『フォートナイト』がApp Storeから削除された件を巡り、Epic GamesがAppleを提訴した訴訟の初審理が米国太平洋夏時間で8月24日(月)午後、Web会議ツールのZoomを利用して行われた。傍聴にはMac Rumorsなど複数の海外メディアが参加し、その内容を報じている。なお、最初の審理で即時の判決は下されていない。
報道によると、米連邦地裁判事のイボンヌ・ゴンザレス・ロジャース氏は、『フォートナイト』をApp Storeから削除したAppleの行動は支持している。Epic Gamesに対し、自分からルールを破ったことが「取り返しの付かない損害」と定義はできないとしている。
また、Epic GamesはiOS版『フォートナイト』の「EPIC ディレクトペイメント」を削除し、最初の状態に戻すことが必要であるとも言及。ほぼ全面的にAppleの主張を認めたように見える。
これに対し、Epic Games側の弁護士は「Appleの反競争的な方針に異議を唱える幅広い戦略のひとつ」だと反論した。
一方で、判事は「Epic Gamesの全ての開発者アカウントを8月28日に停止する」措置についてはやり過ぎだとも言及している。
Unreal Engineは「Epic Games International」という別団体によって管理されており、Epic Gamesの規約違反の罰則が別会社にまで及ぶ点は「報復的に見える」と、Epic Games側の主張を支持している。
Apple側の弁護士はこれに反論し、Epic GamesのUnreal Engineを通じて「同社の悪習がほかの企業にももたらされる可能性」を主張。
対して、Epic Gamesの弁護士は「すでに複数のデベロッパーからUnreal Engineの使用を中止した連絡を受けており、本決定はマルチプラットフォーム開発で利用される同エンジンが破壊される」と応酬した。
判事はこの審理のまとめとして、Epic Gamesがどう思うにせよ、30%の手数料が業界で一般的であることを認めた。ただし、一時的な差し止め命令によって最終的な勝敗が決まるわけではなく、AppleによるEpic Gamesの開発者アカウント停止はやり過ぎだとした。
8月14日頃、Epic Gamesの規約違反によりApp Storeから『フォートナイト』が削除されてから、Epic Gamesが主張するプラットフォーマーによるストア手数料30%が不当だという議論が再び巻き起こった。
Epic GamesはAppleへの訴訟を発表し、削除された『フォートナイト』を使った「#FreeFortnite」キャンペーンを展開。同社の主張やAppleがかつて公開したCM「1984」をパロディしたトレイラーを公開し、ファンに向けてキャンペーンに参加するよう訴えた。
一方のAppleはiOSの顧客保護の観点からEpic Gamesのみの例外を認めず、Epic Gamesに規約に従うことを求め、同時にEpic Gamesの全ての開発者アカウントを8月28日に停止することを通告。
Epic Gamesはさらに『フォートナイト』でAppleを揶揄するイベントを開催したほか、MicrosoftはUnreal Engineへの報復的行為に異議を唱えてEpic Gamesの主張を一部支持するなど、両社一歩も引かない状態が続いていた。
最初の審理で判事は『フォートナイト』を削除したことに関してはApple側を支持、Epic Gamesの開発者アカウントの停止はEpic Games側を支持しているように見える。実際に結果が出るまでどうなるかは分からないが、この審理は今後の行方を見通す重要なものになっただろう。
ライター/古嶋誉幸