米Microsoft社は8月24日(月)、Apple社が提供するソフトウェア開発キット「Apple SDK」からゲームエンジンである「Unreal Engine」用の開発ツールを削除しないよう求めるEpic Games社の要求を支持する声明を発表した。本声明はカリフォルニア州北部地域の連邦地方裁判所へ提出されている。
提出された文書はMicrosoft社のゲーム開発者エクスペリエンスを担当するゼネラルマネージャーのKevin Gammill氏によるもので、Unreal EngineがMicrosoft社をはじめ多くのゲームクリエイターにとって重要な技術である点やApple社がUnreal Engine用の開発ツールを削除した際に発生しうるリスクを説明。
「開発後期にあるゲームや発売中のゲームに関するアップデートおよび修正に悪影響を及ぼし、ひいてはiOSやmacOSのユーザーがクロスプラットフォームを利用したゲームプレイやコミュニケーションを取れなくなり、プレイヤー層が二分化する可能性を含む」との考えを示した。
Today we filed a statement in support of Epic's request to keep access to the Apple SDK for its Unreal Engine. Ensuring that Epic has access to the latest Apple technology is the right thing for gamer developers & gamers https://t.co/72bLdDkvUx
— Phil Spencer (@XboxP3) August 23, 2020
そもそもの火種となったのは、Epic Games社が8月13日にバトルロイヤルゲーム『フォートナイト』へ向けて発表した独自の課金システム「Epic ディレクトペイメント」である。本システムはiOS版およびAndroid版を対象としており、ほかのプラットフォームより少し割高となっていたゲーム内通貨「V-Bucks」の購入価格を恒久的に20%オフとするシステムであった。
ただし、この課金システムは、Apple社が提供するApp StoreやGoogle社の提供するGoogle Playでの決済時にかかる30%のストア手数料を回避する問題を含んでいたため、Apple社は利用規約違反としてApp StoreからiOS版『フォートナイト』を削除した。
Epic Gamesのバトルロイヤルゲーム『Fortnite』がApp StoreとGoogle Playから削除。同社はAppleへの訴訟を決定
ストアからの削除に対し、Epic Games社は「モバイルデバイスの市場における競争を制限している」としてApple社を提訴するとともに、「#FreeFortnite」のキャンペーンを開始。作家のジョージ・オーウェル氏による小説『1984年』をもとにApple社が制作し、1983年のスーパーボウルで公開したテレビ広告のパロディや“腐ったリンゴ”と銘打った大会を展開することで少額決済システムの独占を批判した。
その後、Apple社は8月18日に海外メディアのThe Vergeを通じて「Epic社が自ら生み出した問題は、アプリのアップデートを提出することで簡単に解決することができる」との公式声明を発表。Epic Games社へ対し「現地時間8月28日(金)にEpic Gamesのすべての開発者アカウントを停止し、iOSとMac向けのApple SDKからUnreal Engine用の開発ツールを削除する」と通告している。
Epic GamesはApp Storeの独占に異議を唱えました。報復として、Appleは10億のデバイスでFortniteをブロックしています。https://t.co/VwLAHlzLap へアクセスし、2020年を「1984」にしないための闘いに参加してください。 pic.twitter.com/LSKyXiXQVA
— フォートナイト (@FortniteJP) August 13, 2020
AppleがEpic Gamesの全ての開発者アカウントを8月28日に停止へ、Epicが通告を受けたと公表。『フォートナイト』を巡る両社の対立はさらに深まる
なお、今回の声明はあくまでEpic Gamesが要請している「Unreal Engine用開発ツールの削除撤回」の部分に対する支持であり、訴訟における本題の少額決済システムについては一切触れられていない点を断っておきたい。
ライター/ヨシムネ