カナダのケベック州政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて学校の閉鎖と修学旅行を禁じている。そんなケベック州のとある学校で、ギリシャへの修学旅行を楽しみにしていた生徒たちのため、歴史教師であるケビン・ペロキン氏が『Assassin’s Creed Odyssey』を使ったデジタル修学旅行を実施した。
生徒はそれぞれでゲームをプレイし、そこから得た知識でレポートを書いて提出する。そんな教育とビデオゲームの良好な関係を、ワシントン・ポストが報じている。
『Assassin’s Creed』シリーズは、12世紀末のエルサレム、ルネサンス期のイタリア、アメリカ独立戦争など、歴史の裏に暗躍していた秘密結社とアサシンの戦いを描くオープンワールドアクションゲームだ。リアリティも重視しており、専門家と協力してゲームの舞台の歴史や政治、文化などを可能な限り忠実な再現を行っている。
2018年には『Assassin’s Creed Origins』に、教育を目的とした「ディスカバリーツアー」が搭載された。ゲームで再現された古代エジプトの世界を、歴史の専門家や学者と協力して作成したテーマツアーを通して探索できる。
「ディスカバリーツアー」は古代ギリシャを舞台にした『Assassin’s Creed Odyssey』にも「ディスカバリーツアー:古代ギリシア」として搭載。29の地域にまたぐ300以上のスポットがあり、5のテーマ(哲学、有名都市、日常生活、戦争、神話)に分かれたガイド付きのツアーを楽しめる。ゲームシステムを利用したクイズに挑戦することもできる。
ペロキン氏は、ディスカバリーツアーが可能なほどに良く再現された古代ギリシャを修学旅行先に選んだ。ワシントン・ポストによると、以前アメリカ独立戦争の授業で『Assassin’s Creed III』のトレイラーを利用したこともあるのだという。
氏はUbisoftに『Assassin’s Creed Odyssey』を使って授業を行いたいと問い合わせ、Ubisoft側もそれを快諾。生徒たちにはGoogle Stadiaを通じて3ヶ月間、ゲームにアクセスできるキーが配布された。クラウドゲーミングサービスであれば、コンソールや高性能なPCを持っていなくてもスマートフォンなどからゲームを遊べるため、こういった利用目的には適している。
『Assassin’s Creed』シリーズディレクターのエティンヌ・アロニエ氏は、ワシントンポストに対し、新型コロナウイルスの感染拡大以後こういった教育目的の問い合わせを多く受けたことを明かしている。Ubisoftはゲームを教育に利用したい教師たちをつなぐネットワークを構築し、クローズドフォーラムで情報交換ができるようにしたという。
登校できない現在の状況はハンディキャップという人もいるが、これは教育にまつわるさまざまな技術を試す良い機会だとペロキン氏は語る。『Minecraftの』で公開された「Education Collection」や、『Assassin’s Creed Odyssey』のディスカバリーツアーなど、ゲームが教育に利用される例は少なくない。新型コロナウイルスの感染が拡大する現在では、ゲームの教育利用への需要はさらに高まっているようだ。
ライター/古嶋 誉幸