【赤野工作・ChinaJoy弾丸レポ】“パクリ大国”なんて言ってる場合じゃない! 独自のゲームも飛び出し世界戦略が着々と進む、日本人が知らない中国ゲーム産業のリアル

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 2115年を舞台に、そこまでの100年のあいだに発売されたさまざまなレトロゲーム(つまり我々から見た未来のゲーム)を、100年間の架空の未来の歴史とともにレビューする奇書、『The video game with no name』

 その作者である赤野工作氏@KgPravda)と「ゲームキッズ」シリーズで著名な渡辺浩弐氏による、メタフィクションについての対談を過日電ファミにて掲載したところ、非常に多くの反響を得た。

【対談:「ゲームキッズ」渡辺浩弐×赤野工作】「そのゲームが面白くないなら、遊んでるヤツがつまらない」ゲームレビューの文学性とメタフィクションの可能性とは?

 以来、赤野氏の動向を監視していた編集部だが、氏が中国・上海で催されるゲームショウ“ChainaJoy”に参加の意欲を見せていることに気づき、すかさず便乗。むりやり同行して、赤野氏に、この中国最大のビデオゲームの祭典のリポートを依頼した。

 結果、中国やChinaJoyについて予備知識なしで読んでも、いま彼の地のビデオゲームに何が起こっているのかが染み込んでくるような原稿が届いた。
 人物イラストの容貌からは想像もつかない丁寧さで、ディティールを積むように淡々と語られる文章。その中に氏が埋伏させた何かの毒が潜むさまを、そして荒廃した未来の世界の、朽ちた無人のパビリオンで流れ続ける陽気なナレーションのような、氏のテキストが持つ唯一無二のグルーヴ感をぜひご堪能いただきたい。

 それから、熱心な赤野ファンの皆さまにご忠告。読んでいるうちに、「書かれていることすべてが架空の話なんじゃないか?」と思えてくるが、今回はリポート記事。すべて事実だ。(編集部)

著者
赤野工作
ゲームストリーマー。『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』で作家デビュー。ゲームコレクターとしても活動しており、ニューメキシコ州はアラモゴードに実際に埋められていたATARI 2600の『E.T.』や、中国で国辱と呼ばれているMS-DOS用ソフト『血獅』などを所有。古今東西の低評価ゲームを探しては再評価する活動を続けている。
Twitter:@KgPravda

鼻の下伸ばしたおっさん2人でゆく

 2017年7月27日、この日、中国最大のゲームショウ「ChinaJoy」【※】が開幕しました。2003年から始まったこのイベントも、今年でついに15周年。イベントが始まった当初から比べると、中国のゲーム産業は何もかもが劇的に変化を遂げました。

 中国のゲーム市場はいまや100億ドルを超える規模へ成長したと言われており、当初は海外のメディアから「文化祭」のようだとさえ評されていたこのイベントも、世界中から開発者、メディア、そして何よりゲーマーたちが集まるゲームショウへと変貌を遂げました。

※ChinaJoy
毎年7月末に中国・上海にて開催される、同国最大級のゲーム見本市。初回は2004年1月に北京で開催され、PlayStation 2や、任天堂が開発し、中国限定で発売したハード“神游机”などが展示された。2017年7月開催で15回目を迎え、世界30ヵ国以上から参加、来場者30万人超の、世界的にも規模感の大きな催しとなっている。

 このように世界的なイベントとなったChinaJoyの取材を通して、電ファミニコゲーマーでも「変動する中国ゲーム産業の現在を読者の皆さんへとお伝えしたい……」、という気持ちはあるのですが、残念ながら、この記事にはそういった類の話はいっさい出てきません。

 そもそも今回編集部から派遣されたのは、「ChinaJoyはコンパニオンさんの露出度が凄いらしいんです」とだけ聞かされて、鼻の下を伸ばして現地へ赴いただけのおっさんふたり。楽しくあれこれ見て回ってきただけで、真面目な話など何ひとつ聞いてはきませんでしたからね!

 ChinaJoyを取材したジャーナリストは数おれど、わざわざ海外から派遣されてChinaJoyを観光してきただけの人間も珍しいでしょう!

 そこでこの記事では、とかく話が難しくなりがちな「変動する中国ゲーム産業の現在」を、単なる1ゲーマーの視点からわかりやすーく語るとともに、ニュースではいっさい報じられることのない「ChinaJoyの楽しみかた」について、単なる観光客の視点からこまかーく語っていきたいと思います。
 つまりは「1からわかる! チャイナジョイの楽しみかた」! かるーい旅行記気分で、お付き合いください!

そもそもチャイナジョイってどんな場所?

 そもそも読者の皆さんは、ChinaJoyにはどういうイメージを持っていますか?

 「ChinaJoyはとにかく人が多くて暑そう」、「ChinaJoyには見たこともない中国産のガジェットが並んでいる」、「ChinaJoyでは中国で大人気のe-Sports【※】の対戦会が行われている」、「ChinaJoyでは日本で遊べない中国のゲームが展示されている」、そしてもちろん……「ChinaJoyには露出度の高いコンパニオンがたくさんいる」。
 いろいろ並べてはみましたが、おそらくはこんなイメージが大半なんじゃないでしょうか。

※1 e-Sports
electronic sportsの略称。対戦型ゲームを競技として扱う際の名称で、格闘ゲーム、MOBA、FPSなどジャンルは問わない。主な人気タイトルに『League of Legends』や『Overwatch』が挙げられる。1997年には初のプロフェッショナルリーグ「Championship Gaming Series」が設置された。アメリカや韓国で特に競技者人口が多く、高額な賞金のかけられた世界的な規模の大会もある。日本ではプロゲーマーの梅原大吾氏などの存在で知られる。

※動画は今回の会場となった「上海新国际博览中心」の外観。空港と見間違うほど大きい。

 ChinaJoyというイベントを正確に知ってもらうためにも、まず最初にこのイベントにまつわる数字をいくつか紹介してみましょう。

 たとえば……、ChinaJoyが開催されている会場、「上海新国际博览中心」。
 ここはアジアで二番目に大きいと言われている展示場で、その展示面積は約14万平方メートルと言われています。東京ゲームショウの会場である「幕張メッセ」の展示面積が約8万平方メートルと考えると、その展示面積は約2倍。この展示場すべてが会場となっているため、とてもじゃないですが、1日で歩いて回れるような規模のイベントじゃありません。

 来場者数も年々増加を続けており、前回の来場者数は32万人を超えました。これも東京ゲームショウの来場者数27万人(2016年)と比較して負けず劣らずの混み具合。

 ChinaJoyは例年7月の後半に開催されるのがお決まりになっているんですが、この時期の上海の暑さは強烈なんです。日中の気温は38度を超えていて、今年に限ってはそこに凄まじい湿気さえ含まれていました。
 それだけの人数が、それだけ炎天下の日に、ひとつの会場に集まってきている……。「ChinaJoyはとにかく人が多くて暑そう」は、残念ながら間違いではなかったってことですね。

ようこそゲームの“テーマパーク”へ

 人々を引き寄せるChinaJoyの魅力。それはひと言でいえば、このイベントが世界でももっとも「パフォーマンス」に特化したゲームショウであることでしょう。
 ゲームショウと聞けばE3【※】のような「新作ゲームの見本市」を想像する人がほとんどだとは思いますが、このChinaJoyについては「ゲームのテーマパーク」を想像してもらったほうがいいかもしれません。

 それぞれのブースは遊園地におけるアトラクションで、各企業はアトラクションの企画を担当している。そう説明したほうがわかりやすいくらいの場所なんです。

※E3
Electronic Entertainment Expo.の略称。毎年5月中旬から6月中旬ころ数日間アメリカで開催される、世界最大のコンピューターゲーム関連の見本市。

 百聞は一見に如かず。まずは会場の写真をご覧になってみてください。
 ここは「蓋娅互娱」のブース。大人気のMOBA【※1】『自由之战』をリリースしているゲーム会社ですね。新作として展示されていたのは『甲铁城的卡巴内瑞』。原作となったアニメ『甲鉄城のカバネリ』【※2】は中国でも大人気なんだそうで、ブースとしてもアニメ推しですね。

 ステージ上ではアニメのEDテーマが歌って踊られ、付近にはコスプレイヤーも集まってきていました。観光に訪れた人々は、巨大な抱き枕をお土産に笑顔でブースを立ち去っていましたよ。

※1 MOBA
マルチプレイ・オンライン・バトル・アリーナ(Multiplayer Online Battle Arena)の頭文字を取った略称。リアルタイムストラテジー(RTS)から派生したジャンルで、複数のプレイヤーがチームを組んで、敵陣制圧を目的とする。『League of Ledends』などの作品がその筆頭とされる。

※2 甲鉄城のカバネリ
WIT STUDIO(日本)の制作によるテレビアニメ。フジテレビ系列ノイタミナ枠で、2016年4月〜6月にかけて放映された。蒸気機関の高い技術を誇る極東の島国・日ノ本(ひのもと)を舞台にする。ウイルス感染により世界で猛威を振るう怪物・カバネに対して、装甲蒸気機関車「甲鉄城」に乗る主人公たちが戦いを仕掛けるさまを描く。コミカライズやノベライズもなされており、アニメ第二期の公開も2018年に予定されている。

 続いてこちらは「西山居」のブース、武侠モノ【※】のゲームを20年以上開発し続けている老舗中の老舗です。展示されていたのは硬派な武侠RPG『剑网3』! このブースはもはやブース自体が「武侠」をテーマにしたショウの一部といった趣の建物でしたね。

 ステージ上では美女による武侠コスプレショウ、ブース内部には人気作品の武侠グッズを多数展示し、柱や天井のあちこちに提灯の明りや梅の花が咲き乱れ……。ゲームショウには「お決まり」のでっかいカバンすら、ここでは武侠スタイルの竹籠で渡されていましたから。

※武侠モノ
武術と任侠とを軸とした、中華エンターテイメント。日本で言うチャンバラや、アメリカで言う西部劇のようなもの。

 コンパニオンの人数で勝負を仕掛けてきたのはご存じ「盛大游戏」。事前に発表されていた19名の専属ショーガールに付け加え、『龙之谷』のステージには人気アイドルグループ「SSIDOL」や「CherryGir」が登場。

 新規IPである『神无月』のPRにはトップコスプレイヤーの集団が起用され、ゲームミュージックの演奏のためにオーケストラまで呼んでくる始末です! 広いステージを埋め尽くす、美人、美人、美人の群れ! 終始ステージ前にも観客の人だかりができていて、美人は遠巻きにしか見られませんでしたが。

 単純にブースの大きさで目立っていたのは……創立20周年を迎えた「网易」でしょう。見てください、遠くにそびえ立っているあの黒い建物。ひと目見ただけでも……でかいでしょ?

 网易は海外の人気ゲームを中国で展開している大企業。若者向けには『Overwatch』【※1】や『Hearthstone』【※2】、キッズ向けには『Minecraft』が大人気で、あんなに大きなブースでも観客が通路に溢れ出るほどだったんです。目玉は『Minecraft』の物販とe-Sports選手の登壇。このブースに訪れたこと自体をWeibo【※3】で自慢している人も少なくはありませんでした。

※1 Overwatch
米・Blizzard Entertainmentが制作・販売を手がけるアクションシューティングゲーム。全世界でのプレイヤー人口は、3000万人を超えると発表されている(2017年4月時点)。プレイヤーは、特殊部隊「オーバーウォッチ」の一員となって危機に陥った世界を救う。

※2 Hearthstone
米・Blizzard Entartainmentの制作するトレーディングカードを駆使して対戦するビデオゲーム。2014年リリース。同社の「ウォークラフト」シリーズをモチーフにしたカードによって構成されており、世界大会が催されるほど人気が高い。

※3 Weibo(微博)
中国で最大級の規模を誇るSNSサービスで、言わば中国版のTwitter。本家「Twitter」は、基本的に中国からの読み書きが不可能。

 グッズを大量に配る。ブースを派手に飾り付ける。コンパニオンを並べる……。やりかたはさまざまありますが、どこのブースも人を呼び込むために豪華な「パフォーマンス」に力を注いでいることがわかるでしょう? 裏を返せばこのゲームショウ、学生の研究発表やインディゲームのプロモーションのような、小さなブースの出展はあまり見かけることがありません。

 ChinaJoyは企業どうしがアピールのためにしのぎを削り合う戦場。まずはブースの話題性で勝てなければ……、中国13億人あまりの記憶に残ることは難しいのかもしれません。

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