Valveは、『Half-Life』シリーズ最新作『Half-Life: Alyx』を発表した。まだ詳細は明らかではないが、VR向けタイトルとして11月22日に正式に発表される。
1998年に発売された『Half-Life』、2004年に発売された『Half-Life 2』ともゲーム業界に衝撃を与えたブレイクスルーな作品として極めて高い評価を受けており、最新タイトルでもその詳細が注目される。
We’re excited to unveil Half-Life: Alyx, our flagship VR game, this Thursday at 10am Pacific Time.
— Valve (@valvesoftware) November 18, 2019
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『Half-Life』は、主人公のゴードン・フリーマンがブラックメサ研究所に着任するオープニングの「移動するだけ」のシークエンスが顕著だが、それまで撃ち合いが主体だったFPSから、大々的にストーリーとパズル、それらを盛り上げる演出が加わり、FPSというジャンルの可能性を押し広げた作品として知られている。
AIで制御された敵が臨機応変に立ち向かってきたり、敵同士が対立していると主人公と関係ないところで争をはじめていたりする挙動など、こういったことは今でこそ当たり前だが、当時は斬新なものとして受け止められた。
本作で初めて使われたGoldSrcエンジンは、その汎用性の高さから多くのMODが作られ、そのなかでも『カウンターストライク』、『Day of Defeat』などは商業化されて大ヒット。こういったMODの存在も『Half-Life』がロングセラーを維持し続けた理由のひとつだ。
その次回作『Half-Life 2』は当時、最先端のグラフィックスとキャラクター・アニメーション、さらに物理的な挙動をゲームの中でシミュレーションするSourceエンジンによって、再び賞賛された作品だ。オブジェクトの形状や浮力、重量などの物理的なシミュレーションをパズルや戦闘に付け加え、新感覚なゲームの楽しみ方をもたらした。
GoldSrcエンジンと同様、Sourceエンジンからも様々なMODが生み出された。その中でも『Dear Esther』は「ウォーキング・シミュレーター」という新しいジャンルが確立された。Sourceエンジンと同時期に物理シミュレーションに取り組んでいた学生のゲームがあり、それをValveが注目して生み出されたのが『Portal』である。まったく新しい重量空間パズルゲームは、こちらも大ヒットを記録。他にもSourceエンジンが使われて大ヒットしたタイトルとして『Team Fortress 2』、『Left 4 Dead』などがある。
その後、『Half-Life』シリーズは、『Half-Life 2: Episode One』、『Half-Life 2: Episode Two』をエピソード形式として展開。ストーリー的には『Half-Life 2』の直接的な続編となり、「コンパニオン・キャラクター」とも呼ばれる相棒キャラクターが追随して語られるドラマティックなストーリーは再び高い評価を得た。
しかし、この2007年の『Half-Life 2: Episode Two』以後、正式な続編は沈黙。そこで今回、12年ぶりに突然発表されたのがVR向けタイトル『Half-Life: Alyx』となる。「Alyx」とは、『Half-Life 2』以後に登場している女性キャラクターAlyx Vanceと思われる。ストーリーの起点ともなっている重要なキャラクターなので、どのような形で彼女にフォーカスが当たるのかが気になるところだ。
発売するたびにゲーム業界に衝撃を与え、さらにMODやエンジンの派生作品が新しいジャンルや大ヒットを生み出す『Half-Life』シリーズ。VR向けタイトルという点も気になるところだが、VRゲームに新たなメルクマークを打ち立ててしまうのか。今後のビデオゲームの行方を占う点において非常に注目に値するといえるだろう。
ライター/福山幸司