古今東西のロールプレイングゲームで達成可能なひとつの戦闘における最大合計ヒットコンボ数はいくつだろうか? それも卓上の推論ではなく、“実際に実機で”ゲームをプレイして叩き出した記録を条件とするなら──。
そんな疑問に対するひとつの回答が、2020年1月10日に『グランディア エクストリーム』で達成された「499999995hits」(4億9999万9995ヒット)である。
2020年1月10日にニコニコ動画に投稿された「RPG史上最大Hit数(真・完結編)」では、12年間にわたる研究のすえに編み出した戦略と、実に156日間という5ヶ月強にもおよぶ挑戦が紹介された。5体の敵に与えられたヒット数はそれぞれ「99999999hits」(9999万9999ヒット)、合計すると前述した499999995hitsとなる。
当然、実機での挑戦である。戦闘を中断しないためPlayStation 2を起動し続けることになり、途中セーブでの終了も許されない環境下だ。およそ3744時間、224640分、13478400秒ものあいだ、ひとつのRPGのひとつの戦闘でひとつのコンボが途切れずに続いたこととなる。
その偉業は上記の動画から確認できるが、このチャレンジを成し遂げたのは数字への執着なのか、はたまたゲームを攻略することへの愉悦のせいなのか。
もはや狂気的ではなく、明白かつ確実に実践者の狂気を感じる記録を樹立するまでの経緯を、同挑戦を達成されたありのすさんにお聞きした。
文・取材/Nobuhiko Nakanishi
編集・取材/ishigenn
12年前は6万ヒットで終わりだと思っていた
※この記事では、ゲーム内の数値はゲーム内の表記に従って記載しています。
──よろしくお願いします。まず、なんで『グランディアエクストリーム』でここまでやり込もうと考えたんですか?
ありのすさん:
もともとファミリーコンピュータ世代のRPG好きで、『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』、『ウィザードリィ』をプレイしていて、大学生になったころ『グランディア』が好きになりました。それまでアイテムコンプリートとか、やり込みもやってたんですね。
──次に『グランディア2』をプレイしたという流れでしょうか?
ありのすさん:
いえ、実は当時はドリームキャストを持っていなかったので、PlayStation 2で出た『グランディアエクストリーム』【※】を先にプレイしたんですね。
でも、泣けるほどストーリーがよかった『グランディア』とはちょっと違うなという印象で、その直後にPlayStation 2で発売された『グランディア2』の方がシリーズの続編っぽいなと思いました。戦闘はかなり面白いんですけどね。
※『グランディアエクストリーム』:
2002年1月31日、『グランディア』と『グランディア2』に続き発売されたゲームアーツ開発のRPG。対象プラットフォームはPlayStation 2。自由度が高く完成された戦闘システムと、やり込み要素の高さが現在では非常に高い評価を受けている。一方で発売当初は、それまでの『グランディア』シリーズで高く評価されたシナリオや世界観が過去作と比較され、評価が割れた。ありのす氏は動画で「クソゲーと評されワゴンセールの常連という憂き目に遭った」とも解説している。
──ちょっと違うな、という印象だったんですね。
ありのすさん:
ええ、でも、たまたまファミ通さんが出された「グランディア エクストリーム パーフェクトガイド」という分厚い攻略本に出会いまして、千種類以上のアイテムがあることを知ったんです。「こんなにアイテムがあるなら集めてみようかな?」というのが始まりでした。
それでまずアイテムコンプリートを達成したあと、パラメーターを鍛えるやり込みにシフトしていって、「裏ボスを最弱の魔法で倒す」というプレイをしていました。このゲームって鍛えれば鍛えるほど強くなるんですよね。
そうこうしているうちに、2006年ごろに「このゲームの最大ダメージはどれくらいなんだろう?」と思い始めて、そのときに「99999999」(9999万9999)までダメージが出るのを確認したんです。
それで一度落ち着いたんですけど、そのあとにふと「じゃあヒット数の最大は?」と思ってしまったんですね。2008年くらいですかね。「ならそっちも頑張ってみようかな」と。
──次々とやり込み対象が生まれたわけですね。アイテムコンプリートもなかなかの難度だと思いますが……。
ありのすさん:
ただ、最初は最大コンボは「65535hits」(6万5535ヒット)だと思っていたんですよ。
──なるほど、そこがカンスト(カウンターストップ)だと思っていた。
ありのすさん:
そうです、そうです。ただ、65535hitsを超えても止まらないので、「じゃあ99999hits(9万9999ヒット)かな?」と思って挑戦を続ける。
──貪欲です。
ありのすさん:
そこまで頑張ってみようかな……と思っていたら、99999hitsを超えて「100000hits」(10万ヒット)が見えちゃった。ならスキルポイントの最大値も「999999」(99万9999)だし、間違いなくカンストも999999hitsだろうと。
そこで「不死系の敵を回復しながらコンボを繋ぐという方法」を使って、999999hitsを目指したんです。そしたら、まさかの「1000000hits」(100万ヒット)を超えてしまい、「あれ?」と。
■「RPG史上最大コンボ数への挑戦(retry)」の動画内で公開された情報
・挑戦日:2009年3月13日(金)~3月31日(火)
・挑戦時間:約140時間
・PS2連続稼働時間:約431時間
・最大コンボ数:1000222hits
・コンボボーナス:3000630%(シャキア発動時)
・とどめのダメージ:約12億ダメージ
・種稼ぎに要した時間:ブランドル 約7ヶ月弱、ティト 約1ヶ月弱
・この挑戦に至るまでに費やした時間:計測不能
・UP主のスキルセットアップ:折れぬ心
──まさかの1000000hits超え。
ありのすさん:
そこで一度やめたんですよ。そのときはまだ手でマニュアルプレイしていて、19日間かかりました。仕事行ってるときと寝てるときは止めておいて、帰ってきてプレイして、寝るときに止める。
──家に帰るとお風呂に入ってるとき以外は『グランディア エクストリーム』をずっとやっていたと……。
ありのすさん:
そうですね。PlayStation 2的にも、19日も連続稼働させたら限界に近いだろうなと当時は考えていました。
──逆に19日もPS2が連続稼働できるというのが驚きですね。
開発者が狂気の挑戦で起きたバグにコメント
ありのすさん:
そのあと、『グランディア エクストリーム』の発売10周年記念にPlayStation 2の限界までやろうという挑戦をしたんですけど、そのときは「1002203hits」(100万2203ヒット)で途切れてしまったんですよ。
──1002203hits。本体が壊れたんですか?
ありのすさん:
実はそうではなくて、ゲーム内のバグでコンボが途切れちゃったんですよ。で、この挑戦も今回で終わりかなと思っていた。
【※】10周年と意気込んで始まった挑戦は2012年にスタート。約3年ぶりの挑戦だったが、前回からわずか約2000のコンボ数を更新するにとどまった。
──でも続くんですよね。
ありのすさん:
そうなんですよ。なんと、実はそのころ自分のホームページに『グランディアエクストリーム』の開発者の方が来て、そのバグについて書き込みをしてくれて。
プログラミングを担当していたという方が、「このバグはこういうことじゃないか?」と。それがものすごく嬉しくて、そんなコメントいただいちゃったら、カンスト目指して頑張らざるをえないですよね。
──そんな動機もあって、ここから真のカンストを目指す挑戦が始まるわけですね。
ありのすさん:
挑戦するやり方も変えて、それまではパラメーターを最高値まで上げて挑戦していたんですけど、そこからはむしろ下げる方向での挑戦になりました。
いろいろ研究が進んだところ、障害となっていた「ご乱心」というバグは、能力値が高いと発生するということが分かったんですね。それで「3333334hit」(333万3334ヒット)までは到達できました。
──3333334hitsで止まったんですか?
■「RPG史上最大コンボ数(3333714Hits)」の動画内で公開された情報
・挑戦日:2012年5月26日~2012年6月5日
・挑戦時間:約263時間
・セーブデータ時間:163時間50分
・最大コンボ数:3333714hits
・コンボボーナス記録:+10001142%
・神武竜陣剣のダメージ:99999999
ありのすさん:
いえ、そのときは3333334hitsで“止めた”んです。このゲームは仕様としてコンボヒットボーナスという値が表示されるんですけど、それはヒット数の3倍なんですね。それが3333334hits時に10000000(1000万)を超えたので。もうその時点でコンボが10000000hits(1000万ヒット)を超えるのが確認できたわけです。
──8桁目(1000万)があることを確認した。そして一回止めた、と。
ありのすさん:
それで次に行こうかということで、その10000000hitsを目指したんですね。そうこうして10000000hitsを記録したのが、2012年くらいでした。
■「RPG史上最大コンボ数(1000万Hits越え?!)」の動画内で公開された情報
・挑戦日:2012年11月19日~2012年12月7日
・挑戦時間:約435時間
・セーブデータ時間:302時間45分
・最大コンボ記録数:10000421hits
・コンボボーナス記録:+30001263%
・天魔竜陣剣のダメージ:99999999
──それはどれくらいの期間で達成したんですか?
ありのすさん:
それも19日くらいですね。2012年になると効率化も相当進んでいて、たとえばこのゲームって攻撃と攻撃のあいだに待機時間というものがあるんですね。でも、その待機時間は戦闘開始時のパラメーターを基準に設定されるので、戦闘開始してから行動力を上げると、どんどんその待機時間が短くなっていくんです。それを極限まで突き詰めると、一瞬で次のコンボにいけたりします。
──やり込みも進化していったわけですね。
ありのすさん:
ええ、そもそもコンボは通常攻撃だけで伸ばしていて、敵を動かなくさせて一生攻撃していたら、永遠に殴り続けられる。だから、たとえば最初のころは属性100%耐性を持つアンデット系の敵を相手にしていたんです。このゲームはダメージが0でも、30%の確率でダメージが1通ってしまうので、初期は敵を回復しながらコンボを重ねてました。
ただ、研究が進むとスキルで「硬気功」という、少ないダメージを無効化する敵がいることが分かったんです。それを利用するといくらコンボを重ねてもダメージが通らない。永久にコンボができます。10周年記念動画からそのテクニックを利用してます。
そういう組み合わせはずっと考えてるんですよね。いろいろ失敗もするんですけど、試行錯誤の成果で、少しずつ前に進んでるイメージです。
──動画を追っていくとわかりますが、当初は手でやっていたという操作も自動化が進んでいったんですよね?
ありのすさん:
攻撃の開始から終了までのフレーム数を一致させるんです。ひとりだと無限にコンボできないので、ふたりのキャラクターで片方のコンボが途切れる瞬間に、もうひとりのキャラクターのコンボが始まるようにフレーム単位で合わせるんです。そうすると無限にコンボをし続けるわけです。
なので自動化が成立してからは、家に帰ったら動いているか確認して、一日一分動画を撮って、エクセル管理で数値も分かってたのでそれを参照する生活でした。
PS2が35日間も動くことを知った
──そんな研究のすえに生み出された10000000hitsという大コンボ記録。
ありのすさん:
さすがにこのhits数を超えるRPGは出てこないだろうと思って、挑戦は一度止めたんです。そしたら何年か経って、2015年に『テイルズ オブ シンフォニア』でそれを超える数値を出されてしまったんです。
──別ゲーからの刺客ですね。記録が打ち破られてしまった。
ありのすさん:
でも、その方は35日間、連続でゲーム機を稼働していたんです。それを見て「PlayStation 2って35日間連続稼働できるんだ……」と驚いたんです。それなら、限界を目指してみようと。「99999999hits」(9999万9999ヒット)を目指そうと決意しました。
──99999999hits……。
ありのすさん:
そのとき、一回失敗しました。停電で(笑)
──うわあ。
ありのすさん:
どうも当時住んでいたマンションで、設備の点検をやっていたんですね。事前の告知では停電の可能性は低いと言われてたんですけど、停電しちゃいましたね……。
──それは何日目くらいだったんですか?
ありのすさん:
129日目ですね。「70000000hits」(7000万ヒット)を超えていました……。
──つらすぎる……。
ありのすさん:
それは、“ちょっと”しんどかったですね。
でも、70000000hitsいくとわかったからには、もう終われないですよね。
──そういえば、PlayStation 2自体で事故は起こってないんですね。
ありのすさん:
2018年の挑戦時には一度故障しているんですが、このときはまだ、ですね。いちおうPlayStation 2の上にカバーをかけたり、夏場の暑いときにエアコンつけたり、それくらいはしてました。薄型の70000番台で、頑丈ですね。
まあともかく、99999999hitsの挑戦をなんとか達成できたわけですね。
──ちなみに99999999hitsに成功した挑戦は何月から始まって何月に終わったんですか?
ありのすさん:
2016年の2月18日に起動して、8月13日に終了しました。冬から夏まででしたね、99999999hitsの挑戦は。
■「RPG史上最大コンボ数(完結編)」の動画内で公開された情報
・挑戦日:2016年2月18日~2016年8月13日
・挑戦時間:約4246時間(176日と22時間)
・PS2の型名:SCPH-70000 CB(2004年12月2日購入)
・最大コンボ記録数:99999999Hits(カンスト)
・コンボボーナス記録:+99999999%(カンスト)
・幻武昇竜斬のダメージ:1199999988(99999999×12)
──なんだか、もはや聞いてる数字が『ドラゴンボール』の戦闘力みたいですよね。
ありのすさん:
なんですかね。なんでこんなバカなことやっちゃったんでしょうね(笑)
ただ、やっぱり根底にあったのは『グランディア エクストリーム』の知名度を上げたいなという思いで、自分にとってこの表現方法が一番良かった。
──それでも終わらないんですよね。
ありのすさん:
その動画の最後に、「もっとコンボ効率の良い方法はありますか?」という挑戦状をのせたんですね。そしたら1年後くらいに、「敵に対して無限コンボ」という手法を変えて、「味方に対して無限コンボ」という方法を発見してくれた人がいたんですね。それだと2ヶ月ちょっとくらいで99999999hitsが達成できる。
──それを受けて「終われない」と思ったわけですか?。
ありのすさん:
というより、むしろ「まだできることがある」と感じたんですね。そこで「クリティカル」を突き詰める方向にシフトしました。スキルによって「複数の敵を同時に攻撃できる」という方向性ですね。そうすると、ターゲットしたそれぞれ一体に対して99999999hitsを与えることができて、「コンボ数の合計値」ではさらに99999999hits以上を狙えると。
──動画では『テイルズ オブ エクシリア』が100000000hits(1億ヒット)を超えたのを見たのにも影響されたとありましたね。
ありのすさん:
そうですね。あれを見て「もうこんな時代が来たのか……」と思ったのも挑戦したきっかけです。
12年のときを経て完成した「499999995hitsの秘訣」
──いやしかし、まあ、今回達成されたのは499999995hits(4億9999万9995ヒット)なわけですよね。その方法はどのようなものだったんでしょうか?
ありのすさん:
基本的にはウルクとジェイドというふたりの攻撃を無限に続くようフレームをあわせて、単体攻撃を円形範囲攻撃に変えて、近くにいる敵に同時に攻撃できるようにするという方法です。
──手順を時系列でお聞きしていきますね。まず最初に敵に会いますよね。これは「古代の戦士」なんですね。
ありのすさん:
そうですね。「硬気功」というスキルを持っている敵で、どのスキルを持ってるかはランダムなので、5体の敵が「硬気功」を持っている乱数を引くまで粘ります。
──なるほど。
ありのすさん:
次は装備品で、「プリズムフェザー」は自分の行動ゲージを進ませるやつですね。そして「ソニックベルト」と「ハリケーンベルト」を装備させてます。
このふたつはジェイドとウルクの1ターンあたりのフレームを合わせるために使います。ソニックベルトは行動力の加速が80で、ハリケーンベルトは40なんですね。このふたつをつかってふたりのコンボを完璧に同期させる。それから「マグネイド」という魔法で敵の配置を狭い範囲に集中させ、円形範囲攻撃が届くようにします。
また、敵にクリティカルを当てると敵の行動をキャンセルできるというグランディア共通のシステムを使って、敵の行動をキャンセルさせます。そしてジェイドでIP合わせします。これはフレームを1回合わせて、片方を人為的に遅らせます。この遅らせ方がずれちゃうと途切れてしまう。
──あと、敵の停止を解除してますよね?
ありのすさん:
敵の停止を解除しないと、ノックバックが発生してサークルからずれて、いずれ円形範囲出てしまうんですね。停止の状態じゃなければノックバックしないので、1回停止させて、それから停止を解除しています。
それから作戦「正々堂々」を選ぶ。オート攻撃だと一番HPの低い敵を狙うので、それを利用してます。あとはオートで永久にコンボが続きます。
──ともかく数億ものコンボを達成するには、さまざまな下ごしらえが必要だと……。
ありのすさん:
でも、それからは見てるだけですね。
99999999hitsの挑戦のあとに無停電電源装置を買ったんで、停電の問題も解決しました。
──しかし一度もフリーズしないPlayStation 2。
ありのすさん:
さきほどの『テイルズ』ではフリーズしているそうなので、『グランディア エクストリーム』がすごく軽いんでしょうね。そういうところが伝えられればと思ってるんですけどね。
──ただ、そういった部分が伝わる前に数字の異様さに目がいっちゃいますね……あのコンボ数は。
■「RPG史上最大Hit数(真・完結編)」の動画内で公開された情報
・挑戦日:2019年7月3日~12月6日
・挑戦時間:約3749時間(156日と5時間)
・PS2の型名:SCPH-90000 CB
・最大コンボ記録数:499999995Hits(5体カンスト)
・ライデン×3の合計ダメージ:約150億ダメージ
ありのすさん:
わたしなんかはもう慣れちゃってなんとも思わないですけどね。
毎回ここが最高点だと思っているんですが、それがまた次に繋がってしまって、なんだかんだで12年もやっちゃいました(笑)
──動画でもおっしゃられてますけど、干支が一周してますもんね。やっぱり達成したときの喜びが大きくて、次に挑戦してしまうんでしょうか?
ありのすさん:
たしかに、うれしいですね。世界で一番始めにこれを見たのは自分なんだって。でも、これって誰にも理解されない喜びかなとは。
──約半年にもわたる挑戦になるので、実生活の行動も制限されるでしょうし、ほかのやり込みとは違った大変さがあると思います。
ありのすさん:
でも、基本的には放置しているだけなんで、出張とかも普通に行きますよ。帰ってくるときドキドキするくらいですかね?
──ドキドキしてる。
ありのすさん:
帰ってくるとき、東京が雷だったら「……」という感じになります。
──そう考えると、精神的には微量ながら重圧もあったのではないでしょうか?
ありのすさん:
挑戦が失敗した夢をみたこともあったので、たぶん気付かないながらも負荷がかかっていたんでしょうね。
やっぱり『グランディア エクストリーム』が好きだから
──ゲームのやり込みは、テクニックや腕前の向上とか、ゲームデータの研究といった探求のどちらかに向かうじゃないですか。でもこの挑戦は「耐久」ですよね。物理と時間と戦うってあまりないと思うんですよ。それに向かうモチベーションって、どこからくるんですか?
ありのすさん:
月並みかも知れないですけど、まずは最高値を見てみたい。その上で開発者の方が見てくれてるんだったら頑張らないわけにはいかない。『グランディア エクストリーム』をもっと知ってほしい。
──先ほどもおっしゃってましたが、『グランディアエクストリーム』が好きという思いがやはり強い。
ありのすさん:
そうですね。だから広めたいなとずっと願っているわけです。
──頑張れば499999995hitsが出せるゲームなんて、そうそうないですもんね。ものすごい自由度ですよね。
ありのすさん:
とてもすごいゲームだと思います。自由度と奥深さが普通じゃないですよね。自分の想像を実現できる許容量を持つゲームですね。
──最後にですが、ありのすさんにとって『グランディアエクストリーム』とは何でしょうか?人生の一部とも言える存在ではないかと思いますが。
ありのすさん:
一部ですね。だからいわゆる……ゲームの楽しさを、もっとも教えてくれたものにはなるんですよ。
──ちなみに……ほかのゲームってプレイしていますか?
ありのすさん:
ほかのゲームは全然やってないです。悪く言えば依存症ですよね(笑)
──(笑)
ありのすさん:
でも、だからいまでも続けられるものなんですよね。出会った中で最高で、これから先もない。生涯最高のゲームです。
──今後はどうされるんですか?
ありのすさん:
4年くらい前から「ゲーム内アイテムを10個ずつ手に入れる」というプレイをしていまして、それがいま道半ばですね。
──なるほど。まだまだ遊べるわけですね。
ありのすさん:
もう終わる気がしない(笑)。一番怖いのはPlayStation 2のコントローラーが先に壊れてしまうことですね。
──なるほど。
ありのすさん:
やめる未来が想像できないですね。わたしの人生です。
──そういうゲームに出会えるって本当に幸せなことですね。
ありのすさん:
ただこのゲームが好きなだけなんですよ。(了)
「数字」というものは我々の人生において常に人生の煩雑さを表現する指標であると同時に、うんざりするほど底知れぬ魅力を備えたものでもある。その深淵さは出身母体を数学者にもつ哲学者を多く生み、多くの競技者達が自分の持つ数字を縮め、伸ばし、増やすために人生を捧げるその求道的な姿は観客を魅了する。そう、数字とはときに誰かの「人生の目標値」をレプリゼントする魔法の言葉でもある。
しかし、どことなくふんわりとした、務めて柔らかい物腰のありのす氏は、直接的な熱意と執着をそこまでむき出しにするタイプの方ではなかった。むしろ「流れで499999995hitを達成してしまった」ような雰囲気すら漂う。求道的というよりは、生活そのもの。逆に言えばその自然さが、むしろ今回達成された数字の異様さを引き立ててもいる。
なお余談ではあるが、このインタビューのきっかけは『サムライスピリッツ 天草降臨』でお話を伺ったぽんしゃぶ氏の推薦だった。
『サムライスピリッツ 天草降臨』に大学生活を捧げ「卒業論文200枚以上の攻略文」を書いた男。“よくわからない熱意”に突き動かされた2年間の青春を聞く
「やはり驚異の熱意を持つ人は驚異の熱意を持つ人に惹かれるのだな」と思うと同時に、世の中にはこのようなとんでもない人々が他にも眠っているのではないかと期待してしまう。