どハデな破壊のエンターテインメント『THE FINALS』でおなじみのEmbark Studiosが開発し、ネクソンが世に送り出す、これまでとは打って変わって静かな緊張感が漂う最新作が『ARC Raiders』だ。プレイヤーは危険を顧ない“レイダー”となって、謎の機械生命体“ARC”に侵略され荒廃した世界に挑戦する。
本作はPvPvEのサバイバル・アクション・シューター。いわゆる脱出シューターというジャンルに位置し、ARCだけでなく自身以外のレイダーも敵となる。出撃し、探索し、帰還するというおなじみのループは踏襲されている。死亡すれば当然全ロストだ。
人類は地上をARCに明け渡し、地下都市“スペランザ”に逃れたわけだが、それはなぜか?
地上行きの高速ポッドから出ればすぐにわかる。
強ぇ。敵が。ARCが強い。
大型ともなると正面装甲はガチガチだ。なので、本作のPvEでは部位破壊も重要になる。『THE FINALS』と同様、破壊の大事さは不変だ。そしてここが際立っている魅力かもしれない。
ARCのやっかいさは、むしろ本作における選択肢を増やしてくれている。オプションはただ戦うだけじゃない。豊富なガジェットで防衛陣地を築き、じっくり戦う方法もある。狙うべき部位、立ち回り方、そのどれもが状況に合わせて変わってくる。
もちろん、火力でのゴリ押しもいい。ARCの視野は狭いので、戦闘を避けて潜入するのも探索では有効だ。そもそも危険な場所を避けるのもいい。無料のロードアウトがあるので、ムチャもできる。
過酷な世界だからこそ多様な判断が輝き、それでいて遊びやすく仕上がった『ARC Raiders』の魅力をテストプレイのレポートを通してお届けしよう。
強すぎる侵略機械との戦いが楽しすぎる
本作を語る上でやはり外せないのは、タイトルにもなっている“ARC”だ。強すぎる。
空を旋回するのは小型ドローンである“ワスプ”に、中型の“スニッチ”に“ホーネット”、大型は“ロケッティア”と、上を見るだけでもバリエーションは豊富だ。地上を見れば勝てるビジョンを抱けないほど超巨大なARCまでいる。
個人的に何度も泣かされたのが、ロケッティアだ。その名の通り、ロケットランチャーを装備した大型のドローンで、遮蔽がない場所でこいつに補足されたら、なすすべがないほどの異常火力を誇る。
しかもロケッティアは強力な装甲に覆われている。正直に告白すると、今回のプレイテストでは一度も撃ち落とすことができなかった。それは、パーティプレイでも例外ではない。3人の火力を結集しても足りないのである。
大型のARC前にして、一人のレイダーの力はあまりにも小さい。正直に言ってしまおう、本作の世界に普及している武器は弱い! 世界観に合っていて魅力たっぷりなのだが、ボロボロの見た目通りの粗悪品だ。
例えばアサルトライフルの“ラトラー”なんかは距離を選ばず使い勝手が良いが、装弾数はたったの10発しかない。そのうえマガジン交換はできず、リロードは2発ずつ、丁寧さが大事だ。ヘビーライフルに至っては中折れ式の単発銃、つまり1発ごとにリロードである。
こんな世界なのだから、上等な銃なんてあるはずもない、という尖った設定が好きな人には刺さるはずだ。筆者は好き。
そして、だからこそメリハリが生まれる。攻め一辺倒ではないため、常に考えながら立ち回る必要がある。戦いの趨勢は判断に大きく依存する──ここに『ARC Raiders』の深い味わいがある。
さて、前述した通りロケッティアは強力な装甲に覆われている。この装甲がやっかいだ。ARCには装甲を持つものと、持たないものが存在する。たとえば、非装甲の小型ドローンのワスプが相手であれば、どんな武器のダメージも通る。
それでも、ラトラーのワンマガジン分を全弾キレイに当てないと倒しきれないくらいには硬いのだが。
そして、装甲を纏った中型のホーネットが相手ともなるとラトラーではダメージが通りにくい。狙いが甘かったこともあってか、筆者の場合は50発撃っても倒しきれず、持っている弾がなくなり、しまいにはハンマーで戦う羽目になった。
ローターを破壊できていなければ、高度を保たれて倒すことすらできなかっただろう。
そう、部位は壊せる。本作の対ARC戦における重要な概念だ。やはりEmbark Studiosといえば破壊なのだ。
ドローン型のARCであれば複数のローターを破壊すればコントロールを失って墜落するし、多脚型であれば脚を破壊すれば動けなくなる。ここが本作の戦闘をただ厳しいものではなく、楽しいものにしてくれている。
装甲で覆われたARCにも非装甲部分があったり、装甲を破壊して弱点を露出させることもできる。例えばロケッティアであれば本体は装甲でガチガチだが、ジェットエンジンの装甲は薄いので、攻撃を集中させれば最小限の火力で撃ち落とすことができるだろう。できれば良かったのだが……。
あの強烈な攻撃をかわしながら攻撃を当て続けるのは実際のところ難しい。やり込みが必要だ。
本作は対ARC戦闘を軸に考えると、パーティプレイとソロプレイでは体験が全く異なる。
ソロでは基本的に、静かに動いた方がいい。中型のホーネット相手ですら戦いが長引くのだから、その音を聞きつけた他のレイダーに狙われるリスクは非常に高い。
ARCの視認距離と範囲はあまり優れていないので、スニークプレイは本作における有力な選択肢だ。あるいは爆薬やとっておきの武器をふんだんに使って素早く叩くか、サイレンサーで静かに潰すといったことを選んでもいい。とにかく、危険地帯では適切な対処ができるかどうか、判断が問われる。
一方で、パーティーとなると協力プレイの魅力が色濃く出る。本作では最大で3人のパーティを組んで地上に赴くことが可能だ。当然それだけで火力は3倍となるが、やっかいな大型ARCへの対処は連携が重要だし、容易ではない。
自分達の火力や状況に応じて、装甲を撃ち抜くか、可動部を狙うか、非装甲の部分を攻撃するかなどといった意識の統一が必要になる。ARCの攻撃を誰が引き受け、誰がどこから攻撃するのかといったヘイト管理も重要だ。
また、本作にはマッチメイキングシステムも用意されているため、すぐにパーティーで遊ぶこともできる。パーティープレイに関してはかなり配慮が行き届いており、どこに誰がいるかということも一目瞭然で、ピンやボイスチャットといったコミュニケーションツールも整備されている。
気になるマッチメイキングにおける連携に関しては、命中エフェクトもわかりやすく、煙が出たり装甲が削れたりと部位の損傷度合いも視認できるので、誰がどこを撃っているかが把握しやすく、特に不便を感じることはなかった。
DBNO(Down But Not Out = 倒されても終わりではない)のシステムもあるため、トドメを刺されない限り味方に助け起こしてもらうことができるなど、パーティを組んでいればよりアグレッシブなプレイができる設計になっている。
もちろん、アグレッシブなプレイにはアグレッシブな横やりが刺さる。PvPvEの無情だ。
PvPはオーソドックスにて因果応報
本作のPvP要素はARCとの戦闘と比べるとオーソドックスだ。ドッジロールはあるものの、レイダーの動きは現実的で、最初のセットアップが勝敗を分ける。
特色があるとすればグレネードに地雷やドアの封鎖、ジップラインの敷設といった、ガジェットの存在だろう。ガジェット専用のスロット自体がデフォルトで6つもあり、さらにそれぞれスタックすることもできるので、同じガジェットを何十個と試合に持ち込むこともできる。もちろん対ARCでも輝くのだが、立ち回り方の自由度は高い。
また、レイダーは体力を増やすシールドを装備できるため、戦闘終結までの時間がやや長い。パーティープレイではよりフォーカスが重要になるし、ソロプレイでは簡単には倒されない分、押し引きの判断が重要になってくる。
失う物が大きい脱出シューターでは、不利な戦いはしたくないものだ。敵に位置を悟られないことが重要だ。もちろん、敵の位置を察知することも重要だ。扉が開いていたり漁った跡があれば誰かが近くにいる可能性がある。空を飛ぶARCの数が不自然に少ないのも、危険な兆候かもしれない。
本作には詳細なマップが用意されているので、立ち回りは考えやすい。赤い場所は戦利品の質がいい、いわゆる激戦区だ。脱出地点も一目瞭然。おかげで筆者は初回から迷わず、すんなりと作品世界に没入することができた。とても親切である。
しかしやはり、激戦区は接敵の頻度が高い。しかも出現するARCも大型で強力だ。フィールドに不穏な爆音が聞こえたら、誰かが怒らせてはいけないARCに近づいた証拠だ。間違いなく、赤いエリアに誰かがいる。
仕掛ける側になるか、仕掛けられる側になるか。勝てばウハウハ、負ければ全ロス。勝ち続けられる者はいない。この戦いに、終わりはない。
のんびりとした散策も没入感があって楽しいメインコンテンツ
争いは悲しい。
しかし、この世界は美しい。景観はもちろんだが、特に素晴らしいのが作り込まれたサウンドだ。森を散策すれば鳥のさえずり、風の音に加え、自身が土を踏みしめたりする音や、身につけた装備がこすれる音が聞こえてくる。もちろん戦闘中の音響やエフェクト自体も気持ちがイイのだが、全体を通して妥協なく作り込まれている。
なのでお散歩が楽しい。
お散歩をする上で大事な没入感に関してはもはや言うことはない。屋内に入れば適度な反響音が聞こえてきて、まるで自分が本当にそこにいるような感覚を覚える。ずっと耳が心地イイ。
本作ではお散歩自体もしやすい。
フィールドは見通しがいい。TPSなので視野も確保しやすい。プレイヤーはシールドで守られているので、対レイダーでも距離があれば簡単には倒されたりしない。対ARCでは気をつけて動けば察知されることもない。
危険なエリアも脱出地点もマップですぐわかるし、とにかく安全を意識しやすい。激戦地に行かないプレイでも、インベントリをアイテムでいっぱいにできるくらいに漁る場所もある。
敵との戦闘はハードでやりがい十分だが、探索と帰還だけに焦点を当てれば既存の脱出シューターと比べてもかなり遊びやすく仕上がっているという印象だ。
壊して造るのがレイダー流
本作ではクラフト要素が軸となり、アイテムの探索の楽しさが加速している。地上で収集したありとあらゆるアイテムは、素材に分解して新たなアイテムを作成することができるのだ。
この世界における銃はとにかく非力だ。しかし、ずっと非力というわけではない。素材を使ってアップグレードできる。これにより装弾数が上がったりリロード速度が上がったりと、取り回しが全体的に向上する。加えて、グリップやマガジンなどのカスタムパーツも作成し取り付けることができるので、地上の死線を切り抜ける確かな力になるだろう。
コツコツと溜めた素材がしっかりと強さに反映されるのは嬉しいポイントだ。どんなプレイも無駄にはならない。そして、これを起点にさらに探索の幅を広げたり、危険に飛び込んでいったりと、どうするかはプレイヤーの自由である。
本作におけるプレイスタイルの幅はとにかく広い。度し難いほど強力な敵にチャレンジするもよし、コツコツ作り上げた強い装備でフレンドと協力プレイを楽しむもよし。しっかり作り込まれた下地があるからこそ、何を選んでも面白い。
今回のプレイテストは3日間と短いものだったが、それでもEmbark Studiosの確かなこだわりを感じることができた。あの騒々しくも楽しいノンストップのアクションが続く『THE FINALS』とはテイストが全く違うが、作り込まれた世界と破壊の表現は変わらず素晴らしい。
この世界にはいち早く触れておくべきだろう。
『ARC Raiders』はPC(Steam、Epic Games Store)およびPlayStation 5、Xbox Series X|Sで2025年に発売を予定している。また、同プラットフォーム上で、2次テクニカルテストが4月30日(中央ヨーロッパ時間)に開催される。