この頃、女の子とメカを組み合わせたキャラクター、いわゆる“メカ少女”を目にする機会が増えてきたのではないだろうか。大人気スマホRPG『Fate/GrandOrder』(以下、『FGO』)のヒロインである「マシュ・キリエライト」も、最近では重厚なメカアーマーを身に纏っているご時世だ。
メカ少女とは、その名の通り戦車や航空機などの兵器、あるいは、『機動戦士ガンダム』や『アーマード・コア』シリーズなどといったロボット作品に登場するようなメカニックパーツを美少女に装着・融合させたキャラクター物のことを指す言葉だ。
2017年にアニメが放映され、プラモデルや関連商品が品切れ続出の大ヒットを記録したコトブキヤの『フレームアームズ・ガール』(以下、『FAガール』)や、長き沈黙を破り、再始動が決まったコナミの『武装神姫』などの作品を思い起こしていただければ、概ねイメージはつかめるだろう。
そんなメカ少女を題材としたスマートフォン向けゲーム『アリス・ギア・アイギス』(以下、『アリスギア』)がコロプラより2018年1月より配信された。
『アリスギア』は、数多くのコンシューマーゲーム、アーケードゲーム、ブ ラウザゲームなどの制作を手がけてきた老舗ゲームディベロッパー、ピラミッドが開発・運営を行い、キャラクターデザインには『ガールズ&パンツァー』や『ストライクウィッチーズ』で知られる島田フミカネ氏を起用。
さらに『機動戦士ガンダム00』などで活躍するメカニックデザイナーの海老川兼武氏、柳瀬敬之氏が関わるという、その筋の人間が見れば超豪華というほかないクリエイター陣が贈るカスタマイズアクションゲームだ。
※『アリスギア』の魅力を15分の映像にまとめました。
そんな『アリスギア』だが、先日まで『FAガール』とのコラボイベントが実施され、さらには『武装神姫』の生みの親ともいえる鳥山とりを氏が手がける『メガミデバイス』シリーズとの密接なコラボ展開など、『アリスギア』というゲームを中心に、今この瞬間、極めて高い“熱量”を発している。
この熱量の高さはどのようにして生まれているのか?という疑問を抱いた電ファミニコゲーマー編集部は『アリスギア』、『FAガール』、『メガミデバイス』に関わるクリエイター陣へ座談会形式の取材を依頼。
ピラミッドの代表取締役社長である柏木准一氏、そして『FAガール』に携わり、プラモデルコンテンツとして創作した事で知られるコトブキヤ企画部 野内秀彦氏にご協力いただいた結果、座談会は、デザイナー陣として島田フミカネ氏、海老川兼武氏、柳瀬敬之氏、『アリスギア』からピラミッドの企画部部長 牟田貞治氏、“立体プロデューサー”の肩書で携わるランペイジのプロデューサー 鳥山とりを氏の総勢7名というメンバーが一堂に会する場となった。
『アリスギア』の制作に関わりつつも、いちユーザーとして熱心にプレイされている各人の熱意、仕事への姿勢、開発の裏話から、メカ少女ジャンルにまつわる話題全般にまで及んだ座談会は、3時間を超える長丁場となった。
あちらこちらへと話が飛んだ上に、最終的には“技術が発展してメカ少女が実在する未来はどうなるのか?”という、ある種の禁断の話題にまで踏み込んでしまうという、収拾のつかない内容となってしまったが、結果として非常に濃厚なトークが展開され、当事者たちのメカ少女ジャンルへの深い愛情が垣間見える座談会となった。
なお、本稿は文字数が多いため、要所要所に『アリスギア』や『FAガール』、『メガミデバイス』関連の画像を差し込んでいる。箸休めとして楽しんでほしい。
文/Leyvan
編集/クリモトコウダイ
メカ少女を作るようになった原体験
──本日はよろしくお願いします。錚々たるメンバーに集まって頂きましたが……まずは、みなさんのルーツをお訊きしていきたいと思います。
そもそも、なぜロボットやメカ少女を作るようになったんでしょうか? ロボット物ですとか、ミリタリー、メカ少女など、そういうものを好きになった原体験ってどういったものだったんでしょうか?
島田フミカネ(以下、島田)氏:
自分はキャラもメカも描きたかった人間なんですよ。すでに先達の作られたメカ+少女方法論はあったのだけど、そこから変わったものを描きたいってなったときに、メカニックをアーマーみたいに纏うだけじゃなくて、衣装として解釈したりするようになったんですよね。
鳥山とりを(以下、鳥山)氏:
島田さんが凄いのは、そのメカニックを衣装として解釈できるところだと思っていまして。昔、島田さんのイラストをフィギュア化した『メカ娘』【※】が出たじゃないですか。
最初に島田さんを知らないでイラストを見たとき、「ああ、こんな風に機能を分解して再構成するんだ、この人は」って思ったんですよ。それまではいわゆる“ポン付け”──パーツをそのまま着けたデザインが多かったので驚きましたね。
島田氏:
そういう意味では、『フレームアームズ・ガール』はストレートにロボットのデザインをそのままアーマーとして着せているので、方法論としては先祖返りしているんですよね。
──それはロボットっていう原型があるからこそなんでしょうか。
島田氏:
そうですね。だいたいのロボットアニメに出てくるロボットは人型なので、人間に対応させやすいんですよ。これが戦車や艦船、飛行機になってくると「どうすんねん?」って話になりますが。
鳥山氏:
そこはやっぱり、島田さんはすげえなあって思っていて。いまだに、兵器の解釈とか、要素を分解してっていうデザインの仕方は、島田さんはすごい。第一人者と言っていいかなと思いますけどね。
──同じ質問を皆さんにもさせていただきたいんですが、鳥山さんはいかがでしょうか。
鳥山氏:
僕はすでに公言していますけど、ホビージャパンの読者投稿欄ですね。あそこで女の子が戦車を着ましたとか、パワードスーツを着ましたっていう文化を、中学生ぐらいの頃に見て、「おおう!」って衝撃を受けたんです。その頃からプラモ大好きでそのまま来ちゃってますね。
柳瀬敬之(以下、柳瀬)氏:
俺は『タイムボカン』シリーズから始まって、『ガンダム』に入って、「コミックボンボン」にいって、ズルズルっとそのまま来ちゃっている(笑)。「ニュータイプ」で『ファイブスター物語』【※】も始まっちゃって、そこからもう抜けられなくなって。
野内秀彦(以下、野内)氏:
メカはわかりやすいですよね。そこに女の子を乗せようとしたのは何がきっかけでした?
柳瀬氏:
俺の場合はサイバーコミックスを目指していた人間なので、メカと女の子っていうか、漫画でメカを描くっていうのがまずありまして。メカデザイナーが漫画も描くっていう時代があったんですよ。出渕裕さんだったり、永野護さんだったり。それで「メカデザイナーって大河原邦男さん以外は漫画も描けないといけないんだ!?」って思って。
一同:
(笑)。
※サイバーコミックス
バンダイ発行のロボットアニメ専門のアンソロジーコミック集。
柳瀬氏:
だから両方描いていたんですけど、途中からキャラはそんなに上手くないなって自分でもわかってしまいまして。それでメカばっかり描く仕事をしようと思って、フロム・ソフトウェアに入ったんです。ところが、その後に引き受けた『武装神姫』のときに「メカもキャラもお願いします」って言われたので……。
鳥山氏:
ああ、そうそう。
柳瀬氏:
(手前にある火器型MMS ゼルノグラードを指しながら)これが、はじめてのキャラデザインですよね。厳密に言うと「砲台型MMS フォートブラッグ」が最初なのでふたり目ですけど、それまではキャラクターデザインでお金をもらったことがなかったんですよ。
ただ……正直言うと、フォーマットは島田さんのデザインがあったわけですよ。その上で「柳瀬さんには戦車系、ミリタリー寄りをお願いします」という発注だったので、いかに少女にカッコいいメカを着けるかっていうことに重点を置いてデザインしたんですが、それでも自分で考えたっていう感覚が今のところなくて。
ですので、ことメカ少女を描くことになった原体験という意味では、「発注があったから」ということになりますね。
※火器型MMS ゼルノグラード
2008年4月5日に発売されたアクションフィギュア『武装神姫』シリーズ第8弾の神姫で、愛称は「ぜるのん」、「ゼルっち」など。PSP版『武装神姫バトルマスターズ』にも登場し、声優は白石涼子が担当した。
※砲台型MMS フォートブラッグ
同じく柳瀬敬之氏デザインである「砲台型MMS フォートブラッグ」は2007年2月22日にEXウェポンセット(カスタマイズ用の追加パーツセット)として発売されている。
──海老川さんは、いかがでしょうか?
柳瀬氏:
海老川さんは、自分発信でメカ少女を描こうって思ったことがあんまりないんじゃないかな?
海老川兼武(以下、海老川)氏:
あんまりっていうか、ゼロでしたね。まず、可愛い女の子を描くっていう作業に対しての欲求がなかったんです。だって、そういうのは島田さんの様な上手い人が描いてくれるから、それを僕は、受け手としていればいいやって思っていました(笑)。そういう意味で『アリスギア』の仕事は、とても新鮮で楽しい作業でしたね。
いま皆さんの原体験のお話を伺ってふと思ったのですが、今の世代の人たちは、はじめからメカだけでなく、メカ少女を描きたいと思うものなんでしょうか。
島田氏:
今10代の人とかだったら、最初からこういうジャンルで描きたいって人もいるかもしれないね。
僕らの子供の頃はまだ、ロボットアニメの主人公が女の子なんていうのは、なかった時代だし。……でも、だからこそ、メカと美少女の組み合わせというのは、遊びとして面白くなったのかもしれないですよね。
一同:
ああー。
鳥山氏:
昔のアニメは基本的に主人公が男でしたし、メカも男性的でガッシリとしたものだったので、その機械の男の部分を、女の子に変えて、「イェーイ!」ってやった遊びが、もしかしたら発祥なのかもしれないですね。
柳瀬氏:
っていうか、「描きたいものの上位ふたつがそうだった」って話なのかもしれない。たまたま女の子が描きたくて、メカも描きたいっていう。じゃあ一緒に描くぞって。
ガチになればなるほど“キモく”なっていく
──話を伺っていると、メカ少女というジャンルはオタク文化の中でも特殊というか、島田さんが言われたように、変わったものだったんだなと。
島田氏:
“半裸の女の子がメカをくっつけている”って、正直気持ち悪いじゃないですか。そりゃ僕らは大好きですけどね?
──その“気持ち悪い”っていう感覚が、近年は薄まってきているんじゃないかと思っていまして。
鳥山氏:
そうなんですよ! それがほかの人たちも同様なのかは客観的に見てみたいですね。
島田氏:
それで言うと、要因のひとつは『艦これ』さんじゃないかなと。重要なのは、“メカ少女ジャンルの文脈で売れたわけじゃない”ということで、ビジュアルの立て方がメカ少女とは違うじゃないですか。例えば、ずっとこの手のジャンルをやっていた人間が『艦これ』さんをはじめて見たとき、「デザインがそのまんま過ぎる」だとか「艤装を外したら普通の女の子だよね」って思ったはずなんですよ。
でもだからこそ、入りやすいし描きやすい。何なら、別にメカを丸ごと外せるわけじゃないですか。
そうしたら普通のセーラー服を着た女の子ですよ。メカが苦手な人でも抵抗なく描ける。
これを狙ってやったかどうかはわかりませんが、流行るにはそういう“ゆるい部分”が必要であり、それで跳ねた結果、“気持ち悪い”という感覚が薄くなったと。
──なるほどなるほど。
島田氏:
一方のメカ少女は、よくも悪くもガチ。そしてガチになればなるほどニッチになって、結果キモくなると。でもそのキモさを正面から見つめたときに、「これがカッコいいんだ」とか「これがオシャレなんだ」って嘘をついちゃうんですよ。
──嘘……ですか。メカ少女には燃え要素も、スタイリッシュな要素もあると思いますが。
島田氏:
いやいや、嘘ですよ。もちろんカッコイイと思いますし、オシャレにしたいと全く思っていないわけじゃないんです。でも結局、突き詰めたら「自分は半裸の女の子がメカをまとって戦うのが好きです!」ってことなんですよ。それは、傍から冷静に見たらキモいでしょ? これはもう、どう言い訳してもキモいことなんですよ。
でもキモくていいじゃないかと! 好きなものにウソなんてつけねーじゃん! ましてや「じゃあ、これを嫌いになります」なんて絶対言えねえじゃん! だってもうそういう性癖なんだもん。
「たまにはエッチなものを描きてえ!」ってなるもん。むしろそれを隠しては生きられない──と、自分に言い聞かせています(笑)。
一同:
(爆笑)
島田氏:
だから、いい歳こいてアニメにハマっているくせに「俺、硬派でございます」って言っているほうが厄介なんですよ! 「硬派ですから」みたいな言い訳はしないで!
一同:
(笑)。
島田氏:
キモいものを「キモいけど好き!」って言える人でありたいですね。
柏木准一(以下、柏木)氏:
あの、だいぶヒートアップしていますけど、島田さんが言う「キモい」は優しさなので、そこはお察しいただけると(笑)。
島田氏:
これはもう僕の持論なんですけど、メカ少女ってジャンルの中でやろうとすると、すごくオシャレでカッコいいものばっかり描こうとしちゃうんですよね。「俺たちは最先端を走っているんだ」みたいな、ちょっといけ好かねえ感じの(笑)。
一同:
(笑)。
島田氏:
自分も描いていて、オシャレでカッコいいものが描けたらいいなと思うんですけど、半裸のレオタード着た女の子にメカを着せて、それで「オシャレです。最先端です」と言いはるのって、無理があるんですよ! 「結局、女の子のパンツだよね」みたいな話になってくる。
だからそんな小洒落たものではなく、言ってしまえば子どもっぽいような、「可愛い女の子とカッコいいメカをくっついたらカッコいいじゃん?」みたいな気持ちでいいと思っていまして。
──そうですね。子どもの頃の模型いじりやお絵かきの延長線上のような、純粋な欲求なのかもしれません。
島田氏:
なんて言っていますけど、実は描いている側からしてみれば照れみたいなものがあって。でも『アリスギア』ではシナリオのバカさ加減みたいなところで、それをうまく拾ってくれているというか、救われているところがあるんですよね。
柏木氏:
照れというのはその通りで、好きなはずなのに邪魔しちゃうというか、正直になれないところがあると思うんですよね。それが結果的に、島田さんが言う「嘘をつくことになる」ということなのかなと。
わかりやすいところで言うと、子どものころに親御さんがいる前で『うる星やつら』とか『ダーティーペア』を見れましたか? っていうことです。
鳥山氏:
ああ、見づらかったですよ。
海老川氏:
うちは『キャッツアイ』で視聴禁止でした(笑)。
柳瀬氏:
キビシーな、それ!
柏木氏:
そういう家庭で育ってきちゃった人だと、やはり照れが勝ってしまう。でも『アリスギア』ではそこを逆手にとって、大人が楽しんで遊べるようなゲーム内容にしたんです。
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詳しい応募方法は電ファミニコゲーマー公式Twitter(@denfaminicogame)をチェック!『アリスギア』メカ少女座談会を記念して
— 電ファミニコゲーマー (@denfaminicogame) November 13, 2018
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デザイナー島田フミカネも参加している座談会はこちら↓↓https://t.co/M82fKOTDmL pic.twitter.com/tSgkM353ch