アメリカ合衆国軍とイラク武装勢力の間で2004年に起きたファルージャでの戦闘を題材とするFPS『Six Days in Fallujah』。同作の新しいトレイラーを海外メディアIGNが公開した。退役軍人のジェイソン・カイル元軍曹と開発者たちが本作の特徴を紹介している。
Highwire Gameが開発、Victuraが販売する『Six Days in Fallujah』は、2004年11月にファルージャで行われた大規模な戦闘「夜明け作戦」(オペレーション・アル・ファジュル)をテーマにしたFPSだ。本作は作戦に至る前の状況から実際の戦闘との余波を、ゲームと海兵隊や当時イラクに住んでいた民間人らのインタビューを通して描いている。戦闘に参加した海兵隊員、兵士、イラクの民間人ら100人以上をインタビューしてゲームを制作しており、このときのインタビューはドキュメンタリーとしてゲーム内にも登場する。
ゲームの大きな特徴は、自動生成されるマップだ。事実をテーマにしたゲームとしては少し意外だが、地図を暗記することと実際にそこを歩いて作戦に従事することはまったく違うという、兵士たちの意見を元にしている。ドアの向こうに何が待ち受けているか分からない恐怖は、多くの犠牲者を出した理由のひとつに挙げられている。
プレイヤーは海兵隊の一員として、部下を率いて作戦に参加することになる。数名のチームメイトを指揮する際に使うのが「ゴーコマンド」だ。銃を撃つことと同じくらい簡単にチームメイトに指示を出すことができるという。トレイラーでも視線の先に命令を行うための印が表示されているのが分かる。敵に向かって指示を出せば制圧射撃などが行え、ドアならば突入、曲がり角ならその向こうの安全確保など、状況に応じて指示が変わる。
本作はいまなお議論の的となる「夜明け作戦」をテーマにしており、2009年にはかつてパブリッシャーとなる予定だったコナミが販売をキャンセルしている。それから10年以上たった今、当時ゲーム開発に参加していたピーター・タムティ氏が現在のパブリッシャーであるVicturaを立ち上げ、開発を再開した。
しかし今年2月には、開発者は「ゲームで政治的な批評(commentary)はしようとしてはいない」とPolygonのインタビューにて語ったものの、民間人への誤射や化学兵器の使用を疑われる米軍をゲームでは英雄的に描くのではという趣旨の批判を集めた。その後、パブリッシャーのVicturaがあらためて「ゲームのテーマである作戦と政治は切り離せない」とTwitter上で声明を発表することになった。
ゲームに関する質疑応答のページでは、ゲームの趣旨はむしろ政治的な理由で兵士や民間人など戦争にもっとも影響を受けた人々の勇気や犠牲がないがしろにされていることを問題としている。兵士として戦闘する以外にも、ファルージャに住む非武装の民間人として、家族を都市から避難させようとするミッションも収録されているという。
ほかにも、ゲーム制作にアメリカ政府が一切関わっていないことやイラク武装勢力としてゲームをプレイすることはないこと、収益の一部が戦争に影響を受けた兵士やイラクの民間人を支援する団体に寄付されることなどが記されている。
発売前から物議をかもしている『Six Days in Fallujah』は、はたしてどのような物語を描くのだろうか。ゲームは2021年後半に発売予定だ。プラトットフォームはWindows PCのほか、公式サイトでは「ソニーとマイクロソフトの次世代コンソール」と表記されており、PS5とXbox Series X|Sでもリリースされると考えられる。
ライター/古嶋誉幸