今年のE3でも『F-Zero』の新作は発表されなかったことに悲しむファンは多かったのではないだろうか。人気シリーズを復活させたいと願うのは熱心なファンだけでなく、開発者にもいるようだ。
【更新 2021/6/30 15:40】 インタビュー元のメディアの名前が抜けておりました。正しくは「海外メディアGameXplainのインタビューにて明かされた」です。お詫びして修正いたします。
『スターフォックス』や『スーパーマリオ64』の開発に参加したベテランプログラマーのジャイルズ・ゴダード氏が、超リアルなNintendo Switch向け『F-Zero』のアイデアを任天堂に持ち込んだ思い出を海外メディアGameXplainのインタビューにて明かした。
『F-Zero』は反重力装置で地面からつねに浮く個性豊かなF-Zeroマシンに乗り、ほかのレーサーとスピードを競うレースゲームだ。1990年にスーパーファミコン用の『F-Zero』がリリースされ、2004年に現時点での最新作『F-ZERO CLIMAX』がゲームボーイアドバンス向けに発売された。据え置き機としては2003年にニンテンドーゲームキューブ用の『F-ZERO GX』が発売されている。
その後は15年以上新作はリリースされておらず、ゲームの主人公格であるキャプテン・ファルコンは『スマブラ』シリーズのファイターとしてしか見たことがない、という方もいるかもしれない。
そんな『F-Zero』のアイデアを任天堂に持ち込んだのは、イギリス出身のゴダード氏。氏は任天堂初の外国人プログラマーのひとりであり、『スーパーマリオ64』でマリオの顔をいじるデモシーンを制作したことで有名だ。2002年に独立し、京都でゲーム開発会社ViteiのCEOを務めている。
氏はNintendo Switch向けの『F-Zero』のアイデアをまとめ、Nintendo SwitchとPC向けにデモンストレーションプログラムを開発。とてもかっこいいF-Zeroカー数百台がAI制御でクレイジーなコースを走るかっこいいものだったという。
これまでアーケードライクなレースゲームだった『F-Zero』シリーズだったが、ゴダード氏の『F-Zero』プロトタイプはかなりリアルな物理挙動を搭載。前述の通り、F-Zeroマシンは反重力装置で地面から浮いている。プロトタイプでのF-Zeroカーは4つの装置(氏はジェットと表現)を使って走行しており、そのうちのひとつが壊れれば機体が沈み、ふたつ壊れるとひっくり返るようなクラッシュが起きるという。
アイデアを古巣である任天堂に持ち込んだが、残念ながらこのアイデアは認められなかった。「『F-Zero』の新作を作りたいんだけど、お金を出してくれる?」と任天堂に持ち込んだところ「人手が足りないのではないか」と返答があったという。そこで氏は、「お金があれば人を集められるよ」と答えた。こうしたやりとりが無限ループのように続いたと語っている。
ゴダード氏は任天堂の既存のIPについての取り扱いについてこのように考察している。「任天堂は古いIPを使うことにとても慎重です。それは彼らにとってとても大きなことだからです。古いIPを再利用するよりも、新しいアイデア、新しいIPを採用する方がはるかに簡単です」。
氏はほかにも『スターフォックス』の開発にも興味を持っているという。氏の率いるViteiは、「Chuhai Labs」ブランドとしてクランク付きの携帯ゲーム機「Playdate」のローンチゲームを開発中だ。