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『コーヒートーク』開発元含むアジアのインディースタジオ3社が英国のパブリッシャー「PQube」を告発。助成金の着服疑惑、金銭の未払い、口止め、パブリッシング権の返却拒否など問題問われる

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 ゲームスタジオのToge ProductionsMojikenが連名で、イギリスのパブリッシャーPQubeに対して「開発者向けの支援金額を黙って取得し、それを最低保証金として使用して収益分配金の増額交渉に利用した」と告発している。またこれとは別のゲームスタジオCorecellも「最低保証金額の一部しか支払われていない」として、PQubeを告発する事態となっている。

 PQubeは、イギリスに拠点を置くパブリッシャー。アジアで開発されたゲームを欧米向けに発売することに積極的で、日本のゲームでは『シュタインズゲート』、『レイジングループ』、『ルートフィルム』などの英語版を担当している。今回は、そうした多くの実績を持つ有名パブリッシャーPQubeが、8月24日にゲームスタジオToge ProductionsとMojikenの連名で告発を受けおり、さらには8月31日にゲームスタジオCorecellから告発を受ける事態となっている。

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(画像はSteamより)

 Toge Productionsは『コーヒートーク』の開発・発売で知られるインドネシアのゲームスタジオで、近年では『コーヒートーク』の続編を開発しているほか、パブリッシャーとしては同じくインドネシアのゲームスタジオMojikenが開発した新作『A Space For The Unbound』の発売を予定している。『A Space For The Unbound』は美しいピクセルアートが特徴で、90年代のインドネシアを舞台にしたアドベンチャーゲームで、日本ではChorus Worldwideから発売予定だ。

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(画像はSteamより)

 Toge ProductionsとMojikenは『A Space For The Unbound』の欧米向けパブリッシング契約をPQubeと結んでいた。だがToge ProductionsとMojikenの両社の主張によると、PQubeは2020年8月に“ゲーム開発者を支援する目的”の助成金をあるゲーム会社から得ていたが、PQubeはそれを意図的に開発元に隠し、自分たちの利益のために利用したという。さらにその助成金を受け取ったことを隠しつつ、発売前に権利者に報酬または権利料を前もって支払う最低保証金として使用し、さらに収益分配金の増額交渉に利用したという。

 両社はこうした信頼関係が壊れたことから、PQubeとの契約を解除したがPQubeは家庭用ゲーム機のパブリッシング権の返却を拒否していることも批判している。そして『A Space For The Unbound』をこうしたトラブルを受けて、発売を延期するという。Toge ProductionsとMojikenは、7年間取り組んできたプロジェクトがこのような形で利用されたことに、心を痛いとしつつ「今後、このようなことが二度と起こらないように、私たちは搾取的なパブリッシャーに対して毅然とした態度で発言していかなければなりません」とした。

 一方でこうした件に対して、PQubeは複数のメディアを通じてコメントを発表しており、海外メディアGamesIndustry.bizでは、「Toge Productionsは、以前から不合理な契約の改定条件を押し付けようとしており、それが実現せずにこのように対処しており残念。適切に対応していく」と主張した。

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(画像はSteamより)

 また新しくPQubeを告発したのが、それがファンタジー世界の横スクロールアクションゲーム『AeternoBlade』を開発したことで知られている、タイに拠点を置くCorecellだ。Corecellによると、発売中の『AeternoBlade II』でPQubeとパブリッシング契約を結び、最低保証金を支払うことに合意したが、PQubeはごく一部についてのみ支払ったものの、残りは現在においても支払っていないとした。

 こうしたことから2020年9月にパブリッシング契約を解除したが、前述の『A Space For The Unbound』と同じく家庭用ゲーム機のパブリッシング権の返却を拒否しているという。また『AeternoBlade II』の欧州の利益は、すべて入ってきていないと主張している。またPQubeは、こうした件は伏せていればパブリッシング権の返却するとしていたが、Corecellはそれを拒否したという。だが小さな独立系開発スタジオとして、他の国で訴訟を起こすための弁護士費用を支払う余裕がないので、現状はそのままとなっている。

 このCorecellの告発に対し、PQubeは海外メディアEurogamerを通じてコメントを出しており「Corecellは、『AeternoBlade II』のローンチ後に品質が悪かったことを認識しており、修正することに合意した。しかしそれは実行されなかった」という。さらにPQubeは「それにも関わらず最低保証金の全額を支払い、PC版をパブリッシングする用意があった。しかしCorecellはそれ以上の話し合いをすることなく、独自にPC版をリリースした」と主張している。

 また家庭用ゲーム機のパブリッシング権の返却に関しては、「Corecellの要望に沿って、何度も契約書を提案したがCorecellはこれを認めなかった。Corecellとのコミュニケーションは困難だったが、PQubeは契約期間終了前にコンソール版に関する権利をCorecellに返還した」と主張した。つまりコンソールのパブリッシング権は、すでに返却済みと主張した。

 このPQubeのコメントに対してCorecellは、Twitterアカウントで「すでに権利を返還しているのであれば、なぜそのゲームが同社の名前でストアで販売されているのか」とMicrosoft Storeのリンクを出しつつ反論した。確かにMicrosoft Storeでは『AeternoBlade II』のパブリッシングはPQubeとクレジットされていることが確認できる。

 またCorecellは、「合意した金額を払っていない事実は変わらない」としており、「真実には一貫性があり、嘘には混乱がある」と反論のツイートを締めくくった。

 Corecellは、公式Twitterアカウントで『A Space For The Unbound』宛てに「あなたはひとりじゃない」とリプライを送っており、このPQubeについての連帯を表明している。

ライター
85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter:@fukuyaman

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