スクウェア・エニックスHDは、「2024年3月期連結決算」と「新中期経営計画」を発表した。
利益項目においては、売上高は3563億4400万円で前年同期に比べ3.8%増、営業利益は325億5800万円で26.6%減、経常利益は415億4100万円で24.1%増、親会社株主に帰属する当期純利益は149億1200万円で69.7%減となっている。
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デジタルエンタテインメント事業は、HDゲームにおいて『ファイナルファンタジー16』、『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』、『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の 王子とエルフの旅』、『ファイナルファンタジー7 リバース』などの発売により、前期比で増収。一方で、開発費の償却負担や広告宣伝費の増加に加えて、コンテンツ評価損が前年比で増加などにより、営業損失が拡大した。
MMO(多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム)においては、前期比で減収減益、スマートデバイス・PCブラウザなどをプラットフォームとしたコンテンツにおいては、 『ドラゴンクエスト チャンピオンズ』、『ファイナルファンタジー7 EVER CRISIS』のサービスを開始したものの、既存タイトルの弱含み等により、前期比で減収減益となった。
出版事業は、TVアニメを開始した『薬屋のひとりごと』の大ヒットにより、紙媒体及びデジタル販売が前年を上回り、前期比で増収増益となった。
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またこれにあわせて2025年3月期~2027年3月期「新中期経営計画」を発表しており、売上高・営業利益目標とも未達成だったことを踏まえて、以下の成果と課題を総括した。
(画像はPDFより) ■前中期経営計画の成果
・HDゲーム(HD)・スマートデバイス・PCブラウザ等(SD)ポートフォリオの再構築に着手
(海外3スタジオおよび一部IPの売却)
・ MMO事業拡大による収益基盤強化
・出版事業の安定成長フェーズへのスムーズな移行
・アミューズメント事業のV字回復実現
(コロナ期間における徹底的なコスト削減)
・ ライツ・プロパティ等事業の継続的成長(画像はPDFより) ■前中期経営計画の課題
・HD開発の収益性改善
⇒ 数多くのタイトルをローンチするも一部のAAAタイトルや外部開発タイトルを中心に、利益創出の観点で期待以上の成果を得られなかった
・SDゲームの成長減速
⇒ 日本市場の成熟化、既存タイトルの経年劣化を補填できるヒットタイトルを創出できなかった
・会社全体としてのタイトルポートフォリオ管理が不十分
⇒ローンチスケジュールの重複による自社タイトル間のカニバリゼーションが発生
・一部の経営管理基盤が未整備
そしてここから新中期経営計画として「さらなる成長に向けた再起動の3年間」として4つの戦略を打ち出している。
■新中期経営計画の4つの戦略
・デジタルエンタテインメント事業の開発体制最適化による生産性向上・顧客接点強化による収益獲得機会の多様化
・経営基盤の更なる安定化に向けた各種施策の導入
・成長投資と株主還元のバランスを勘案したキャピタル・アロケーション
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最初の「デジタルエンタテインメント事業の開発体制最適化による生産性向上」については、“「確かな面白さ」をお届けする「量から質」への転換”を掲げている。
また社内開発体制の刷新による内製開発力を強化するとしており、BU制(事業部制)を廃止し、開発機能に重心を置いた一体運営型の組織体制を導入するとしている。さらに「個」のクリエイティブと「組織」のマネジメントが調和した開発推進体制への転換をする。
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次の「顧客接点強化による収益獲得機会の多様化」については、HDタイトルは、任天堂プラットフォーム、PlayStation、XboxやPCを含む、マルチプラット フォーム展開を強力に推進しつつ、SDタイトルは、iOS/Androidに加え、PCなどのローンチも選択肢として検討する。PCユーザー獲得にフォーカスした各種取り組みを推進するという。
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「経営基盤の更なる安定化に向けた各種施策の導入」については、ヨーロッパとアメリカ両拠点の組織構造の見直しをしつつ、ロンドン開発拠点の機能強化としている。
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「成長投資と株主還元のバランスを勘案したキャピタル・アロケーション」については、3ヵ年累計、最大1000億円の戦略投資枠を設定する。
2023年6月に代表取締役社長に就任した桐生隆司氏のもと、大々的な改革案を打ち出したスクウェア・エニックス。日本のゲーム業界を代表する会社として、これからも同社のエンタテイメントに期待したい。