任天堂のファミコン用ソフト『スーパーマリオブラザーズ』は、1985年に発売されてから世界中で愛された大人気ゲームであっただけに何度も再販されており、生産時期によってパッケージの特徴が少しずつ異なる。また、未開封品ももちろん少ない。
これらの違いはゲームをプレイする上ではほとんど関係ないが、オークションで落札価格には大きな違いを生む。
コインの競売で有名なヘリテージオークションは、同オークションにてNES(海外向けファミコン)用ソフト『Super Mario Bros.』が、11万4000ドル(約1200万円)で落札されたことを発表した。
ヘリテージオークションによれば、これは1本のゲームソフトに支払われた額としては史上最高を記録しているという。2019年にバージョンの違う『Super Mario Bros.』が10万ドル(約1000万円)で落札されたことも記憶に新しいが、1年もしないうちに同じゲームでさらに高額な落札が発生したことになる。
この『Super Mario Bros.』は、オークションで競売に掛けられるビデオゲームを鑑定するWata Gamesによって、9.4というグレードが与えられた。前述の10万ドルで落札された『Super Mario Bros.』もWata Gamesによって9.4と格付けされているが、落札価格の差はパッケージの違いによって起こった。
Wata Gamesは『Super Mario Bros.』の複数の生産バージョンをそれぞれのパッケージの特徴から解説している。2019年に10万ドルで落札された『Super Mario Bros.』は、まだパッケージが「Nintendo」と書かれた丸いシールだけで封印されていた時代のものだ。1985年から1986年にかけて製造されたもので、シュリンク包装もされていないため、未開封の状態の良いものが見つかるのは非常にまれだ。
また2019年に落札されたパッケージは、後期生産のものと違いパッケージを商品ラックに吊り下げるための「hangtab」と呼ばれるものが背面に付いている。パッケージを直接切り取って使うもののため、これも未使用の状態であるものは極めてまれだ。このhangtabこそ、比類無きヴィンテージの証であるとヘリテージオークションでは説明されている。
一方、今回落札された『Super Mario Bros.』は、生産年としては前述のものよりあとになる。このパッケージは1987年中頃に生産されており、バリエーションとしては6番目に位置する。1986年半ばにパッケージの封印は丸いシールからシュリンクに変更されたが、その後もしばらくはhangtabが付いたパッケージのままだった。そのため、吊り下げるための機能はあるものの、意味をなさなくなっている。
【更新 2020/7/14】 記事初版にて「このパッケージは1987年初頭に生産されており、バリエーションとしては5番目に位置する。」と記載しておりましたが、正しくは「このパッケージは1987年中頃に生産されており、バリエーションとしては6番目に位置する。」でした。Webサイト「ファミコンのネタ!!」などでご指摘があったように、パッケージ表の「Mario Bros」下のNintendo Entertainment Systemの名前にtm表記が追加されてるものは、後者のバージョンとなります。訂正しお詫び申し上げます。
オークションに出品される製品は、一般的に初期のものほど高額で、後のものになると徐々に価値がさがっていくイメージがある。どうやら希少価値が高ければ、初期も後期も関係がないようだ。
(画像はWata Gamesより)
ヘリテージオークションのヴァラリー・マクレッキー氏は、『Super Mario Bros.』の需要は高く、記録的な落札価格を達成するだろうと予想していたという。それでも、これほど白熱したオークションになるとは誰も予想できていなかったと語っている。
日本では4800円で販売された『スーパーマリオブラザーズ』だが、『Super Mario Bros.』の希少品の値段はその2400倍に膨れ上がっている。こういう高額商品のニュースを見かける度、押し入れの中にしまったゲームが気になってくるのは筆者だけではないのではないだろうか。
ライター/古嶋誉幸