1987年にファミリーコンピュータ向けに発売された伝説的なRPG『星をみるひと』。世界設定やBGMなどが好評だった一方で、ゲームバランスの悪さなどからハードな評価を世間から受けたタイトルだ。
8月13日より開催中のゲームRTAイベント「RTA in Japan Online」にて、そんな同作のタイムアタック対決レースが仮想タイム設定1時間にて披露された。なお今回のルールはバグ技と3コン利用あり、本当に最速でゲームをクリアするまでを競う「Any%3con」。ニコ生RTA wikiによると、世界記録はhorin氏の25分56秒。すごく速い。
走者はhorrin氏とdowolf氏。dowolf氏は海外で行われたゲーム早解きイベント「Awesome Games Done Quick」にて、海外未発売の本作を披露し世界的な知名度の向上にも貢献した、『星をみるひと』RTA界の重鎮なのだという。
『星をみるひと』RTAでは、3コンを利用した「ムーンウォーク」や、戦闘から逃走する「てれぽーと」といったテクニックが使用される。今回のRTA解説を担当したノヒイ ジョウタ氏がnoteで詳細を掲載しているため詳しくはそちらを参照してほしいが、当時実際にプレイしていたプレイヤーにとっては「そんな方法が使えるのか」と驚くばかりの技術となっている。
とくに驚かされたのが「ムーンウォーク」こと「座標ずらしバグ」だ。本作は移動が大変遅いことでも有名で、先日発売が開始されたNintendo Switch版では移動速度2倍の機能を搭載しているほど。なら複数のコントローラーで特殊な入力操作をしてを座標をずらす。歩くのが遅いのならば移動しなければいいという天才的な発想である。
このムーンウォークを町中で行うと、町の住人まで移動し壁に人が埋まる光景を拝むことができる。壁抜けがある一方で障害物を飛び越える「じゃんぷ」という技が搭載されるなど、本作では通常は問題とされる行為が仕様なのかバグなのかわからないといった点があるが、ムーンウォークはさすがにバグを利用しているなということが分かる貴重なワンシーンである。
バグを使うと、下手すれば何時間かけても勧誘できない最初の仲間「しば」が、わずか1分足らずで仲間に。そして先日のNintendo Switch版を購入した筆者が7時間プレイしても到達しなかった「あーくCITY」に、RTAではわずか4分でたどり着くことになる。
また動画を見た方はお気づきかもしれないが、主人公チームを強化する武器や防具を一切購入していないのも、本RTAの特徴となっている。
これは、武器を装備しない攻撃は敵の防御力を無視して0~3のダメージが入るが、武器を装備すると敵の防御力が計算されるため、場合によっては0ダメージ以上を与えることができなくなるからだ。本作の魔法である「ESP」を使用すれば戦えるが、MPもあるうえに回復手段も限られているため、長期戦ではかなり使いづらい。
くわえて、なぜかこのゲームではキャンセルすることが禁忌となっており、戦闘でESPを一度選んだらそのターンは必ずESPを使うことになるし、武器は装備したら2度と外せない。買い換えることで別の武器に変更できるが、外すことはできない。呪いの装備も真っ青の有様で、装備の購入は選択肢から除外されている。
なおNintendo Switch版はこの点を考慮してか、クイックセーブ機能だけでなく巻き戻しが可能になっている。
なお『星をみるひと』はランダムエンカウントに状況が大きく左右され、運によっては30分も記録が変わることがあるという。そのため今回のRTAでは仮想タイム設定は通常の目標タイムの30分ではなく、事故を見越して2倍の1時間枠を取るという厳戒態勢の走行となった。
乱数調整方法は今のところ見つかっておらず、プレイヤーにも「さいきっく」であることが求められるRTAだといえるだろう。レースに出走したhorrin氏とdowolf氏は無事1時間以内にゲームを走りきった。
この理不尽なゲームに対して、とあるユーザーが最後のコメントで良いところをあげる場面があった。その言葉を借りると、本作は「嫌いとは言い切れない」ゲームだという。Nintendo Switch版もリリースされているので、このRTAを見て記録に挑戦しようという方も、ただ遊んでみようという方も、「この世界の不条理に」ぜひ挑戦してみて欲しい。
「RTA in Japan Online」は8月16日夜まで公式Twitchチャンネルにて配信中だ。
ライター/古嶋誉幸