最新ガジェットから話題のツール・サービスまで、一週間分のテック・ガジェットニュースを配信するポッドキャスト「backspace.fm」。テクノロジー系ブロガードリキンとITmedia NEWSチーフキュレーターmazzoによるトーク、さらに多彩なゲストによる貴重なお話がたっぷりと聞けてしまうという番組だ。
この放送の中から、特に電ファミ読者に読んでほしいゲームに関する内容をピックアップ。テック系ジャーナリストたちによる深くて濃ゆいトークを、書き起こして皆さんにお届け!
2016年11月26日の放送では、Oculus Riftのエバンジェリストで日本におけるVRブームを牽引中のGOROman氏をお迎えし、VRの可能性、『Mikulus』の意図や開発の経緯、そしてGOROman氏が提唱する「キモズム」の概念についての話題が展開された。そのトークを抜粋して紹介しよう。
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番組で取り上げられた記事:
ジョニー・リーが披露するWii リモコンHack (TED Talks)
中の人になる方法 – Qiita
WiiでVRシステムをやってみた
Wiiリモコンでバーチャルリアリティをやってみた
ARToolKitで部屋にフィギュアを出現させてみた
ゲームの世界に入れちゃう? 「究極」のゲーム用ヘッドマウントディスプレイ、Kickstarterで速攻100万ドル達成
話題のOculus Riftでアッチの世界に入って来たついでにミクさんを触ってきた
VRエバンジェリストは育ちから違った! 英才教育すぎる幼少時代を振り返る。
ドリキン:
どこからお話ししますか。
GOROman:
Oculus Japanができたいきさつみたいなところからですかね。
ドリキン:
ボクたちも事前告知として、いくつかリンクを紹介させていただいたんですけど、「中の人になる方法」のQiitaの記事とか面白いですかね。
GOROman:
あれが面白いんじゃないですかね。自分の突き動かしたものというか。その辺から行きます?
ドリキン:
それではQiitaで掲載した「中の人になる方法」から。これはGOROmanさんが自分で書いたんですか?
GOROman:
そうですね。2015年ぐらいかな。テック系とかIT系の人が”クリスマスまでにネタを1個ずつ披露していく”アドベントカレンダーってやるじゃないですか。その一環で書いたんですよね。
ドリキン:
確かに、ちょうど1年前ぐらい。
mazzo:
「クリスマスまでに彼女を作る」とか、今年もやってますよね。
GOROman:
そういうのでOculusのアドベントカレンダーがあって、そこで書いたんだと思います。
ドリキン:
ボクも読ませていただいて、すごいエキサイトしました。こんなに熱い人がいるとは。
GOROman:
やってることはめちゃくちゃですけどね。
ドリキン:
本人を前にして言うのもなんですけど、めちゃくちゃですよね。
GOROman:
そういう人生ですね。幼少期からめちゃくちゃでした。
ドリキン:
ボクもゲーム好きで、ほとんどのコンソールを持っていたし、ゲーム好きトークでは負けないと思ってましたけど、「アストロシティ」を買ってる人はさすがに……。
GOROman:
いないんじゃないですか。子どもが産まれてさすがに捨てようと思って、「アストロシティ」は処分しちゃいましたけど、中身の「MODEL2」基板は、大事に靴箱に閉まってありますよ。
mazzo:
「アストロシティ」ってゲーム筐体のことだったんですね。
GOROman:
セガのゲーム筐体ですよ。100キロぐらいあるバカでかいやつ。中古で20、30万で買ったんだと思います。
ドリキン:
高いじゃないですか(笑)。
GOROman:
初任給かなんかを貯金して買ったんだと思います。どうしても家で『バーチャファイター2』やりたかった。
ドリキン:
ボクも「NEO・GEO」とか持ってましたけどね。あれもアーケードゲームが自宅で遊べるっていうやつで、カートリッジが3万とか。
GOROman:
そうですね。『餓狼伝説』とか『龍虎の拳』とか。
ドリキン:
「NEO・GEO」でもだいぶ“おかしい”ってみんなには言われてましたからね。
GOROman:
おかしいですね。「NEO・GEO」高かったし。こんな話で終わりますけどいいですか? やっぱりゲームもバーチャルリアリティなのかなって思いますよね。
ドリキン:
『バーチャファイター』の“バーチャ”が、まさに今のVRに続いてますよね。
GOROman:
そういう意味では昔からですね。小学校2年のときにNECの「PC-6001mk2」というパソコンに出会ったんです。これは親が質流れで買ってきたやつなんですが、家にコンピューターがやってきて、いつでも触っていいみたいな環境が与えられたんです。それでゲームをしたり、ベーシックでプランを組んだりしていました。
その前から、任天堂の「ブロック崩し」とか、「スーパーカセットビジョン」とかやってはいましたけどね。とにかく小さい頃からコンピューターとかガジェットにまみれた環境だったので、英才教育ではあったという感じですね。
ドリキン:
それはうらやましいですね。
GOROman:
父親がプログラマーだったんですよ。
mazzo:
じゃあ2代続けてだ。
GOROman:
ガチですよね。DNAレベルで入ってるんじゃないですか。これはもう逃れられないですよね。
ドリキン:
でも、お父さんの時代だと、職業としてはまだメジャーではなかったんじゃないですか。
GOROman:
そうですね。オフィスコンピュータとかだと思いますよ。家にダンプリストが、段ボールに箱詰めされて山のように置いてありましたし、「メモ用紙にしていいよ」なんて言われたので、絵を描いたりとかしました。ソースリストとか、プリンタで印刷された紙が家に持ち込まれてて……今思うと、家でデバッグしてたんでしょうね。
ドリキン:
それが脳にインプリントされてるかもしれないですね。
GOROman:
かもしれない。当時は、「ドットインパクトプリンタ」でひらすら打ってある謎の文字って感じでしたけどね。
ドリキン:
「ドットインパクトプリンタ」も今の人はわかんないかも。
GOROman:
そうですね。ドットインパクトで、熱転写で、インクジェットみたいな。……VRの話してないな。
ドリキン:
生い立ちから濃かった(笑)。
GOROman:
ルーツを話すとそれだけで終わっちゃいますね。
ドリキン:
それで、今度はソニーのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の「HMZ-T1」。
GOROman:
それらしいモノはイッパイ持ってたんですよ。ファミコンの立体視のやつとか。「グラストロン」とか、エプソンさんのやつとか。とにかく「ヘッドマウントと書いてたら買っちゃう」みたいな感じで、家も会社もヘッドマウントだらけになってるんですけど。
ドリキン:
(笑)
GOROman:
それで、「中の人になる方法」にも書いてあったんですけど、「ヘッドトラッキングしてモノを見る」というのは、ものすごくインパクトがあるなと思ったんです。これは絶対に波がくると思ったきっかけとなったのが、ジョニー・チャン・リーという人なんですよ。カーネギーメロン大学の人で、その後マイクロソフトに行って、今はグーグルの「Tango」とかやってる人なんです。
ドリキン:
「Project Tango」。
GOROman:
そうそう。ジョニー・リーが何をやったかというと、「Wiiリモコン」を改造してヘッドトラッキングし、バーチャルリアリティを実現したんです。2007年ぐらいにやってたんですけど、そのプログラムも公開されてて、ボクもそれで『初音ミク』とか出してたんですよ。
「Wiiリモコン」の仕組みって実は逆なんです。センサーバーが、実はセンサーじゃなくて赤外線を飛ばしてて、リモコンの方が赤外線カメラで受光してるんですよ。これを、逆にして使う。頭にセンサーバーをつけて、リモコンをモニターに固定するというハックですね。そうすると、いわゆるポジショントラッキングができるので、頭を動かせば映像が付いてくる。
ドリキン:
「Wiiリモコン」をテレビ側、というか。
GOROman:
そうそう。
ドリキン:
今の「HTC Vive」とかは?
GOROman:
あれは「ライトハウス」という仕組で、灯台なんですよ。灯台の如く、赤外線レーザーを大量に縦横モーターで回転させながら飛ばして、それを本体側で受け取って、時間軸を取って逆算する。ファミコンで「光線銃」あったの覚えてます? 『ワイルドガンマン』とか『ホーガンズアレイ』とか、あれの仕組みですね。
ドリキン:
本来の「Wiiリモコン」の形に近いといえば近いんですかね。“周りから赤外線を照射して本体が受け取る”という意味では。
GOROman:
「ライトハウス」は、X軸とY軸に回転して撃ちまくる仕組みで、それをデバイス側が受光して、XYZの位置を計算して求めるんです。
ドリキン:
さっきGOROmanさんが言われてた『初音ミク』は、それを逆転させて……?
GOROman:
じゃなくて。ジョニー・リーさんの「Head Tracking for Desktop VR Displays using the WiiRemote」という技法があるんですけど、その技法のソースコードは公開されていたので、そのプランを書き換えて『初音ミク』バージョンを作ったんです。そのときに「これはやばいぞ。バーチャルリアリティできるじゃん。しかも『Wiiリモコン』でできるじゃん」と、可能性を感じています。だって、頭を動かすと本当にミクさんが近づいてくるわけですから。この時点で可能性に魅入られてしまったんですよね。
ドリキン:
その時点ではARツールキットを使って、『初音ミク』がディスプレイの中にいるように見せるというのがありましたけど、そっちには惹かれなかったんですか?
GOROman:
いや、バリバリやりましたよ。ボクの「ニコ動」見てもらえれば全部やってます。ARツールキット使って、「Precomputed Radiance Transfer」(事前運搬・放射輝度・伝搬)という仕組みで実写合成したりとか、先に行きすぎちゃってて飽きたというか。
ドリキン:
(笑)
GOROman:
毎回そうなんですけど、2年ぐらいで飽きるんです。だいたい7年後ぐらいに、ボクの好きだったものがビジネスになって、みんながすごい儲かってるパターンですね。パソコンもそうだし、パソコン通信も中2でやっちゃったし、中2で非同期のネトゲとか作ってましたからね。
ドリキン:
我々もその傾向があるとはいえ、その中でも群を抜いてますね。ボクはだいたい5年かなと思ったんですけど、さらに2年ぐらい。
GOROman:
そう。小学校2年でプログラマやってて、パソコン通信は中学2年。ホストプラン書いてシスオペやって。1975年生まれなので、けっこう昔からやってるんです。パソ通やったのが中2なので14歳ですよね。その頃、パソ通なんて誰もやってなかったですよね。
ドリキン:
75年生まれですよね。ボクもまったく一緒です。
GOROman:
どうりで、ほぼほぼ話が合うわけですね。
ドリキン:
でも話を聞いてると、明らかにもう5歳ぐらい上なのかなと思ってたので。
GOROman:
付き合ってた大人がそうだったんですよ。中2でオフ会行ったんですけど、すごい顔されましたからね。年齢とかプロフィールに書いてなかったんです。大学生か社会人がシスオペやってると思ったら中坊が来たみたいな。「お前は誰だ、ゴロはどこだ?」みたいになりました。
ドリキン:
英才教育感が違うな。
GOROman:
大学生の方とかすごいよくしてくれるんですよ。中2が来たので、優しいんですよ。プラン教えてくれたり、ハードディスクくれたり。育てられましたよね。いろんな人に。
ドリキン:
まさに中2だったんですね。
GOROman:
まさに厨二病。ガチで。
ドリキン:
それは強力すぎる(笑)。
GOROman:
ある意味、環境が良かったですね。パソ通始めたのが中2で、ネットワークの世界に入れたという。その頃から、ある意味バーチャルの住人だったんですよ。学校とかすごくつまんなくなっちゃってたし。夜だけホストできるんですよ。電話回線使うので日中はできなくて、夜の11時から朝6時まで、ゴロネットというのをやってました。シスオペだったので、自分でホストプランをベーシックで組んで、ドライバ書いて、ATコマンドとかマスターして、その頃からある意味SNSですよね。