ソーシャルVRサービス『VRChat』上で、虐待によりホームレスとして過ごすことになった足の長い鳥や、兵役と自身の兄弟を亡くしたことを語る韓国に住む鳥など、さまざまな人物、生物へインタビューを行うSyrmor氏が、『VRChat』で牧師として活動するSoto牧師にインタビューを行った動画を公開した。
「いくつかの教会ではドレスコードがありますよね。VR教会ではドレスコードはありますか?」という質問からインタビューは始まる。インタビューにはアニメ風の女性のほか、パンツをはいていないくまのプーさんや、ひと目で全裸とわかるラビッツが参加している。
現実では教会にはできる限りきちんとした格好で参加することが求められることもあるが、VR空間ではそういったことは無いようだ。物理的な殻である身体はもちろん重要だが、その中にある魂はさらに重要であるとSoto牧師は語る。
Soto牧師はかつてひとりの女性のバプテスマ(キリスト教の洗礼のひとつ。体全体を水に沈め、そこから上げられる行為。)を行ったときの経験を語っている。現実世界の彼女は車椅子利用者であり、彼女の状態ではバプテスマを受けるのは難しい。洗礼を受ける願いがVR上で叶ったことは、彼女にとって大きな意味を持っていた。
Soto牧師は車椅子利用者や回復を目指す麻薬中毒者など、現実では信徒たちの集まりに参加できない可能性のあるひとびとにも開かれた教会を目指している。VRでの活動は、通常の方法で活動していれば絶対に出会うことができなかったひとびとに会うことを可能にした。
ソーシャルVRで牧師として初めて活動したとき、5人の人物がやってきた。最初のひとりはなんとデンマークに住む無神論者。「私は神を信じていませんが、信仰について興味を持っています。」というその人の登場に最も驚いたのは牧師自身だ。神学校やボランティアとしての教会での活動では、そういった人に会うことは一度としてなかったという。
動画の後半では、今も自身の信仰について探しているというDrumsy氏が実際に洗礼を受ける様子が見られる。洗礼の中で、古い自分、古い考え、これまでのDrumsyが死に、神の愛に包まれた新しいDrumsyが生まれ、父と子と聖霊の名においてバプテスマが授けられたことがSoto牧師から伝えられた。
洗礼を受けた後、一緒に居たバナナやプーさんが歓声を上げ祝福している姿は奇妙にも映るが、新しい信仰はこういった奇妙さの中にあるのかもしれない。
洗礼を受けた後、Drumsy氏は「息が切れたように感じる」と語っている。現実世界では水に浸かるわけではなくただ1分ほど腰をかがめていただけのはずだが、長い間浸かっていた水から上がったような気分になっているという。
なお、洗礼が終わった後、何故か急に水かさが減る。どうやら水に浸かったスポンジボブが全ての水を吸い取ってしまったようだ。
ライター/古嶋誉幸
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