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『アビス』は、ひとつの奇跡だった──膨大な開発資料とともに『テイルズ オブ ジ アビス』開発陣に聞く、「生まれた意味を知るRPG」が生まれた理由【ゲームの企画書】

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『アビス』が完成した日、実は……

実弥島氏:
ちょっと話が逸れてしまうんですけど、ゲーム内に「アビスマン」というサブイベントが存在してて……あれは私と武者(匡彦)さん【※】が「スーパー戦隊っていいですよね!」と勝手に盛り上がって、別に「作っていいよ」とも言われてないのに、勢いで作ってしまったんですよね。

それをあとから見せたら、「勝手にこんなことしちゃダメでしょ」ってすごい怒られて(笑)。

※「武者匡彦(むしゃ まさひこ)」
バンダイナムコスタジオに所属している、ゲームクリエイター。『テイルズ オブ』シリーズではグラフィック関係に携わり続けており、『アビス』ではプレイヤーキャラクターモデルグラフィックを担当。

穴吹氏:
武者さん、たしかアビスマンのモデル7体をひと晩で作ってましたよね?
「ひと晩で7体作ったよ!」と言われた記憶があります。

実弥島氏:
シナリオも、ほぼ1日くらいでワーッと書きましたよ?

ほかにもやらなきゃいけないことがあるのに……いまの開発だったら、絶対やっちゃいけないですよね(笑)。

樋口氏:
そういう意味では、担当者個人の裁量でものが増やせた時代だったんですよね。

モデルだけじゃなくて、あまり最初に予定が決まっていない「サブイベント」なんかも、「面白いと思ったから」で作れちゃったんですよね。怒られるかもしれないけど、担当者の裁量でそれを入れちゃえる時代でした。いま大きいプロジェクトでそれをやろうとすると、難しいですよね。

穴吹氏:
『テイルズ オブ エクシリア』【※】くらいまでは、その「後でむっちゃ怒られるけど、やったもん勝ちだ」みたいなノリでそれができましたよね。

それこそ『エクシリア』の「共鳴秘奥義」は、もともとやる予定のないシステムだったんですよね。そもそもお金も出ていないし、テイルズスタジオ的にもそんな見積りなんてあるわけがない。

だから、当時プロデューサーの人たちがいる場に僕が呼ばれて、その場では「このシステム(共鳴秘奥義)はやらないよね?」「もちろんです」と答えたのですが、戻ったときにバトルチームには「やるから」と。超ウソつきましたね。

一同:
(笑)。

穴吹氏:
勝手に実装したから、すごい怒られましたけどね。
でも、あの時代……2010年に入るか入らないかのギリギリのところまでは、それが成立したと思います。

【ゲームの企画書】『テイルズ オブ ジ アビス』開発陣インタビュー:史上最多級の開発資料とともに聞く、『アビス』という名の奇跡_039
※「テイルズ オブ エクシリア」
2011年にバンダイナムコゲームス(現バンダイナムコエンターテインメント)から発売された、『テイルズ オブ』シリーズの15周年記念作品。シリーズ初のダブル主人公の物語が描かれた。

【ゲームの企画書】『テイルズ オブ ジ アビス』開発陣インタビュー:史上最多級の開発資料とともに聞く、『アビス』という名の奇跡_040

実弥島氏:
アビスマンを作るのは本当に楽しかったですね。

ただ、アビスマンはほかにも入れなきゃいけないものがあったから、イベントとしてはかなりカットされているんです。本当は全5話くらいの壮大な物語を書いていたんですよ。

そもそも、アニスを掘り下げるサブイベントが開発期間の関係でバッサリカットされたから、アビスマンのフルverなんて入れてもらえるわけがないんですよね(笑)。

樋口氏:
でも、アビスマンはバトルのかけ合いのボイスも録ってましたよね?

穴吹氏:
当時はギリギリの進行で、本当にもう……だって、『アビス』がマスター(完成)したのっていつですか?

樋口氏:
……12月ですよ(笑)。

──ええっ!?発売日は12月15日ですよね。

穴吹氏:
収録も、すごいギリギリまでやってましたもんね。

実弥島氏:
私も、10月末くらいまであらすじを書いていました。

【ゲームの企画書】『テイルズ オブ ジ アビス』開発陣インタビュー:史上最多級の開発資料とともに聞く、『アビス』という名の奇跡_041

「音楽」というモチーフ、一体どこから出てきた?

──『アビス』は開発コンセプトをそれほど深く決めてはいなかったとお聞きしましたが、資料の要所要所で「歌をモチーフにする」という話題が出ている印象があります。

樋口氏:
それは、最初からあったんですよね。

もともとこの企画自体が、僕と長谷川さんの「歌バトルがしたい」という発想がベースにあるんです。ちなみに「歌バトル」というのは、「最後は歌でバトルしたい」というシチュエーション的な発想ですね。逆を言うと、それしかないんですよ(笑)。

そこを取っかかりにして、「音がエネルギーの源になっているような世界観を作っていくといいんじゃないか?」と考えたところからスタートしています。だから、キャラクターの名前や「音素」などの設定も、ほぼ「音」と関係する形で作っていったんですよね。

これは割と最初に決まっていて、実弥島さんにもお伝えしていたと思います。

実弥島氏:
たしか、プロットと初稿を出したくらいのタイミングで「歌バトルしたい」という要望を聞きました。それがなにか正式なオーダーとしてあったわけじゃなくて、休憩室で雑談していたときに、「実弥島さん、歌バトルしたいんだよね」と言われて(笑)。

そこから、「じゃあ音要素を入れればいいんですね?」と思って、プロットにあわせて「音素(フォニム)」などの設定を作っていった感じですね。

【ゲームの企画書】『テイルズ オブ ジ アビス』開発陣インタビュー:史上最多級の開発資料とともに聞く、『アビス』という名の奇跡_042
ティアの「譜歌」に関する資料。使用する魔法からその時間まで、細かく仕様が決められている。

樋口氏:
当時その「歌バトルをする」という話を、BUMP OF CHICKENの藤原(基央)さんにしたら、そこにすごく同意してくれて……そこから「それは僕もなにかお手伝いしたいです」という感じで、いろいろ乗ってきてくださったんですよね。

──そもそも、なぜ「歌バトル」というアイデアが出てきたんですか?

樋口氏:
それはもう、「歌バトルが面白そうだから」です!

実弥島氏:
私は、当時バトル班の人たちから『ギャラクシーエンジェル』【※】がすごくよかったから、ああいう感じで歌で対決して盛り上がりたい!」みたいなことを言われたのを覚えています。

私はゲームの『ギャラクシーエンジェル』は知らなかったから、「うーん、『MOTHER』みたいな感じ?」と思いながら、イメージを固めていったような……。

※「ギャラクシーエンジェル」
ブロッコリーによるキャラクターメディアミックス企画より生まれた作品群。アニメや書籍などのメディアミックス展開が行われたが、ここで言及されているのはゲーム版のこと。

樋口氏:
いや、それはたしか「譜歌」のシステムの話だったような……?
とにかく、「歌バトル」というキーワードが強烈だから、それをやりたかったんですよね。

──企画コンセプトに最初からあったわけではなく、あとから出てきた「歌バトル」というアイデアが、「音楽」のモチーフとして世界観やキャラクターデザインなどにも影響していったということですよね。サラッと話されていますが、なかなかすごいことな気がします。

樋口氏:
たしかに、最初の企画書には書かれていなかったですね。
言われてみれば、あとづけの企画コンセプトにはなるかもしれないです。

実弥島氏:
急に「歌バトル」という要素だけ出ても、ポッと出のものになってしまう。それはイヤだったので、ちゃんと世界観などの設定にも「音楽」を混ぜこみたかったんです。

私自身も、設定とゲームの遊びが乖離しているのは好きではないから、そこがちゃんと絡むように、歌や音に関わるもので全体をまとめていったような感じですね。

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仕様書の段階で書かれていた、「ミュウ」と「ソーサラーリング」のシステム。

実弥島氏:
それで言うと「ミュウ」も、プロットが固まって、もうシナリオを書き始めていた時期に「今回のソーサラーリングは動物です」と言われたんですよね。正直、「ええ?いま言われても……」とは思いました。

でも、急にファンタジーな動物が出てきて火を吹くのはイヤだったから、そこもちゃんとシナリオに絡めたいと思って、急遽「ミュウ」を作ったんですよね。結局、それも「歌バトル」と全く同じ流れだったと思います。

樋口氏:
たぶん、「ラストに歌バトルをしたい」と「歌を魔法にしたい」という2軸のアイデアがあったんですよね。「譜歌」に関しては、どちらかというと後者の「歌の魔法を戦闘で組み立てていったら、最終的にひとつの曲になる」というバトル班のアイデアだった気がします。

だから、できれば「譜歌」に関しては社内でコントロールしてしまった方が取り回しが効きやすいだろうという話をしていたんです。そこから「譜歌」をBUMPの藤原さんに書いてもらうことになったとき、「本当に大丈夫ですか?」と言われたのを覚えています。

まあ……なんの根拠もないけど、「大丈夫だ!」とは言ってましたね。

──実際にお話を聞くまで、ゲーム全体の音楽要素や重めのストーリーなどは、最初からしっかりとコンセプトを決めて作られていたのではないかと思っていました。ただ、そこが後付けで組みあがっていったというのは、かなり驚きです。

樋口氏:
こうしてあとから振り返ると、どんどん肉付けをしながら、「尖り」を作っていったような作り方でしたね(笑)。

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すべてが計算したかのように、上手くハマった──奇跡が起きていた、『アビス』の開発

──素朴なことをお聞きしてまうのですが、『アビス』を作っている最中、開発チームの皆さんは暗い気持ちにならなかったんですか?

樋口氏:
それは全員には聞いていないからわからないんですが……(笑)。

たとえば、ひとりのスタッフがいたとして、「個人的にはこう思う」と「製品としてはこう思う」を切り分けている人が多いとは思います。むしろ、そういうのを全く気にせずに「こんなの作るんですね」と捉えている人もいる。

だから、『アビス』に限らず、「重いシナリオだから、チームの空気も重い」みたいなケースは聞いたことがないですね。むしろ、人間関係みたいな全然違う理由で暗くなったりすることはありますけど。

一同:
(笑)。

実弥島氏:
そんな切ない話……(笑)。

でも、私はシナリオを書いているときは、ヴァン先生の気持ちになっていましたよ。「人類など皆滅びてしまえばいいのに!」と思って書いていたから、イキイキしていました。スケジュールは厳しいのでキツくはありましたけど、楽しかったです!

──むしろイキイキされてたんですね……。

穴吹氏:
シナリオに関しては、もう上がってきた段階から「絶対にこれはウケるだろうな」と思いながらも自分の仕事をしていたんですけど……。

どちらかというと、ゲームができあがってきたときに、ロード時間などを含めて「自分たちがイケると思ったものが、細かい仕様のせいでプレイヤーに100%体験させられないかも」という問題が見えてきたのは、結構ショックでしたね。

樋口氏:
そうだね。
2005年の夏くらいから、ちょっとずつそのへんが見えてきた。

穴吹氏:
その細かい計算が、開発スケジュールの後ろの方で整ってきたんですよね。
我々も、こんなにロードに時間がかかるとは思っていなかったんです。

しかも、当時はレギュレーションとして「何秒以上のロード時間がある場合、画面がフリーズしたわけじゃないことを示すためのマークを表示する」という規約があって……それに該当するタイトルはあまりなかったのですが、『アビス』はその規約に抵触するから、マークを出さなきゃいけなくなったんです。

ちょっと悲しい気持ちになりましたね。

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樋口氏:
最後まで、あそこの調整は頑張ってみたんですけどね……。

ちょっと余談なんですが、ディスクは外に行くほど読み込みが速いから、普段アクセスしなかったり、ロードに時間がかかってもいいものは内側に置くようなレイアウトをするのですが、『アビス』はそこのロード時間も僕が全部試していたんです。

すべてのアクセスする時間をはかって、最高の速度を出してみたのですが……それでも全然ダメで。結局、いまのロード時間で出すしかなくなったんですよね。そこのレギュレーションも品証からのツッコミだったので、本当は戦いたかったんですけど。

穴吹氏:
10周年にあわせて発売するのが決まってたから、それでも出すしかなかったんですよね。

樋口氏:
なんなら10周年あわせで発売するのも、企画の時点では決まってなかったし……。

──それも驚きですね。最初から10周年記念タイトルというわけではなかったんですか?

実弥島氏:
私は収録の立ち合いに行ったときに、「このタイトル、10周年記念なんですよ」と言われて、「えっ!?」と驚きました。

樋口氏:
実は、途中まで2006年の3月発売を想定していたんですよ。
そこを踏まえてスケジューリングをしていたんですけど、10周年にあわせて、12月15日に発売することになったんです。

仕方なく開発を進めていたのですが、明らかに無理そうなことが途中でわかったので、吉積に「3月発売にできませんか?」と話したら……「本当にダメになったらもう1回来て」と言われて。ダメになったから来てるのに!!

一同:
(笑)。

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──内部でも賛否両論があったように、『アビス』自体が尖った作品ではあると思うんです。ただ、それをみんなが楽しむ『テイルズ』という看板で大衆に届けたことが異様だと感じていて、なにか「これをみんなに届ける」ために意識していたことはあるのでしょうか?

樋口氏:
『アビス』の賛否両論だったりする部分は、だいたいの人が開発初期の段階で気持ち的に納得してはいたんです。ただ、それを外側の人に広げていく……つまり開発以外の人も巻き込んで「これを売っていこう」という気持ちにさせるためのバッジみたいなものが、「10周年」だったのかなとは思ったりします。

ただ「これは、自分たちが面白いと思ったものを信じた作品だ!」と出すだけでは、お客さんには届かない。当時は広告もゲーム雑誌かテレビCMしかないような状態だったから、売る側の人たちも一生懸命になってくれる空気みたいなものが大事だったんです。

僕も、当時ハッキリとは理解していなかったのですが……いまになってみると、そこで「10周年記念」というのがすごく重要な要素だったんだなと。『アビス』は、奇跡なんじゃないかと思うくらい、そこの空気や熱量がガチっとハマったタイトルだった気がするんです。

なにか明確に意識していたというより、熱量だけでやっていたと思います。
僕は、そのあとに『テイルズ オブ ヴェスペリア』【※】の開発も担当しているんですが、『ヴェスペリア』のときも、その熱量がガチっとハマったような記憶があります。『アビス』で得た、「外の巻き込み方」みたいなものが後年活きたような感覚はありますね。

逆に、テイルズスタジオ内の空気ってどうだった?

※「テイルズ オブ ヴェスペリア」
2008年にバンダイナムコゲームス(現バンダイナムコエンターテインメント)から発売された、RPG。「『正義』を貫き通すRPG」というジャンル名の通り、主人公ユーリ・ローウェルなどの正義を貫く戦いが描かれる。『テイルズ オブ』シリーズ内でも人気の高いタイトルとなっている。

穴吹氏:
シナリオは賛否あったかもしれないですが、みんな自信を持って「これで行ける!」とは思っていたのかなと。だから、どちらかというと最後の「これをちゃんとゲームとしてチューニングして、面白くする」ことにみんなで注力してたんですよね。

樋口氏:
さっきのロード時間の問題も含めて、時間がないなかでも最大限調整をした記憶はあるし、本当にマスターの日までギリギリまで諦めずに作っていたような記憶はあります。ちょっとでも、よくしようとしていました。

あとひとつでもかけ違いがあったら、ああはなってないんですよね。
僕が『アビス』に奇跡を感じるのは、そういうところです。

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実弥島氏:
やっぱり、「紙一重」ではあったんですよね。

たしかに尖っているものかもしれないけど、ギリギリまで調整して、それを受け入れてもらえるようなガワをつけていく作業を最後までしていた。もしそれが足りなかったら違う結果になっていたと思います。

本当に、『アビス』は結果として計算したかのように上手くハマることがすごく多かった記憶があるんです。でも、「上手くいく企画」ってそういうことが多くて……計算していなかったけど、まるで最初から計算していたかのように、すごくキレイにハマったりするんですよね。

樋口氏:
たぶん、それって自浄作用じゃないけど、誰かが「ここがヤバい」と気づいてパズルのピースを埋めにいっているんですよ。その結果、最初から考えていたかのように上手くハマるという(笑)。

穴吹氏:
みんなが頑張ってチューニングをした結果だとは思いますね。

僕なんか、最後はメニューを作ってましたよ。メニュー担当がいないとかで、なんか知らないけど「メニューやれ!」と言われました。

一同:
(笑)。

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──そこまでみんなが「このゲームをよくしよう」と思うような士気の高さは、なにをもって生み出されていたのでしょうか?

樋口氏:
ほとばしる「大作感」みたいな雰囲気がずっとあったんですよね。
予算もそれなりにかかっているし、開発も大がかりだったし……あと、僕が大きかったと思うのは、やっぱりテーマソングの「カルマ」の存在ですね。

「カルマ」があることによって、大作感もより増していたし……「俺たちはすごいものを作っているんだぞ」という士気の高さに繋がりやすかったんだと思います。そういう要素が、『アビス』にはいっぱいあったんじゃないかなと。

実弥島氏:
あと、『シンフォニア』で得た知見や反省を活かして、それを『アビス』で試すというか……「『シンフォニア』で足りなかった部分を入れて、これを完成させたい」という職人っぽい気持ちがあったのかもしれないですね。

やっぱり足りなかったところも多いので、「『シンフォニア』を経た自分たちだったら、もっとこうできるんじゃないか」という思いが強かったのかもしれないです。

樋口氏:
それで言うと、「フリーラン」も、本当は『シンフォニア』でもシステムとして入れることはできたんですよね。

ただ、それが最後の方に完成したシステムなこともあり、敵の動きなどをフリーラン想定で作ってはいなかったから、結果として『シンフォニア』には入れられなかった。でも、「次には入れましょう」とは話していて、『アビス』ではフリーラン前提のバトルシステムになったんですよね。

そういう「本当は『シンフォニア』でやりたかったけど、やれなかったこと」が、『アビス』に入っているのは大きい気がします。

【ゲームの企画書】『テイルズ オブ ジ アビス』開発陣インタビュー:史上最多級の開発資料とともに聞く、『アビス』という名の奇跡_049
開発当時の企画書に記載されていた、新システムの数々。今作が『シンフォニア』の発展形であることが、仮の画像からもうかがえる。

実弥島氏:
あとは、『シンフォニア』のチームを、私たち自身が「傭兵部隊」と言っていたんですよね。

やっぱり本流は『テイルズ オブ デスティニー』などを作っている2Dテイルズの方で、私たちはあとから集められた異端児というか……「あっちのチームが『テイルズ』を担保しているから、私たち傭兵部隊は好きにやろうぜ!」みたいな空気感はちょっとあったんですよ(笑)。

だから、まず『シンフォニア』で好きにやって、そこで足りなかったことや成功したものを『アビス』にスライドさせていったようなところがありましたよね。

樋口氏:
そうそう、どっちかっていうと「外様」的な感じだったよね。
当時は『アビス』だって、ウチら的にはまだ2本目ですからね(笑)。

穴吹氏:
『シンフォニア』を作るときに、人をたくさん集めたんですよね。

そのときに、もともと『テイルズ』を作っていなかった人も結構入ってきて……『シンフォニア』の受け入れられた部分やそうでない部分を、もう一度ぶつけられる場所として『アビス』が出てきたのが、やっぱり大きかったかなと。

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ライター
転生したらスポンジだった件
Twitter:@yomooog
編集長
電ファミニコゲーマー編集長、「第四境界」プロデューサー。 ゲーム情報サイト「4Gamer.net」の副編集長を経て、KADOKAWA&ドワンゴにて「電ファミニコゲーマー」を立ち上げ、ゲーム業界を中心にした記事の執筆や、サイトの設計など運営全般に携わる。2019年に株式会社マレを創業し独立。 独立以降は、編集業務のかたわら、ゲームの企画&プロデュースなどにも従事しており、SNSミステリー企画『Project;COLD』ではプロデューサーを務める。また近年では、ARG(代替現実ゲーム)専門の制作スタジオ「第四境界」を立ちあげ、「人の財布」「かがみの特殊少年更生施設」の企画/宣伝などにも関わっている。
Twitter:@TAITAI999
ライター
宣伝・編集・執筆...色んな仕事をしています、川野優希です。
Twitter:@ougaan21
デスク
電ファミニコゲーマーのデスク。主に企画記事を担当。 ローグライクやシミュレーションなど中毒性のあるゲーム、世界観の濃いゲームが好き。特に『風来のシレン2』と『Civlization IV』には1000時間超を費やしました。最も影響を受けたゲームは『夜明けの口笛吹き』。
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