映像制作会社「Realm Pictures」が、中止となった友人の独身さよならパーティーの代わりにGoPro搭載のロボットとダンボールのミニチュアで作ったリアルRPGを実施し話題となっている。RPGの名前は「Real-Life RPG Stag Do – COVID-19 Isolation Edition」だ。
※「Stag Do」とはバチェラーパーティーとも呼ばれ、日本では「独身お別れパーティ」と訳される。新郎が独身最後の夜を同性の仲間と騒ぐパーティのことだ。
映像製作会社の作品らしく、会話や戦闘などのイベントではビデオ会議ツール「ZOOM」で繫がった俳優たちの迫真の演技が披露される。たまにミニチュア内の人形を動かすために巨大な手が写ることもあるが、そこはご愛敬だ。
このゲームは、Realm Picturesのクリエイティブディレクターであるデイビッド・レイノルズ氏が、新型コロナウイルスの感染拡大で独身さよならパーティーを中止しなければならなかった友人のために製作した。海外掲示板Redditで、氏は本作の舞台裏の映像を公開している。
主人公の移動に使われたのは、「Arduino」で製作されたリモートコントロールカーだ。水陸両用の優れもので、GoProやZoomの映像をプレイヤーの自宅へと送る。
各イベントで披露される映像は、戦闘シーンを含めほぼすべてZOOMIYAで繫がったほかの俳優がリアルタイムで演じている。そのため、プレイヤーの音声に反応したり、その行動によって臨機応変な対応ができる。
特に大変だったというのが、ゴブリンや骸骨、ケンタウロスとの戦闘シーンだ。プレイヤーキャラとモンスターはすべてふたりの俳優によって演じられている。特に大変なのはモンスター側だろう。ゴブリンを演じるためにスプレーで体中を緑に塗ったり、ケンタウロスの為に馬の着ぐるみをつけたりと、プレイヤーが冒険している間に大急ぎで着替えていたそうだ。
「Talk to Villager」や「Critical Hit!」などのオーバーレイも、Twitchチャットを通じて遠隔地からリアルタイムに送られているという。段ボールのミニチュアや時折映る巨大な手など、アナログに見えてかなりいろいろな工夫がなされている。
レイノルズ氏が友人のためにこのイベントを考えついてから、準備期間は4週間だった。初めの2週間は穏やかだったが、あとの2週間はハンダ付けやコーディングなどに大忙しだったそうだ。「なんてこった全然動かない!」と叫ぶ事態に何度も出くわし、合計3回のリハーサルも行うほど綿密な準備を行ったと伝えている。
プレイ時間は3時間半。ラスボスとの戦いは、文字通り世界中の仲間たちがコスプレをして集結し、力を合わせて撃破した。友人もかなり満足している様子だ。ここまで手の込んだサプライズを用意するのはなかなか難しいが、「Real-Life RPG Stag Do – COVID-19 Isolation Edition」はいつか一度はプレイしてみたいと思わせる温かみを持ったRPGだ。
ライター/古嶋誉幸