ディープなオタクとしての田浦氏
──ちょっとここからはガラッと話を変えて、田浦さんご自身についてちょっとお聞きしていければと思います。ちなみにヨコオさんが1970年生まれ、田浦さんが1985年生まれとのことですが、田浦さんの世代的に初めてプレイしたゲームはファミコンでしょうか?
田浦氏:
物心ついたころには家にファミコンがありましたね。父親が買ったもので、すでにソフトがだいぶ世に出ていた時期だったと思います。初めてやったゲームはたぶん『マリオ』とか『ツインビー』で、印象に残ってるのは『ボンバーキング』、『未来戦史(フューチャーウォーズ)ライオス』、『桃太郎伝説』あたりですかね。父親の好みで買ったものをずっと遊んでいたという感じですね。
──お父さん、わりと手あたり次第に買うタイプなんですね。
田浦氏:
そうなんです。スーパーファミコンが出たとき、僕は『マリオ』がやりたかったのに、父親はなぜか『パイロットウイングス』を買ってきてましたね。
一同:
渋っ!
ヨコオ氏:
そういえば田浦さんと話をしていると、ゲームの原体験がわりとレトロゲームに寄っていて、僕の世代と近いなと感じていたのですが、お父さんが元凶だったんですね。
──ちなみに一通りプレイされてきた中で、好きなゲームを3本くらい挙げるとするなら?
田浦氏:
迷わず一番に挙げられるのは『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』ですね。単純にドット絵と横スクロールが好きなのと、ダークな雰囲気が好きなんです。そしてちょっとずつルートを広げていくゲーム性や、ボスを倒したと思ったらステージがぐるっと逆回転するような、ゲームデザインの仕方に、衝撃を受けました。
──やっぱり五十嵐孝司さんの、あのシビアな感じがお好きなんですね?
田浦氏:
そうですね。
あと、『ヴァルキリープロファイル』もドット絵で横スクロール、かつダークな雰囲気なので好きですね。そして人格を作ったという意味では、『サクラ大戦』の影響はめちゃくちゃ大きかったですね。
ヨコオ氏:
お……ここから田浦さんのイケメンオタクぶりが披露されるわけですね!
──突然ぶっこまれましたね(笑)。
田浦氏:
それまでにも恋愛要素のあるアドベンチャーというジャンルはやっていたのですが、もう一発でさくらに惚れてしまいまして……。
僕は当時、親戚のおじさんから譲り受けたセガサターンのゲームをやりまくっていたんですが、それで『サクラ大戦』シリーズと出会って、まじで「さくらと結婚する」と思っていたくらいで(笑)。当時は自分の中では大正浪漫の世界で完全に帝国華撃団の一員になりきっていましたね。
──なかなかに香ばしいエピソードが(笑)。
ヨコオ氏:
無駄に青春を消費していたわけですね……無駄っていったらあれだけど。
田浦氏:
いや、無駄だったような気もします。
一同:
(爆笑)。
田浦氏:
ただ、ずっとさくらが心の中に居ながらも、実は今に至るまで一番の嫁は『機動戦艦ナデシコ』のルリルリでして。
ヨコオ氏:
……もうおわかりだと思うんですけど、がっつりオタクなんですよこの人(笑)。
田浦氏:
『機動戦艦ナデシコ』は思い入れが深くて、セガサターンで出たシミュレーションゲームも全部買ってやっていましたし、『YOU GET TO BURNING』は今でもカラオケで歌いますね。
当時は中学生でしたが、やっぱりお金がない上に、奈良の田舎の方に住んでいたので近くにアニメイトなどもありませんでした。だから、大人になってからルリルリのフィギュアなどをオークションで買い漁ったりしていると、「手に入れられなかったものを俺はついに手に入れた!」みたいな感慨がすごいですね。
ヨコオ氏:
田浦さんって、今でもそんな感じでオタク活動を続けてるんですけど、大阪の日本橋でフィギュアを抱えて歩いてると、ホストクラブに勧誘されるんですよね。中身に反して見た目だけイケメンになってしまったせいで。
田浦氏:
いや、萌えフィギュアを買ってすごいホクホクした気持ちで歩いているところを、「君、ホストクラブで働かない?」とかいきなり話しかけられるんですよ。「いや、自分そっち側じゃないんですけど……」って内心いつも思ってます(笑)。
──(笑)。いわゆる二次元以外のカルチャーの方はどうなんでしょう?
田浦氏:
音楽も映画も全部好きですね。特に音楽は好きで、昔ちょっとバンド組んでいたりもしました。
ヨコオ氏:
これがまた、一番モテるポジションのベースですよ。
田浦氏:
本当に少しの期間のお遊び程度でしたけどね。ベースは色々楽器を触ってみてそれが一番楽しかったんです。
ヨコオ氏:
出た! これが「ナチュラルボーンイケメン」というやつですよ。「楽器は全部できるけど、他の人がやれないベースを俺がやってやるか」なんてノリで、女を抱いてきたわけですか。
田浦氏:
そういうのは結局なかったんですって。
ヨコオ氏:
そんな寝言を信じるほどみんなピュアじゃないですよ……(怒)。
ゲームクリエイターの世代論
──田浦さんの人柄も伺えたところで(笑)、ちょっとこの連載のテーマでもあるのですが、ゲーム業界における世代ごとの違いについてお聞きできればと思います。
ヨコオ氏:
それで言うと、一緒に仕事をしていて特徴的だなと思うのが、田浦さんってアートやシナリオの深いところに入ってこようとしないんですよね。わりと人に任せちゃう感じがあって。
田浦氏:
そうですね。ヨコオさんは皆さんご存知の通り、シナリオをちゃんと考えて、世界観を広げて、特徴的な綺麗な風景などのアートワークも事細かく指示される方なんです。
でも、僕はどちらかというと、ゲームのシステムや、どんな動きするのか、みたいなところに興味があって。見るところ聞くところよりも、触って動かすところのほうを主体に考えたりするタイプなんですね。
ヨコオ氏:
わりと昔からのオタクで、かなり大量にコンテンツを消費しているにもかかわらず、やりたいことはアクションというのが、すごく面白いですよね。
──ヨコオさんが出ていた座談会で、「僕らの世代はこういうストーリーを作りたいとか、こういう世界観を世に出したいとかがすごい強烈にあるけど、下の世代にそれがなさそう」みたいな話がありましたね。
ヨコオ氏:
あと、世代の差として感じるのはやはり「まともになってきた」ということですね。
僕らの上の世代はもっとめちゃくちゃだった人たちが多くて、ゲーム業界やアニメ業界で名を馳せてる人って、本当に狂人ばっかりでした。唯一、堀井雄二さんくらいがまともで、他はたぶんみんな頭がおかしいと僕は思っています(笑)。
例えば、僕らの上の世代の人って、愛人とかを囲っている人も多くて。なんか、そういうバブルな感じというか、夢がある感じはもうなくなっちゃったんですよね。
──ヨコオさんの世代でももう全然ない感じですか。
ヨコオ氏:
僕の世代では聞いたことはないですね。やっぱり経営のレイヤーに食い込まないと、無茶なお金の使い方もできないんだろうなと思います。それも、齊藤さんみたいな会社員のプロデューサーとかではなくて、小規模な会社で経営にまで食い込んでいるプロデューサーとかだと、もうやりたい放題ですよね。
で、その反動からか、僕とか外山圭一郎さんとか上田文人さんとか、僕らの世代は少し社会の様子を伺うようになったんですよ。とはいえ神谷さん、山中雅貴さんあたりは、やっぱりどっかネジが外れているところがある気がしますが。
そして田浦さんくらいの世代までいくと、物心ついてからの青春時代にインターネットとか携帯電話の文明があって、社会に晒されるという恐怖をあらかじめ学んじゃっているなと思っていて。
結果として、さらにあんまり無茶苦茶なことをする人が出てこなくなったというのが僕の印象ですね。
──それについて、田浦さんはどう思っていますか?
田浦氏:
当たり前ですが、僕はそれ以前の世界とかは全然知らないわけです。そういう文明の利器がなかった人たちが工夫して考えたりしていたであろう部分を、簡単に手に入れられる環境があって、そこでの考え方の違いはあるのかなあとは思いますね。自分では、よくわからないですけど。
ただ、確かに人としてぶっとんでる人たちが上の世代の人たちにたくさんいるわりに、自分と同じくらいとか自分の下を見たときに、そういう人たちって本当にいないのは間違いなくて。そう考えると、環境が原因なのかなという気はしています。
「組織づくり」ディレクターの時代
──そこに対して問題視するみたいな感覚はあります?
田浦氏:
僕個人としては、実は強くあります。周りはわからないですが、その場の空気とか関係なく、「これが正しい」と思うことをビシッと言える人たちがやっぱり上の世代には揃っているなと感じていて。
僕とかは、結構考えちゃうタイプなんですよ。「今ここで言うべきことじゃないな」とか、「ストレートに言い過ぎるとよくないから遠まわしに言おう」とか。
ヨコオ氏:
僕はすぐ「このプロジェクトに対してやる気ある?」とか言っちゃうタイプですけど、田浦さんは絶対に言わないんです。僕はちょっと前までは、そういう乱暴でも強引なところがないと、ゲームディレクターをやるのは厳しんじゃないかと思っていたんですよね。
でも、世代的に田浦さんのような協調性がある人が回していく新しいディレクター像というのが生まれてくるんだろうなと最近は考えを改めました。
それで言うと、田浦さんって、ここまでお話ししたようにアクションが得意で頑張っている方ですが、実は僕が最も評価しているのは、こう見えて社内政治をすごく上手にやるところなんですよ。
──社内政治、ですか。
ヨコオ氏:
たとえば、「チームにこういう人が必要だけど連れて来れない」みたいなことって、ゲーム会社ではよくあるんですね。そんなときに田浦さんは、影で暗躍して、重要な人をパッと取ってきちゃうんですよ。僕は最初にそれを見たときに、「あ、ものすごい優秀なディレクターなんだな」と思って。
細かい部分でゲームを作るということは、こだわりのある人だったらできると思うんですけれど、そういう社内政治や人間関係をうまくやれるディレクターって、案外少なかったりするんですよ。
田浦氏:
「社内政治」と言うと言葉が悪い感じじゃないですか(笑)。
実際、怖いことはしていなくて、このプロジェクトに合うなと思った人にちょっと声をかけていた、くらいのことです。権限があるわけでもないですから、訴えかけることが精いっぱいです。
ヨコオ氏:
しかも、そういうことをする人って、田浦組みたいなものを作るみたいな「お山の大将」になりたかったり、実際なれる人だと思うんです。でも、田浦さんって、いざその目的を達成したら、その人たちをホールドしないし、執着しない。そこが珍しいタイプなんですよね。本当に必要に応じてしかそういう暗躍をやらないんですよ。
田浦氏:
だって、本当はそういうこと、別にやりたくもないんですよ。できれば何も考えずにただただゲームを作るだけの立場でいたいんです。
でも、ゲームを作るにはやっぱり人が必要で、しかも人によっては、得意不得意や好き嫌いがあるわけなので、そこが上手くハマっていないときに、何とかしないと……と思うって動くだけです。
──ちなみに、企画のどの段階くらいから田浦さんは動き出していたのでしょうか?
ヨコオ氏:
まだスクエニさんから予算の承認が下りてなかったときからですね。だから、会社的には正式には人材確保ができない状態だったはずです。
田浦氏:
まあ当然、最初の方に動いておかないと、「明日から来てくれ」と言われてもその人にはその人のプロジェクトがあるわけですからね。
──「できる人」の発言ですね……。そして冒頭の話に戻ると、社内政治や組織づくりをしたあとに、マイスターになっていくわけですね。
ヨコオ氏:
僕らの上の世代は「全体を見てますよ」というプロデューサーみたいな人がいて、僕らの世代くらいの人は「世界観」云々について言う人が多かった。
で、きっと田浦さんの世代は、もうちょっと細分化されたプロフェッショナルたちが、それぞれ頑張ってその組み合わせで勝負するような世代なのかなと思うんです。
統合したひとりの人格というよりは、それが集合した結果、何かが生まれてくかもしれない。ゲームの規模も大きくなっているので、少なくともコンシューマの世界では、ひとりで全部やる時代はもう終わってくなと。
──『ゼルダ』の青沼さんにインタビューをしたとき、全体を見渡せないから、だから300人でプレイする必要があったという話をされていて。それは、現場が個々の問題を自立して解決できるためというニュアンスだったんですよ。
まず2Dゲームで開発、社員300人で1週間遊ぶ!? 新作ゼルダ、任天堂の驚愕の開発手法に迫る。「時オカ」企画書も公開! 【ゲームの企画書:任天堂・青沼英二×スクエニ・藤澤仁】
田浦氏:
そうすると、いかに自分の周辺に信頼が置ける人を集められるかとか、そういうスキルのほうが重要なんじゃないかなあとは思いますね。
──つまり「組織づくり」がうまい人がディレクターになってくのかもしれませんね。ちなみに、田浦さんから上の世代をどう見ているんですか?
田浦氏:
「層が厚い」というイメージですね。突き破れない壁が立ちはだかっているな、と。本当に若いときから第一線で活躍して、未だに第一線みたいな人たちが上の世代に揃っているんですよね。
やっぱり今って、ゲームを作るのにお金も人もすごくかかるので、僕らみたいなポッと出の若者がいきなりディレクターをやったりするのは会社としてもリスクがあると思うんです。
そんなときに、これまで実績を積み重ねてきた人たちに任せてしまうのが最も安心感がありますし、お金を出す側の人たちもまた上の世代と同じ年齢だったりするんですよね。するともう、僕ら側からつけ入る隙がないなと。
──その辺、ヨコオさんはどう思っているのでしょう?
ヨコオ氏:
その意味では、僕は30歳の頃に初めて『ドラッグオンドラグーン』でディレクションをしたんですが、20代の頃は悶々としながら生きてきたタイプなんですよね。だから「上の人が邪魔だな、早く消えていなくなればいいのに」と呪っていました。
そんな感じだったから、自分がディレクターになったらなったで、ゲーム業界の片隅で若い人の邪魔にならないように、静かに余生を過ごしたいという気持ちにしかならない(笑)。
田浦氏:
うーん、個人的には「どいてくれ」という気持ちと「この人の作る次の作品が見たい」という気持ちの半々なので、複雑な心境ですけれども……。
ヨコオ氏:
でもそこはぶっちゃけ話として、僕は田浦さんに聞きたいな。自分で言うのもナンですが、「ヨコオ」という名前はカラーとして強いと思うんですよ。
単純に20年もゲームを作っているし、変化球のようなゲームを作ってきたので、近くにいるだけで「変化球のヨコオ」の毒の余波が、田浦さんにも回ってしまっている気がするんです。
で、僕はそれをやめたいんです。ここから離れていくのが一番簡単な答えだと思うのですが、とはいえある程度は亡霊のように比較され続けられてしまうと思うんですよね。
田浦氏:
でもそれは、しょうがないですよね。なにもヨコオさんだけじゃなくて、うちの会社には神谷さんというネームバリューの高い人もいるわけです。『ニーア』でさえ、発売直後に神谷さんのところに「ゲーム面白かったです」とTwitterのリプライがついたりするんですよ。
むしろ、結構ヨコオさんや神谷さんが、最近、下の人たちを気にかけているのを感じていまして。それって、めちゃくちゃ嬉しいしありがたいのですが、それはそれで、逆に引っ張ってくれる優しさに甘えてしまいそうだなという怖さもあるんです。
ヨコオ氏:
まあだから僕は、たとえばこの記事をユーザーさんに読んでもらうことで、田浦さんの価値を正しく認知してもらうことが結構大事だなと思っているんですけどね。
田浦氏が将来作りたいのは子供向けゲーム?
ヨコオ氏:
田浦さんとしては、今後「こういうふうに見られたい」みたいなイメージはありますか?
田浦氏:
ヨコオさんって、やっぱりシナリオの人として一番認識されているじゃないですか。それが僕にとってはアクションで、「田浦の手がけたアクションゲームが出るなら、買う」と期待してくださる方が、少しでもいてくれたらいいなと思っていますね。
ヨコオ氏:
それはそれで面白いよね。アクションマイスターとしてのキャラを売っていくのはアリかもしれない。
……ただそれとは別に、純粋な興味として、田浦さんの好きな世界観であったり、田浦さんの書いたシナリオだったりを見てみたいという気持ちもありますが、そこら辺はどうなんですか ?
──そこは気になるところですね。冒頭で「ディレクターをやるならゼロイチで」みたいなことを仰ってましたけれども。
田浦氏:
やっぱり作りたいのはアクションゲームですね。試してみたいネタはいくつかあるので、それは引き続きやっていきたいですね。
ただ、あえてその他の要素を挙げるとするなら……実は前から作ってみたいゲームのイメージはあるんです。それは、子どもたちに人気が出るような、優しい世界のゲームなんです。
というのも年代的に、僕の仲良かった友だちがみんな家庭を持って子どももいたりして。たまに家に遊びに行ったときに、子どもの世話をしてあげたり一緒に遊んだりとかするんですよ。
でも、僕が関わったゲームをやるには年齢的にまだ早いわけです。ここで『ポケモン』や『妖怪ウォッチ』のような子どもたちに響くゲームを作っていたら、めちゃくちゃヒーローになれるなと。
ヨコオ氏:
友達の家に行ったときに、その家の子供に褒められたい……そんな理由!?
しかも、ちなみにその企画を今から準備しているようじゃ、出来上がるころには子どもたちはもう大きくなっていて、その夢はもう叶わない、という。
田浦氏:
でも、もしいつか自分の子どもが生まれたときに、「お父さんこれ作ってるんだよ」と堂々と言えるゲームが一本くらいあったらいいなと思うんです。
──『ニーア』では言えないのでしょうか?
田浦氏:
『ニーア』はむしろ見つからないように隠します。小さい子でも知っているとなると、『どうぶつの森』もそうですが、やはり任天堂さんは強いよなあと思います。
──するとアクションができる『どうぶつの森』とか……。
田浦氏:
いいですね、村人をなぎ倒して家を蹂躙していくみたいなね。
ヨコオ氏:
プラチナゲームズがお送りする次回作、『やじゅうの森』。わりとやってみたいな(笑)。
田浦氏:
すぐそういう発想になっていくから、一生子ども向けゲームなんて作れないんだろうなあと思いますが(笑)。でもいつか作れたらいいなと思っています。
──その日を心待ちにしています。今日はありがとうございました!(了)
さて、今回の「新世代に訊く」、いかがだったろうか?
取材内容を振り返って改めて思い返されるのは、田浦氏に対してヨコオ氏が寄せる信頼感のようなものである。
取材中にお互いにお互いをいじり合う様子、そして言葉の端々から、二人の関係性の中に深い信頼感があることが伝わってきた。『ニーア』に関してあのヨコオ氏が「田浦さんじゃなきゃ作れなかった」と言ったのは、きっと本心からの言葉だったのだろう。
その信頼感の源泉のひとつ──田浦氏がいい意味で「社内政治」を丁寧に行うということは、クリエイターへのインタビューの話題としては少々意外なものであったように思う。
大規模開発化が進み、関係者の数も多い現代のコンシューマーゲーム開発において、まずなによりも「チームを作れる」ということがディレクターの必須科目になっているのだろう(ご本人は苦い顔をされていたが……)。
そうしたチームづくりの役割果たした上に、「アクションマイスター」という個性を乗せ、今現在も勝負をし続けている田浦氏の今後の動向に目が離せない。現在、初のディレクター作品として手がけている『ASTRAL CHAIN』の今夏の発売が楽しみでならない。
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