岡本吉起氏からの繋がりで招聘された。『バイオ2』のシナリオにテコ入れをし、『バイオ1』で門井氏が発案していたエイダを『バイオ2』で復活させるなど、シナリオのプロ目線からさまざまな変革を行った。
前にもこんな話の流れになった気がしますが杉村先生についてはここで詳しく語っています…まだ読まれた事がない方はどうぞ…https://t.co/F8MOr17jcP
— 無職 神谷英樹 Unemployed Hideki Kamiya (@HidekiKamiya_X) June 22, 2016
俺は無知蒙昧の単なる馬鹿だったのでリアルに囚われてゲームがクソつまらなくなってバイオ1.5として大失敗したんだけどその後も色んな改善案を出してくれる杉村先生に「警察署にそんな仕掛けあるわけない」と反論したら「美術館を改装した設定にしたら何でもできるだろ」と…ツルツルの脳からウロコ…
— 無職 神谷英樹 Unemployed Hideki Kamiya (@HidekiKamiya_X) January 30, 2018
杉村先生はイチユーザーとしてバイオ1を楽しんでいた人で、純粋にバイオの世界観を愛してた…「ジョンの手紙」から想像を膨らまして「一計を案じてアンブレラに近づいた女スパイエイダ」を生み出したり、前作からの橋渡しでクリスの妹クレアを生み出したり…杉村先生の功績も計り知れないね…
— 無職 神谷英樹 Unemployed Hideki Kamiya (@HidekiKamiya_X) February 9, 2019
神谷氏は歳の離れた杉村氏の人望と熱意に心を打たれたようで、しばしばTwitterでも感謝の気持ちをツイートしている。しかし杉村氏は2005年に、56歳で急性心不全により急逝。今回の座談会でも神谷氏は、「同じ目線で話してくれる人、僕ら以上に『バイオ』シリーズに愛が深い」と杉村氏についての想いを口にしている。
『バイオ1』では一人のユーザーとしてプレイし、熱心に『バイオ2』に携わることになった杉村氏のように、当時『バイオ2』をプレイした人が、現在の『バイオRE:2』のスタッフとして支えていると門井氏。開発者からユーザーへ、ユーザーから開発者へと想いは受け継がれていくことがわかる、感動的な座談会になっている。
ライター/福山幸司