神山重彦『物語要素事典』が10月28日、国書刊行会より発売された。古今東西のさまざまな物語に共通する要素・発想を取りまとめたという大事典だ。
1135の物語要素から、延べ1万1000を超える作品の筋書きを紹介。書籍はB5判サイズに4段組みテキストで、ページ数は1368頁、価格は税込みで2万8600円という、内容・価格・物理的質量ともに、超ド級としか言いようのない大作となっている。
同書は文学作品に限らず、映画や演劇、落語や歌舞伎などの古典芸能、神話、マンガ、都市伝説に至るまで、「物語」を持つ様々な媒体から「物語要素」を網羅的に収集したという書籍だ。言及されている作品総数は4500に上り、物語要素別に1万1000を超える作品説明を収録している。
地域や時代ではなく、アイデア・筋書き・関係・行動・結末といった作品の内部から「物語用」を分類していることが特徴で、異なる地域、異なる時代、異なるジャンルを横断しながら、それぞれに共通している着想を見つけられるという。
例えば「言い間違い」の項目では、
・あわてたため、 馴染みのない言葉のため、などの理由で言い間違いをする。
・二人が互いに相手の言葉につられて、言い間違いをする。
・言い間違いが、隠れた願望をあらわす。
・願望ではなく、言葉や概念の近接性によって、言い間違いが起こる。
など、複数の形で要素が分解され、各要素ごとに登場した作品とその筋書きが簡潔に紹介されている。
また上記で引かれている作品についても、古典落語から故事成語の由来、近代小説やフロイトの『精神分析入門』のような学術系書籍まで、非常に幅広く取り上げられている。
ぱらぱらとめくってみるだけでも面白そうだが、同書の著者である神山重彦氏は愛知学院大学文学部日本文化学科の名誉教授であり、同書も学術的な文芸批評などの基礎的なレファレンス資料としても堪えうるものになっているようだ。
現在、国書刊行会のホームページから同書のカタログをダウンロードすることができ、前述した「言い間違い」項目のサンプルや、全1135項目の収録項目などを確認できるので、気になった方は見てみるといいだろう。
また、愛知学院大学の図書館情報センターのウェブサイトでは、同書のもとになったと思しき資料もデータベースから確認できる。こちらもオンラインで閲覧できるので、内容を詳しく知りたい場合はあわせて参考にされたい。