TV業界でも大活躍! イケメン東大生が率いる“最強”謎解き制作チームが、目から鱗のARG開発ノウハウを惜しみなく明かす…しかも組織作りまでガチ!【インタビュー】

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テレビ向けの謎を作る難しさ

――今までは謎解きゲームの公演について聞いてきましたが、最近はフジテレビ系「ナゾトレ」での謎も大人気になっていますよね。

松丸氏:
 おかげさまでそれ以来、本を出したり、他の企業とコラボしたり、いろんな話が舞い込んできていて大忙しです。2016年の11月に「ナゾトレ」に出演し、そこから一気にテレビ出演が増えた感じです。

 「ナゾトレ」の放送は2週間に一回で、毎回4問の新作問題を放映しています。毎回期間内に作る何十問かの謎のうち面白いものだけをピックアップします。このテレビ向けの問題も、謎解き公演の謎とは違う作り方の秘訣があるので、すごく大変なんですよ。

――公演向けの謎とテレビ向けの謎、どういうところが違うんですか?

松丸氏:
 テレビ向けの謎は、鉛筆や紙を使わずに画面を見ただけで解けないといけないんです。しかも小学生でも解けるというルールなので、英語も使えないし、難しい漢字も使えない。パズルのような問題は出せないので、ひらめき一発で解けるような謎が多くなります。

――そうですね……たとえば今まで作った中で、これはうまくいったという問題はありますか?

松丸氏:
 ちょうどいい例があるので実際にお見せしますね。これは「ナゾトレ」の第一回放送で出題した問題です。

 謎を作るときには、まずひとつ大きなたたき台が必要です。僕らは「軸」と呼んでいるんですが、たとえば「都道府県の名前なら小学生でも知っている。それなら都道府県名をモチーフにした問題ができないか」と考えるわけです。

――……なるほど、都道府県名ということで、答えは「わきやく」ですね。

松丸氏:
 ひらめいたときに「あ、これ都道府県じゃん!」と膝を打つような問題にすると、誰もが知っている知識なので満足度が高い。その「軸」から逆算して作っていきます。
 必要最低限の情報量でひらめきが出せるか考えていくと、「い○て」のように三文字の県名を使い、真ん中を空けるのが一番いい、という結論にたどり着くわけです。

――単なる文字列だったものが、ひらめくといきなり都道府県に見えてくるということですよね。

松丸氏:
 ひらめかないと解けないけれど、でも「こんなの解けるか!」ともならない。テレビ向けの謎はその絶妙なところが難しいです。

 そして面白いことに、こういう問題は謎解きに慣れている人ほどやられてしまうんですよ。逆に小学生の正答率が高くなることもよくあります。

――なるほど、先入観がないぶん小学生のほうが解けることもあるわけですね。

松丸氏:
 そうなんです。慣れている人ほど解けない。先入観を植え付けて、最後に裏切るというのは、僕たちが最も得意としている部分です(笑)。

――でもそれは同時に、解くほうの前提知識がどのくらいか正確に見極めないといい問題はできないということですよね。英語も漢字も使えないとなるとかなり制作の幅が制限されませんか?

松丸氏:
 もうかなりハードルが高いですね。でも僕らは「その制約の中で最大限の面白いものを作ろう」と言い合って、ギリギリまでアイディアを詰め込んで問題の質を高めようとしています。

 テレビ向け問題制作のチームは20人ほどいますが、もう毎日LINEの通知が鳴り止まないくらいです。「この謎はこうしたほうがもっと面白い」「でもこうしちゃうと今度はこんな問題が発生しちゃう」みたいな話し合いを一日中しています。

学生サークルらしからぬAnotherVisionの組織運営

――ここまで実際に謎を作るプロセスについて聞いてきましたが、AnotherVisionのサークルとしての活動について教えてください。テレビ向け問題制作のチームということは、他にもいろんなチームがあるんですか?

松丸氏:
 そのとおりです。毎週何曜日に集まって活動しているというわけではなく、案件ごとにチームを組み、それぞれのチームでいちばん効率のいい方法を取って謎を作っています。

Colorfuls……AnotherVisionの3期代表・どや氏が手掛けるリアル型公演。2017年6月17、18日に原宿の「The Sad Cafe STUDIO」にて開催。色をテーマとした一風変わった謎解きが話題となった。
(画像はAnotherVision公式サイトより)

 たとえば6月ごろだと、テレビ向けの謎を作るチーム、本の制作チーム、お台場での周遊イベント「東大ナゾ大陸」チーム、原宿で開いた謎解き公演『Colorfuls』制作チーム、小学館のコミックアプリ「マンガワン」【※】とのコラボチーム、などなど……。いくつものチームが同時に動いています。

※マンガワン 
小学館が2014年にリリースしたiOS/Android用マンガ雑誌アプリ。2017年4月より、AnotherVisionのチームが『シークレットコード 不機嫌な暗号探偵』という作品の「謎解きコーナー」を監修している。

――それだけいろいろなプロジェクトがあると、一番気になるのは、謎を大量に制作するのが大変じゃないかということなんですが……。

松丸氏:
 本当にそうですね(笑)。
 謎を量産するのは大変ですが、AnotherVisionではそれができるだけの組織体制を整えています。チームごとの分権体制もそうですし、会議のときは「絶対に3人以下ではやらない」というルールを作っています。

――それはどうしてですか?

松丸氏:
 3人以下で会議をやると、たとえば一人が「こういう意見があるんだけどどうかな?」と投げたときに、残りのふたりの片方が「面白いと思うよ」と言ったら、残りひとりはもう「それは違う」と言いにくいですよね。

 いい謎を作るためには、多くの人から自由な意見をいろいろ出してもらうことが一番なんです。それを阻害するようなことはなるべく排除しないといけません。

――それはそのままビジネスの場でも使えそうな知見ですね。

松丸氏:
 また、AnotherVisionの上級生が今まで培った経験を講座の形にして下級生に伝授しようという会を、丸2日かけて開催しました。必修の講座と選択式の講座を設定して、大学の授業みたいな感じで。

 僕は公演制作のリーダーになるために必要な条件、それをやる上で意識しなければいけないこと、といった実践的な内容を話しました。

――謎解き公演制作のリーダーとして必要な条件というと、どのようなことですか?

松丸氏:
 制作者としていちばん大事なのは、普段から視野を広げておくことだと思っています。謎解きって、作り続けているうちに本当にこの謎が面白いかだんだんわからなくなるんですよね。なのであまり読まないジャンルの本を読んでみたり、昭和に流行った歌謡曲を聴いたり……。そこから広がる世界がきっとあると思います。

 実際そこから得た知見は、僕らが制作する公演にどこかで生かされていて、やるたびに「こういう手もあったのか!」とお客さんに言われるような公演になっていると思います。

――それはまさにクリエイターの行動様式ですね。小説家がビジネス書を読んでみるとか、音楽家がまったく違うジャンルの音楽を聴いてみるといった話はよく聞きます。

松丸氏:
 そう言ってもらえるとうれしいです。僕もサークル内で「新しいものを作れない」という相談をよく受けるんですが、「それは自分の範疇で作っているからじゃないの?」と思うことがあります。思っている以上に世界は広いし、自分の好きな曲をひたすら聴いていたら自分の枠は全然広がらない。

――学生団体らしからぬ組織体制が整っていて、それが安定して謎を量産できる鍵なんですね。

松丸氏:
 サークルっぽくないとは結構言われますね(笑)。とにかくクオリティの高い謎を安定して作り続けるためには、組織づくりが重要なんです。

謎解きは誰でも作れる! 

――今後の目標として、AnotherVisionをこれからどういう団体にしていきたいですか?

松丸氏:
 団体として常に成長して、規模を広げていきたいと思っています。僕は全力で後輩たちに謎解きの知見を教えていきたいし、その結果また層が厚くなっていって、どんどんスケールの大きいことができたらと思っています。

――そうすると新歓活動が重要になってきますよね。AnotherVisionに来るような新入生は、すでに謎解きゲームの公演を遊んでいる人が多いんですよね?

松丸氏:
 いや、実は大学に入って初めて「謎解き」という文字を見て興味を持ってくれた人が多いんです。なので新歓のときの反応はすごいですよ。「こんな面白いものが世にあったのか!」と。おかげさまで今年は約60人の新入生が入ってくれました。

――そんなに来たんですね!

松丸氏:
 謎解きって、実は作るハードルがかなり低いと思っています。TVゲームが好きでも「TVゲームを作ろう」と思う人はそんなに多くないですよね。でもテレビ番組で放映されるような問題は、ひらめきさえあればWordやPowerPointで作れるわけです。それも謎解きの魅力の一つだと思っています。

――誰でも発想さえあれば作れるという謎解きの特徴が多くの新入生を引き寄せて、その結果安定した組織になり、問題を量産できるような組織運営ができているわけですね。

松丸氏:
 AnotherVisionは年内も多くの公演やイベントの開催が決まっています。8月には書籍『東大ナゾトレ AnotherVisionからの挑戦状』の第2巻も出ましたし、9月からは名古屋にも初進出しています。これからも多くの人に謎解きを楽しんでもらえるように、活動の幅を広げていきたいと思っています。

――ありがとうございました。次回謎解きゲームに参加するのが楽しみです!(了)

 筆者も謎解きゲームの魅力にはまって何十回とプレイし、成功したり失敗したりを繰り返してきたが、そのたびに感じるのは「たとえクリアしなくても満足度が高い」ということだ。
 クリアできたらもちろん嬉しいし、クリアできなくても答えを聞いたときに「あぁ~っ、そういうことだったのか!」と悶絶する。その快感こそが、謎解きゲームが多くの人を惹きつけてやまない理由だろう。

 そんなプレイ後の快感も、実は制作側の綿密なコントロールによって作られていることがこのインタビューでよく分かった。
 満足度を最大限に高めるように適切にナビゲートする「暗躍」、ひとつひとつの謎の質を極限まで高める「デバッグ」、参加者が謎に没入できるような「世界観」……。ただプレイしているだけでは気づかなかったことばかりだ。

 そういった細部にわたるさまざまな工夫のおかげで、AnotherVisionの謎解きゲームは高い評価を受け、テレビに書籍にと活躍の場を広げ続けている。今後も謎解きゲームの公演の新作が出るたびに、またあの快感を味わいに行くのが楽しみになってきそうだ。

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著者
電ファミニコゲーマー編集部員。映画を観るのとアナログゲームをするのが好き。
Twitter:@_k18

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